魁力屋(5891)23年12月期に開始したフランチャイズ事業で出店が加速するかどうかに注目
三大都市圏を中心に「京都北白川ラーメン魁力屋」を直営店主体でチェーン展開
23年12月期に開始したフランチャイズ事業で出店が加速するかどうかに注目
業種:小売業
アナリスト:藤野敬太
◆ 「京都北白川ラーメン魁力屋」をチェーン展開
魁力屋(以下、同社)は、「京都背脂醤油ラーメン」を主力商品とする「京都北白川ラーメン魁力屋」(以下、「ラーメン魁力屋」)を中心に店舗展開している企業である。
「京都ラーメン」は京都が発祥とされるラーメンの総称であり、その特徴によりいくつかの系統があるとされている。背脂醤油ラーメンはそのうちのひとつで、醤油と鶏ガラ主体のスープに背脂を落とすのが特徴である。「京都背脂醤油ラーメン」はこってりしている割には飽きが来にくいため、幅広い客層に受け入れられやすいとされている。また、地域ごとの味の嗜好性の影響を受けにくく、全国展開がしやすいラーメンとされている。
「京都ラーメン」を謳うラーメン店は他にもあるが、「京都」ブランドを屋号に掲げて展開しているチェーン店は他には見当たらない。屋号のブランドの強さと、ラーメンの味の特徴から、05年に1号店をオープンして以来、関東、関西、東海の三大都市圏を中心に店舗数を増やしてきた。なお、海外での展開は行っていない。
同社の事業は飲食事業の単一セグメントだが、魁力屋事業部門とその他事業部門で構成されている。事業別の売上高は開示されていないが、23年9月末時点の全店舗140店舗のうち、その他事業部門はから揚げ専門店等の10店鋪に過ぎないことから、魁力屋事業部門が売上高の大半を占めていると言えよう。
◆ 魁力屋事業部門:店舗及び出店の特徴
「ラーメン魁力屋」のメニューは、「京都背脂醤油ラーメン」を主力商品としているが、焼きめしや餃子、唐揚げ等の定食メニューやお子様メニューを取り揃えることで、ファミリー層にも受け入れられやすく、また、利用頻度が高くなるような構成となっている。特に、焼きめしは店内調理にこだわり、他社との差別化アイテムとして強化してきている。
「ラーメン魁力屋」の店舗は立地別に、郊外ロードサイド店舗、フードコート店舗、駅前ビルイン店舗の3種類があるが、これまでの出店の経緯から、郊外ロードサイド店舗が中心となっている。
郊外ロードサイド店舗は05年の1号店オープンからの形態である。10台以上の駐車場、150~300坪程度の敷地に建坪30坪、座席数43席を標準型とし、厨房と客席が一体となったオープンキッチン形式を採る店舗フォーマットを確立している。コンパクトでありながら、おひとり様からファミリー層までの幅広い顧客層に対応できるつくりとなっている。
フードコート店舗は、13年にイオンモール東員店(三重県員弁郡)にオープンして以来のもので、郊外ロードサイド店舗以上に客層の幅が広くなっている。また、駅前ビルイン店舗は都市部への出店のためのもので、今後、出店が本格化していく店舗形態である。
◆ 魁力屋事業部門:店舗運営を支える仕組み
「京都背脂醤油ラーメン」のスープは店内で調理しているため、セントラルキッチンのような設備を持っていない。また、麺についても自社の製麺工場があるわけではなく、材料は基本的には外部から調達している。なお、調達リスクを避けるべく、調達先は複数に分散している。
また、出店に際しては、店舗スタッフの定着と質の向上が必要不可欠である。同社では、従業員には常時携帯する「クレド」を配布し、適宜唱和することにより、「店舗理念」や「基本コンセプト」等の浸透を図っている。
◆ 魁力屋事業部門:「ラーメン魁力屋」の展開状況
同社はこれまで、「ラーメン魁力屋」を直営店主体に出店してきた。直営店以外では、09年に開始した社員独立支援制度によりのれん分けした元従業員が運営する独立店があるのみだったが、今後の出店加速のために、23/12期からFC加盟店による出店を開始した。
「ラーメン魁力屋」の店舗数は22/12期末時点で121店舗(直営店97店舗、独立店24店舗、FC加盟店0店舗)、23/12期第3四半期末時点で130店舗(直営店102店舗、独立店24店舗、FC加盟店4店舗)となっている(図表1)。
同社は、関東、関西、東海の三大都市圏に店舗網を広げてきた。「ラーメン魁力屋」の地域別店舗数は、22/12期末で関西33店舗、関東56店舗、東海26店舗、その他6店舗、23/12期第3四半期末で関西33店舗、関東62店舗、東海28店舗、その他7店舗となっている(図表2)。なお、三大都市圏以外のその他の地域では、東北、中国、九州・沖縄で出店がある。
◆ その他事業部門
「ラーメン魁力屋」以外では、から揚げを主力商品とするテイクアウト専門の「からたま屋」(23年9月末時点3店舗)と「とりサブロー」(同6店舗)、タンメンを主力商品とする「KIBARU」(同1店舗)がある。「からたま屋」と「KIBARU」は19年に自社で開始したブランドだが、「とりサブロー」は、22年10月に事業譲受したブランドである。地域別には、23年9月末時点で関西に「からたま屋」3店舗と「KIBARU」の計4店舗、関東には「とりサブロー」の6店舗がある(図表3)。