monoAI technology(5240) プラットフォームのOEM提供やプラットフォーム上のイベント拡大で成長を目指す
企業向けに自社開発メタバースプラットフォームを利用したサービスを提供
プラットフォームのOEM提供やプラットフォーム上のイベント拡大で成長を目指す
業種: 情報・通信業
アナリスト: 髙木 伸行
◆ 企業向けにメタバースプラットフォームを利用したサービスを提供
monoAI technology(以下、同社)グループは、同社と子会社2社、持分法適用関連会社1社からなり、オンラインゲーム開発で培った多人数同時接続技術や3次元仮想空間作成技術、AI技術等を活用してメタバースプラットフォームXR CLOUDを開発し、このXR CLOUDを使ったサービス及びXR注1関連の技術を企業向けに提供している。
メタバースとは、デジタル技術によりインターネット上に制作された3次元の仮想空間で、利用者は自分の分身であるアバターを介して他の利用者とコミュケーションをとったり、ゲームや音楽等のコンテンツを楽しんだり、商品の売買等を行うことができる。
メタバースを構築する技術は、ゲームコンテンツ作成のためのゲームエンジンUnityによる3次元仮想空間制作やVRコンテンツの制作、多人数同時接続を可能にする通信技術等、ゲームの開発技術、特にMMORPG注2の開発技術が使われており、ゲーム開発との親和性が高い。
同社の事業はXR事業の単一セグメントであるが、①メタバースサービス、②XRイベントサービス、③XR周辺サービスの3つのサービスを提供している。21/12期の売上構成比は、メタバースサービスが72.6%、XRイベントサービスが6.6%、XR周辺サービスが20.8%であった(図表1)。
◆ メタバースサービス
メタバースサービスでは、XR CLOUDをOEM提供し、その上に顧客ごとの機能を付加したメタバースプラットフォームの受託開発を行い、プラットフォーム稼働後はプラットフォーム上でのイベントの運営受託等を行っている。収益はプラットフォームの受託開発収益、イベントの運営受託収益、プラットフォームのユーザー数に応じた利用料等である。
同社では、今後、様々な機能に特化したいくつものメタバースプラットフォームが構築されると見ており、メタバースプラットフォームをゼロから構築するよりも安い開発コストと短い開発期間で構築できる方法として、XR CLOUDをベースとしたメタバースプラットフォームの受託開発を行っている。メタバースプラットフォームをゼロから構築する場合には億円単位の開発費用がかかるが、XR CLOUDをベースにメタバースプラットフォームを構築する場合、開発費用としては数千万円、開発期間は半年程度でできる。
現在は3つのメタバースプラットフォームを提供している。1つ目はVRコンテンツの企画・開発・運営を行うパルス(東京都渋谷区)が運営する仮想空間SNSのINSPIX WORLD。2つ目は阪急阪神ホールディングス(9042東証プライム)が運営し、デジタル空間の大阪・梅田(JM梅田)、阪神甲子園球場(デジタル甲子園)でミュージックフェスや展示会等のバーチャルイベントを開催しているHH cross EVENTS。3つ目はクリエイターのコミュニケーションサービスを提供するピクシブ(東京都渋谷区)が運営するバーチャル空間上でクリエイターが制作したコンテンツの展示即売会を行うNEOKET(ネオケット)である。主要販売先として開示されている、阪急阪神グループ、パルスはメタバースサービスの主要顧客である(図表2)。
◆ XRイベントサービス
XRイベントサービスは、自社のXR CLOUD上で各種イベントを提供するサービスであり、21/12期に提供を開始した。採用説明会、社内懇親会、社内会議、展示会、ショッピングモール等のイベントが開催される。XR CLOUDに標準装備されている空間、アバター、画面共有、カメラ機能、名刺交換等の機能に加え、自社スタッフの顔を模したアバターや、社内会議室の空間表現等、顧客ごとの対応も可能になっている。実物のイベントのように会場といった空間や開催地までの距離といった物理的な制約はなく、複数イベントの同時開催も可能である。収益は、イベントの制作及び運営受託、ユーザー数に応じた利用料等である。
◆ XR周辺サービス
XR周辺サービスでは、子会社のモノビットエンジンが、オンラインゲームでの多人数同時接続を可能にする通信ミドルウェア「モノビットエンジン」をゲーム開発会社やVR開発会社向けに提供している。また、子会社のモリカトロンが、AIを用いたソフトウェア品質保証サービスのシステム設計や研究開発、人との雑談を行う「AI会話ジェネレーター」の提供等を行っている。これら2社の子会社は同社グループの研究開発部門の役割を果たしている。
◆ 多人数リアルタイム同時接続の通信技術
同社のメタバースプラットフォームXR CLOUDの強みは、オンラインイベントへの多人数リアルタイム同時接続を可能にする通信ミドルウェアの技術である。
オンラインイベントへのリアルタイム同時接続には2つの側面がある。1つは、全体で何人が同じイベントに同時接続できるかであり、もう1つは、1エリアの中で何人が同時接続できるかである。エリア内での同時接続人数とは、そのエリア内にいる人を認識しコミュニケーションができる人数を意味する。XR CLOUDでは全体で数万人規模、1エリア内で1,000人の同時接続が可能となっている。通常は1エリア100人程度の同時接続となっており、1,000人同時接続ではより多くの人が参加している臨場感と、多くの参加者とのコミュニケーションが可能になる。1エリア1,000人の同時接続を可能にしているのは、近くの人の描写は情報量を多く、遠くの人の描写は情報量を少なくすることで、情報負荷を減らす技術を開発しているためである。
◆ 法人向けの事業展開
メタバース市場の拡大を見込んで参入する企業は多く、メタバースプラットフォーム上で個人向けにサービスを提供する企業も多いが、同社はメタバースでサービスを提供する法人向けにメタバースプラットフォームの開発・運用やメタバースプラットフォームを利用した各種イベントの提供を行っている。