相場の戻り基調が続くには不透明要素が多い

2012/10/19

今週の国内株式市場は日経平均が週初に節目の8,500円台割れとなる場面が見られたものの、その後は欧米など海外株市場の上昇や円安の進行を受けて回復基調を辿っています。

先週は世界経済の減速と企業業績の下振れ懸念を背景に売りが優勢でしたが、今週は逆に買い戻しが強くなっている格好です。その背景には、これまでのところ、思ったほど悪くない米国企業の決算(インテルやIBMなど一部で不安は燻っていますが)や、堅調が続く米国経済指標、今月30日開催予定の日銀金融政策決定会合で追加の金融緩和が決まるのではという期待感、18日に発表された7-9月期のGDPをはじめとする中国の経済指標の結果が景気減速傾向の底打ちを期待させる結果だったことなどが挙げられます。

また、ムーディーズによるスペイン国債の格下げが見送られたことや、同国の財政支援要請観測、EU首脳会合に対する期待など、欧州の情勢が一服し、為替市場で円安傾向となっていることも株式市場に一定の安心感を与えています。

投資資金は単純化すると、「儲かるところ」か「安全なところ」のどちらかに向かいますが、「リスクテイク」、「リスク回避」という言葉の通り、足元や先行きに対する不安が高まったり、後退することでリスク資産とされる株式市場が下落・上昇します。先週と今週の株式市場もこうした動きが反映されたと言えます。

とはいえ、株価の上昇基調が持続するにはまだしばらく時間が掛かりそうです。米国企業決算もまだまだ見極め段階ですし、足元で堅調さを保っている米国景気も、「財政の崖」問題の対処によっては景気減速が加速する恐れがありますが、これは11月6日の大統領・議会選挙の結果次第で左右されます。これから本格化する国内企業決算も、中国による「日本ボイコット」の影響が長期化する可能性があり、先週の株価下落で織り込みきれたかは微妙なところですし、日銀の追加金融緩和を先取りして株価が上昇している面もあるため、実際に緩和が決定されれば材料出尽くし、決定がなければ失望売りとなるシナリオも考えられます。来月、新指導部に移行する中国の動向も注目されます。

また、欧州に関して言えば、現在の市場が楽観視しているほど事態が進展しない可能性があります。欧州に対する不安後退の要因のひとつに、「スペインの財政支援要請が近いのでは」という観測があります。財政運営に行き詰まって支援を要請するわけですから、通常であれば悪材料なのですが、ECBが先月決定した国債買い入れ計画(OMT)や今月に発足したESMなど、安全網(セーフティーネット)が整備されたことで、スペインが財政支援を要請しても大きな混乱はなく、欧州の不安要素がひとつ解消されて次のステップに進めるという理屈で、好感されているようです。

ただ、スペインとしては財政支援を要請する際に、歳出削減や構造改革など厳しい条件が突きつけられることや、ECBにしても、いったん国債の購入を開始してしまうと、途中で購入を停止することが実質的に難しくなります。途中で購入を打ち切ると、これまで購入したスペイン国債が大きく下落し、大きな損失が出てしまう恐れがあるためです。つまり、支援する側と支援される側の双方にとって、「できればOMTを実行したくない」というのが本音と思われ、支援を要請するタイミングやその後の対応などがダラダラと長引いてしまうかもしれません。

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