ゼネテック<4492> ソフトウェア・ハードウェアの一体型開発力に強みを持つ
自動車等の組込みシステムの設計開発やCAD/CAMソフトの販売を手掛ける
ソフトウェア・ハードウェアの一体型開発力に強みを持つ
業種: 情報・通信業
アナリスト: 大間知 淳
◆ 組込みシステムとCAD/CAM等のソフトウェアを手掛ける
ゼネテック(以下、同社)は、自動車等の組込みシステムの設計・開発とCAD/CAM等のソフトウェアの販売等を中心に展開する独立系情報サービス企業である。
同社は、事業セグメントを「システム受託開発事業」、「エンジニアリングソリューション事業」、「その他事業」の3つに区分している。19/3期におけるセグメント別の売上高構成比(セグメント間取引消去後)は、システム受託開発事業が72.3%、エンジニアリングソリューション事業が27.0%、その他事業が0.7%となっている。
(1)システム受託開発事業
システム受託開発事業は、同社の中核サービスであり、創業以来、移動体通信機分野(ポケットベル、携帯電話、PHS等)の各種情報端末、自動車関連(カーナビ、カーオーディオ、インフォテインメント注1等)の組込みシステムの設計・開発を手掛けている。現在では、上記に加え、デジタル情報家電、半導体製造装置、業務用プリンター等の組込みシステムに係るソフトウェア開発やハードウェア開発において、仕様分析・検討・基本設計から製造に至るまで、システムの一括受託開発を行っている。
組込みシステムの開発においては、ソフトウェアの専業開発とは異なり、ハードウェア制御の知識が必須である。また、製品の性格上、ソフトウェア開発に比べて非常に厳しい品質確保が要求されるため、この領域は、同社の強みであるソフトウェアとハードウェアの一体型開発力及び通信・ネットワーク分野の開発技術力を活かせる分野となっている。
システム受託開発事業を対象別に分けると、組込みソフトウェアが過半を占めているが、半導体製造装置等のハードウェアがその次に続き、WEB/サーバ系システムは僅かにとどまっている模様である。
システム受託開発事業の業績の推移は図表1の通りである。
(2)エンジニアリングソリューション事業
同社は、エンジニアリングソリューション事業において、「製造業向け3次元CAD/CAM注2ソリューション」、「ロボットティーチングシステム」、「工場・物流・マテハン3Dシミュレーションシステム」について、輸入販売、導入・技術支援、サポート、教育・研修等を、主として製造業向けに提供している。また、製造業向けIoT分野において、モニタリングプラットフォーム「Surve-i」を自社開発し、製造機械・設備の稼働監視システムや防犯・災害対策用遠隔カメラ監視ソリューションとして販売している。
(製造業向け3次元CAD/CAMソリューション)
エンジニアリングソリューション事業の主力商品である「Mastercam」は、CADで設計された製品や部品に対し、工具や切削方法といったNC工作機械で加工するための様々な情報を付加し、工作機械を制御する数値データに変換するCAMソフトウェアである。Mastercamは世界有数の3次元CAMソフトウェアであるが、同社は、90年にライセンス元である米国CNC Software, Inc.と日本総代理店契約を締結し、同ソフトウェアの販売を開始した。
(ロボットティーチングシステム)
通常、産業用ロボットは、付属しているコントローラを使用して、ロボットを実際に動かし、その動作を記録・再生させてロボットを動作させる「ティーチング」という工程が必要になる。Mastercamのオプションである「Robotmaster」は、パソコン上でロボットの動作データを作成し、ロボットに転送するティーチングソフトウェアである。
(工場・物流・マテハン3Dシミュレーションシステム)
FlexSimは、生産ラインや倉庫内の配置等、現状の分析から課題を発見し、複数の改善案を数値とグラフ等で可視化できるソフトウェアである。同社は、18 年8 月、ライセンス元である米国FlexSim Software Products, Inc.と日本総 代理店契約を締結し、同ソフトウェアの販売を開始した。
これらの商品や関連サービスは、同社や、連結子会社のアプリハウス、約500 社の代理店を通じて、約3,500 社のエンドユーザーに販売されている。
エンジニアリングソリューション事業の業績の推移は図表2 の通りである。
(3)その他事業
その他事業では、緊急地震速報の受信と同時に、直前の位置情報を予め設定された相手に瞬時に通知し、安否情報を共有できるスマートフォンアプリである、災害時位置情報自動通知システム「ココダヨ」を提供している。
同社は、16 年12 月に有料版ココダヨをリリースした後、17 年4 月に大手損害保険会社の保険加入者向けOEM サービスを開始した。18 年9 月よりNTT ドコモ(9437 東証一部)が提供するコンテンツプロバイダー向けサービス「スゴ得」に採用されたほか、19 年8 月にはKDDI(9433 東証一部)のコンテンツプロバイダー向けサービス「au スマートパス」にも採用された。
その他事業の業績の推移は図表3 の通りである。
◆ パナソニックグループへの依存度が高い
同社の取引先としては、パナソニック(6752東証一部)、パナソニックITS、ニューフレアテクノロジー(6256東証JQS)が挙げられている。
中でも、パナソニックグループへの売上高の依存度は高い(図表4)。開示対象となっていない取引先を含めると、パナソニックグループへの売上高は、19/3期の総売上高の30.9%を占めている。
◆ システム受託開発事業はフロー型・労働集約型のビジネスである
中核事業であるシステム受託開発は、顧客からプロジェクトを一括受託して事業を遂行しており、その売上原価の中心は従業員に支払う労務費とビジネスパートナーに支払う外注費である。よって、同事業は、フロー型、かつ、労働集約型のビジネスと言える。
エンジニアリングソリューションは、サービス内容によってビジネスモデルは異なっている。同事業の中心を占めるソフトウェアのライセンス販売については、その売上原価は商品仕入高であり、フロー型のビジネスである。一方、年間契約となるメンテナンスや技術サポート等はストック型のビジネスとなっている。販売は代理店網も活用しており、同事業の従業員1人当たりの売上高や利益はシステム受託開発事業よりも多くなっている。
なお、販売費及び一般管理費(以下、販管費)については、従業員給料及び手当や、役員報酬等の人件費が中心を占めている。