ボードルア<4413> 相対的に高い収益性と成長性が期待できる先端技術分野に注力している

2021/12/03

ITインフラの設計・検証・構築の支援や、運用・保守に特化した技術者集団
相対的に高い収益性と成長性が期待できる先端技術分野に注力している

業種: 情報・通信業
アナリスト: 大間知 淳

◆ ITインフラの設計・検証・構築の支援や、運用・保守に特化
ボードルア(以下、同社)は、企業向けのITインフラストラクチャ(以下、ITインフラ)の設計・構築・検証の支援や、運用・保守に特化した技術者集団である。21年9月末の従業員639名のうち、約600名が技術者である。

国内ITシステム市場は、アプリケーション・ソフトウェアとITインフラに大別される。特に、基幹業務システム等に搭載されるアプリケーション・ソフトウェアの開発、運用・保守等が大きな市場を形成している。一方、同社が展開するITインフラの市場は、アプリケーション・ソフトウェア市場に比べて規模は小さいが、先端技術が次々と導入されており、高い専門性を要求される市場となっている。

ITインフラは、情報サービス事業者が、ルーター等のネットワーク機器や、PC、サーバー、ストレージ等のハードウェアと、関連するOSやミドルウェア等のソフトウェアを組み合わせ、各種のセキュリティ対策を施して、システムを設計、構築、検証した後、顧客に提供されている。従来は、顧客の組織内にシステムを設置、運用するオンプレミス形態が中心であったが、近年、インターネット上のサーバーを利用するクラウド形態が急速に普及している。

同社は、基本的なITインフラの設計、構築にとどまらず、先端技術分野に注力することで、技術力の強化と事業の拡大を目指している。同社は、ワイヤレス接続、ロードバランサー(負荷分散装置)、ネットワーク仮想化(以下、SDN)、クラウド、セキュリティ、サーバー仮想基盤のいずれかの技術領域に係るものを先端技術分野と定義している。

ロードバランサーとは、Webサイトにアクセスが集中したり、サーバーの一部が故障したりした場合でも、サーバーにかかる負荷を振り分けることで、アクセス中の利用者へのサービスの提供を可能にする装置である。SDN(Software-Defined Networking)とは、ソフトウェアによって仮想的なネットワーク環境を作る技術である。サーバー仮想基盤とは、1台のサーバー上で複数のシステムを同時動作させることで、複数の業務システムの処理を可能にする技術である。

17/2期においては、同社が先端技術と定義した技術を一切用いていない売上高が全体の66.1%を占めていた(図表1)。同社は、相対的に高い収益性と成長性が期待できる先端技術分野に17年から積極的に取り組んでおり、21/2期には先端技術分野全体(重複部分を控除)の売上高は1,370百万円に達し、売上高比率は44.4%に上昇した。21/2期の総売上高に占める先端技術分野別の比率は、クラウド24%、ロードバランサー16%、セキュリティ12%、ワイヤレス接続11%、SDN10%、サーバー仮想基盤7%となっている(先端技術分野全体の数値は、複数の先端技術を用いている案件の重複部分を控除しているため、各分野の比率の合計は全体の比率である44.4%とは一致しない)。

同社は、ITインフラストラクチャ事業の単一セグメントであるが、サービス形態別売上高と顧客セグメント別年次平均売上高を開示している。

(1)サービス形態別売上高
同社は、ITインフラ案件において、企画・提案、設計、構築、検証、運用、保守をワンストップで提供している。なお、使用する機器やクラウドサービスは、特定ベンダーに拘らず、マルチベンダー構築を支援している。売上高については、サービス形態別に、サービス内容に基づく時間別売上(以下、時間別売上)、プロジェクト別売上、ストック型売上に区分している。

①時間別売上とは、受注時には成果物の特定が容易でない業務において、業務遂行に要した時間に対して、事前に取り決めたサービス提供者の時間単価を乗じた報酬を受領する方式に基づく売上高である。

②プロジェクト別売上とは、依頼を受けた成果提供物についての見積りを提示し、完成後、納品検収ベースで報酬を受領する方式の売上高である。

③ストック型売上とは、システムの運用保守業務において、月額報酬を受領する方式に基づく売上高である。

17/2期以降のサービス形態別売上高の推移によれば、時間別売上で手掛けた案件が積み上がったことを受け、ストック型売上が、毎期、着実に増加し、3つの形態の中で最大の売上高となっていることが注目される(図表2)。

ストック型売上比率は、17/2期の47.4%から22/2期第2四半期累計期間(以下、上期)には57.7%に上昇した。一方、時間別売上は、増加傾向にあるものの、19/2期のように前期比減収となった時期もある。プロジェクト別売上については、増収が継続しているものの、売上比率が1割に満たず、同社にとっては付随的なサービス形態となっている。

(2)顧客セグメント別年次平均売上高
同社は、顧客セグメントを「エンタープライズ企業(日経225、日経400、日経500のいずれかの株価指数に採用されている企業、または売上高500億円以上の企業)」と「SMB企業(スモール・ミッドサイズ企業の略称、同社との年間取引額が300万円以上で、エンタープライズ企業に該当しない企業)」に分類している。

エンタープライズ企業においては、1社当たり平均売上高が拡大傾向にある。同社は、これまで蓄積した技術ナレッジをエンタープライズ企業へ重点的に展開することにより、更なる売上高の拡大を目指している(図表3)。

1社当たり平均売上高と対象社数の数値に基づいた計算によると、近年、エンタープライズ企業の売上高構成比は6割前後となっている。

◆ 売上高の約2割がソフトバンク向け
同社の顧客を大別すると、通信事業者、事業会社(情報通信業、金融業、流通業、医療、官公庁等)及びその情報システム関連子会社、元請先である同業他社となっている。通信事業者の主要顧客としては、ソフトバンク(9434東証一部)、エヌ・ティ・ティ・コミュニケーションズ等のNTTグループ、KDDI(9433東証一部)、インターネットイニシアティブ(3774東証一部)等が挙げられる。特に、ソフトバンクは、近年売上高の約2割を占める最大の顧客となっている(図表4)。

その他の主要顧客としては、京セラ(6971東証一部)のグループ会社であるKCCSモバイルエンジニアリング、三菱総合研究所(3636東証一部)の情報システム関連子会社である三菱総研DCS等が挙げられる。

◆ 原価率の低さが要因となり、営業利益率等は高水準を確保
同社の21/2期の原価率は62.7%であり、同規模のシステムインテグレーター(SIer)と比べて低い水準にある。先端技術売上高の拡大により、近年、採算が向上していると同社は説明している。

売上原価の大半は、技術者の給与等である労務費(固定費)で構成されている。外注先のパートナー企業に支払う外注費(変動費)は僅かである。売上高労務費率が58.3%、売上高旅費交通費率2.6%、売上高外注費率が1.9%であった。なお、顧客は、ネットワーク機器等のハードウェアを機器ベンダー等から仕入れており、同社には仕入れが発生しない商流となっている。

販売費及び一般管理費(以下、販管費)については、役員報酬、地代家賃、給料手当、求人採用費等の固定費が中心を占めており、販管費率は20.8%であった。原価率の低さが要因となり、営業利益率は16.5%と高水準を確保している。また、総資産回転率は1.4回と良好な数値となっている。結果、総資産経常利益率は25.2%、自己資本利益率は38.9%と、資産利益率も極めて高い水準を誇っている。

◆ 高度専門人材の育成に注力
20/2期121名、21/2期156名と、近年、同社は積極採用を継続しているが、新卒採用を開始した14年以降、高度な専門性を持った技術力を維持、強化するため、人材教育に力を入れている。

新入社員は、まず、ネットワーク機器の大手ベンダーであるCisco Systemsが認定しているネットワーク技術者の入門資格であるCisco Certified Network Associate(以下、CCNA)の取得を求められる。CCNAの取得者は、CCNAの上位資格であるCisco Certified Network Professional(以下、CCNP)の取得を目指すことになる。21年8月現在、同社のCCNA資格取得者は592名となっており、うち、403名がCCNPも取得している。また、41名はクラウド関連資格であるAWS資格も取得している。

同社は、人事評価において、一定の基準を満たした技術者を、最高ランクに当たる「高度専門人材」と認定している。高度専門人材に次ぐポジションが「専門人材」であり、CCNP資格の取得等が認定基準となっている。CCNA資格を取得した入社2年未満の人材を「エントリークラス」と位置付けている。21年8月時点の人員構成は、高度専門人材102名、専門人材177名、エントリークラス283名となっている。同社は、3年後を目途に高度専門人材を200名に増やす方針を持っている。

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一般社団法人 証券リサーチセンター
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