アピリッツ<4174> 新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、ECサイトの開発需要が好調
ECサイト等の開発、運用・保守や、オンラインゲームの開発・運用等を展開
新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、ECサイトの開発需要が好調
業種: 情報・通信業
アナリスト: 大間知 淳
◆ ECサイト等の開発等や、オンラインゲームの開発・運用等を展開
アピリッツ(以下、同社)は、ECサイトやWebシステムの企画、開発から、保守、Webマーケティング、セキュリティ対策までを一貫して提供するWebソリューション事業と、自社ゲームの開発・運営、他社ゲームの開発・運営、他社への人材派遣を行うオンラインゲーム事業を展開している。
20/1期において、売上高構成比は、Webソリューション事業39.8%、オンラインゲーム事業60.2%であるが、オンラインゲーム事業は利益率が低いため、営業利益の構成比(調整額控除前)は、Webソリューション事業88.8%、オンラインゲーム事業11.2%となっている(図表1)。
Webソリューション事業とオンラインゲーム事業を兼営して多様なサービスを手掛けていることが魅力となり、同社は近年、新卒者と第2新卒者の大量採用に成功している。従業員数は、16/1期末の186名から20/1期末には359名に増加したほか、20年末の従業員の平均年齢は31.5歳となっている。
◆ Webソリューション事業
Webソリューション事業は、ECサイトや求人情報サイト等、顧客のユーザー向けWebシステムの企画、開発や、スマートフォンアプリ開発を中心に手掛けている。Webシステムの戦略・分析フェーズから、企画・設計フェーズ、開発・制作フェーズ、運用・検証フェーズに至るまで、全ての工程を自社内で対応できるため、顧客ニーズを的確に捉えた上で安価かつスピーディなサービス提供が可能となっている。
受託開発サービスでは、スクラッチ開発のほか、オープンソース注1ソフトウエアのRubyを用いて自社で開発したECサイト構築パッケージ「エレコマ」を利用して、低価格で高機能なECサイトの構築も支援している。また、AWS注2を使った大規模開発も得意としており、AWSの設計導入・活用実績は120件を超えている。
Webソリューション事業では、各種コンサルティングや、ASPサービス等も提供している。独自のASPサービスとしては、サイト内のコンテンツや商品を対象として、キーワード検索が出来る「Advantage Search」が挙げられる。
同社は、売上高の継続的かつ累積的な増加を実現するため、安定的で成長性の高いWebソリューション事業における売上高と契約継続率を重視している。システムの運用・保守や、コンサルティング、ASPサービス等の売上高構成比が高い結果、同事業の21/1期(第3四半期までに契約済みのもののほか、受注が確定しているものを含む)における前期からの継続契約の比率は、顧客数ベースで73%、売上高ベースで78%となっている。
Webソリューション事業は、元請中心で、コンサルティングやASP等の好採算サービスの比率が高いことから、高い利益率を確保している(図表2)。
◆ オンラインゲーム事業
オンラインゲーム事業は、PCとスマートフォン向けにオンラインゲームの開発、運営を手掛けている。サービスの形態としては、同社が提供するゲームの企画から開発・運営を行う「自社ゲーム開発」、パートナー企業名で提供されるゲームの企画から開発・運営を請負う「受託開発」、ゲーム開発企業に同社の技術者やクリエイターを派遣する「人材派遣」に大別される。
受託開発については、パートナー企業に対して、自社ゲーム開発で培ったノウハウを活用し、コスト低減を意識した効率的な開発サービスを提供している。人材派遣については、自社ゲーム開発と受託開発の閑散期に、顧客ニーズに応じて余剰人員を派遣しており、人員の育成と収益の確保を図っている。こうしたサービス構成により、同社は、ヒット作で業績が左右されがちなゲーム事業において、収益の確保と安定した事業運営を目指している。
自社ゲーム開発では、自社オンラインゲームプラットフォームである「Appirits Games Project」及び、他社オンラインゲームプラットフォームであるGoogleやAppleを通じてゲームを無料で提供し、ゲーム内のアイテム課金等により収益を得ている。10年のサービス開始当初はPC向けであったが、近年は技術難易度が高いスマートフォン向けが中心となっている。
受託開発では、開発請負収入が売上高の中心であるが、リリース後の運営状況に応じたインセンティブ収益を得る場合もある。人材派遣では、人材の職種、人数、時間等に応じた人材派遣収入を派遣先から受領している。
オンラインゲーム事業は、近年、自社ゲーム開発で大ヒット作が出ていないことから、利益率は低迷している。20/1期においては、自社ゲーム開発で新作タイトルの投入に伴い、広告宣伝費や減価償却費が増加したため、大幅増収ながら営業減益となったが、EBITDAはやや増加した(図表3)。
自社ゲーム開発のターゲットは、ライトユーザーではなく、同社ゲームの世界観に共感しているコアユーザーである。開発ゲームのジャンルはRPGとなっている。運営中の自社ゲームタイトルとしては、ゴエティアクロス(18年9月リリース)、アンノウンブライド(20年6月リリース)等が挙げられる。
◆ Webソリューション事業が収益源となっている
同社の売上原価の7割以上は自社の技術者、クリエイターに支払う労務費と協力会社(ソフトウェア開発会社)に支払う外注費であり、労働集約型のビジネスと言える。また、オンラインゲーム事業に係る売上原価として、支払手数料(スマホゲームのプラットフォーム運営会社であるGoogleやApple等に支払う手数料)、サーバー利用料等の通信費、ゲームタイトルのソフトウエアに係る減価償却費が計上されている。
販売費及び一般管理費(以下、販管費)については、給与手当や減価償却費のほか、広告宣伝費や研究開発費等のオンラインゲーム事業の費用が中心を占めている。
セグメント別では、元請中心で、運用・保守、コンサルティング・ASPの売上高構成比が高いWebソリューション事業は、営業利益率が高く(20/1期34.9%)、同社の収益源となっている。一方、広告宣伝費や研究開発費の負担が重いオンラインゲーム事業の営業利益率は、20/1期においては2.9%にとどまっている。なお、全社費用である調整額を売上高構成比で各セグメントに按分した場合、オンラインゲーム事業は営業損失となっている。
◆ オンラインゲーム事業では特定顧客への依存度が高い
同社の取引先としては、自社ゲーム開発では、プラットフォーム運営会社であるGoogle、Apple、決済代行会社、パートナーゲーム受託開発ではアカツキ(3932東証一部)、マーベラス(7844東証一部)、Webソリューション事業では、エス・エム・エス(2175東証一部)の連結子会社であるエス・エム・エスキャリア等が挙げられる。中でも、Google、Apple、アカツキ、マーベラスとは継続的な取引となっていると見られる。但し、全体の売上高が拡大しているため、19/1期以降の各事業年度では、総売上高の10%を超えている例は少ない(図表4)。