情報戦略テクノロジー(155A) 概ね会社予想通りの水準で着地

2025/03/20
 

高井 淳 社長

株式会社情報戦略テクノロジー(155A)

 

 

企業情報

市場

東証グロース市場

業種

情報・通信業

代表者

高井 淳

所在地

東京都渋谷区恵比寿4-20-3 恵比寿ガーデンプレイスタワー15F

決算月

12月

HP

https://www.is-tech.co.jp/

 

株式情報

株価

発行済株式数

時価総額

ROE(実)

売買単位

416円

10,338,500株

4,300百万円

22.2%

100株

DPS(予)

配当利回り(予)

EPS(予)

PER(予)

BPS(実)

PBR(実)

0.0円

22.82円

18.2倍

169.45円

2.5倍

*株価は3/12終値。24年12月期決算短信および会社リリースより。BPS、ROEは前期実績。

 

業績推移

決算期

売上高

営業利益

経常利益

当期純利益

EPS

DPS

2021年12月

3,856

136

25

3.00

0.0

2022年12月

4,939

302

332

285

33.57

0.0

2023年12月

5,298

388

385

275

32.41

0.0

2024年12月

5,847

413

396

273

27.73

0.0

2025年12月(予)

6,427

311

311

235

22.82

0.0

*予想は会社予想。単位:百万円、円。2021年12月期と2025年12月期は連結決算。その他は非連結決算。

 

 

(株)情報戦略テクノロジーの2024年12月期決算概要などをご紹介致します。

目次

今回のポイント
1.会社概要
2.2024年12月期決算概要
3.2025年12月期業績予想
4. 今後の注目点
<参考:コーポレート・ガバナンスについて>

 

今回のポイント

  • システム開発における課題の解決やあるべき姿の実現を目指し、顧客とエンジニアが協働して進めるシステム開発のありかたを「0次システム開発」と称して顧客にサービスを提供している。「システム開発における課題」とは、日本では常識になっている多重下請け構造にある。同社ではコンサルティングからシステム開発までを一気通貫でサービス提供するためのエンジニアを抱え、顧客のDX、システム開発の内製を実現させる。24年3月に東証グロース市場へ新規上場。 
  • 24/12期の売上高は前期比10.4%増の58億47百万円。「0次DX」実現のために顧客と協働してシステム開発を進める「0次システム開発」において、前期に引き続き既存顧客の深耕と新規顧客の開拓を進め、それを実現する人材の採用とパートナー企業の拡充に努めてきた。また、「ラボ開発」という新しいサービス形態を打ち出し、人的リソースの最適化を図ることができ、更に多くの案件に対応できるようになった。自社エンジニア数は、新卒採用及び中途採用により、前期末219名から253名へ増加した。営業利益は前期比6.4%増の4億13百万円。売上総利益率は低下、販管費の増加は抑えたものの営業利益率は前期7.3%から7.1%に低下した。概ね会社予想通りの水準で着地した。 
  • 25/12期から連結決算に移行し、売上高は前期比9.9%増の64億27百万円、営業利益は同24.7%減の3億11百万円を見込む。引き続き大手企業向けDX内製支援サービスに注力する。25年1月から新設分割した(株)WhiteBoxが行うシステム開発企業向けオープンプラットフォームサービス「WhiteBox」の拡充に努めることで業容の拡充に取り組む。また、中長期的な成長を目指すために優れたエンジニアを中心とした組織的な課題解決を行う「ラボ型」での受注に努めることで利益率の向上を目指す。25/12期は中長期的な成長に向けた収益化の基盤をつくる期間とし、各事業領域の事業戦略の進捗状況に応じた事業投資を行っていく。 
  • 24/12期は概ね会社予想水準で着地し、上場して最初の本決算は無難に通過したといえよう。ただし、25/12期の減益予想は残念なところ。売上高は保守的に、先行する費用はしっかりと取り込んだ予算となっている。また子会社となるエー・ケー・プラスの業績が取り込まれていない。四半期で見ると24/12期4Qの売上高は15億76百万円、同社の売上はストック型であり、今後顧客が増加することにより上乗せされると見るのが妥当。早ければ1Q決算発表時にも上方修正の可能性がありそう。上場から約1年になるが株価は上場時の公開価格(460円)の水準、逆に上方修正となれば見直しが進むだろう。PERは成長性を考慮すると低位にとどまっていると考える。 

     

     

1.会社概要

システム開発における課題の解決やあるべき姿の実現を目指し、顧客とエンジニアが協働して進めるシステム開発のありかたを「0次システム開発」と称して顧客にサービスを提供している。「0次システム開発」によって顧客のDX(デジタルトランスフォーメーション)を成功に導くことを、同社では「0次DX」と呼ぶ。
同社が唱える「システム開発における課題」とは、日本では常識になっている多重下請け構造にある。システム開発に携わる企業が1次、2次、3次等と多層になるような開発体制にあること。また、発注者である顧客や上位にいるシステム開発企業が上、受注する側のシステム開発企業が下という「外注」「下請け」意識で、顧客が本当に必要とするシステムを作成できていない。
多層に分かれたシステム開発においては一部の開発工程にしか携われないエンジニアが増え、本来「DX」の担い手であるエンジニアたちの成長が阻害され、エンジニアが使い捨てられている。開発工程の分業によってエンジニア全体の能力の底上げがないため、優秀なエンジニアに仕事が集中し疲弊してしまっている現実があり、エンジニアとしての明るい未来像を描くことができなくなっている。エンジニア出身の経営者がマイクロソフト、グーグル、フェイスブックといった世界的サービスを生み出したような、エンジニアが活躍する環境を日本ではまだ作れていない。
同社ではコンサルティングからシステム開発までを一気通貫でサービス提供するためのエンジニアを抱え、顧客のDX、システム開発の内製を実現させる。また、システム開発企業向けのオープンプラットフォームサービス「WhiteBox」を展開している。システム開発企業などが利用を申し込み、同社がそれを会員として受付処理することにより利用できる。 
従業員数は321名(内 エンジニア253名)(24年12月末)。

 

【1-1 沿革】

2009年1月に現社長である高井淳氏が東京都渋谷区に設立。以降、渋谷区内に本社を移転しながら成長してきた。24年3月に東証グロース市場へ新規上場。

 

年 月

概要

09年 1月

東京都渋谷区道玄坂にシステム開発等を目的として株式会社情報戦略テクノロジーを設立

10年 4月

本社を東京都渋谷区渋谷に移転

11年 8月

本社を東京都渋谷区円山町に移転

13年 3月

本社を東京都渋谷区恵比寿に移転

14年 6月

東京都渋谷区広尾にITコンサルティング等を目的として子会社「株式会社coolest」を設立(14年10月に「株式会社情報戦略パートナーズ」に社名変更、19年4月に「株式会社iforwsrd」に社名変更、21年5月吸収合併)

15年 8月

本社を東京都渋谷区東に移転

16年 6月

東京都渋谷区東にECショップの運営等を目的として子会社「株式会社トライアングルファースト」を設立

18年 8月

オフショア開発を目的として子会社「Information Strategy and Technology Vietnam Co., Ltd.」を設立(23年8月清算完了)

19年 11月

「株式会社トライアングルファースト」を「株式会社WhiteBox」に社名変更し、20年1月より事業目的をクラウドサービスの提供等に変更

20年 1月

パートナー人材の獲得を目的として、ITエンジニア・クリエイター向け賃貸住宅事業を展開する株式会社CEspaceの第三者割当増資を引き受け資本業務提携

9月

株式会社WhiteBoxが「WhiteBox」β版をリリース

21年 1月

株式会社WhiteBoxが「WhiteBox」サービスを正式開始

9月

株式会社WhiteBoxが「WhiteBox」の有償化を開始

22年 7月

株式会社WhiteBoxを吸収合併

24年 3月

東京証券取引所グロース市場に株式を上場

9月

本社を東京都渋谷区恵比寿ガーデンプレイスタワーに移転

25年 1月

システム開発企業向けオープンプラットフォームサービス「WhiteBox」 の開発・企画及び運営をする株式会社WhiteBoxを会社分割により設立

2月

インフラ系のシステムエンジニアリングサービスを事業基盤とする株式会社エー・ケー・プラスの株式取得

 

 

【1-2 企業理念(フィロソフィー)】

(同社資料より)

私たちは、システム開発における多重下請け構造をなくしていきます。

 

多重下請け構造の弊害から生まれる巨大なシステム障害と、ユーザーの生活に寄り添っていないサービス開発をなくしていきます。そのシステム障害の修復や、サービスをつくり直すために捻出される本来必要ではなかった莫大なカネをなくしていきます。
システムエンジニアの使い捨てという発想をなくしていきます。優秀なシステムエンジニアが育たないという環境をなくしていきます。先進国では優れたシステムエンジニアが経営者になっていく。そんな環境が日本では少ないという事実をなくしていきます。優秀な人たちがシステムエンジニアという仕事を選ぼうとしていない状況をなくしていきます。
「要件定義のウソ」をなくしていきます。時代も、使う人も常に変化していく中で、システムに完成はありません。「とりあえず要件定義に沿うために」と、中途半端で帳尻だけを合わせるようなデタラメなシステムをなくしていきます。
外注という概念をなくしていきます。外注により生まれる上下関係からコミュニケーションやアイディアが滞ってしまう機会をなくしていきます。相手の言っていることが明らかに間違っているとわかりながら、それでも「はい、はい」とごまかしたまま進行していくような不健全なチームをなくしていきます。

 

世界の基盤は、システムでできている。企業活動のすべてのシステムが、そしてシステムに携わるすべての人が、健全に懸命に誠実に活躍できるならば、企業が提供するサービスや商品や施設などを享受するすべての人の生活と未来が、確実に豊かに、幸せになっていく。
1次請け、2次請け、3次請けという構造から、0次DXへ。ダイレクトに相談され、私たちと1チームになりカタチにしていく。つねに相談と提案が繰り返されながら、改善と改良が積み重なり、進化し続けていく。
多重構造と下請け。その歪んだ発想を常識にしてしまっている現状を、私たちはなくしていきます。

 

システム開発におけるすべての課題をなくし、あらゆる限界を超えていくことで、この国の、そしてこの国で生きていく人の確実な豊かさと、幸せをつくっていきます。

 

企業と、ともに。

 

【1-3 事業内容と特徴】

単一セグメント。顧客のDXを実現する「0次システム開発」、及びシステム開発業界のDXを実現する「WhiteBox」サービスからなる、DX関連事業を展開する。顧客とエンジニアが協働して進める。

 

(a)アジャイル開発としての「0次システム開発」
アジャイル(素早い)開発とはシステムやソフトウェア開発におけるプロジェクト開発手法の一つ。大きな単位でシステムを区切ることなく、小単位で実装とテストを繰り返して開発を進めていく。従来の開発手法に比べて開発期間が短縮される。「0次システム開発」は、顧客とエンジニアが提案・相談を繰り返しながら協働して開発していく、ビジネスの状況変化に対応して変更可能なアジャイル型の開発手法。
IT業界には、多重下請け構造という、顧客から委託された業務を1次請け企業が、2次請け企業、更にその下層の3次、4次請け企業に流していくピラミッド型構造が存在している。多重下請け構造に基づくシステム開発では、最初に顧客と1次請け企業が決めた要件どおり開発し納品する、ビジネスの状況変化に対応できない後戻りが難しいウォーターフォール型(多くの工程を上から順番に行う)の開発手法が採られている。
対して、アジャイル型の開発手法のメリットは、以下のとおり。
①「作っては見せ」を繰り返しながら開発を進めていくため、詳細な要件定義が必要なく、開発・改善のハイスピード化が図れる。
②「お客様の要望どおり作りましたという証拠」としてのドキュメントが不要或いは最小限になるため、システムの開発・改善に時間及びコストを集中できる。

③重要度が低い部分も含め全てテストし尽くすのではなく、必要十分なテストを都度行いながら開発を進め、不具合が発生したら即対応するスタイルのため、余計なテストコストをカットできる。

 

ウォーターフォール開発とアジャイル開発の一般的な違いは以下のとおり。

 

ウォーターフォール開発

アジャイル開発

契約形態 請負契約 準委任契約
開発スタートまで 要件や成果物を全て明確にしてからスタート 要件が概ね決まったものからスタートできる
追加の要望がある場合 見積が必要、追加費用が必要 見積不要、工数内で収まれば追加費用は不要
成果物の確認 開発終盤まで確認不可 随時可能
開発体制 請け負った開発規模に必要なだけの体制を一定期間固定的に用意 最小1ヶ月単位で体制を柔軟に変更可能

 

ビジネス状況に合わせてシステム及びそれに基づくビジネスモデルを変化し続けられる企業が勝つDXの時代により必要なのは、多重下請けによるウォーターフォール型ではなく、アジャイル型のシステム開発であると同社では考えている。

なおアジャイル開発でも、発注者/受注者の関係に止まって一方向の作業依頼によって1次請けのシステム開発を行っている限り、「0次システム開発」とは言えないと同社は考える。顧客の社員と同社エンジニア及びパートナーが協働して業務上の課題を解決することで、顧客におけるシステム開発の「内製」を実現するのが同社の考える「0次システム開発」。「内製」とは、事業会社がシステム開発会社任せにせず自ら主導的にシステム開発を推進することを指す。同社では顧客の「DX内製」を支援するにあたり、第三者的な受託者という意識ではなく、顧客との間で相談・提案を繰り返しながら協働してシステム開発を進めることを特徴としており、それを「1次」請けを超えた「0次」と表現している。
そのため、「0次システム開発」においては、多重下請け構造における発注者から受注者への一方向の作業依頼関係ではなく、お互いの提案・相談を前提とする対等なパートナー関係を志向している。

 

(b)上流から下流まで一気通貫でのサービス提供
一般的な1次請けの開発では、あくまで顧客が要件定義するのを手伝うのに止まっており、業務・システム要件に踏み込んで主体的な提案を行うことが少ない。同社の「0次システム開発」では、業務上の課題に対して主体的な提案を行っており、ITコンサルティングと呼ぶことも可能なサービス。また、同社は自社製品を持たず、他社の販売代理店にはなっていない。このため、顧客の立場に立った提案が可能。

なお、23年12月時点で、新卒で入社した1年目のエンジニアを除く社員エンジニアの1人当たり平均月間売上高(人月単価)は約120万円。ただし依然として大手ITコンサルティング会社と比べて低く、提供価値に見合う金額を得ていないとの認識。役割に応じた単価設定を継続的に上げていく考え。

 

(c)営業力があるシステム開発企業
IT業界の案件獲得は1次請けシステム開発企業(SIer)経由が主流。
国内には33,402社(総務省・経済産業省「2022年 経済構造実態調査」)のシステム開発企業(ソフトウェア業、情報処理・提供サービス業)が存在している。エンドユーザー企業は既に取引のある1次請け企業にコンタクトを取り、1次請け企業が定期的な訪問やコンタクトを受けている2次請け企業の中からエンドユーザーの要望に対応可能な外部委託先を選定するというのが、システム開発の受発注において一般的に見受けられる流れであり、多重下請け構造を生じさせている。

同社では、エンジニアの待遇・市場価値を上げることを通じて優秀な人材がエンジニアを目指す社会の実現を目指し、各業界のリーディングカンパニーに集中して営業を行っている。同社のようにエンドユーザー企業に自らアポイントを取って新規開拓営業を行い、直取引を獲得するシステム開発企業は比較的少ない。同社はエンジニアの稼働を埋めるためという受動的な営業ではなく、絶えず積極的な営業活動を推進している。

 

(d)エンジニアの就業環境
「すべてを、なくしていく。」という企業理念のもと、エンジニアについても以下の事項を掲げている。
・システムエンジニアの使い捨てという発想をなくしていきます。
・優秀なシステムエンジニアが育たないという環境をなくしていきます。
・先進国では優れたシステムエンジニアが経営者になっていく。そんな環境が日本では少ないという事実をなくしていきます。
・優秀な人たちがシステムエンジニアという仕事を選ぼうとしていない状況をなくしていきます。

 

そのため、同社はエンジニアの就業環境の整備を以下のとおり進めており、就業環境の整備により優秀なシステムエンジニアが多く採用できるよう、且つ長く就業できるよう努めている。
・平均年収708万円(24/12期、2024年新卒を除く)
・実績・行動・努力を漏らさず反映できるよう、細かく評価項目を設定した評価制度。
・マネジメント職以外にもスペシャリスト、またその知見を活かしエンジニア以外の道も広く用意。
・全工程+クライアントとのコミュニケーションを担当しても、1日当たりの平均残業時間は1時間未満(社内業務含む)。

(e)システム開発企業向けのオープンプラットフォームサービス「WhiteBox」
「WhiteBox」は、システム開発企業又はフリーランスが利用申込を行い、同社がそれを会員として受付処理することにより利用できるサービス。企業所属エンジニア又はフリーランス自身の開発経歴(スキルシート)の登録管理等、基本的な機能は無料で利用することができる。1次請け企業がパートナーを募集する目的でシステム開発案件を掲載・提案したり、パートナーが1次請け企業とエンジニアに関する情報を共有するなどの機能を利用する場合には、月額基本料金が発生する。同社は、自らこのサービスを利用するとともに、全てのシステム開発企業が利用できるオープンなプラットフォームサービスとして提供している。これにより、システム開発における多重下請け構造をなくすという同社理念に共感するシステム開発企業を増やし、業界改革を推進することを目指している。「WhiteBox」は、受発注の成立までのやり取りを依然として電話やメール等の旧来の方法に依っていることが多いシステム開発業界のDXを実現させるサービス。

 

【1-4 サービスライン】

同社は顧客から「0次システム開発」というコンセプトでシステム開発を受注し、更にシステム開発企業向けオープンプラットフォームサービス「WhiteBox」を自社サービスとして提供している。
より広い領域への事業展開などを目的として、25年1月には株式会社WhiteBoxを新設分割した。DXプラットフォームである「WhiteBox」の更なる活用と新たな事業を展開していく。

 

a 0次システム開発
顧客の社員と同社エンジニア及びパートナーが協働し、システム開発を通じて業務上の課題を解決する「0次システム開発」を提供しており、専ら顧客(エンドユーザー)との直取引案件を手掛けている。

「0次システム開発」では、要件が固まっていなくてもスタートできるというアジャイル開発の特徴を生かし、アプリケーションのプロトタイプ構築、システム統合、スマホアプリ開発・運用、システム基盤のクラウドへの移行等の分野でも利用されている。

同社アジャイル開発の中でも代表的な手法であるスクラム開発に精通したエンジニアの育成に努めており、そうしたエンジニアが顧客の社員と協働してプロジェクトを管理・推進する案件を多く手掛けている。スクラム開発はチームメンバーにタスクを振り分け、それぞれがそのタスクを達成することでプロダクトの完成を目指す開発手法。それぞれの作業が、他の人の作業を支えている形になるのでチームワークやコミュニケーションが重要になる。

 

b システム開発企業向けオープンプラットフォームサービス「WhiteBox」
システム開発業務を発注又は受注する企業やフリーランスに対して、所属エンジニア又はフリーランス自身の開発経歴(スキルシート)の登録管理等、基本的な機能を無料で提供する。また、1次請け企業がパートナーを募集する目的でシステム開発案件を掲載・提案したり、パートナーが1次請け企業とエンジニアの情報を共有することが可能。

 

「WhiteBox」の仕組み

(同社資料より)

 

「WhiteBox」の特長は、エンジニア情報の登録を促す工夫として、エンジニアの経験スキル・分野や特徴を記録するスキルシートを管理できるクラウドサービスを無償提供している点。システム開発企業にとってエンジニアのスキルシートをファイルで更新管理するのは手間がかかる。「WhiteBox」の機能を使えば、スキルシートの管理がしやすい。また、どのようなスキル・経験を持ったエンジニアが在籍しているかという情報を提供することによって、1次請け企業から案件情報や開発の打診を直接受け取ることが可能。
案件を複数抱え、有望なパートナーを探しているシステム開発企業は、「WhiteBox」を通じて、登録されているパートナー候補企業所属エンジニアのスキルシートを検索し、候補企業に対して直接提案依頼を出すことが可能になる。また、案件情報を「WhiteBox」で公開し、パートナー候補企業から提案を募ることも可能。

システム開発業界では、契約の終了が間近になってから所属エンジニアの空き稼働を作らないために慌てて営業活動が開始される。その結果、契約が短期間で終了しやすい、引き合いの少ないエンジニアの経験・スキルをベースにした提案営業が一般的に広く行われている。「WhiteBox」においては、SIerプランの会員である1次請け企業はパートナー候補企業所属エンジニアのスキルシートが閲覧可能である。このため、顧客のニーズが顕在化していない時点で、候補企業と共同で顧客に対して案件を創出するための提案を仕掛ける「未来マッチング」を行うことができる。
「WhiteBox」は、同社が企業理念として掲げている業界の下請け体質の改革に繋がる。また、同社にとってのパートナー企業開拓力に寄与するものと考え、20年4月に「WhiteBox」の実証実験を開始し21年1月に正式サービスへ移行した。すでに法人・個人で約3,000社の会員数があり、3万人超のエンジニアが登録されている。

 

【1-5 ビジネスモデル】

▷ 社員エンジニアは、「厳選採用と適切な研修」を経てプロジェクトに配属。
▷ オープンプラットフォーム「WhiteBox」に登録している、「パートナー企業の優秀なエンジニア」を活用。

 

(同社資料より)
ベンチャーから成長した大手IT企業は、DXを内製することでDXを成功させている。一方で社歴の長い大手企業はDXをシステム会社頼みにしているためDXに苦戦。同社は、DX内製を大手企業が実現できるよう支援している。

(同社資料より)

 

【1-6 強み】

強固な顧客基盤
売上の約8割が売上高1,000億円以上(グループ合計)のエンタープライズで構成されている。エンタープライズはIT投資額が安定しており、同社の安定的な事業基盤を生み出す。また、DXを早くから推進している業種が売上高の上位を占める。

 

売上規模別の売上構成比

業種別売上高構成比

 

 

(同社資料より)

 

多くの大企業に対する実績
主な顧客

(同社資料より)

 

また、24/12期第4四半期(10~12月)には新たに大阪ガスや第一実業から受注。

2.2024年12月期決算概要

【2-1 連結業績概要】

 

23/12期

構成比

24/12期

構成比

前期比

会社予想

予想比

売上高

5,298

100.0%

5,847

100.0%

+10.4%

5,811

+0.6%

売上総利益

1,547

29.2%

1,674

28.6%

+8.2%

販管費

1,159

21.9%

1,261

21.6%

+8.8%

営業利益

388

7.3%

413

7.1%

+6.4%

419

-1.6%

経常利益

385

7.3%

396

6.8%

+3.0%

394

+0.5%

当期純利益

275

5.2%

273

4.7%

-0.8%

286

-4.6%

*単位:百万円、23/12期上期の実績は同社の試算によるもの。

 

増収増益、概ね会社計画予想水準で着地
売上高は前期比10.4%増の58億47百万円。「0次DX」実現のために顧客と協働してシステム開発を進める「0次システム開発」において、引き続き既存顧客の深耕と新規顧客の開拓を進め、それを実現する人材の採用とパートナー企業の拡充に努めてきた。特にエンジニアにおいては、エンジニアリングだけでなく、顧客の問題解決をコンサルテーションできる人材の採用・育成に注力した。また、「ラボ開発」という、複数のエンジニアがリソースを出し合うことでより高度なサービスを提供する新しいサービス形態を打ち出した。これにより人的リソースの最適化を図ることができ、更に多くの案件に対応できるようになった。自社エンジニア数は、新卒採用及び中途採用により、前期末219名から253名へ増加した。
営業利益は前期比6.4%増の4億13百万円。売上総利益率は前期29.2%から28.6%へ低下、販管費の増加は抑えたものの営業利益率は前期7.3%から7.1%に低下した。営業外で上場関連費用があり経常利益は前期比3.0%増の3億96百万円、税負担が増加し当期純利益は同0.8%減の2億73百万円。
概ね会社予想通りの水準で着地した。営業利益が予想を若干下回ったが、新規上場に係る費用や予定より早期になったオフィス移転費用によるもの。これら想定外の費用が1億円弱だった。

 

収益構造の内訳
・4月に入社した新入社員の人件費は、当初は販管費として計上し、エンジニアとして配属になった場合は原価として計上。
・9月の本社移転による影響で、地代家賃やその他販管費が増加。

 

(同社資料より)

 

四半期推移
同社のビジネスモデルはストック型(累積型)のため、期末に向けて売上は拡大傾向。24/12期2Qは、4月入社の新卒社員の人件費、研修費などの受け入れ費用等が発生した。3Qからはオフィス移転に伴う地代家賃が販管費の大きな比率を占める。
4Qも引き続き計画通り受注が伸びており、売上高は1,576百万円まで伸長した。引き続き採用に注力するも、受注した案件に対応するため原価率の高い業務委託を用いることにより売上原価は増加している。一方、採用計画の未達により採用費が抑えられ、販管費は計画を下回った。

 

エンジニア数の推移
同社の売上高はエンジニア×単価で構成される。このため、エンジニアの数が売上成長への鍵を握る。
24/12期末のエンジニア数は前期末比34名増と大きく増加した。ただし、採用計画は未達となっている。25/12期末には314人を計画。25年4月には新卒社員のエンジニア職31名が入社予定。売上増加に伴い必要となるエンジニアについてはマルチプラットフォーム「WhiteBox」等を活用。

 

 

単位:人

 

~採用の要件~

01適正診断テストの高得点者

エンジニア向けの適正診断テストで一定以上の得点を出した人物

02向上心をもって自走できる

わからないことは自ら調査・質問しながら習得できる人物

03高いコミュニケーション力

0次システム開発では、対話を重ねながら進めることが必要

04 フィロソフィーへの共感

日本のシステム開発業界の変革を担う志

(同社資料より)

 

24/12期の成果と課題
24/12期は新規上場し、オフィスも移転。今後の成長に向けて大きな一歩を踏み出した1年といえよう。上場を機にM&Aの案件も増加している模様。

 

成果
24年3月に東証グロース市場に上場したことで、信用度が高まり取引環境は改善。売上高の拡大に寄与。
24年3月入社した30名の新卒社員の採用・育成で手ごたえがあり、今後は更なる 大人数の採用・育成も可能に。
25/12期に計画していた本社移転を前倒しで完了。移転時期が早まったことにより今期の地代家賃として57百万円発生するも、作業効率の高まりや採用活動におけるブランディングで効果を実感。

 

課題
時流に適した新卒採用の実施。紹介料の発生が標準化し、採用の難易度および費用が上がり始めている。
情報戦略テクノロジーから、「情報戦略テクノロジーグループ」へ。より大きな成果を出すためにM&Aや提携などを活用していく。

 

【2-2 財政状態と

キャッシュ・フロー】

◎財政状態

 

23年12月

24年12月

増減

 

23年12月

24年12月

増減

流動資産

1,719

2,587

+867

流動負債

950

1,015

+65

現預金

1,175

1,836

+660

仕入債務

208

249

+41

売上債権

517

601

+83

固定負債

173

47

-126

固定資産

118

228

+109

負債合計

1,123

1,062

-61

有形固定資産

20

24

+4

有利子負債

505

323

-181

無形固定資産

4

3

-1

純資産

713

1,752

+1,038

投資その他の資産

93

199

+106

利益剰余金合計

663

936

+273

資産合計

1,837

2,815

+977

負債・純資産合計

1,837

2,815

+977

*単位:百万円

 

現預金の増加を主因に資産合計は前期末比9億77百万円増加し28億15百万円。
有利子負債の減少などで負債合計は同61百万円減少の10億62百万円。
資本金、資本剰余金の増加により純資産は同10億38百万円増加の17億52百万円。
自己資本比率は前期末より23.4ポイント上昇し62.2%。
上場時の資金調達により財政状態は大きく変動した。

 

◎キャッシュ・フロー

 

23/12期

24/12期

増減

営業CF

292

193

-98

投資CF

-7

-100

-93

フリーCF

284

93

-191

財務CF

-196

567

+764

現金同等物残高

1,155

1,816

+660

*単位:百万円

 

税引前当期純利益の計上などで営業CFは1億93百万円の収入。フリーCFは93百万円の収入となった。
株式の発行による収入により財務CFは5億67百万円の収入。
現金及び現金同等物残高は前期末11億55百万円から18億16百万円に増加した。

 

3.2025年12月期業績予想

【3-1 業績予想】

 

24/12期

構成比

25/12期(予)

構成比

前期比

売上高

5,847

100.0%

6,427

100.0%

+9.9%

営業利益

413

7.1%

311

4.8%

-24.7%

経常利益

396

6.8%

311

4.8%

-21.6%

当期純利益

273

4.7%

235

3.7%

-13.6%

*単位:百万円
*25/12期予想は連結、前期比は24/12期非連結との比較

 

前期比9.9%増収、24.7%営業減益を見込む
25/12期から連結決算に移行し、売上高は前期比9.9%増の64億27百万円、営業利益は同24.7%減の3億11百万円を見込む。
引き続き大手企業向けDX内製支援サービスに注力する。25年1月から新設分割した(株)WhiteBoxが行うシステム開発企業向けオープンプラットフォームサービス「WhiteBox」の拡充に努めることで業容の拡充に取り組む。24/12期には、同社に所属するエンジニアの人数だけでは十分に対応できず、同プラットフォームなどを利用することでエンジニアを確保していた。引き続きパートナー企業のエンジニアの組み合わせで役務を提供することで失注を避け、売上を伸ばしていく考え。また、中長期的な成長を目指すために、優れたエンジニアを中心とした組織的な課題解決を行う「ラボ型」での受注に努めることで利益率の向上を目指す。25/12期は中長期的な成長に向けた収益化の基盤をつくる期間とし、各事業領域の事業戦略の進捗状況に応じた事業投資を行っていく。

 

【3-2 成長戦略】

骨子
25/12期は出資・M&Aの活用も推進していく。

(同社資料より)

 

エンジニア採用の加速
以下のような採用面での優位性を有している。同社はこれらの優位性を活かして、新卒・中途共に採用人数を増やす計画。
~採用における情報戦略テクノロジーの優位性~
01年収が業界平均より高い
顧客との直接取引のため、中間マージンを取られることなく、社員に適正に還元できる。
02幅広い工程に関われる
他社では年収が上がると強制的に管理的な役割に回されることが多いが、
同社では上流からプログラミングまで幅広く携わり続けることができる。
03成長機会が多い
専業ベンダーやユーザー企業では、携われるシステムや技術が限定されることが多いが、
同社で取り扱うシステムや技術は多様であり、継続的なスキルアップ・拡張が可能。

 

厳選採用される新卒社員への適切な待遇
新卒エンジニア職の募集要項
給与 初任給310,050円
キャリアアップに関する諸制度
・書籍購入制度(電子書籍可)
・資格手当補助(受検料を会社負担)
・キャリア相談制度(上長面談と別に年2回)
・オンライン研修(1,800講座以上受け放題)
・奨学金補助制度(月額30,000円を上限に5年間)
・引越し補助制度(上限10万円)
・社内表彰(年間MVP/MIP)

 

エンジニア育成制度・施策
入社後もエンジニアの市場価値を継続的に高めるため、各種育成制度・施策を整備。

 

OJT・1on1

資格取得奨励・e-Learning

ナレッジシェア

プロジェクト内でのOJTを基本としつつ

上長との1on1を月1回以上実施

資格取得費用の

会社負担と奨励金支給

社内の知見が定期的に

蓄積・共有される仕組みを構築

 

 

 

• 技術面での疑問の解消、指導

• キャリアアップに向けた意識の醸成

• プロジェクト内での様々な悩みに関する相談

• 上記以外の資格についても取得費用を会社負担

• 会社契約のe-learningを誰でも受講可能

• 社内システム「Knowledge」によって技術知識共有

• 発表の場としてLT(ライトニングトーク)会を定期的に開催

• 他にも、各種勉強会を不定期に開催

(同社資料より)

 

ラボ型(体験共有型)内製支援の拡充
一般的なプロジェクトでは、ひとつのプロジェクトに多人数を投入する。人数が少ない優れたPMやPLが、案件ごとの専従のため受注が増えない。常に全てのリソースが必要なわけではない。同社が推進するラボ型では、プロジェクトを人ではなく「ラボ」という“チーム”で担当する。これにより優れたPMやPLが複数の案件に対応するため対応可能な案件数が増加する。また、必要な時に必要なだけリソースを費やすことで最適なパフォーマンスにつながる。また、安心・安全な環境下、優れたPMやPLの下で若手人材の起用が可能となる。

 

(同社資料より)

 

子会社の設立
より広い領域への事業展開などを目的とし、株式会社WhiteBoxを25年1月に新設分割。DXプラットフォームである「WhiteBox」の更なる活用と新たな事業を展開していく。
【情報戦略テクノロジーの事業領域】
・主に事業会社に対して、課題解決やサービスを提供。
【新会社WhiteBoxの事業領域】
・SIer(System Integrator)やSES(System Engineering Service)事業者に向け課題解決やサービスを提供。
・プラットフォームサービス「WhiteBox」を移管し、プラットフォームの拡大 を実現。
・プラットフォーム会員向けの付帯サービスとして、人材サービスにも注力。
WhiteBox社の強み
すでに法人・個人で約3,000社の会員数があり、エンジニア数は3万名超の登録があるプラットフォームをベースとした事業展開が可能。

 

M&Aによるグループの拡充
システムエンジニアリングサービス、クラウドSI、運用保守アウトソーシングを展開する株式会社エー・ケー・プラスを子会社化した。エー・ケー・プラスは同社とは異なる事業領域で展開しており、グループインすることでより広い事業展開を見込む。エー・ケー・プラスの利益計画の取り込みは4月を予定。
エー・ケー・プラスの業績推移

 

(千円)

21/12期

22/12期

23/12期

売上高

676,615

822,066

890,756

営業利益

21,409

30,230

37,464

経常利益

21,150

31,141

37,116

当期純利益

15,517

22,071

26,775

 

4.今後の注目点

24/12期は概ね会社予想水準で着地し、上場して最初の本決算は無難に通過したといえよう。ただし、25/12期の減益予想は残念なところ。売上高は保守的に、先行する費用はしっかりと取り込んだ予算となっている。また子会社となるエー・ケー・プラスの業績が取り込まれていない。四半期で見ると24/12期4Qの売上高は15億76百万円、4倍すると売上は概ね25/12期の会社予想水準となる。ただし同社の売上はストック型であり、今後顧客が増加することにより上乗せされると見るのが妥当。同社自身もかなり大きく上回る手応えが実際にありそう。エー・ケー・プラスの取り込みもあり、早ければ1Q決算発表時にも上方修正の可能性がありそう。新規顧客を開拓している中で、エンジニア数の確保が引き続き課題となる。「WhiteBox」で従業員では賄いきれないエンジニアを調達しているが、分社化したことでさらなる貢献に期待。
上場から約1年になるが、24/12期決算発表を経て株価は上場時の公開価格(460円)の水準で初値(1,0211円)は大きく下回っている。25/12期の減益予想を失望して株価は下落したが、逆に上方修正となれば見直しが進むだろう。PERは成長性を考慮すると低位にとどまっていると考える。

 

 

<参考:コーポレート・ガバナンスについて>

 

◎組織形態及び取締役、監査役の構成

組織形態 監査役設置会社
取締役 4名、うち社外2名
監査役 3名、うち社外3名

 

◎コーポレート・ガバナンス報告書(更新日:2024年3月28日)
基本的な考え方
当社は、「当社株主の利益を最大化することを目標とする」との基本的認識とコンプライアンスの重要性をコーポレート・ガバナンスの基本的な考え方として、株主の権利を重視し、また、社会的信頼に応え、持続的成長と発展を遂げていくことが重要であるとの認識に立ち、コーポレート・ガバナンスの強化に努めております。

 

<コーポレートガバナンス・コードの各原則を実施しない理由>
当社はコーポレートガバナンス・コードの基本原則をすべて実施しております。

 

 

 

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