ウェルネス・コミュニケーションズ(366A)健康管理クラウドサービスの機能強化を通じたサービス拡大により成長を目指す
大企業向けを中心に健康診断支援や健康管理データの利活用サービスを提供
健康管理クラウドサービスの機能強化を通じたサービス拡大により成長を目指す
業種:サービス業
アナリスト:鎌田良彦
◆ 大企業向けを中心に、職域の健康管理に関するサービスを提供
ウェルネス・コミュニケーションズ(以下、同社)は、大企業及び健康保険組合を主要顧客とし、コーポレート・ウェルネス(職域での健康管理)に関するサービスを提供している。
同社は2つのサービスを提供している。ひとつは提携した医療機関での健康診断・人間ドック等の予約、医療機関との健康診断費用の精算代行、健康診断結果データの一元化・納入等を行うネットワーク健康診断サービスである。もうひとつは、健康診断結果を始めとする健康に関するデータの管理と利活用を行う、SaaS型の健康管理クラウドサービスGrowbaseの提供である。
事業拠点単位で50人以上の従業員を抱える企業は、労働安全衛生法に基づき、雇用時と年1回の健康診断、及びストレスチェックを従業員に受診させる義務がある。企業では、健康診断やストレスチェックの実施に始まり、精密・再検査の受診勧奨、産業医面談、就業判定、保健指導等の実施が求められ、最終的には労働基準監督署へ定期健康診断結果を報告する必要がある。同社が提供する2つのサービスは、企業のこれらの業務をデータ化・可視化し、効率化するものである。
同社の事業は、ネットワーク健康診断サービスを提供する健診ソリューション事業、Growbaseの提供による健康管理クラウド事業、及び医療機関等支援事業の3セグメントからなる。
◆ 健診ソリューション事業
健診ソリューション事業は、企業・健康保険組合等が行う、健康診断の各種工程(医療機関との契約、健康診断の予約、医療機関への健康診断費用の精算代行、健康診断結果のデータ作成と提供)を同社が一括して受託して、ワンストップでネットワーク健康診断サービスの提供を行う事業である。
顧客向けには、同社の基幹システムと紐づけしたi-Wellnessという健康診断のソリューションプラットフォームを提供しており、健康診断を受診する従業員向けのページ、健康診断結果の集計・管理等を行う人事部の担当者等向けのページがある。
顧客はネットワーク健康診断サービスの利用により、①従来の紙ベースやエクセルベース行っていた健康診断結果の管理業務等を効率化できる、②受診案内・受診勧奨により健康診断受診率の向上が図れる、③健康診断後の事後措置対応強化が可能になる等のメリットがある。
25年3月末時点で2,164件の医療機関と業務提携をしており、顧客はこれらの医療機関から希望する医療機関を選択する。
25年3月末の顧客数は、従業員数1,000~50,000人規模の大企業及び健康保険組合を中心に、216企業グループ、1,710社となっている。健康診断受診後4週間程度で健康診断結果データの納入を行っており、25/3期の健康診断結果の納入数である出荷数は、38.8万件であった。一部の顧客では、部署単位で段階的に導入したり、他の健康診断サービスの利用、同社契約医療機関以外での受診等があるため、全社員の利用とはなっていない。
ネットワーク健康診断サービスでは、顧客ごとに健康診断コースや受診医療機関を決定した上で、受診者1人当たりの健康診断費用が決められる。これに、受診者1人当たりのi-Wellnessの利用料を加えた基本利用料を同社ではストック型課金としている。1人当たりの健康診断費用は、23/3期から25/3期の平均で26,900円、1人当たりのi-Wellnessの年額費用は4,300円である。健診ソリューション事業における25/3期のストック型課金による売上高比率は、98.4%であった。
受診者以外の対象者も含めて、受診案内や受診勧奨代行等を行うための料金を同社ではアップセル利用料としてフロー型課金としており、25/3期のフロー型課金による売上高比率は、1.6%であった。
ネットワーク健康診断サービスを前年から継続利用している企業グループ数に基づく契約継続率は、25/3期で99.5%と高い継続率となっている。
精算代行に伴い、医療機関に支払う健康診断費用が売上原価として計上される。医療機関毎に健康診断費用は異なるため、受診者がどの医療機関を選択するかによって、顧客毎にネットワーク健康診断サービスの売上総利益率は異なる。
◆ 健康管理クラウド事業
健康管理クラウド事業では、企業の人事部、産業医や衛生管理者等の産業保健スタッフ、及び企業と連携している一部の健康保険組合向けの、SaaS型健康管理クラウドサービスGrowbaseを提供している。
Growbaseは、健康診断結果、勤怠等の就労データ、ストレスチェックデータ、及び産業医の面談による指導記録等を個人単位で紐づけ、心と身体に関するデータを一元管理・可視化する機能を備えている。また、健康診断後の各種集計・抽出機能、労働基準監督署等への定期健康診断結果報告書等の各種報告書の作成機能、産業医との面談スケジュールの管理、従業員自身の経年の健康診断結果を確認できるマイページ機能等を備えている。
25年3月末の顧客数は、232企業グループ、1,830社となっている。Growbaseは全従業員を対象としたサービスであり、ID数は174.4万となっている。
Growbaseの料金は、①ID数に応じた基本利用料、②従業員データの保管料、③産業保健スタッフが利用する管理者サイトへのセキュリティ認証利用料からなるストック売上と、④オプション機能利用料、⑤顧客の要望に応じて機能改修をする個別カスタマイズ料からなるフロー売上高に分けられる。25/3期のストック型売上高比率は、90.9%であった。
当月解約顧客数を前月末顧客数で除して算出される月次解約率の25/3期の平均は0.28%であった。
Growbaseの販売は同社の営業部門による直販に加え、販売代理店経由の販売があり、売上高の4割程度が販売代理店経由となっている模様である。販売代理店としては、伊藤忠商事(8001東証プライム)傘下の伊藤忠テクノソリューションズ、SOMPOホールディングス(8630東証プライム)傘下のSOMPOヘルスサポート、企業のメンタルヘルスケア対策を行うアドバンテッジリスクマネジメント(8769東証スタンダード)、福利厚生や健康支援サービスを提供するイーウェル(東京都千代田区)がある。
◆ 医療機関等支援事業
医療機関等支援事業の主要サービスは、地域中核病院に対して、PET検査注1用の建物・装置の賃貸借を行うPET関連事業、協会けんぽ(全国健康保険協会)や総合健康保険組合加入企業を対象とした、健康診断の予約機能や医療機関への精算代行等のBPO注2サービスがある。
◆ セグメント情報
25/3期の売上高構成比は、健診ソリューション事業が89.2%、健康管理クラウド事業が8.8%、医療機関等支援事業が2.0%であった。セグメント利益率は健診ソリューション事業が2.3%、健康管理クラウド事業が58.5%、医療機関等支援事業が32.9%であり、健康管理クラウド事業は、売上構成比は1割を下回るが、利益の凡そ3分の2を稼ぎ出す事業となっている(図表1)。
売上高構成比では、顧客に対して健康診断費用とシステム利用料が売上計上される健診ソリューションサービスの比率が高い。ただし、健診ソリューション事業では、医療機関への健康診断費用の支払いに加え、データ入力等の人件費等がかかることから、売上高セグメント利益率は低位にとどまっている。一方、健康管理クラウド事業では主要費用がシステムの減価償却費、保守費用等の固定費であり、ID数の増加に伴い収益性が高まる傾向にあるため、売上高セグメント利益率が高くなっている。

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