ダイナミックマッププラットフォーム(336A)地図データのライセンス供与と地図データを活用したソリューションを提供
自動運転や先進運転支援実現に貢献する高精度3 次元地図データを提供
地図データのライセンス供与と地図データを活用したソリューションを提供
業種:情報・通信業
アナリスト:髙木伸行
◆ 自動運転や先進運転支援向けに高精度3次元地図データを提供
ダイナミックマッププラットフォーム(以下、同社)は自動運転や先進運転支援システムを開発・提供する自動車メーカー等に高精度3次元地図データ「HDマップ(High Definition Map)」をライセンス供与している。また、自動運転や先進運転支援システム向け以外へのHDマップの用途拡大、HDマップに関する技術を活用したソリューションを提供している。
同社は、SIP注1自動走行システムを実現するためのHDマップの研究開発を目的に16年6月に設立された。翌17年6月にはHDマップの実用化に目処がたったことから、日系自動車メーカー10社注2などを株主として事業会社へ移行した。
同社グループは、同社、並びに19年4月に買収した、当時General Motors Companyの投資先であったDynamic Map Platform North America, Inc.を始めDynamic Map Platform Europe, GmbH、Dynamic Map Platform Korea,LLC、ダイナミックマッププラットフォームAxyz 株式会社、Dynamic Map Platform Arabia Limited、DYNAMIC MAP PLATFORM DATA-L.L.C の連結子会社6社で構成されている。
同社のビジネスは自動運転や先進運転支援システムのためのHDマップを提供する「オートモーティブビジネス」とHDマップの自動運転や先進運転支援システム以外の用途への展開を目指す「3Dデータビジネス」に分類される。
(1)オートモーティブビジネス
国内並びに北米、欧州、中東、韓国の自動車専用道路、高速道路及び一般道の計測及び図化を行い、それらを統合して自動運転や先進運転支援システムに有用なHDマップを生成・販売している。
売上高は自動車メーカー等から指定される地図カバレッジ・仕様に基づくHDマップの整備・更新を受注し対価を受け取る「プロジェクト型売上」と量産車へのHDマップを搭載することにより販売台数に応じて計上するライセンスフィー等の主に整備済みのデータやシステムをベースとした商品の対価として受け取る「ライセンス型売上」がある。プロジェクト型売上が、オートモーティブビジネス売上高の大半を占めている。
(2)3Dデータビジネス
HDマップ及び高精度3次元点群データ注3(これらを総称して、以下、高精度3次元データ)の活用による、自動運転及び先進運転支援システム用途以外でのソリューション提供を3Dデータビジネス事業として展開している。
同社グループが提供する高精度3次元データは、自動車、航空機、船舶、自律移動ロボットといった移動体の自己位置推定や周辺環境認識に有用であり、様々な用途に利用可能で、省人化や効率化の実現につながるものである。
産業のデジタル化・効率化に際しては、交通渋滞情報、事故情報、天候の変化、人流、荷物情報などの動的情報の統合と活用が重要であり、静的な位置情報である高精度3次元データは、これらの動的情報を紐づける為のデータ基盤となる。これら静的な情報と動的な情報を統合したものが「ダイナミックマップ」である。
同社グループは高精度3次元データを生成・提供するなかで培った技術や知見、保有するデータアセットを活用して、自動運転及び先進運転支援システム用途以外でのソリューション提供にも取り組んでいる。高精度3次元データを見える化するViewer機能やHDマップの生成技術を応用したGuidance機能について、それぞれ商品化している。
新エネルギー・産業技術総合開発機構やデジタル庁といった官公庁や企業等からの受注業務に関するプロジェクト型売上が3Dデータビジネス売上の中心である。
◆ プロジェクト型とライセンス型の収益モデル
同社グループの売上高は、上述したように、プロジェクト型とライセンス型に分類される。オートモーティブビジネス、3Dデータビジネスの各ビジネスごとのプロジェクト型とライセンス型の構成比は公表されていないが、24/3期売上高の82.1%がプロジェクト型、17.9%がライセンス型によるものである(図表1)。
プロジェクト型売上には、主にHDマップデータ整備等による事業基盤の構築や官公庁向けプロジェクトを通した研究開発投資的な性格がある。プロジェクト型売上は主に原価に一定のマージンを上乗せすることにより決まり、コストは変動費が中心である。このため、官公庁や企業からのプロジェクト受注は安定収益を確保するとともに自己投資を抑えながらライセンス商品の開発に取り組むことができるというメリットがある。
ライセンス型売上には、主に整備済みのデータやシステムをベースに、車載用や多用途展開向けに商品を提供するものが含まれていることから、売上原価は固定的なものが中心であり、変動費が限定的であることから、限界利益率が高いという特徴がある。
◆ セグメント情報
日本・北米・欧州・韓国・中東において事業を展開していることから、同社は事業セグメントを「国内」と「海外」に分類して開示している。24/3期の売上高の29.7%が国内、70.3%が海外であった(図表2)。両セグメントとも損失を計上しているが、海外の収益性の改善ペースが速い。
国内における事業領域は、自動車専用道路、高速道路及び一般道の計測及び図化を行い、それらを統合して自動運転や先進運転支援システムに有用なHDマップを生成・販売する「オートモーティブビジネス」とHDマップの生成過程における計測業務を通じて収集される高精度3次元点群データの活用による、自動運転及び先進運転支援システム用途以外でのソリューションを提供する「3Dデータビジネス」に分類される。
海外については、25年1月時点では、25カ国で事業を行っており、オートモーティブビジネスが主である。ただ、3Dデータビジネスの顧客開拓に向けたマーケティング活動やアライアンス構築に取り組むことで、3Dデータビジネス事業の立ち上げを進めている。海外オートモーティブビジネスは、北米を中心としたHDマップの新規整備を進めていることから、プロジェクト型売上が大きな割合を占めている。

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