MFS(196A)サービス利用拡大に伴う増収による黒字化タイミングを探る局面

2024/07/01

オンライン・モーゲージ・ブローカーサービス「モゲチェック」を中心に展開
サービス利用拡大に伴う増収による黒字化タイミングを探る局面

業種:その他金融業
アナリスト:藤野敬太

◆ 信用力分析を最大の競争優位性としてオンライン・モーゲージ・
ブローカーサービスとオンライン不動産投資サービスを展開
MFS(以下、同社)の代表取締役CEOの中山田明氏は、ベア・スターンズ証券で日本初の住宅ローン証券化を経験し、新生銀行、SBIモーゲージ(現SBIアルヒ)にて住宅ローンの証券化に長く取り組んできた。その過程で、欧米にあるような、金融機関や不動産会社とは独立したモーゲージブローカーのような存在が日本にはないことに気づくとともに、日本において住宅ローン利用者に寄り添う形でサービス提供する存在を創り出すことに、大きな事業機会を見出した。

同社は元々、中山田氏の資産管理会社だったが、14年7月に事業目的を住宅ローンの借換サービスへ変更し、現在の事業を開始した。15年8月には住宅ローン診断サービス「モゲチェック」をリリースし、18年10月には、現在のINVASE事業につながる「モゲチェック・プラザfor不動産投資ローン」を開始した。

同社の事業は、住宅ローンの媒介を行うモゲチェック事業と、投資用不動産の仲介を行うINVASE事業の2つの報告セグメントで構成されている(図表1)。主力はモゲチェック事業で、マーケティングコストがかさんだ22/6期はセグメント損失となったが、23/6期はサービス利用の拡大によって売上高が前期比2.5倍となりセグメント利益は黒字化した。一方、INVASE事業は22/6期はセグメント利益を計上したが、コンドミニアム・アセットマネジメントを買収して連結子会社としたために費用負担が重くなり、23/6期以降はセグメント損失が続いている。

◆ モゲチェック事業
モゲチェック事業では、オンライン・モーゲージサービス「モゲチェック」を提供している。「モゲチェック」は、オンラインまたはアプリ経由で、住宅購入予定者または住宅ローン借り換え予定者(以下、住宅ローンユーザー)を対象に、住宅ローンに関する情報を提供し、媒介をするサービスである。

提供する情報は、住宅ローンユーザーの信用力分析に基づいた提携金融機関ごとの住宅ローン借り入れ可能額及び融資承認の推定確率であり、ユーザーにとってベストな条件の住宅ローン商品の提案を行っている。提案後も、最小限の追加情報の入力で審査申し込みができる「クイック審査」や、人とAIでサポートする「チャットサポート」のような機能を通じて、ローン実行に至るまでをサポートしていく。

提案の中から住宅ローンユーザーが金融機関に審査を申し込むと、当該金融機関が契約している広告代理店から手数料を受け取り、これが同社の収益となる。審査申込1件につき得られる手数料は、提携金融機関ごとに設定額が異なるが、ローンの額の多寡に影響されず、固定額である。

集客は検索等のオンラインを通じたものが中心である。23/6期で436万件を集客し、そのうちの64,530件がユーザー登録した(図表2)。登録数を集客数で割った登録率は21/6期と22/6期は1%を下回っていたが、23/6期は1.48%、24/6期第3四半期累計期間は1.33%となった。

主な費用は、システム開発費用(労務費及び業務委託費)と広告宣伝費である。システム開発費用は固定費としての性格が強いため、利益率の短期的な変動に影響するのは、審査申込単価(審査申込にあたり金融機関から得る送客手数料)と、審査申込1件当たり顧客獲得コストの差であるスプレッドとなる。22/6期はTV広告を実施したことで広告宣伝費が増加したため、スプレッドはマイナスとなったが、23/6期以降は安定的にプラスとなっている(図表3)。

◆ INVASE事業
INVASE事業は、投資用不動産への不動産投資ローンの借入を検討している人(以下、投資不動産ユーザー)を対象に、不動産投資サービスを提供している。(1)投資不動産ユーザーに対する投資用不動産の仲介、(2)当該投資用不動産の仲介に係る顧客獲得を目的とした各種業務(不動産投資用ローンの媒介、投資不動産ユーザーへの物件の紹介、不動産会社への投資用物件購入予定者の紹介等)の2つの業務を行っている。

ウェブサービスでは、投資不動産ユーザーに対し、不動産投資ローンの借入可能額を提示(サービス名はバウチャー)することでサービスが始まる。バウチャー発行時に、同社は、投資用不動産物件の仲介会社を紹介する。紹介先の仲介会社は、外部の不動産会社の場合もあれば、連結子会社であるコンドミニアム・アセットマネジメントの場合もある。また、借換を検討しているユーザーに対しては、不動産投資用ローンの提案も行っている。

アプリサービス「INVASE Pro」では、ユーザーに対して常時価格情報を提供し、コンドミニアム・アセットマネジメントが売買をサポートする。売主は適切なタイミングでの物件売却、買主は不動産投資ローンの借入可能額や購入に必要な自己資金が分かる物件選びが可能となる。

INVASE事業における収益は、(1)紹介時に不動産会社から得られる手数料、(2)コンドミニアム・アセットマネジメントが仲介を行った際の投資不動産ユーザーから得られる仲介手数料、(3)不動産投資ローンの借換をした場合の手数料(借換によって生じるメリット額の10%または35万円(税抜)のいずれか高い方)の3種類がある。いずれにしても、バウチャー発行が起点となるため、投資不動産ユーザーによるバウチャー申込件数がKPIのひとつとなる(図表4)。

「モゲチェック」と同様、集客は検索等のオンラインを通じたものが中心である。23/6期で51.7万件を集客し、そのうちの8,478件がバウチャー申込をした(図表4)。登録数を集客数で割った登録率は23/6期で1.64%である

また、22/6期第3四半期から連結子会社となったコンドミニアム・アセットマネジメントは仲介手数料が収益源となるため、物件成約数も重要なKPIとなる。物件成約数は、23/6期137件、24/6期第3四半期累計期間で167件と増加している(図表5)。

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一般社団法人 証券リサーチセンター
ホリスティック企業レポート   一般社団法人 証券リサーチセンター
資本市場のエンジンである新興市場の企業情報の拡充を目的に、アナリスト・カバーが少なく、適正に評価されていない上場企業に対して、中立的な視点での調査・分析を通じ、作成されたレポートです。

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