くすりの窓口(5592)シェア拡大、収益性改善ともにまだ余地が大きい

2023/10/16

薬局、医療機関、介護施設と利用者をつなぐプラットフォームとして各種事業を運営
シェア拡大、収益性改善ともにまだ余地が大きい

業種:情報・通信業
アナリスト:藤野敬太

◆ 主に調剤薬局向けに集客、共同仕入、システム等のソリューションを提供
くすりの窓口(以下、同社)は、調剤薬局、医療機関、介護施設と利用者をつなぐプラットフォームとして各種事業を運営している。グルメやライフスタイル等の各種業界向けに予約システムの提供を通じたユーザーと施設のマッチングサービスを展開しているEPARK(東京都港区)の一部門として、処方薬の受け取り予約サービスからスタートした。フリービット(3843東証プライム)の子会社だった時期を経て、主要顧客である調剤薬局の需要を捉えながら事業領域を広げてきた。

同社の事業は医療向けソリューションの開発および販売の単一セグメントだが、サービス別に3つの事業に区分されている(図表1)。みんなのお薬箱事業、メディア事業、基幹システム事業の順に売上構成比が高いが、比較的分散している事業ポートフォリオとなっている。

◆ メディア事業
メディア事業は、「医療と患者をつなぐプラットフォーム」というコンセプトのもと、患者の利便性向上と薬局への来局数増加を目的としたサービスを展開している。EPARKの調剤薬局向けサービスから発展してきた事業で、薬局の検索サイト/アプリ「EPARKくすりの窓口」と、電子お薬手帳アプリ「EPARKお薬手帳」の2つが主力サービスである。また、「Pharmacy Support」と呼ばれる、調剤薬局の患者リピート来店促進に特化した顧客管理システムの提供も行っている。

「EPARKくすりの窓口」は、薬局の情報を掲載しているポータルサイトである。患者は薬局を検索できるとともに、処方箋をサイト/アプリ経由で送付することで、処方薬受け取りの予約をすることができる。全国に調剤薬局は約6万施設あるが、約33%の施設で処方箋受け取りの予約が可能となっている。一方、薬局にとっては、新規の患者を集客するサービスとして機能している。「EPARKくすりの窓口」における同社の収益は、患者が初回に予約した際の初回登録手数料と、その後の当該患者に係る登録管理料であり、いずれも薬局から受け取る。なお、これらの収益の一定割合をロイヤリティとしてEPARKに支払っている。

「EPARKお薬手帳」は、累計利用者数が400万人を超える、服薬している医薬品を管理するために患者自身がダウンロードする電子お薬手帳アプリである。処方薬受け取り予約機能のほか、PHR注1管理機能もついている。また、同社システムを導入している薬局で処方されると、自動で処方内容がお薬手帳に記帳される機能もあり、患者と薬局の利便性向上にもつながっている。「EPARKお薬手帳」は、薬局及び患者による「EPARKくすりの窓口」の利用を促すためのツールと位置づけられており、直接的な収益はない。

「Pharmacy Support」は、予約管理、お薬手帳管理、顧客管理を一元化し、患者のリピート来局を支援するサービスである。処方後の服薬フォローをシステム化し、患者への電話やリスト管理、タスク管理を効率化する機能もついている。初期導入費用収入と月額利用料収入が同社の収益となる。

メディア事業では、「EPARKくすりの窓口」の予約数がKPIとなる。22/3期は前期比36.5%増、23/3期は同39.5%増と高い伸び率を記録している(図表2)。

◆ みんなのお薬箱事業
みんなのお薬箱事業は、「医薬品卸と薬局をつなぐプラットフォーム」というコンセプトのもと、薬局に対するソリューションとして、医薬品の流通改善を支援する事業である。「みんなの共同仕入れサービス」、「eオーダーシステム」、「みんなのお薬箱」の3つのサービスを展開している。

「みんなの共同仕入れサービス」は、薬局や医療機関に代わり、医薬品卸売事業者との医薬品の仕入価格交渉を代行するサービスである。阪神調剤薬局を展開するI&Hグループ(兵庫県芦屋市)との合弁会社で同社の持分法適用関連会社のグローバル・エイチ(東京都港区)が担当している。発注量を増やすことにより、医薬品の仕入価格交渉を優位に進めて、仕入価格の低減を図っている。同社の収益は医薬品売買における取引薬価や売買価格に応じて算出される手数料収入となり、グローバル・エイチに対しては事業収益の一定割合を手数料として支払っている。

「eオーダーシステム」は、医薬品の在庫管理及び自動発注のシステムである。薬局であれば処方歴データと連携することにより、AIが患者ごとの必要な医薬品の種類と量を判断し、発注情報を作成する。「みんなの共同仕入れサービス」に加盟している場合は、AIの判断に応じて、自動的に卸会社に発注することもできる。導入する薬局や医療機関としては、過剰在庫抑制や欠品防止、薬剤師の事務負担軽減を図るというメリットがある。同社は、初期導入費用収入と月額利用料収入を得ている。

「みんなのお薬箱」は薬局間の医薬品売買マッチングサイト/アプリである。在庫を余らせている薬局と、医薬品の不足で困っている薬局とを仲介することで、業界全体として医薬品の不動在庫を有効利用することができるサービスである。医薬品を販売する薬局は、サイト/アプリ上で直接出品するか、子会社のピークウェル(東京都豊島区)がいったん買い取った上でピークウェルが出品するかのいずれかの方法で、余剰在庫を提供する。同社は、売買が成立した際に、医薬品の薬価に応じた手数料収入を得る。

みんなのお薬箱事業では、「みんなの共同仕入れサービス」の医薬品流通金額がKPIとなる。(図表3)。

◆ 基幹システム事業
基幹システム事業は、「医科、薬局、介護のデータ連携プラットフォーム」というコンセプトのもと、医療機関、薬局、介護施設向けのシステムを販売する事業である。

調剤薬局向けには、連結子会社のモイネットシステム(兵庫県神戸市)がレセコン注2「Pharmy」を、医療機関向けには、連結子会社のメディカルJSP(京都府京都市)とエーシーエス(宮城県仙台市)が「HOSPITAC」や「Ex-Karte」といった電子カルテシステムやレセコン「IJIα-5」を、介護施設向けには、同社が電子介護記録アプリ「ケア記録アプリ」や電子介護記録システム「コメットケア」を販売している。これらのシステムの導入により、同社は初期導入費用収入と保守料収入を得ている。

基幹システム事業では、契約保有数がKPIとなる。(図表4)。

◆ ストック売上を重視
同社では、将来にわたって継続的に得られるストック売上と、サービス導入時の初期費用収入であるショット売上に収益を区分している。同社では、ストック型事業の強化を通じて、成長を安定的に支えていく事業基盤を構築する戦略を採ってきており、ストック売上を重視してきた。同社のストック売上の構成比は23/3期で62.9%まで上昇したが、直近は、みんなのお薬箱事業のストック売上比率の上昇が顕著である(図表5)。

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一般社団法人 証券リサーチセンター
ホリスティック企業レポート   一般社団法人 証券リサーチセンター
資本市場のエンジンである新興市場の企業情報の拡充を目的に、アナリスト・カバーが少なく、適正に評価されていない上場企業に対して、中立的な視点での調査・分析を通じ、作成されたレポートです。

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