SREホールディングス<2980> フォームサービスやコンサルティングサービスを展開

2020/01/06

不動産業界向けを中心に、AI技術・ITと実業ノウハウを組み合わせたプラット
フォームサービスやコンサルティングサービスを展開

業種: 不動産業
アナリスト: 阪東 広太郎

◆ AI×リアルソリューション事業を展開
SREホールディングス(以下、同社)は、ソニー(6758東証一部)が有する人工知能(以下、AI)/ITテクノロジーやヤフーの有する豊富なデータトラフィックを基盤として、1)不動産事業、2)ITプラットフォーム事業及び、3)AIソリューション事業の3つの事業を展開している。同社は『AI×リアル』ソリューション事業の単一セグメントだが、売上高は上記3事業で区分されており、20/3期第2四半期累計期間(以下、上期)の売上構成比は、不動産事業56.0%、ITプラットフォーム事業33.5%、AIソリューション事業10.6%となっている(図表1)。

1) 不動産事業
不動産事業では、不動産仲介サービス、及び、スマートホームサービスを展開している。

不動産仲介サービスは、1人の社員が売主、買主の双方を担当せずに、どちらか一方のみを担当し、担当する売主または買主の利益のみを徹底追求する「エージェント制」を採用している点が特徴である。

サービスの展開エリアは主に東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県であり、その中でも特に都心部や県庁所在地等の都市部の物件の売買が多いようである。また19/3期に同社が担当した不動産取引の契約額は、売主を担当した場合が9割を占めており、インターネット経由の顧客が多いようである。

不動産売買成約時の売主または買主からの仲介手数料が同社の売上となる。仲介手数料は売買代金の3%である。

スマートホームサービスでは、ソニーコミュニケーションズ株式会社が提供するスマートホームサービス「MANOMA」を搭載した、主にファンドや法人に販売する収益型不動産「AIFLAT(アイフラット)」の施工・販売を行っている。第1号物件AIFLAT dokanyamaは18年10月に販売を開始し、19年1月に1棟売りにより完売している。

2) ITプラットフォーム事業
ITプラットフォーム事業では、個人及び法人に不動産売買プラットフォームの「おうちダイレクト」をヤフーと共同で提供している。個人向けには、仲介会社を介さずに不動産を売却する「セルフ売却サービス」、法人向けには、主に不動産仲介事業者に対して、「不動産仲介業務支援機能」を提供している。

「セルフ売却サービス」では、マンション所有者が、同社のAIを活用した「不動産価格推定エンジン」が提示する推定成約価格などを参考にして不動産仲介業者を通さずにインターネット上でマンションを売り出す事ができる。マンション所有者は売却仲介手数料ゼロで、おうちダイレクト及びヤフーの運営する不動産ポータルサイトである「Yahoo!不動産」を通じて買い手を募る事ができる。買い手からの見学や問合わせ対応、案内から調整、売買の交渉、契約等は同社の不動産仲介事業のメンバーが対応する。

「セルフ売却サービス」の展開エリアは、主に東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県で、対象不動産はマンションのみである。

「セルフ売却サービス」においては、同社は不動産の売主からは報酬は受け取らず、購入者側から売買の成約時に、成約金額の3%を仲介手数料として受け取っている。

「不動産仲介業務支援機能」では、不動産仲介事業者向けに、①売主からの問い合わせをインターネットで集める集客、②問合わせがあった売主に対する査定書作成、③売主の物件をインターネット上に掲載して、買主を募集する広告、④優良顧客の特定という4 つの機能を提供している。

契約社数は、18/3 期の2 社から19/3 期には285 社まで拡大している。18 年10 月の大阪府宅地建物取引業協会、11 月のセンチュリー21、19 年5 月の東京都宅建共同組合など、業界団体や不動産仲介フランチャイジーとの業務提携により、中小を含む不動産仲介事業者からの掲載物件数が増加したようである。上記の結果、「おうちダイレクト」の物件掲載数は18 年3 月末の841 件から、19 年3 月末には9,025 件にまで拡大している。

同社は顧客から月額費用を受け取る。単価は、クライアントの規模や「不動産価格推定エンジン」の利用量などに応じて、相対の交渉で決定し、契約期間は3 年となっている。

同社は、不動産仲介業者から、月額費用に加えて、不動産取引に関するデータを受け取っている。これらのデータを活用し、AI 技術の精度向上やIT サービスを拡充することで、ユーザー数を増やし、不動産仲介事業者の契約数を増やすという好循環を作り上げている。

同社によると、「おうちダイレクト」における、売買金額の9 割が法人顧客によるものとのことである。

3) AI ソリューション事業
AI ソリューション事業では、不動産事業者を対象としたAI クラウドサービス及び、様々な業界へのAI コンサルティングサービスを展開している。

AI クラウドサービスは、クラウドを通じてパッケージ化されたAI を提供している。現在、「不動産価格推定エンジン」、「類似物件検索エンジン」の2 サービスを展開している。

「不動産価格推定エンジン」は、様々な不動産関連情報を元に、即時に高い精度の最新の推定成約価格及び推定月額賃料を出力する事を可能にする。ディープラーニング技術注1 を核とし、同社グループが持つ不動産査定のノウハウや不動産取引特有の知識を導入し、開発している。「おうちダイレクト」上で得られる不動産売買データとソニーグループのAI 技術を融合し、高い推定精度を達成している。また、毎週、最新のデータに基づいて機械学習注2 モデルを更新しており、常に最新の推定価格が取得可能である。

「類似物件検索エンジン」は物件情報から類似する情報の多さや類似度合を総合的に判断して、類似物件を検索することを可能にする。

「不動産価格推定エンジン」は、不動産業界に加えて、担保価値評価用として金融業界でも導入実績がある。19年7月末時点で、10案件を受注済みである。

同社は、顧客から月額固定のライセンスフィーを受け取る。契約単価は顧客ごとに、顧客の企業規模や利用量に応じて相対で決めている。契約期間は3年である。

AIコンサルティングサービスでは、顧客企業ごとにテーラーメイドでAIによる将来予測ツールを用いた課題解決を行っている。顧客企業において各業務に関する過去の実績データさえ用意できれば、数クリックで高度な予想分析を自動で行えるソフトウェアを導入している。

コンサルティングサービス提供の流れとしては、まずPoC注3を行い、その結果を踏まえて、顧客ニーズに応じて、アプリ開発、または、システム化(顧客サービスへのインテグレーション)を行う。

19年9月末時点で、不動産業界、金融業界を中心に受注実績がある。不動産仲介会社向けには優良顧客の特定、採用効率化など、ホテル向けにはAI技術を用いた宿泊価格の設定コンサルティングの実績がある。これに加えて、不動産会社、金融会社、百貨店向けに、マーケティング業務の効率化、営業活動の効率化、需給予測による在庫最適化などのコンサルティングサービスを提供している。

コンサルティングフィー及び契約期間は、顧客ごとに相対で決定している。PoCについては、期間は6カ月程度で、フィーが500~1,000万円程度のケースが多いようである。

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一般社団法人 証券リサーチセンター
資本市場のエンジンである新興市場の企業情報の拡充を目的に、アナリスト・カバーが少なく、適正に評価されていない上場企業に対して、中立的な視点での調査・分析を通じ、作成されたレポートです。