jig.jp(5244) ライブ配信を盛り上げるエフェクト付画像等を販売するビジネスモデル

2022/12/30

特定分野のプロではない一般のユーザー主体のライブ配信サービスを提供
ライブ配信を盛り上げるエフェクト付画像等を販売するビジネスモデル

業種: 情報・通信業
アナリスト: 松尾 十作

◆ 主力事業はライブ配信事業jig.jp(じぐじぇいぴー、以下、同社)グループは、同社と連結子会社であるA Inc.とB Inc.の3社で構成されている。「利用者に最も近いソフトウェアを提供し、より豊かな社会を実現する」という経営理念の下、ライブ配信事業を主な事業としている。社名のjigは、イギリスやアイルランドの民俗的な踊りや舞曲に由来し、便利で軽快なアプリケーションを広めたいとの想いが込められている。
22/3期のセグメント別の売上構成比は一般消費者向け関連99.5%、自治体向け・企業向け関連0.5%である。一般消費者向け関連は、ライブ配信事業、ブラウザ事業、その他事業で構成されており、自治体向け・企業向け関連は、子どもパソコン事業、オープンデータプラットフォーム事業から成る。各事業の売上高は開示されていないが、ライブ配信事業が売上高の99%を占めた。
同社単体ではプラウザ事業とその他事業を展開している。ブラウザ事業は、フィーチャーフォン向けPCサイト閲覧ブラウザ「jigブラウザ」等、一般消費者向けにサービスを提供しており、利用者から月額もしくは年間の利用料金を得ている。その他事業はTwitterクライアント事業である。Android携帯端末向けTwitterアプリ「jigtwi(ジグツイ)」を提供している。アプリは無料でダウンロードできるが、広告を表示しない場合は有料(税前100円/月)である。
A Inc.は現在の同社グループの主力事業である一般消費者向けライブ配信事業である「ふわっち」を展開している。22/3期のA Inc.の業績は、売上高
8,900百万円、経常損失696百万円、当期純損失615百万円である。ふわっちを広めるべく多大な広告宣伝費をかけたことから、経常損失を計上し、433百万円の債務超過となった。
B Inc.では子どもパソコン事業とオープンデータプラットフォーム事業を展開している。同社へのライセンス料等の支払いにより22/3期は57百万円の債務超過となった。子どもパソコン事業はプログラミング専用こどもパソコンを委託先が生産・販売することにより、その販売台数に応じたライセンス料を徴収している。オープンデータプラットフォーム事業は、契約先の自治体に対して自治体が開示している様々なファイル(PDF、Excel等)を全国で統一されている形式(LinkedRDF)に転換するプラットフォームを提供している。
◆ ふわっちは一般のユーザーが対象同社はライブ配信アプリふわっちの提供を15年9月に開始した。スマートフォン向けのサービス名はふわっち、パソコン向けはwhowatch.tvである。当時は、既に「YouTube」や「ニコニコ動画」等が動画配信サービスとして認知されていた。一般ユーザーによるライブ配信サービスに商機があると判断し、開発したのがふわっちである。多くのライブ配信サービスがあるなかで、主たる配信者が一般のユーザーである点に特徴がある。
配信ユーザーは芸能人や音楽、スポーツ等の特定分野のプロではない、会社員、主婦、学生等のアマチュアが中心である。世代別に見ても20歳代
29.2%、30歳代28.7%、40歳代22.9%と世代別に偏りがない(図表1)。
視聴者の世代別構成比は不明ではあるが、視聴時にアイテムを購入した課金ユーザーの世代別構成比は、30歳代29.0%、40歳代32.2%、50歳代19.5%と配信ユーザーの世代別より40歳代、50歳代とアイテム購入力のある高年齢層の構成比が高くなっている。
主力である携帯電話のトップ画面(図表2の一番左側)を開くと、オススメ、人気、女性、男子、雑談、音楽などカテゴリが多く、どんな視聴者でも必ず興味があるカテゴリ(赤色の円で囲んだ部分)が見つかり、視聴だけなら通信料を除き無料である。常時数百以上の配信があり、各カテゴリでのオススメの配信ユーザーが下段に表示されている。興味のある配信ユーザーをクリックすると画面が変わる(図表2の中央)。コメントが下部に表示(赤色の円で囲んだ部分)される。配信中の画面内に表示されるコメント欄に視聴ユーザーがコメントを投稿出来たり、有料のアイテムをプレゼントとして表示するとライブ画面を盛
り上げられる仕組みとなっている(図表2の一番右)。
なお、同社の23/3期第2四半期累計期間(以下、上期)の売上割合はApple Inc.が34.1%、Google Inc.が23.7%、DGフィナンシャルテクロノジーが21.3%となるが(図表3)、これらは、視聴ユーザーがアイテムを購入する際の決済を
行っているだけで、真の販売先は視聴ユーザーとなる。
同社のライブ配信事業にとっての収益は、視聴ユーザーのアイテム購入によるもののみである。視聴ユーザーは配信ユーザーの画面を盛り上げるべく、画面にアイテムを表示する(図表4)。視聴者を飽きさせないよう常に新しいアイテムをリリースしている。期間限定(クリスマス、正月、桜開花シーズン等)のアイテムや特定のイベントでのみ使用できるアイテムを販売することで購入意欲の促進を図っている。配信ユーザーは、視聴ユーザーがアイテムを購入した代金の一部を得ることが出来る。

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一般社団法人 証券リサーチセンター
ホリスティック企業レポート   一般社団法人 証券リサーチセンター
資本市場のエンジンである新興市場の企業情報の拡充を目的に、アナリスト・カバーが少なく、適正に評価されていない上場企業に対して、中立的な視点での調査・分析を通じ、作成されたレポートです。

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