モビルス<4370> チャット等、音声以外の顧客サポートサービス拡大で成長を目指す

2021/09/03

コンタクトセンターの業務を効率化する各種サービスをSaaS形態で提供
チャット等、音声以外の顧客サポートサービス拡大で成長を目指す

業種: 情報・通信業
アナリスト: 鎌田 良彦

◆ コンタクトセンター業務を効率化するサービスをSaaS形態で提供
モビルス(以下、同社)は、主にコンタクトセンター注1向けに、業務を効率化する各種サービスをSaaS注2として提供している。

従来の電話を中心としたコールセンターによる顧客サポートでは、電話が集中した場合に顧客を待たせてしまう、対応時間が限られる、オペレータの人手不足や離職率の高さ等の課題がある。これらの課題に対して、同社はオペレータによる有人チャットサポートや、チャットでの問い合わせに自動で応答するチャットボット等のサービスを提供し、オペレータの負荷軽減、業務効率化、コスト削減、顧客満足度の向上をサポートしている。

同社の事業はSaaSソリューション事業の単一セグメントであるが、サービス内容をSaaSサービス、プロフェッショナルサービス、イノベーションラボサービスの3つに分けて開示している(図表1)。

◆ SaaSサービス
同社は以下の5つのSaaSプロダクトを利用期間に応じて月額利用料または年額利用料で提供するサブスクリプション形態のサービスとして提供している。

1) モビエージェント(MOBI AGENT)
MOBI AGENTは、WebやLINE等、様々なチャネルからのチャット問い合わせに対応するコンタクトセンター向け有人チャットサポートシステムである。よくある質問(FAQ)や手続き対応はAIチャットボットに任せ、オペレータは人ならではのサポートに集中できるハイブリッドサポートを強みとし、管理者によるKPI注3や統計の管理機能、CRM(顧客関係管理)等の他のシステムとの連携等も可能になっている。

また、独自開発のオペレーション支援AI「ムーア(MooA)」により、問い合わせ内容を分析して、オペレータに回答を提案する接客サジェスト機能や、外国語での問い合わせに対応できる自動翻訳機能等を搭載している。利用料金はサポートするオペレータ1人当たり月額12,000円とLINE連携等のオプション利用料となっている。

2) モビボット(MOBI BOT)
MOBI BOTは、決済、CRM等の外部システムとの連携が可能なチャットボットシステムで、基本的にはMOBI AGENTと組み合わせて利用する。国内外の主要な対話AIエンジンに対応しており、CRMや基幹システムとの連携により、顧客認証等にも対応でき、顧客のニーズに応じたカスタマイズも可能である。自動応答、シナリオ型フロー応答、オペレータによる有人チャットへの切り替え等の機能を標準で備え、様々な顧客ニーズに対応できる点が強みとなっている。これらの結果、IT業界の調査・コンサルティング会社であるITRの「ITR Market View:ビジネスチャット市場2020」によれば、19年度まで3年連続でチャットボット市場でのシェア1位を獲得している。利用料金は15万円/月とオプション利用料となっている。

3) モビキャスト(MOBI CAST)
MOBI CASTはLINEを利用したセグメント配信システムで、年代や性別等の顧客情報や顧客が選択した項目について、LINEユーザーにテキストやスタンプ、画像や動画等を送ることができる。また、MOBI AGENTとの連携によって、送信されたメッセージに対するユーザーからの反応に対してチャットボットやオペレータによるチャットサポートにつなげることで双方向のコミュニケーションが可能になる。自治体の住民向け情報配信サービス等に利用されている。利用料金は配信分量に応じた5万円/月、10万円/月の基本料金とオプション利用料となっている。

4) モビボイス(MOBI VOICE)
MOBI VOICEは、電話での受注・問い合わせを自動受付し、通話内容のテキスト化や担当者へのメール通知等を行うボイスボットシステムである。複数の同時着信への対応が可能なことから、テレビショッピングによる注文や、災害・障害時における問い合わせ等への対応が可能となる。また、夜間の電話受付対応としても利用できる。利用料金は15万円/月とオプション利用料、通話料となっている。

5) ビジュアルIVR(Visual IVR)
Visual IVR注4は、ホームページやスマートフォンのブラウザ上で、電話、Webチャット、LINE、チャットボット等、複数の問い合わせチャネルをイメージ図等で視覚化し、顧客の目的や受電状況に応じて最適な窓口へ誘導するシステムである。

電話による音声IVRの場合、問い合わせ内容による選択が何度も必要で時間がかかるのに対し、Visual IVRではFAQやチャットボットの利用により顧客の自己解決を促すことで顧客の満足度を高めると同時に、コンタクトセンターへの電話の呼量を減らすことができる。利用料金は10万円/月とオプション利用料である。

◆ プロフェッショナルサービス
プロフェッショナルサービスでは、同社のSaaSサービスの初期導入サポート(初期診断支援、目標設定、プロジェクト設計等)、カスタマイズ開発、AI教師データ作成等のサービスを提供し、顧客のシステム導入による効果を最大化するためのサポートを行っている。

◆ イノベーションラボサービス
イノベーションラボサービスでは、将来的な商品化や新たなビジネスに繋がる可能性のあるシステムについて、コミュニケーション領域を中心に受託開発を行っている。

◆ 販売チャネルと顧客基盤
同社はサービスを直販、販売代理店、OEM供給の3つの販売チャネルで提供している。この結果、金融、メーカー、官公庁・自治体等の様々な業界、地域への販売が可能となっている。SaaSサービスの販売チャネル別の内訳は、21/8期第3四半期累計期間でみると直販33%、代理店販売36%、OEM供給31%となっているが、足元では直販の伸び率が高くなっている(図表2)。

販売代理店は、ベルシステム24(東京都港区)、りらいあコミュニケーションズ(4708東証一部)等のコンタクトセンターのオペレーションを担うBPO注5企業、アイテック阪急阪神(大阪市福島区)、NECネッツエスアイ(1973東証一部)等のコンタクトセンターのシステム構築を行うシステムインテグレーター、PRAZNA(東京都港区)、エーアイスクエア(東京都千代田区)等のAI・ツール提供企業等、40社を超える。

エヌ・ティ・ティ・コムウェア(東京都港区)、富士通(6702東証一部)、トランス・コスモス(9715東証一部)へは、同社製品をOEM供給している。OEM供給については、年間の包括契約となっている。

同社のOEM供給を除く直販と代理店販売によるサービスの契約数は、21年5月末で209と前年同期比63.3%の増加となっている(図表3)。

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一般社団法人 証券リサーチセンター
資本市場のエンジンである新興市場の企業情報の拡充を目的に、アナリスト・カバーが少なく、適正に評価されていない上場企業に対して、中立的な視点での調査・分析を通じ、作成されたレポートです。