サイフューズ(4892) 新しい治療コンセプトの再生医療等製品を開発

2022/12/05

バイオ 3D プリンティングの実用化を通じて医療の飛躍的進歩に貢献
新しい治療コンセプトの再生医療等製品を開発

業種: 医薬品
アナリスト: 髙木 伸行

再生医療ベンチャー
サイフューズ(Cyfuse以下、同社)は「細胞(Cyto)が融合(Fusion)する」ことから名付けられた再生医療ベンチャーである。「革新的な三次元細胞積層技術の実用化を通じて医療の飛躍的な進歩に貢献する」という企業理念のもと、細胞のみから作製した立体的な組織・臓器を「3D細胞製品注1」として、先端医療現場へ新しい治療法の選択肢として提供することを目的としている。

同社は、再生医療領域、創薬支援領域、デバイス領域において事業を展開している(図表1)。

足元は3D細胞製品の開発受託や製造受託、バイオ3Dプリンターや消耗品の販売などが収益源となっており、顧客は大学や研究機関、事業会社となっている。中長期的には、再生医療領域や創薬支援領域において共同開発パートナーからのライセンス収入、3D細胞製品の開発・製造受託、基盤技術を搭載したデバイスの販売・レンタルなどにより収益を拡大したいとしている。

◆  再生医療領域~将来の収益の柱
同社は、将来の収益の柱となる再生医療等製品の承認取得を目指して、末梢神経再生、骨軟骨再生、血管再生に関する主要パイプラインの臨床開発を実施している。再生医療等製品とは再生医療領域においてヒトまたは動物の細胞に培養などの加工を施したもので、身体の構造・機能の再建・修復・形成するものや疾病の治療・予防を目的として使用するものの総称である。

1)末梢神経再生(開発コードCYF-PA1)、2)骨軟骨再生(開発コードCYFCA1)、3)血管再生(開発コードCYF-BA1)の主要パイプラインについては、25年から27年にかけての承認申請を計画している(図表2)。この他、泌尿器、歯科領域、気管・消化器分野の非臨床試験も行っている。

再生医療のパイプライン開発は「基礎研究→非臨床試験→臨床試験→製造販売承認申請」のプロセスを経て行われる。13年に再生医療の実用化を促進するために「再生医療を国民が迅速かつ安全に受けられるようにするための施策の総合的な推進に関する法律」が公布され、制度的枠組みが変更されたが、それでも基礎研究2年~3年、非臨床試験3年~5年、臨床試験3~7年、製造販売承認申請1年と条件・期限付き製造販売承認までに7年~15年程度が必要となる。

また、条件・期限付き承認後も市販・使用を通して承認条件評価が行われ期限内に再度承認申請が行われることになるなど、再生医療等製品の実用化には長期間が必要となる。

パイプラインの研究開発などの先行投資期間が長く続くことから、開発企業は営業損失の長期化を余儀なくされ、試験研究に対する助成金や補助金で損失をカバーしてゆくことになる。ただし、すべての損失をカバーできるものではないのが一般的であり、同社も例外ではない。

1)末梢神経再生(開発コードCYF-PA1)
末梢神経再生については、京都大学医学部附属病院において医師主導治験注2を20年11月より実施しており、予定した3症例の全てへの移植が終了し、年内に経過観察期間が終了する予定である。有害事象や不具合の発生がなければ、23年から企業治験注3を実施し、25年に承認申請、26年に製造販売承認を取得する計画である。

2)骨軟骨再生(開発コードCYF-CA1)
骨軟骨再生については九州大学病院において変形性膝関節症を始めとする患者へ細胞製骨軟骨を移植する製品開発を目指した臨床試験を日本医療研究開発機構(以下、AMED)注4による支援を受け実施し、全症例の移植を完了し、ヒトでのPoC注5を取得した。現在は慶應義塾大学病院とともに23年からの医師主導治験の開始に向けて準備中で、24年での企業治験開始、26年の承認申請、及び同年内の承認取得を計画している。

3)血管再生(開発コードCYF-BA1)
血管再生については、佐賀大学と共同で進めているAMED委託事業において臨床研究を実施中であり、ジャパン・ティッシュエンジニアリング(7774東証グロース)とともに臨床開発を進めている。23年以降の治験開始、27年の承認申請、及び同年内の承認取得を計画している。

4)その他
同社が実用化を目指す細胞製品の開発では細胞のみで立体構造を作製するコアプロセス(スフェロイド注6の作製、三次元細胞積層による立体化、立体構造の組織化)が重要となる。同社はこのコアプロセスの機械化や生産設備の開発にパートナー企業とともに取り組んでいる。

具体的には、21年9月に太陽ホールディングス(4626東証プライム)傘下の太陽ファルマテックの高槻工場内に同社の製品製造が可能な細胞加工施設を竣工した。日立製作所(6501東証プライム)の子会社である日立グローバルライフソリューションズと共同で開発した設備を導入し、3社共同体制による製造施設を構築している。

また、メディパルホールディングス(7459東証プライム)との間での再生医療等製品の流通体制の構築、藤森工業(7917東証プライム)との間での細胞の大量培養に関する技術開発、岩谷産業(8088東証プライム)との間で凍結保管技術の開発を進めている。

創薬支援領域
同社は製薬会社向けに創薬支援用ツールとしての細胞製品の開発を進めている。一般的な新薬開発ではシャーレ上で培養されたマウス由来細胞またはヒト初代培養肝細胞で試薬候補化合物の毒性試験や代謝物の評価などを行うが、その細胞が有する薬物代謝機能は2日~3日で低下してしまうため、より長期間機能が持続する肝臓サンプルが必要とされている。同社はヒト肝臓を用いた場合と同等の毒性評価試験結果が得られ、高い肝機能が長期間発現するヒト肝細胞のみからなるヒト肝臓構造体を開発した。

3D肝臓構造体については、積水化学工業(4204東証プライム)とその子会社である積水メディカル、大阪サニタリー(大阪府摂津市)、SCREENホールディングス(7735東証プライム)と共同開発を実施している。積水化学工業とは18年8月に肝臓構造体の創薬支援領域での実用化を加速することを目的に再生・細胞医療分野における研究開発・事業化促進に関する業務資本提携契約を締結している。

デバイス領域
同社は、細胞製品を作製するためのバイオ3DプリンターであるRegenova®(レジェノバ)、S-PIKE®(スパイク)の販売を行っている。Regenova®は微細なステンレス針を様々な形状で並べた「剣山」にスフェロイドを積み重ねて立体的な組織を作製するもので、自動的に細胞の立体積層を行うことができる。また、S-PIKE®は、一本の微細な針にスフェロイドを配列・固定し、その複数の針を整列させることで立体的な組織を作製可能にする。

バイオ3Dプリンターの販売とともに立体組織の作製に関するトレーニングメニュー、ユーザーの研究の継続的サポートや消耗品・周辺機器の提供も行っている。

Regenova®については澁谷工業(6340東証プライム)が製造しており、同社が販売を行っている。S-PIKE®については同社及び販売提携パートナーのシスメックス(6869東証プライム)が共同販売を行っている。また、丸紅(8002東証プライム)との提携を通じてS-PIKE®を海外市場向けに投入している。

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一般社団法人 証券リサーチセンター
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