WACUL<4173> 「AIアナリスト」を開発・提供

2021/03/03

デジタルマーケティングのPDCA をサポートするプラットフォームである
「AIアナリスト」を開発・提供

業種: 情報・通信業
アナリスト: :髙木伸行

◆ デジタルマーケティングの分析と改善を行うツールを提供
WACUL(以下、同社)は、データ分析でデジタルマーケティングの PDCA をサポートするツールを提供するプロダクト事業とデジタルトランスフォーメ ーション(以下、DX)実現のためのコンサルティングや知見の獲得を主体と するインキュベーション事業を行っている。

1.プロダクト事業
多くの企業は DX の必要性を認識しながらも、改善計画の策定・管理(Plan)、 改善施策の実行(Do)、施策の効果測定(Check)、次の改善策の見直し (Act)という PDCA サイクルを回すことができずにいる。同社は、Web サイト に関する知見やデータを収集・分析し、デジタルマーケティングを改善した いと考える企業に対してデータ分析に基づく改善ポイントの提案や施策の 管理と成果の検証をするツールである「AI analyst(以下、AI アナリスト)」を 中心に「AI アナリスト SEO」、「AI アナリスト AD」などからなるソリューション群 である「AI アナリスト・シリーズ」を SaaS 注 1 で提供している(図表 1)。

AI アナリストは Google アナリティクス注 2 から得られる顧客 Web サイト のアクセス解析データ等をクラウド上で連携するだけでレポートの作 成、データ分析結果からの改善提案、実施した改善施策の記録と成果 測定などデジタルマーケティングの PDCA をサポートするプラットフ ォームである。フリーミアムモデル注 3 を採用しており、ユーザーは無 料で AI アナリストの基本機能を利用できる代わりに、そのユーザーの Web サイトのデータを同社は取得している。

AI アナリスト SEO は AI アナリストによる改善提案に基づき、具体的な 成果であるコンバージョン注 4を意識したコンテンツをサイト運営者に 代わって制作するコンテンツマーケティング注 5 支援サービスである。

AI アナリスト AD はサイトへの訪問者を増やす Web 広告ではなく、コンバー ジョンを増やすための Web 広告と Web サイトの一体運用をサイト運営者に 代わって行うサービスである。様々な業界で 20%以上の顧客獲得単価の削 減実績を上げている。

同社のソリューションは徹底して、成果=コンバージョンの追求を念頭に置 いており、利用者にとっても効果を実感し易いサービスとなっている。また、 多額な費用を必要としないため、費用面での制約からデータ分析に基づく デジタルマーケティングの改善活動を行えなかった企業での導入を可能に している。

2.インキュベーション事業
インキュベーション事業では事業全体の再構築や KPI 設計、組織設計など のコンサルティングを提供している。最先端のデジタルマーケティングを推 進する企業を対象としている。また、19年2月に社内研究所である「WACU Lテクノロジー&マーケティングラボ」を立ち上げ AI やマーケティングを専門 とする研究者などを顧問に迎え先端テクノロジーの導入と知見を深めること にも努めている。

インキュベーション事業は研究開発を主な目的としていることから、同社の 売上高への直接的な貢献は 20/2 期の総売上高の 1 割未満となっている。

◆ 事業基盤となる AI アナリスト
ユーザーの Web サイトの行動データを獲得する役割を持つ AI アナリストは 20年末時点で3.4万サイト以上からデータを取得しており、このビッグデータ が同社の競争力の源泉のひとつとなっている。

国内の多くの企業が Web 上の行動データを記録するツールとして利用して いるGoogleアナリティクスと連携し、利用者の許可を得てGoogle を通じてデ ータを入手している。このためリードタイム無しで分析を開始できるというハ ードルの低さも AI アナリストの登録数の増加に一役買っている。

AI アナリストの正式版が 15 年 11 月にリリースされて以来、登録サイト数は、 急速に拡大している(図表 2)。母集団が大きくなっているため、増加率は鈍 化しているものの、ここ数年は半期で 2,000 サイト程度の増加ペースを維持 している。

収集したデータをベースに類似サイト群に対するベンチマーキング注 6 を提 供することが可能になっている。ユーザーはベンチマークとの比較を通じて、 自社の強みと弱みを認識し、成長戦略の策定に活かすことができる。

さらに同社はユーザーから獲得するデータと Web 上に存在するデータを合 わせて分析し、独自のアルゴリズムにより人ではできない粒度での分析を行 い、顧客に改善点の提案を行い、顧客の改善施策実行をサポートする AI アナリスト SEO や AI アナリスト AD とのクロスセルにつなげている。また、顧 客の改善施策の効果を測定した上で、さらなる改善ポイントを提案するとい うサイクルを実現している。

AI アナリストの採用を促す要素のひとつとしてコスト競争力が挙げられる。 AI アナリストはシングルソース・マルチテナント型注 7 を採用することで、ひと つのソースコードを通じて機能の強化・拡張を可能にしている。開発者はひ とつのソースの開発に集中できることから、比較的少ない資源で開発が可能になっており、低価格でのサービス提供が可能になっている。

AI アナリストの利用サポートやコンサルティングが提供される現行の有料プ ラン(契約期間 12 カ月)を例にとると、利用者はコンサルプランとツール活用 プランの 2 種のプランから選ぶことができる。初期費用は 10 万円(キャンペ ーン等により、割り引かれるケースがある)としており、月額費用はプランに 応じて 5 万円から 20 万円まで 6 タイプが設定されている。このため、ユーザ ーは予算に合わせた選択が出来るようになっている。また、10万円前後から 50 万円程度で利用できるオプションメニューも充実しており、きめ細かなサ ポートを受けることも可能となっている。

◆ 販売経路
AI アナリスト・シリーズの売上高の大半は Web 経由で最終ユーザーに販売 されているものである。販売代理店経由もあるがその比率は極めて低い。ま た、Web コンサルティング会社や広告代理店にも AI アナリスト・シリーズを提 供しており、Web コンサルティング会社や広告代理店の顧客向けに提供さ れるソリューション作成のために利用されている。

この他にはパートナー企業と連携してサービス拡張にも努めている。具体例 としては 20 年 10 月に提供を開始した「AI アナリスト for ツーリズム」がある。 JTBコミュニケーションデザインと共同開発したAI アナリストの分析内容を観 光業向けにアレンジした観光業の DX を支援するソリューションであり、同社 は API 利用料を受け取る。

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一般社団法人 証券リサーチセンター
資本市場のエンジンである新興市場の企業情報の拡充を目的に、アナリスト・カバーが少なく、適正に評価されていない上場企業に対して、中立的な視点での調査・分析を通じ、作成されたレポートです。