グラッドキューブ<9561> 広告代理店業務、AI機械学習を使用したスポーツメディアプラットフォームも展開

2022/10/07

独自のサイト解析ツールによるマーケティング施策を提供
広告代理店業務、AI機械学習を使用したスポーツメディアプラットフォームも展開

業種: サービス業
アナリスト: 髙木 伸行

◆ 「データ×解析」をキーワードに事業を展開
グラッドキューブ(以下、同社)は、インターネットを活用して事業の拡大を目指す企業を対象に、自社開発したサイト解析ツールであるSiTest(サイテスト)により包括的なデジタルマーケティング施策を提供するSaaS事業、インターネット上の広告運用代行などを行うマーケティングソリューション事業を展開している。また、スポーツや競馬のAI予想解析メディアを大手メディアや生活者向けに運営しているSPAIA(スパイア)事業を行っている。

同社は「データ×解析の力でSaaS企業として世界中のプラットフォームとなる」を経営ビジョンに掲げている。一見、SaaS事業やマーケティングソリューション事業との関連性が薄い、BtoC事業の色彩の強いSPAIA事業も「データ×解析」というキーワードで括ることが出来る。

21/12期の売上高構成比は、SaaS事業35.5%、マーケティングソリューション事業55.7%、SPAIA事業8.7%であった。セグメント利益を見ると、SaaS事業とマーケティングソリューション事業は、各セグメントに配分していない一般管理費などの全社費用である調整額が大きい点には注意が必要だが、比較的高い利益率を維持している。一方、SPAIA事業は投資を継続していることから、損失を計上している(図表1)。

◆ SaaS事業
SaaS事業は13年4月に開始した事業で、同社が開発したSiTestを利用してウェブサイト解析、アクセス解析、ウェブサイト改善ができる。付随するサービスとしてサイト制作、コンテンツ制作や最適化コンサルティングなどの包括的なデジタルマーケティング施策を顧客に提供している。同事業の売上高はSiTestの月額課金収入、コンサルティング及びサイト、ランディングページ注1、画像、動画などの制作に対するスポット収入からなる。

SiTestはサブスクリプションサービス注2として提供されている。システム会社発ではなく、広告代理店発のウェブサイト改善ツールである点に特徴がある。

顧客のウェブサイトを訪れたユーザーがどこを閲覧しているか、クリックしているかを可視化するヒートマップ解析機能、ユーザー行動が蓄積されたデータを検証し仮説を立て、管理画面内からA/Bテスト注3などを行うテスト機能、サイト訪問者のフォーム入力をサポートしたり、フォームの利便性を向上させるEFO(Entry Form Optimization)、レポート機能などのウェブサイトの最適化に役立つ多彩な機能を搭載していることがSiTestの特徴である。

SiTestは月額5万円から提供されており、ページビュー数により料金は異なる。平均単価は22/12期第2四半期では85,585円、同期間の平均アカウント数は547件であり、ともに増加基調にある。

また、中小企業向けにヒートマップ解析や録画再生などに機能を限定した、月額8,500円から利用できるSiTest Lite(サイテストライト)も提供している。

SiTestはサブスクリプション収益モデルであり、SaaS事業の7割程度が月額課金収入と推定される。同社はSiTest以外にも安定した収益をもたらすプロダクトの必要性を認識している。この課題に向けて、22年7月にウェブページの表示速度を改善するサブスクリプション型のツールであるFasTest(ファーステスト)のベータ版をローンチした。また、23/12期中のローンチに向けてYouTube広告解析ツールであるMoVest(ムーベスト)を開発中である。

◆ マーケティングソリューション事業
マーケティングソリューション事業は、11年1月より開始した事業で、インターネット上の広告運用代行に加えて、付随するアクセス解析及びクリエイティブ制作を行っている。企業の規模を問わず、現状分析から戦略立案、効果的な出稿媒体選定、コンテンツ制作、実行、効果測定までワンストップで提供している。また、広告効果を報告するためにレポートなどの成果物を提供している。費用構造としては労働集約的な側面が強い。

インターネット広告代理店業務は参入企業が多いが、同社の特徴としては、大手代理店が扱わない、例えば100万円を切るような規模の小さい広告予算の顧客に対しても対応できる点にある。パッケージ化や人材の有効活用により低コストオペレーションを可能にしている。

◆ SPAIA事業
同社はAIの機械学習を使用したスポーツメディアプラットフォームとして、プロ野球一球速報などを軸とするSPAIAをデータスタジアム(東京都千代田区)と運営している。16年9月に同事業を開始した。

同事業の収益としてはメディアとの記事連携による広告収入、及び新聞社などのメディアへ年間契約に基づき販売しているデータやウィジェット注4に関する収入などがある。また、後述するSPAIA競馬のサブスクリプション収入がある。

SPAIA事業は開発投資や認知度を上げるための広告宣伝投資により、セグメント損失が続いているものの、売上高の大半を占めるSPAIA競馬の会費引き上げの効果もあり、セグメント利益率は改善傾向にある。

~SPAIA競馬~
同社はSPAIA事業の中でも基本のSPAIAとは異なるデータ及びAIを搭載しているSPAIA競馬に注力している。アプリもSPAIA本体と分けて開発・運用している。

SPAIA競馬には無料会員と有料会員がある。月額課金される有料会員の場合、ダイヤモンド、プラチナ、ゴールドの3種類のコースがあり、無料会員では利用できないAIによる解析データを利用できる。

22/12期第2四半期のSPAIA競馬の無料会員数の平均値は69,582人であり、前年同期の18,538人から大幅に増加している。一方で22/12期第2四半期の有料会員数の平均値は4,641人と前年同期の4,539人を上回るものの、21年8月にプラチナとゴールドの会費を引き上げた影響から、21/12期第4四半期の6,175人をピークに減少傾向にある。

◆ SaaS事業とマーケティングソリューション事業のクロスセル
同社は、20/12期から、SaaS事業の顧客に対してマーケティングソリューション事業で提供しているインターネット広告運用代行などを、マーケティングソリューション事業の顧客に対してはSaaS事業のプロダクトであるコンサルティングやSiTestの販売を行うというクロスセルに重点を置いている。

同社はSaaS事業とマーケティングソリューション事業の売上高合計に占めるSaaS事業とマーケティングソリューション事業両方で取引のある顧客の売上高の割合であるクロスセル売上比率を重視しているが、同比率は、変動は大きいものの上昇傾向にある(図表2)。

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一般社団法人 証券リサーチセンター
資本市場のエンジンである新興市場の企業情報の拡充を目的に、アナリスト・カバーが少なく、適正に評価されていない上場企業に対して、中立的な視点での調査・分析を通じ、作成されたレポートです。