ワンダープラネット<4199> 「クラッシュフィーバー」と「ジャンプチ ヒーローズ」が中核タイトル

2021/06/14

海外売上高比率が高いスマートフォン向けゲーム開発会社
「クラッシュフィーバー」と「ジャンプチ ヒーローズ」が中核タイトル

業種: 情報・通信業
アナリスト: 大間知 淳

◆ 海外売上高比率が高いスマートフォン向けゲーム開発会社
ワンダープラネット(以下、同社)は、スマートフォン向けゲームの企画・開 発・運営・販売等を展開しており、Apple や Google が運営するプラットフォー ム等を通じてユーザーにゲームを提供している。ゲームタイトルの種類別で は、「自社開発タイトル(オリジナル)」に分類されるオリジナル作品の自社開 発・国内外での運営に加え、「自社開発タイトル(IP)」に分類される他社の IP 注 1 を使用した作品の自社開発・国内外での運営や、「他社開発タイトル (海外)」として他社が開発して国内で提供している作品の海外向けの開発・ 運営を手掛けている。

同社が提供するタイトルは、ユーザーが無料でダウンロードして楽しむこと ができ、アプリ・ゲーム内での一部アイテムの獲得や機能拡張の際に課金 するフリーミアムモデルを採用している。

自社開発タイトル(オリジナル)は、企画、開発、運営の全てを自社で一貫し て行うため、コストの多くを同社が負担する必要があるものの、ヒットした場合 は利益貢献が大きくなる特徴がある。代表的な運営タイトルとしては、ユナイ テッド(2497 東証マザーズ)との共同事業である「クラッシュフィーバー」(15 年 7 月リリース、世界合計 1,200 万ダウンロード)が挙げられる。

自社開発タイトル(IP)は、当該IPのファンのうち、一定数をタイトルのユーザ ーとして獲得できる可能性があるため、収益配分の割合がオリジナルタイト ルに比べ低くなるものの、費用負担が抑えられリスクが低減できる特徴があ る。代表的な運営タイトルとしては、「週刊少年ジャンプ」の歴代キャラクター が多数登場する「ジャンプチ ヒーローズ」(18 年 3 月リリース、世界合計 1,100 万ダウンロード)が挙げられる。同タイトルでは、Z ホールディングス(4689 東証一部)傘下の LINE と業務提携契約を結んでいる。

他社開発タイトル(海外)では、オリジナルタイトルの国内外での配信経験を 活かして、他社開発タイトルを海外向けに開発すると共に、安定した運営を 行っている。IP を保有する協業パートナーへの収益配分が必要となるもの の、開発費が抑えられ、短期間でのリリースが可能となる特徴がある。代表 的な運営タイトルとしては、「この素晴らしい世界に祝福を!ファンタスティッ クデイズ」(20 年 9 月リリース、繁体字圏注 2 合計 100 万ダウンロード)が挙げ られる。同タイトルでは、サイバーエージェント(4751 東証一部)のグループ 企業であるサムザップとパブリッシング契約を締結している。

「クラッシュフィーバー」と「ジャンプチ ヒーローズ」が同社の中核タイトルと なっており、2 タイトルが 20/8 期における売上高の 95.0%、21/8 期第 2 四半 期累計期間(以下、上期)における売上高の 78.5%を占めている。

同社では、独立した 3 つのスタジオ(名古屋スタジオ、グローバルスタジオ、 タノシムスタジオ)でアプリ・ゲームの企画・開発・運営を行っている。

名古屋本社に位置する名古屋スタジオは、自社開発タイトル(オリジナル・ IP)を強みとし、「クラッシュフィーバー」日本版、「ジャンプチ ヒーローズ」日 本版の開発と運営を行っている。21 年 3 月末時点で、名古屋スタジオの正 社員・契約社員 102 名のうち、34 名(構成比 33%)がエンジニアまたはエン ジニア業務の経験者である。また、90 名(同 88%)が東海 3 県(愛知、岐阜、 三重)の出身、または東海 3 県の学校卒業者であり、地域に根ざした雇用を 特徴としている。

東京オフィスに位置するグローバルスタジオは、自社及び他社開発タイトル 海外版の開発・運営を担っており、「クラッシュフィーバー」繁体字版・英語 版、「ジャンプチ ヒーローズ」繁体字版、「この素晴らしい世界に祝福を!フ ァンタスティックデイズ」繁体字版を担当している。海外売上高比率(タイトル 利用ユーザーの所在地を基礎として算出)は、19/8 期(単体)が 34%、20/8 期(連結)が 35%に達しており、海外事業が収益の柱となっている。

21 年 3 月末時点で、グローバルスタジオの正社員・契約社員 51 名のうち、 29 名(構成比 57%)が外国籍人材である。また、19/8 期から 21/8 期上期ま での外国籍新規採用者 15 名のうち、9 名(同 60%)がリファラル採用(同社 社員による知人・友人等の紹介)であり、継続的に人材が確保できているこ とが特徴となっている。

タノシムスタジオは、16 年 12 月に子会社化し、18 年 9 月に吸収合併したタ ノシムのメンバーが中心となって運営されている。ゲーム以外の領域を含め て協業パートナーとの新規チャレンジを担っているスタジオである。

同社は、ゲームの運営に当たり、寄せられたユーザーの意見や要望等を参 考にして機能改修や施策への活用等を行っている。結果として、運営継続 期間については、「クラッシュフィーバー」は 5 年を、「ジャンプチ ヒーローズ」 は 3 年を超えている(図表 1)。

同社は近年、業容拡大に伴い、開発部門を中心に従業員の大量採用に成 功している。従業員数は、16/8 期末の 62 名から 21 年 3 月末には 195 名に増 加した。結果として、従業員の平均年齢は 32.1 歳と比較的若い。

◆ 周年イベント等のリリース後の施策の成否が重要となっている
同社が開発したタイトルは、配信の方式や協業の内容により、売上高の計 上方法が異なっている。同社が直接配信を行うタイトルは、課金収入から協 業パートナーへの収益分配を控除した金額を売上高として計上しており、 プラットフォーム事業者からは課金収入から手数料を除いた金額を受領して いる。一方、同社が開発・運営を担当し、協業パートナーが配信を行うタイト ルは、同社が契約に基づき協業パートナーから受取る金額を売上高として 計上している。

同社は、KPI として、DAU(Daily Active Users) 注 3 、ARPPU(Average Revenue Per Paid User)注 4 、PUR(Paid User Rate)注 5 を挙げているが、具体 的な数値は開示されていない。

スマートフォン向けゲームの売上高は、新作のリリース当初の人気だけでな く、サービス内でのオリジナルイベントやタイトル毎の周年イベント、季節イ ベント、他社 IP とのコラボレーション等のリリース後の施策実施によっても数 値が変動する特徴がある。

同社は20/8期だけ連結決算を開示しているが、連結子会社の売上高はごく 僅かであるため、証券リサーチセンター(以下、当センター)では、単体決算 で同社の収益構造を分析することにした(連結子会社は 21 年 4 月に清算さ れたため、21/8 期は単体決算のみの開示となる)。

同社の売上原価の 6 割以上は自社の技術者に支払う労務費と協力会社 (ゲーム開発会社)に支払う外注費であり、労働集約型のビジネスと言える。 また、プラットフォーム事業者に支払う売上原価として、プラットフォーム手数 料があり、20/8 期の売上高プラットフォーム手数料比率は 24.3%に達してい る。なお、同社はアプリ・ゲームの新規開発費用をソフトウェア資産に計上せ ず、期間費用としているため、ゲームタイトルに係る減価償却費は計上され ていない。

販売費及び一般管理費(以下、販管費)の内訳としては、主にゲームタイト ル向けである広告宣伝費が中心を占めており、その他、役員報酬や給料及 び手当、支払手数料等が挙げられる。

◆ プラットフォーム事業者を通して配信
同社のエンドユーザーは一般消費者であるが、プラットフォーム事業者及び 配信元となる協業パートナーを通じて契約しているため、取引先としては、 Google、Apple、LINE への依存が高くなっている。21/8 期上期では、継続 的な取引となっている 3 社に対する売上高が、概ね 3 分の 1 ずつを占めて いる(図表 2)。

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一般社団法人 証券リサーチセンター
資本市場のエンジンである新興市場の企業情報の拡充を目的に、アナリスト・カバーが少なく、適正に評価されていない上場企業に対して、中立的な視点での調査・分析を通じ、作成されたレポートです。