CaSy<9215> サービスの利用拡大が続き22年11月期は黒字化の見込み

2022/02/28

家事代行等の暮らし関連サービスのマッチングプラットフォームを運営
サービスの利用拡大が続き22年11月期は黒字化の見込み

業種: サービス業
アナリスト: 藤野 敬太

◆ 家事代行をはじめとする暮らし関連サービスのマッチング プラットフォームを運営
CaSy(以下、同社)は、家事の代行をして欲しい人または世帯(以下、ユーザー)と、家事サービスを提供したい人(以下、キャスト)をマッチングするプラットフォーム「CaSy」を運営している。CtoBtoC型のビジネスモデルを採用していることと、業務プロセスのDX化を実現していることにより、サービス品質を保ちながら、従来型の家事代行サービスよりも低価格でのサービス提供を可能としている。その結果、従来型のサービスでは手が届きにくかった世帯にもサービスを利用してもらえるようになっており、市場開拓余地は大きいと考えられる。

同社の事業は、家事代行サービス事業の単一セグメントだが、売上高は、掃除代行と料理代行を提供する家事代行サービスと、ハウスクリーニングや整理収納等を行うその他暮らしのサービスに区分されている(図表1)。同社の売上高の約97%が家事代行サービスによるものである。なお、ユーザーから受け取る利用料が、同社の売上高として計上されている。

◆ CtoBtoC型の家事代行サービス
家事代行サービスは1980年代から存在するサービスと言われている。その多くはBtoC型のサービスで、家事代行の依頼に対し、コーディネーターと呼ばれる営業スタッフが顧客を訪問し、サービスの内容を決めるとともに、自社で雇用している家事スタッフをアレンジする。事業者が家事スタッフを管理するため、サービス品質はある程度保たれている。一方、コーディネーターの訪問によるアレンジが必要なためサービス開始までに時間がかかり、また、コーディネーターの存在により、人件費や地域ごとの拠点開設・運営のコストがかかるために、サービスの利用料金が割高となる。

従来のBtoC型に対し、2010年代になり、CtoC型のマッチングサービスが登場した。これは、家事代行をして欲しい人と、家事代行をしたい人をウェブ上でマッチングさせるサービスである。この場合、サービス事業者の役割はマッチングする場の提供、または契約の仲介に留まり、家事代行サービス自体は個人と個人の契約となる。そのため、BtoC型に比べて割安な価格でのサービス提供は可能となるが、マッチング事業者は品質には責任を負わないため、品質のばらつきが大きい上に、何かトラブルがあっても、当事者が自力で解決することになってしまう。

同社はCtoBtoC型のビジネスモデルで展開している。ユーザー、キャストともに登録を必要とし、依頼したユーザーの家にキャストが訪問してサービスを提供する。キャストに対しては、登録の際に身元確認や試験をし、また、研修も実施する。BtoC型との違いは、主に以下の3点である。

(1) 実際の家事代行以外の部分でのユーザーとのコミュニケーションのすべてがウェブまたはアプリで完結するため、コーディネーターが不要である。その分、料金を低く抑えることができるとともに、キャストへの報酬を高くすることができる。
(2) 同社とキャストの間で雇用関係が発生しない。仕事を依頼する時は、同社からキャストへの業務委託となる。
(3) コーディネーターが不要で、キャストの雇用もないため、物理的な拠点を必要としない。

CtoC型との違いは、同社がキャストの管理を行うため、同社がサービス品質に責任を持つという点である。

なお、キャストの視点では、雇用関係にないため、空いた時間を活用するという形での参画が多い。そのため、CtoC型及びCtoBtoC型のビジネスモデルは、シェアリングエコノミーのひとつの形態として捉えられることが多く、中でもスキルシェアサービスのビジネスモデルとの類似性が強い。

◆ CtoBtoC型ビジネスモデルを支えるDX
実際の家事代行以外の部分でのユーザーとのコミュニケーションのすべてをウェブまたはアプリで完結できるよう、同社は業務プロセスのDX化を進めてきた。

(1) 独自に構築したマッチングアルゴリズムにより、ユーザーとキャストのマッチングをシステムが行う。また、需給を調整するために、キャストへの報酬を柔軟に変えるダイナミックプライシングの仕組みも導入して、マッチング機会の向上を図っている。その結果、現在は、スポット利用の7割が3時間以内でマッチングできるようになっている。
(2) 従来のBtoC型であればコーディネーター個人に蓄積されがちな各種データをデジタル化して一元的に管理することにより、マッチング精度やサービス品質の向上を図ることが可能になる上、新サービスの開発にもつなげている。
(3) 他社システムとの連携により、顧客の利便性を高めている。既に、スマートロックや本人確認サービスとの連携の実績がある。

◆ サービス展開の現状
同社のサービスは、東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県、大阪府、兵庫県、京都府、愛知県、宮城県の9都府県で展開されている。家事代行サービスには、お掃除代行とお料理代行があり、それぞれスポット利用と定期利用があって、利用方法によって料金が変わってくる(図表2)。

また、家事代行サービスとは別に、ハウスクリーニングや整理収納のサービスを提供するその他暮らしのサービスがあるが、これらの利用料金は依頼内容次第となる。

上述のビジネスモデルにより、同社が提供するサービスの利用は着実に増加してきた。ユーザー登録数は直近3年で年平均約31.3%のペースで増えて21年11月末時点で約13万人(うちファミリーが56%、単身が39%、その他が5%)、キャスト登録数は直近3年で年平均約42.4%のペースで増えて21年11月末時点で約9,000人となっている。

また同社では、ストック型収入となる定期利用を増やすことを重視している。定期利用のユニークユーザー数は直近3年で年平均約33.5%のペースで増えて21年11月末時点で約5,500人となっている。なお、家事代行サービスの売上高のうち、定期利用からの売上高は約75%を占めており、定期利用のARR(Annual Recurring Revenue =期末の有効定期契約数×平均単価×月当たり平均利用回数×12)は21/11期で約11億円まで増加した。

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