pluszero<5132> AIを中心とした各種テクノロジーを統合・活用したソリューションを提供

2022/11/02

独自の特化型の柔軟なAIであるAEIを活用したサービスの立ち上げを目指す
AIを中心とした各種テクノロジーを統合・活用したソリューションを提供

業種: 情報・通信業
アナリスト: 髙木伸行

◆ 第4世代AIの実用化を目指す
pluszero(以下、同社)は、AIを中心としてIT、ハードウェアなどのテクノロジーを統合的に活用したソリューションを提供している。同社の社名である pluszeroにはインドで「0」という概念が生まれたことが数学を大きく発展させたように、全く新しい概念やアイデアを創り出すことによって世の中に革新的変化をもたらすことを目指すという想いが込められている。

同社のソリューン提供事業は、提供形態により、プロジェクト型と22/10期から提供を開始したサービス型に区分されている。22/10期第3四半期累計期間ではプロジェクト型が売上高の98.5%、サービス型が1.5%を占めた。同社のこれまでのビジネスモデルは、プロジェクト型で獲得した利益を同社が独自に定義した技術であるArtificial Elastic Intelligence(以下、AEI)に関する研究に継続的に投資するというものである。AEIは「柔軟なAI」を意味する同社の造語である。

AEIは第4世代AIの具体的な実装として、同社が独自に開発するAI技術の総称である。AEIは、従来からのAIと極めて実現が難しい次世代の汎用人工知能(AGI=Artificial General Intelligence)注1との間に位置する概念である特化型人工知能である(図表1)。

AEIは、特定の領域の課題に限定するかたちで、機械が人間のように意味を理解できる進化形のAIとなることを目指している。特定の領域に限定することで、実現に向けてのハードルを引き下げるという狙いがある。AEIを含む第4世代のAIは、第3世代AIが抱える、1)学習に大量の教師データや計算資源が必要、2)学習範囲外の状況に弱く、実世界状況への臨機応 変な対応ができない、3)パターン処理は強いが、意味理解・説明等の高次 処理が出来ないといった限界を克服することを目的としている。

21/10 期まで同社はAEI の開発に集中していた。22/10 期に入り開発に加えて、業務提携先とAEI を活用したサービスの立ち上げを進めており、金額は小さいが、AEI が収益に貢献し始めている。

◆ プロジェクト型
プロジェクト型としては、請負契約あるいは準委任契約によりAI やIT に関連したソリューションを提供している。21/10 期までの売上高はすべてプロジェクト型からのもので、請負契約では成果物に応じた見積価格、準委任契約では「人・月単価×期間」が同社の収益となる。主に、1)新規事業立上支援、2)価値分析、3)業務改善、4)ビジネスプロセス分析、5)自然言語処理、6)画像・動画処理、7)データマネジメント、8)IT システム/ハードウェア開発の8 つの領域についてのソリューションを提供している。

同社のプロジェクト型の特徴としては課題発見や新規事業企画、企画吟味・要件定義、データ定義・収集、PoC 注2・AI 開発、アプリ・システム開発やインフラ構築、保守・運用までをワンストップで提供できる点にある。また、文系、理系の知見を併せ持つ文理融合型のメンバーが数多く従事しており、様々なAI のプロジェクトに対応できるようにしている。同社の文理融合型のメンバーについては、技術革新の激しいAI 分野で最新の知見を持つ大学生・大学院生を中心としたインターン生を多用している。

プロジェクト型の例としては、新興出版社啓林館(大阪市天王寺区)へのアダプティブ・ラーニング注3事業立上支援として、教科書にリンクした学習サポートアプリである「AIチューター・ゼロ」の開発が挙げられる。生徒が問題集を解きその結果をアプリで撮影することで、AIが生徒の学習レベルに合った問題を提案するものである。AIチューター・ゼロには文字認識、問題分析、レコメンドの3つのAIエンジンが採用されている。また、古野電気(6814東証プライム)との船の自律航行に向けたレーダー偽像の検出アルゴリズムの開発といったものもプロジェクト型の一例に挙げられる。

◆ サービス型
サービス型としてはAEIを活用した自社プロダクトである「仮想人材派遣」や、AEIの要素技術のライセンス供与によるソリューションの提供を目指している。22/10期第3四半期累計期間の売上高には仮想人材派遣の関連技術に関する情報提供やライセンス供与に対する対価が計上されている。

・仮想人材派遣
AEIを活用した仮想人材派遣は業務提携先と事業を立ち上げ中である。仮想人材とはユーザーから見て人間が対応しているように感じる対話システムで、人材を派遣しているかのように、メール、電話、チャットなどを通してサービスを提供するものである。仮想人材は限定された業界や業務範囲の知識を持つことで、意味を理解し回答することが可能になる。N4注4、PSFデータ注5、パーソナライズ要約注6の3つの中核技術を活かした仮想人材派遣についての特許を取得済みである。

仮想人材派遣の収益モデルは「定額課金+業績連動従量課金」を想定している。なお、開発中は開発/利用ライセンス課金、初期構築費用負担などの収益がある。

業務提携先としては3D‐CADによる機械設計及びシステム・ソフトウェア開発を行うアビスト(6087東証プライム)、システムインテグレーターである丸紅情報システムズ(東京都新宿区)が挙げられている。アビストとは3D-CADの設計情報のチェックの高度自動化へ、丸紅情報システムズとはクラウド環境の運用保守の自動化へのAEI適用のプロジェクトが進行中である。

◆ 収益構造
現状は、同社の売上高の大半はスポット型ではあるが、継続顧客からの受注比率が上昇傾向にある。同社は、直近四半期まで4四半期連続して売上を計上している顧客を「継続顧客」と定義し、継続顧客への4四半期目以降の売上高を「継続顧客への売上高」と定義して注視している。継続顧客への売上高の割合は20/10期27.4%、21/10期は70.7%、22/10期第3四半期累計期間は72.0%とアップセルを進めることにより、上昇基調にある。

同社の開示資料からは、20/10期以降で売上割合が1割を超える先として、20/10期はアビスト、及び高精度3次元地図データのプラットフォーマーであるダイナミックマップ基盤(東京都中央区)が、22/10期第3四半期累計期間ではタレントマネジメントシステムをクラウドサービスとして提供するHRBrain(東京都品川区)が挙げられている。

売上原価の主要費目は、インターン生やエンジニアの労務費である。21/10期の総製造費用(他勘定や期末在庫に振り向けられる分があるため売上原価とは一致しない)の81.2%を占めている。また、Webデザインなどに関する外注費は5.0%を占めている。

売上総利益率は21/10期は50.7%、22/10期第3四半期累計期間は61.4%と他のAI企業と比べても遜色ない。プロジェクト型に比べてサービス型の売上総利益率は非常に高い水準にあることから、同社が注力するサービス型の売上高が拡大するにつれて、売上総利益率は上昇することになる。

販売費及び一般管理費(以下、販管費)の主なものは研究開発費と人件費である。21/10期においては、研究開発費は販管費の約4分の1を占め、対売上比で17.2%となった。人件費の総額は開示されていないが、役員報酬と給与手当の合計で106百万円に達しており、売上比20.9%となっている。

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一般社団法人 証券リサーチセンター
資本市場のエンジンである新興市場の企業情報の拡充を目的に、アナリスト・カバーが少なく、適正に評価されていない上場企業に対して、中立的な視点での調査・分析を通じ、作成されたレポートです。