ニフティライフスタイル<4262> 「ニフティ不動産」「ニフティ求人」「ニフティ温泉」等のサービスを提供

2022/01/21

ライフスタイル領域で個人ユーザーと企業を支援する行動支援サービス事業を展開
「ニフティ不動産」「ニフティ求人」「ニフティ温泉」等のサービスを提供

業種: 情報・通信業
アナリスト: 大間知 淳

◆ 個人ユーザーと企業を支援する行動支援サービス事業を展開
ニフティライフスタイル(以下、同社)は、ライフスタイル領域において、個人ユーザー(以下、ユーザー)と企業を支援する「行動支援サービス事業」を展開している。行動支援サービス事業は、豊富で多様な情報をまとめ、ユーザーの情報収集等の行動を支援する「行動支援プラットフォームサービス(ニフティ不動産、ニフティ求人、ニフティ温泉)」と、企業とその利用者の双方の価値拡大のために、企業向けソリューションを提供する「行動支援ソリューションサービス(DFO注1、オンライン内見)」によって構成されている。同社設立の経緯は後述するが、同社の親会社の前身はパソコン通信サービスのNIFTY-Serveを提供していたエヌ・アイ・エフである。

行動支援プラットフォームサービスと行動支援ソリューションサービスの詳細は以下の通りである。

(1)行動支援プラットフォームサービス
現在、ユーザーに対して各種情報を提供するプラットフォームサービスは国内に多数存在するものの、適切な情報を探し出すのに時間や手間がかかる状況となっている。同社は、大手ポータルサイトの情報をまとめて比較検討できる一括検索型サービスや、自社編集情報を取りそろえた独自型サービスを提供することで、複数のサイトを横断せずに短時間で情報を比較検討できるようユーザーの情報収集や比較検討等の行動を支援している。

21年3月末における同サービス全体の月間ユーザー(Webブラウザ及びスマートフォンアプリ経由を合計したマンスリーアクティブユーザー)数は前年同月末比27.1%増の725万人であった。

行動支援プラットフォームサービスでは、多様で豊富な情報をまとめ、加工し、様々な条件で検索可能とすることにより、ユーザー一人ひとりのニーズに沿うような情報提供と行動支援を行っている。同サービスの主な特徴としては以下の3点が挙げられる。

a 多様で豊富な情報量
同社は、大手ポータルサイトや温浴施設等のクライアントと20年来の取引実績を持ち、21年9月末時点で、約1,400万件の不動産物件、約260万件の求人、約15,000件の温浴施設の情報を各サービスサイトで掲載している。

また、大量のデータを高速処理する独自の検索エンジンや、「名寄せ」と呼ばれる重複情報の加工技術、詳細なこだわり条件検索、口コミ・クーポン等のオリジナル情報等の提供により、散在する大量の情報の中から、ユーザーが目的の情報をよりスムーズかつ効率的に探し出すことを支援している。

b 情報量とSEO・ASOノウハウに支えられた集客力
同社では、より多くのユーザーを支援するために、パソコンやスマートフォンのブラウザから利用するWebサービスに加え、スマートフォンアプリを利用したサービスを提供している。多様で豊富な情報を最適化し、毎日更新することで、SEO(検索エンジン最適化)によるブラウザ経由の集客を拡大すると共に、ASO注2(アプリストア最適化)ノウハウにより、iOS、Androidにおけるアプリ提供ストアからのインストールを最大化することで、継続的なユーザー数の拡大を目指している。特に、クライアントである情報ポータル会社からはアプリを使って検索する若い顧客層の集客力を評価されている。

c UIやUXにこだわったアプリ展開と安定した送客力
同社は、20年以上のサービス経験によって蓄積された開発力とノウハウを活かして、UI注3やUX注4を改善し、ユーザーがよりスムーズに最適な情報を探し出し、問合わせや応募等の行動(送客)が行えるように支援している。注力しているスマートフォンアプリにおいては、UIやUXをより意識して改善し、操作性の向上に努めている。

また、ユーザー行動データに基づいた、メールやアプリ通知によるレコメンド/リピートの促進により、ユーザー行動の最大化を図ることで、安定した送客力を実現し、クライアントである企業との長期に亘る取引を継続している。

行動支援プラットフォームサービスでは、以下の3サービスを展開しているが、ニフティ不動産が最も売上高が大きい主要サービスとなっている。

①ニフティ不動産
ニフティ不動産は、Webサイトやスマートフォンアプリを通じて、提携している大手不動産ポータルの賃貸物件や購入物件をまとめて一括検索できるプラットフォームサービスである。ユーザーが無料で物件情報を閲覧、問合せができる一方、クライアントである不動産情報ポータル及びクライアントの提携不動産事業者は、物件に対して問合せを行ったユーザーを見込客として営業活動を行うことが可能となる。

同社は、ユーザーの問合せに対して、物件情報掲載先の不動産情報ポータルより成果報酬型の課金報酬を得ている。21 年9 月末において、掲載物件数は約1,400 万件(うち、賃貸物件が約1,300 万件)、スマートフォンアプリの累計ダウンロード数は800 万超であった。

②ニフティ求人
ニフティ求人は、大手求人ポータルのアルバイト・転職情報をまとめて一括検索できるプラットフォームサービスである。ユーザーが無料でアルバイト・転職情報を閲覧、応募できる一方、クライアントである大手求人ポータル及びクライアントの提携求人企業は、応募したユーザーに対して採用活動を行うことが可能となる。

同社は、ユーザーの応募に対して、情報掲載先の求人情報ポータルより成果報酬型の課金報酬を得ている。21 年9 月末の掲載求人数は約260 万件であった。

③ニフティ温泉
ニフティ温泉は、提携している日本全国の温泉・スーパー銭湯等の温浴施設の情報を提供する独自型のプラットフォームサービスである。各施設の運営情報や混雑情報、口コミやランキング等のオリジナル情報、施設で利用できるクーポン等の特典を提供している。ユーザーは無料で情報やクーポンを利用できる一方、温浴施設は運営情報やクーポンの提供を通じて、来店促進活動を行うことができる。

同社は、ユーザーのクーポン利用に対して、対象の温浴施設から成果報酬型の課金報酬を得ている。また、各種広告企画による販売促進及びブランドイメージ向上の支援を行うことにより、メーカー等企業をクライアントとして広告宣伝型の報酬を得ている。さらに、ユーザーによる月額課金制である「ニフティ温泉プレミアムクーポン」を、同社の親会社であるノジマ(7419 東証一部)のアプリサービス会員向けに提供し、月額固定型の課金報酬を得ている。21 年9 月末の掲載温浴施設数は約15,000 件であった。

(2)行動支援ソリューションサービス
行動支援ソリューションサービスは、ユーザーや企業が“あったらいいな”と感じるようなサービスをデジタルトランスフォーメーション(DX注5)で実現することを目的として提供する、企業向けのソリューションサービスである。行動支援ソリューションサービスの主な特徴としては以下の2 点が挙げられる。

a 特化型ツールの提供ノウハウ、運用実績
行動支援ソリューションサービスでは、データフィード活用やオンライン接客の各領域において、市場の黎明期からツール(サービス)を提供している(DFO は08 年、オンライン内見は14 年に開始した)。結果として、各サービス領域の業務改善ノウハウや運用実績が豊富に蓄積されている。

b 集客支援につながる業務改善サポート
行動支援ソリューションサービスでは、ツール導入の付加価値として、行動支援プラットフォームサービスを活用した集客支援もクライアントに提供している。

行動支援ソリューションサービスでは、以下の2 サービスを展開している。

①DFO(Data Feed Optimization)
DFO は、主にEC や、求人・不動産・旅行領域等の取扱いデータの多いWeb サイト運営事業者に対して、Web 広告出稿を行う際の入稿用データの作成(データ最適化)や、広告配信先への受渡し(データフィード)を支援するサービスである。同社は、作成する入稿用データ数に応じてクライアントから月額固定型の課金報酬を得ている。21 年3 月末のクライアント数は189 件(サイト)であった。また、21 年9 月末において、50 以上の提携広告媒体に対応している。

②オンライン内見
オンライン内見は、不動産業者の利用者(ユーザー)がインターネット経由で物件の内見を行える不動産業者向けの接客支援サービスであり、19 年4 月に連結子会社化したTryell(トライエル)が提供している。物件の重要事項説明をオンライン上で実施する遠隔契約手続き(IT 重説)にも対応しており、事業者とユーザー双方の「家探し」のDX 化を目指している。Tryellは、サービスの利用に応じて、クライアントから月額固定型の課金報酬を得ている。21 年3 月末のクライアント数は533 件(店舗)であった。

21/3 期のサービス別売上高構成比は、行動支援プラットフォームサービス90.8%、行動支援ソリューションサービス9.2%であった(図表1)。

21/3 期以降、行動支援ソリューションサービスの売上高構成比が急拡大しているのは、兄弟会社であったニフティネクサス(現ニフティ)から、20 年9 月にDFO事業を譲受したためである。21/3 期において、売上高の連単差額から推定されるTryell(オンライン内見)の売上高は61 百万円であり、逆算すると、DFO 事業の売上高は147 百万円(6 カ月間)と推定される。

◆ 売上高の4~5割がリクルート向け
同社の顧客は、不動産情報ポータル会社、求人情報ポータル会社、温浴施設運営会社、不動産会社、その他企業によって構成されている。同社の主要顧客としては、リクルートホールディングス(6098東証一部)の中核子会社であるリクルートと、LIFULL(2120東証一部)が挙げられる。特に、リクルートは近年、売上高の4~5割を占める最大の顧客となっている(図表2)。

リクルートは、不動産ポータルサイト大手の「SUUMO(スーモ)」や、求人情報サイト「はたらいく」「とらばーゆ」等を運営しているため、取引額が多くなっている。一方、不動産ポータルサイト大手の「HOME’S(ホームズ)」を運営するLIFULLは、取引額の拡大により、22/3期第2四半期累計期間(以下、上期)において売上高の10%を超えたため、開示対象となった。

◆ ユーザー数やクライアント数を重視している
同社は、高い成長性と企業価値の向上を経営上の重要課題と認識しており、成長性の指標としては売上高(増収率)を、企業価値の向上の指標については、営業利益(営業増益率)を重視している。

行動支援プラットフォームサービスの売上高は、ユーザー数×送客率×単価で、行動支援ソリューションサービスの売上高は、クライアント数×単価で算出される。同社は、行動支援プラットフォームサービスでは特にユーザー数を、行動支援ソリューションサービスでは特にクライアント数を重視して、売上高の拡大を目指している。

◆ 原価率の低さが要因となり、営業利益率等は高水準を確保
同社の21/3 期(連結)の原価率は21.4%であり、インターネットサービスを提供する多くの会社と同様に低い水準にある。

同社の単体売上高は連結売上高の97.3%を占めているため、売上原価の内容は連結と単体で大差はないと推測される。単体の売上原価明細書によると、単体売上高に対する比率は、概ね変動費と見られるクラウド利用料が7.2%、外注費が3.1%であった一方、概ね固定費と見られる労務費が2.9%、減価償却費(ソフトウエアが中心)が2.6%、知財使用料が2.1%であった。

販売費及び一般管理費(以下、販管費)は、給料手当及び賞与、退職給付費用、のれん償却額等の固定費と販売促進費(変動費)等によって構成されている。21/3 期(連結)の売上高に対する比率は、販売促進費が17.7%、給料手当及び賞与が14.5%であった。販管費率は43.1%に達しているが、原価率の低さが要因となり、営業利益率は35.4%と高水準を確保している。また、総資産回転率は1.3 回と良好な数値となっている。結果、総資産経常利益率は44.5%、自己資本利益率は40.3%と、資産利益率も極めて高い水準を誇っている。

◆ 設立経緯
同社の親会社(ニフティ)の前身であるエヌ・アイ・エフは、86 年に設立された。87 年にパソコン通信サービス「NIFTY-Serve」の提供を開始した後、91 年に商号をニフティ(以下、旧ニフティ)に変更した。

旧ニフティは、99 年11 月から会員向けインターネットサービス「@nifty」の提供を開始すると、00 年4 月に同社の「ニフティ不動産」の前身であるWeb サービス「Myhome@nifty」を、9 月に同社の「ニフティ求人」の前身である「Job@nifty」を開始した。03 年12 月には同社の「ニフティ温泉」の前身である「@nifty温泉」の提供を開始した。また、08 年11 月からは、旧ニフティの子会社のコマースリンクにおいて、DFO の提供が開始された。

17 年4 月、旧ニフティの親会社であった富士通(6702 東証一部)は、旧ニフティをクラウドサービス等の企業向け事業と、Web サービスを含む消費者向け事業に分割し、企業向け事業を担う存続会社の商号を富士通クラウドテクノロジーズに変更した。一方、消費者向け事業は、吸収分割の手法により、新設会社であるニフティ(同社の親会社)に承継させると共に、その全株式をノジマに譲渡した。その後、ニフティは、ネットワークサービス事業とWeb サービス事業を事業セグメントとするインターネットサービス事業者として活動を開始した。

18年2月に、ニフティの組織再編の一環として、Webサービス事業のうち、企業と生活者を結ぶマーケットプレイスサービスを承継する会社として同社が設立された。同社は、同年4月には「ニフティ不動産」、「ニフティ求人」、「ニフティ温泉」の事業運営を開始すると共に、商号をニフティライフスタイルに変更した。

ノジマの子会社であるニフティは、21年11月19日時点で同社の議決権の100%を保有していたが、公募増資や売出しを実施した上場後も同社株式の66.4%(オーバーアロットメントによる売出しに伴うグリーンシューオプションが全て行使された場合は61.4%)を保有する親会社にとどまる見通しである。なお、ノジマのグループとしての中核事業はデジタル家電専門店運営事業(21/3期の売上高構成比46.7%)とキャリアショップ運営事業(同34.9%)であり、同社とニフティによって構成されているインターネット事業は中核事業(同8.9%、うち、同社は0.4%)ではない。

同社の取締役は7名で、このうち社外取締役は2名である。残り5名のうち、非常勤取締役である野島亮司氏はノジマの取締役兼代表執行役副社長やニフティの代表取締役社長兼執行役員社長等を兼務している。成田隆志代表取締役社長兼社長執行役員を始めとする3名の取締役は旧ニフティ、守谷和俊取締役はノジマの出身者である。

また、同社とノジマ、ニフティの間には取引関係が存在している。21/3期における主な取引と取引額としては、「ノジマモバイル会員向けニフティ温泉プレミアムクーポン」に関するサービス74百万円、「ノジマオンライン」に関する広告運用サービス(DFO)12百万円、ニフティの会員獲得を目的としたリターゲティング広告注6に関する運用代行(DFO)39百万円がある。

一般社団法人 証券リサーチセンター
ホリスティック企業レポート   一般社団法人 証券リサーチセンター
資本市場のエンジンである新興市場の企業情報の拡充を目的に、アナリスト・カバーが少なく、適正に評価されていない上場企業に対して、中立的な視点での調査・分析を通じ、作成されたレポートです。

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