ノバック<5079> 土木工事、建築工事とも元請比率は100%

2022/04/01

兵庫県姫路市に本社、東京都港区に東京本店と東西に司令塔を置く建設会社
土木工事、建築工事とも元請比率は100%

業種: 建設業
アナリスト: 髙木 伸行

◆ 元請比率100%の建設会社
ノバック(以下、同社)は、土木工事と建築工事を行う建設会社である。姫路市に本社、東京都港区に東京本店を置き、福岡市、広島市、高松市、大阪市、京都市、名古屋市、仙台市に支店を、盛岡市と和歌山県田辺市に営業所を展開している。

土木工事事業は21/4 期の売上高の42.4%、建築工事は同じく57.6%を占めている。また、「その他」として不動産賃貸事業を行っているが、21/4 期の売上高は12 百万円とわずかである(図表1)。

土木工事事業は官公庁からの、建築工事事業は民間からの受注比率が高いが、21/4期の完成工事高の45.3%が官公庁向け、54.7%が民間向けとなっている。

土木工事、建築工事とも過去5期間の50百万円以上の工事について、元請比率は100%である。また従業員に占める監理技術者注1資格者証の保有者の割合も52.9%(21年末)と高い水準にある。

なお、事業を進めてゆくうえで外注先の確保が重要となるが、同社は約70社の協力先を持ち、さらに末端まで含めると約1,000社の外注先がある。上場時に調達する資金の使途として、外注先への支払手形のサイト短縮に伴う運転資金や協力先に支払う資材仕入れの資金に充当する予定であり、取引条件の改善を通じて外注先との関係はさらに強化されるものと思われる。

◆ 土木工事事業
土木工事事業では、高速道路の新設及び橋梁下部工事、河川工事、洪水対策のシールド工事、道路整備工事といった社会インフラの建設工事を手掛けている。

元請として、年間15件ほどの工事を受注している。また、他社の官公需比率が6割~7割程度であるのに対して、同社の完成工事高のほぼすべてが官公庁工事である(図表2)。主要顧客は国土交通省や西日本高速道路などの高速道路会社(以下、高速道路会社をNEXCOと呼ぶ)などで、22/4期第3四半期累計期間の土木工事事業の完成工事高の34.1%がNEXCO西日本向け、32.2%が国土交通省向けである。

工事受注方法は競争入札が基本となるが、施工能力や技術力も評価の対象となり、単に価格だけによる競争ではないことから、建築工事に比べ高い利益率を確保できている。また、工事の性格上、自然を対象としているため、当社想定していなかった工事や設計変更が追加的に発生することが通常で、工事額が増額されるとともに確保できる利益額も増加する。このため、同社は官公庁向け土木工事に注力している。

同社の技術力や工事品質は、主要顧客から高く評価されている。国土交通省近畿地方整備局工事において同社は工事成績優秀企業注2に14年度から8年連続で認定されており、このような先は評価対象企業4,360社の0.1%程度を占めるに過ぎない。また、NEXCO3社からは競争参加資格審査について土木工事、建築工事ともAランクに認定されている。さらに監理技術者資格の保有者数も上述したように多い。

◆ 建築工事事業
同社の建築工事事業はマンション工事、物流倉庫、福祉・医療施設、高速道路のサービスエリア休憩施設などの建設工事を行っている。新築工事に加えて、地震などの自然災害対策や長命化を目的とした学校などの耐震補強や修繕工事、及び他の既設建物の改修工事も行っている。

土木工事と同様に建築工事でも同社の元請比率は100%となっている。また、21/4期の完成工事高の94.9%が民間から、5.1%が官公庁からの受注によるものである(図表3)。

建築工事事業では年間15件ほどを受注しているが、受注の約3分の2がマンション工事で、主に首都圏、中部圏、関西圏の工事物件を受注している。同社の主要顧客にはプレサンスコーポレーション(3254東証一部)、穴吹興産(8928東証一部)、日鉄興和不動産、東急不動産、タカラレーベン(8897東証一部)といったマンション供給戸数上位企業が名を連ねている。特に21年のマンション供給戸数が業界3位のプレサンスコーポレーションや第8位の穴吹興産は年に1~2棟程度を同社に発注するリピーターでもある。また、近畿圏に強い和田興産(8931東証二部)もリピート発注企業である。

◆ 費用構造~高い比率を占める外注関連費用
21/4期の完成工事高及び費用については、殆どすべてが工事進行基準により計上されている。なお、22/4期より新収益認識基準を適用しているが、同社によれば、会計方針の変更による影響はないとのことである。

21/4期は例年よりも利益率の高い工事案件が多い点には留意が必要だが、主な費用を見てみると、外注費関連が完成工事原価の72.7%(完成工事高に対する比率は63.2%)を占めている。下請けを活用しながら事業を進めている同社の特徴が表れている。続いて材料費が15.0%(同13.1%)を占めている。販売費及び一般管理費(以下、販管費)については人件費が販管費の約半分を占めており、続いて保険料が高い比率を占めている(図表4)。なお、保険は役員を対象としたものであり、現在は解約を進めている。

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一般社団法人 証券リサーチセンター
資本市場のエンジンである新興市場の企業情報の拡充を目的に、アナリスト・カバーが少なく、適正に評価されていない上場企業に対して、中立的な視点での調査・分析を通じ、作成されたレポートです。