ウイルプラスホールディングス(3538) 積上げに期待 過去最高売上高更新の見込み

2023/09/21

 

 

 

成瀬 隆章社長

株式会社ウイルプラスホールディングス(3538)

 

 

企業情報

市場

東証プライム市場

業種

小売業(商業)

代表取締役社長

成瀬 隆章

所在地

東京都港区芝5-13-15 芝三田森ビル8階

決算月

6月

HP

https://www.willplus.co.jp/

 

株式情報

株価

発行済株式数(期末)

時価総額

ROE(実)

売買単位

1,197円

10,078,400株

12,063百万円

14.0%

100株

DPS(予)

配当利回り(予)

EPS(予)

PER(予)

BPS(実)

PBR(実)

43.51円

3.6%

174.04円

6.9倍

1,005.48円

1.2倍

*株価は9/5終値。各数値は23年6月期決算短信より。

 

業績推移

決算期

売上高

営業利益

経常利益

当期純利益

EPS

DPS

20年6月(実)

35,068

1,160

1,196

802

85.32

14.00

21年6月(実)

40,776

2,290

2,301

1,533

161.47

28.26

22年6月(実)

39,696

2,366

2,377

1,550

162.84

34.90

23年6月(実)

44,115

1,867

1,943

1,302

135.45

41.17

24年6月(予)

48,821

2,312

2,303

1,692

174.04

43.51

*単位:百万円、円。予想は会社側予想。

 

株式会社ウイルプラスホールディングスの23年6月期決算概要などをお伝えします。

目次

今回のポイント
1.会社概要
2.中長期戦略
3.成長戦略
4.2023年6月期決算概要
5.2024年6月期業績予想
6.今後の注目点
<参考:コーポレート・ガバナンスについて>

 

今回のポイント

  • JEEP、BMW、MINI、VOLVOなど11ブランドを取り扱う輸入車正規ディーラー5社を連結子会社とする持株会社。「M&A」を通じて、「新規エリア」、「新規ブランド」の獲得を目指し、事業拡大に積極的に取り組む。同時に「事業の最大化」を進めながら、「店舗のグリーン化」を実施し、「GHG排出量削減の最大化」を追求し続けることをコミットする事で「気候変動問題解決」を「機会」と捉えている。 
  • 23年6月期の売上高は前期比11.1%増の441億15百万円。新車販売、中古車販売、ストック型ビジネスとも増収。過去最高を更新した。営業利益は同21.1%減の18億67百万円。増収ではあったが、新車販売においては販売台数を係数とする販売奨励金の低下、車輌仕入れ原価の上昇で粗利益率が悪化した。中古車販売も期末在庫評価損により、粗利益率が悪化。一方で、各種コスト、中長期戦略関連費用が増加した。 
  • 24年6月期の売上高は前期比10.7%増の488億21百万円、営業利益は同23.8%増の23億12百万円の予想。売上高は前期に続き過去最高を更新する見込み。既存ブランドについては、顧客からの安定した需要が続いていることから、受注活動は堅調に推移すると見込んでいる。 
  • 新車販売については、販売価格の上昇が営業活動に影響を及ぼすことが見込まれるが、前期末までの受注に対する納車も着実に進むことから新車売上高は増収を見込んでいる。中古車販売は、前期中の中古車市場の変動も今期は正常化すると想定しており、前期並みの売上高を予想している。ストック型ビジネスである車輌整備・保険代理店事業は、各顧客との繋がりをさらに強化し、より盤石な収益基盤構築を目指す。 
  • 販管費については、業容の拡大に伴い人件費、販売関連費用、店舗維持関連費用等が増加すると見込んでいる。また、各社員がその能力を充分に発揮できるよう待遇面での改善やDXの推進による単純作業の軽減、リスキングのための研修受講等の人的資本への投資を続けていく予定である。 
  • 23年6月期第4四半期売上高が四半期ベースの過去最高を記録したように、前第4四半期より新車販売は、台数回復と単価アップにより、本格回復に向かっているようで、今期は通期でも過去最高売上高を更新する見込みである。一方、増収に伴い利益も2桁の増加を予想するものの、戦略的投資を中心としたコスト増加を計画しており、営業利益は過去最高には及ばないようだ。新規ブランドであるBYDがどの程度寄与してくるかも含め、売上高の更なる積み上げに伴い、利益をどれだけ拡大していけるかを注目していきたい。 
  • 一方で同社では、新型コロナウイルス感染症拡大が収束するのと軌を一にして特殊要因で急増した自動車需要は縮小に向かい、ガバナンス強化や環境課題対応のコスト増もあり、今後は経営基盤の脆弱な中小ディーラーを中心とした案件の増加を見込んでいる。この3年間止まっていたM&A戦略は大きく加速するものと同社ではみており、その進捗にも期待したい。 

     

     

1.会社概要

JEEP、BMW、MINI、VOLVOなど11ブランドを取り扱う輸入車正規ディーラー5社を連結子会社とする持株会社。顧客満足度の向上に注力し、マルチブランド戦略、ドミナント戦略、M&A戦略による成長を追求している。M&Aにおける事業再生能力には大きなアドバンテージを有する。EV化の進展を始めとした自動車を取り巻く大きな環境変化を好機ととらえ、更なる成長を目指している。

 

【1-1沿革】

1997年1月、福岡県北九州市で代表取締役社長成瀬隆章氏の実父が輸入車販売会社「株式会社さんふらわあシージェイ」を設立。同社は西日本地区で最初のCHRYSLERの正規ディーラーであった。
2004年10月、成瀬社長が同社株式を全株取得し、ウイルプラスグループとしての事業活動を開始した。
成瀬社長はじめとしたスタッフ数名の小規模なディーラーながらCHRYSLER車の販売で全国的にも優秀な成績を上げ高い評価を受けたことで、2005年には東京都大田区にあったCHRYSLER直営店を譲受して東京へ進出。2006年には福岡県久留米市にも店舗を開設。東京、福岡でのドミナント戦略を開始した。
経営資源の最適配置や迅速な経営意思決定によってディーラー買収を機動的に実行することを目指し、2007年10月、株式会社ウイルプラスホールディングスを設立。
持株会社体制の下、積極的に業容を拡大し、2016年3月に東証JASDAQに上場し、2017年9月、東証2部への市場変更を経て、2018年2月、東証1部に指定となった。
2022年4月、市場再編に伴い、東証プライム市場へ移行した。23年10月、スタンダード市場に移行予定。

 

【1-2  経営理念】

以下のような存在意義、コア・バリューを掲げている。

 

我々の存在意義(MISSION STATEMENT)

 

我々は輸入車のある生活を提案し、より多くの皆様と豊かさ・楽しさ・喜びを分かち合い、関わるすべての人々を温かい笑顔に変えていく挑戦を続ける。

コア・バリュー

 

・車を愛し、仲間を愛し、誇りを持って働く。

・常に挑戦し、自らの限界を打ち破る。

・チームプレーで大きな結果を出す。

・必ず期限までに目標にたどり着く。

・最後まで諦めない、できるまでやる。

・豊かさ、楽しさ、喜びを提供する。

・誠実さと感謝の気持ちを忘れない。

 

【1-3 同社を取り巻く環境】

同社を理解するうえで重要なポイントとなる事業環境は以下のとおりである。
同社の成長ドライバーであるM&A戦略に関する事業環境については「2.中長期戦略」を参照。

 

◎輸入車のシェアアップが続く国内乗用車市場、輸入車の国内保有台数は堅調な伸び
少子高齢化の進行、自動車の性能向上による保有期間の長期化、消費スタイルや嗜好の変化(=いわゆる若年層の「車離れ」)などにより国内新車登録台数は減少傾向にある。

(同社資料より)

 

そうした中、輸入車の新車登録台数は下のグラフで見られるようにリーマンショック以降、増加傾向にあり、国内輸入車市場は拡大が続いている。これに伴い、国内乗用車市場(軽自動車を除く)における輸入車シェアは上昇している。

 

 

 

(同社資料より)

 

輸入車メーカーは、ハイブリッド車、EV(電気自動車)、PHV(プラグインハイブリッド車)、ディーゼルなど多様な環境対応技術や、ユニークで優れたデザインなど、魅力ある製品を多数投入している。
また、国産メーカーが縮小する市場の中でミニバンやワゴンなど人気車種に開発・販売を集中させラインアップに偏りが出てしまっている一方で、輸入車メーカーは価格、サイズ、車種・タイプにおいて幅広いラインアップを提供していることが、多様性やより魅力的な自動車を求めるユーザーの支持を勝ち得てきたものと見られる。また、販売ネットワークの整備や拡充など日本における積極的な投資もシェアアップに繋がっている。

 

◎同業他社比較

コード

社名

売上高

増収率

営業利益

増益率

営業利益率

ROE

時価総額

PER

PBR

3184

ICDAHLD

31,000

+1.7

1,383

+0.8

4.5%

11.2

5,590

6.1

0.7

3538

ウイルプラスHLD

48,821

+10.7

2,312

+23.8

4.7%

14.0

12,063

6.9

1.2

7593

VTHLD

290,000

+8.9

12,000

-6.7

4.1%

12.4

62,794

8.2

0.9

8291

日産東京販売HLD

150,000

+9.0

6,000

-6.2

4.0%

6.8

31,385

9.5

0.6

9856

ケーユーHLD

142,000

-7.4

8,200

-15.3

5.8%

12.1

55,201

7.2

0.7

*単位:百万円、%、倍。売上高、営業利益は今期会社側予想。ROEは前期実績。時価総額は直近の四半期末株式数×2023年9月5日終値。PER(予)、PBR(実)は2023年9月5日終値ベース(3184 ICDAHLDは9月4日終値)。

 

2桁の増収増益率予想、PBR1倍超は同社のみ。M&Aにおける事業再生能力の高さや配当性向を30%まで引き上げ、利益成長を上回る配当成長を目指す積極的な株主還元方針についての市場の評価が進めばvaluationの水準も異なったものとなるであろう。

 

【1-4  事業内容】

◎概況
持株会社である(株)ウイルプラスホールディングスの下、連結子会社5社において輸入車の新車及び中古車の販売、車輌整備、損害保険の代理店業務などを展開している。取扱ブランド数は11ブランド。取扱うブランドごとにインポーター(日本国内で輸入車を取り扱う業者)と正規ディーラー契約を締結している。

(同社資料より)

 

◎品目(業務内容)
新車及び中古車の販売のほか、車輌整備、損害保険販売なども手掛けている。

(同社資料より)

 

 

品目

内容

 

新車 各社が正規ディーラーとして、各インポーターから仕入れたブランドの全ての新車を販売している。
中古車 各ブランドの高年式低走行の認定中古車を中心に販売している。商品の仕入は、新車販売時の下取、買取、オートオークションにより行っている。
業販 下取した他社ブランドの中古車をオートオークションで販売している。また、他社ディーラーからの依頼を受け、当社グループ内で保有している新車・中古車を販売することがある。
車輌整備 販売した車輌を中心に整備、修理や車検を主なサービスとしている。一部店舗を除き、ショールームと併設する形でサービス工場を設置している。
その他 損害保険会社の代理店として自賠責保険や任意保険等の販売を行っている。インポーターからの新車販売等に係るインセンティブ収入も含まれる。

 

新車販売が事業の柱ではあるが、中古車販売にも注力していることに加え、車輌整備、自動車保険販売など自動車購入後に顧客が必要とするサービスを提供して顧客との関係性を強化することを重視している。
車輌整備に関しては販売後、メンテナンスパッケージを提供することで整備入庫を確実に確保している。保険販売に関しては、保険商品についてのきめ細かい情報提供などが評価され業界平均を上回る加入率・高い継続率を実現している。

 

このように、「販売台数増=フロー型収益の拡大」が、「車輌整備件数増、保険加入件数増」というストック型収益の拡大に結び付いている。

 

◎店舗数
2023年6月末の店舗数は、福岡16店舗、東京・神奈川16店舗、山口2店舗、宮城1店舗、福島1店舗の計36店舗。

 

【1-5 特長・強み・競争優位性】

(1)M&Aにおける事業再生能力
「時間を買う」という観点から現在多くの企業が成長戦略の柱として掲げるM&A戦略であるが、M&Aを成功させるには、「優良な案件の発掘」、「適切な価格での実行」が重要であることは論を待たないが、より重要なのが想定した通りのシナジー効果を生み出すためのM&A後のプロセス「PMI(Post Merger Integration)」であると言われている。
M&Aを行っても、統合阻害要因等に対する事前検証の不足や企業文化の違いをマネジメントできず失敗に終わるケースは枚挙に暇がない。

 

そうした中、投資家が注目すべきは同社の「事業再生能力」であろう。
2007年10月のウイルプラスホールディングス設立以降、現在まで9件のM&Aを実施してきたが、全ての案件で黒字化を達成している。

 

「顧客満足度向上の追求」を始めとした理念の共有、「チャレンジを最大限に尊重する」といった評価軸の明確化がM&A成功の要諦で、これを実行すれば会社を確実に大きく変えることができると同社では考えており、自社の事業再生能力には大きな自信を持っている。

 

(2)輸入車の正規ディーラーをメインとする唯一の上場企業
輸入車の正規ディーラーであっても、中古車販売がメインである企業が多い中、同社は新車販売をメインとしている唯一の上場企業である。
輸入車の新車登録台数はリーマンショック以降、増加傾向にあり、国内輸入車市場は拡大が続いている。国内乗用車市場(軽自動車を除く)における輸入車シェアは9%台で推移しており、国内保有台数の6年平均成長率(2021年時点)は乗用車(軽自動車含む)が0.35%であるのに対し、輸入車(乗用車)は3.54%と堅調に増加している。
市場自体が成長する中、M&A戦略によりシェアの拡大を進めることで、収益の一段の拡大が期待される。

 

(3)ストック型ビジネスによる安定収益構造
ストック型ビジネスと位置づけている車輌整備と保険販売による安定収益構造も同社の大きな特徴・強みである。

 

自動車の国内保有台数の7年平均成長率は約0.3%と増加傾向にある(輸入車に限れば3.5%増)。また、経済状況の変化・環境意識の高まりなどから自動車の平均使用年数は増加傾向にあり、必然的にメンテナンスの重要性が増している。
加えて「CASE」の進展により、整備作業は一段と複雑化し、輸入車の整備業務は正規ディーラーに集約されていくと予想されている。

 

こうしたことから、同社では車輌整備事業の収益機会は今後ますます拡大すると考えており、メンテナンスパッケージや新車延長保証を付加することで整備入庫率の向上を図り、同事業の基盤強化を図る。

 

また、毎期2桁で伸長している保険手数料収入に関しても、スタッフの保険に関する知識のブラッシュアップを継続して顧客満足度の更なる向上を目指しており、保険販売と車輌整備のストック型ビジネスの安定成長基盤の一段の強化に取り組んでいく。

 

 

(同社資料より)

 

2.中長期戦略

社会的課題解決に向けた企業の社会的な存在意義や企業価値向上への取り組みが強く問われている今日、同社では、基本となる成長戦略(マルチブランド戦略・ドミナント戦略・M&A戦略)をベースに、中長期戦略を実行中だ。

 

【2-1 ウイルプラスグループ方針】

「社会的価値向上」と「企業価値向上」の両立、すなわち、社会課題の解決と企業の成長の同時実現を目指す。

 

社会的価値向上に向け、「持続可能な社会実現への貢献」「社会的価値の創造」に取り組む。
具体的には、店舗のグリーン化、店舗エリアの脱炭素化を進め、社会に必要とされる企業を目指す。

 

企業価値向上に向けては、「持続的成長」「中期的な企業価値向上」を目指す。
具体的には、後述するように、M&Aを主軸とする成長戦略を推進し、売上・利益の最大化を目指すとともに、後継者問題の解決、資産(資源)の再利用(リユース)と収益性改善、人材(人的資本)の再教育と活性化など、中小企業の多い自動車販売業界における事業再生を通じた課題解決にも取り組む。

 

「気候変動問題解決」を「機会」と捉え、「M&A」を通じて、「新規エリア」、「新規ブランド」の獲得を目指し、事業拡大に積極的に取り組み、社会価値向上と企業価値向上を通じて「時価総額の最大化」を図る。

 

【2-2 目標】

サプライチェーンを含めた気候変動問題へのコミットメントが求められる中、ブランドメーカーは、正規ディーラーの店舗オペレーションにおけるGHG排出量の正確な把握と、削減目標の設定、そのための具体的な取り組み(デモカーのEV比率、再生可能エネルギー導入率、廃棄物のリサイクル率等)を求めてきている。
そうした中、気候変動問題解決のリーディングカンパニーを目指す同社は、以下のようなGHG排出削減目標を掲げている。

 

2030年度 Scope1+Scope2のGHG排出量を2021年度比較で、50%削減する。
*社用車(試乗車含む)の低炭素自動車比率 2030年度 80%以上
*再生可能エネルギー導入率目標 2025年度 全店舗導入

 

【2-3 同社グループの取り組み】

「社会的価値向上」と「企業価値向上」の同時実現に向けた取り組みは以下のとおりである。

 

(1)社会的価値向上
①店舗グリーン化による脱炭素社会実現への貢献
同社では上記の削減目標設定に加え、店舗エリアにおけるEV普及促進に対応した設備投資などを実施し、輸入車ディーラーとして、いち早く店舗のグリーン化を推進、自動車産業の脱炭素化に貢献している。
23年度実績は以下の通り。

(同社資料より)

 

低炭素自動車比率は、新車販売、自社社用車とも大きく上昇した。
EV充電設備については、急速充電器を5台増加した。7ブランドについて急速充電器を設置済である。
再生可能エネルギー導入店舗数は、22店舗となった。残りの店舗における使用電力については、グリーン電力証書を購入予定で、2023年度のグループすべての使用電力が100%再生可能エネルギーになる見込みである。

 

②その他の取り組み・対応
◎2022年CDP「気候変動」質問書でBスコアを取得
世界中の機関投資家・購買企業の要請を受けて、企業の環境情報開示を促進する国際団体CDP(カーボン・ディスクロージャー・プロジェクト)が実施している気候変動質問書に初めて回答した結果、Bスコアを取得した。

 

CDP質問書は、ESG情報の「E」に関するグローバルスタンダードとして、組織の環境開示をA~Fで評価するもので、2022年時点では世界の時価総額の半数に相当する18,700以上の企業と1,100強の自治体を含む20,000以上の組織が、CDPを通して環境情報の開示をしており、世界中の機関投資家・購買企業が、意思決定に活用している。日本ではプライム上場企業1,000社以上を含む1,700超の企業・団体が回答した。

 

Bスコアは世界全体の回答対象企業のうち、上位約24%に相当し、東証プライム上場の同社関連業界企業10社中のトップ。
本田技研工業、伊藤忠商事、セブン&アイHD、オリックスなど日本を代表する企業群と同等の評価を得ている。

 

2023年についても回答済で、24年初頭に結果が公表される予定である。
同社では、2026年までに世界上位約0.08%にあたる「AまたはA-」評価を取得することを目標としている。

 

◎BMW・MINIの10拠点にてエコマーク認定を取得
2022年12月、BMW・MINIブランドを取り扱うウイルプラスモトーレンの全拠点(MINI久留米を除く)の店舗運営についてエコマーク認定を取得した。
エコマークとは、公益財団法人日本環境協会が実施するエコマーク事業によって一定の基準を満たした商品に認定される、「ISO14024」に基づいた第三者認証の環境ラベル。
今回取得した「小売店舗」認証は、環境配慮商品を幅広く揃え、店舗の運営における環境配慮や消費者が参加するエコ活動の見える化を実施するなど、消費者と一体となって環境に配慮した活動を推進している店舗に認定される。

 

同社では、EV等次世代車輌の試乗会や展示会の実施、環境配慮商品の使用(BMW水性塗料、木製マドラー、ソイインク等)、省エネ型機器の導入、廃棄物の計量・管理を実施していく。

 

(2)M&Aの推進による企業価値向上
新たなエリアへの進出、新たなブランドの獲得、既存ブランドのシェア拡大をスピーディーに遂行するための重要な施策がM&Aである。飽和状態にある国内自動車市場においては、顧客獲得、早期の投資回収、収益確保という観点からM&Aが最も適切かつ優先すべき戦略であると考えている。

 

◎M&Aについての事業環境
同社の調査によれば、2022年末現在日本全国で、輸入車ディーラー729社が事業を行っており、新車販売拠点は合計1,743拠点。1事業会社あたり平均2.4店舗を運営しており、全体の約9割が3店舗以下を運営する中小企業である。
ブランドごとで店舗展開に差が見られ、ブランドによっては資本の集約が進む傾向にある。
また、日本の中小企業に共通の課題である後継者難に悩んでいるディーラーも多数存在する。

 

 

 

(同社資料より)

 

こうした輸入車ディーラーにとって、自動車の「CASE(※)」、そのうち、「Electric(電気自動車)」と「Connected(コネクテッド)」への対応は今後の重要な経営課題となっている。
※「CASE」はConnected(コネクテッド)、Autonomous(自動運転)、Shared & Services(カーシェアリングとサービス/シェアリングのみを指す場合もある)、Electric(電気自動車)の頭文字を取ったもの。従来の「クルマ」の概念を大きく変え、それぞれの領域において、新たな需要・市場を創出している。

 

◎環境意識の高まりとEV化の進展
地球温暖化に対する危機意識の高まりを受け、温暖化ガス排出削減、脱炭素社会実現へ向けた取り組みが急速に進展している。
自動車の排出ガス削減はその最も大きなテーマの一つであり、各国は2050年のカーボンニュートラル実現に向けた規制を打ち出しており、自動車メーカーは生き残りをかけ、従来のガソリン車、ディーゼルエンジン車からEV(電気自動車)への転換を進めている。
特に元より環境意識の高い欧州を拠点とするメーカーは極めて積極的にEV化に取り組んでいる。
一方で、日本メーカーもEVの目標販売台数や目標販売比率は打ち出しているものの、海外競合と比較すると拡大ペースは鈍く、国内EV販売における輸入車シェアは、今後も拡大が続く可能性が高い。

 

 

 

(同社資料より)

 

同時に、前述のように、ブランドメーカーは自社のサプライチェーン全体の排出量の把握及び削減への取り組みにコミットする必要があるため、ディーラーに対し、現在の排出量の把握に加え、EVの仕入れ拡大、急速充電機の導入など気候変動問題への適切な設備投資や対応、排出削減目標の開示などを強く求めるようになっている。
しかし資金面、人材面などの制約から十分な対応が難しいディーラーも多く、こうした要求に適切に対応できるディーラーへの集約・再編がブランドメーカー主導によって進むのではないかという観測も浮上している。

 

◎Connected(コネクテッド)化、EV化に伴う車輌整備の複雑化
Connected(コネクテッド)とは、クルマに通信機を搭載し、常に外部との情報を交換することを指す。車輌へのSIMカード搭載によりクルマの状態や道路状況の把握、クルマ同士やクルマとインフラの情報交換、遠隔操作などが可能となる。

 

Connected(コネクテッド)化によりクルマはスマートフォンのようなデバイスとなり、利便性が急速に向上するが、一方で故障や車検などの際の整備作業も一段と複雑化する。
加えて前述のEV化も車輌整備に大きな影響を与える。EVの普及に伴い、高電圧バッテリーや発電機の故障が増え、車輌整備においては高電圧システムを取り扱う必要があり、安全性強化に向け、設備投資に加え、高電圧に関する特別教育なども不可欠である。このようにConnected(コネクテッド)化及びEV化によりハード・ソフト両面における投資が追加的に発生するため、輸入車の整備業務は投資余力が十分な正規ディーラーや大手資本に集約されていくものと見られる。

 

◎M&Aに対する同社の方針
EV化とコネクテッド化への対応が輸入車ディーラーにとって急務となる中、同社では、ブランドメーカーから選ばれる店舗作りを進め差別化を図るとともに、対応が困難なディーラーをM&Aすることで、新エリアや新ブランドを獲得して自社の成長・企業価値向上を図り、また店舗グリーン化を通じて社会課題の解決に貢献する考えだ。
加えて、店舗のグリーン化、当該エリアの脱炭素化にとどまらず、店舗などの資産・資源の再利用、人的資本の再教育、業務フローのDX化による生産性の向上など、既存の各種社会資本の活性化にも繋げていく。

 

輸入車ディーラーの後継者難という課題と共に、今後、気候変動問題への対応が一層重視される中、同社の重要戦略であるM&Aも加速することが予想される。

 

(3)社会課題の解決と企業の成長のための財務戦略
店舗のグリーン化と積極的なM&Aの実行を事業戦略とする同社は、財務戦略においても、サステナブルファイナンスによる資金調達の比率を高め、グリーン化を進めている。
資金使途は、店舗のグリーン化を見据えたM&A待機資金、EVやPHV車輌導入のための運転資金、急速充電器設置のための設備投資など。

 

同社が積極的に活用しているのが、サステナビリティ・リンク・ローン(SLL)というスキームで、借り手のサステナビリティ戦略と整合したサステナビリティ・パフォーマンス・ターゲット(SPTs)を設定し、貸出条件とSPTsの進捗業績を連動させて、環境的・社会的に持続可能な経済成長を促進するもの。
設定したSPTsの達成を目指すことで、サステナビリティ経営の推進へと繋げていく。
同社では、SLL実施にあたり、グループ目標に基づいた「サステナビリティ・フレームワーク」を策定しており、その適合性について株式会社格付投資情報センター(R&I)よりセカンドオピニオンを取得している。

 

23年6月期は、以下3件、計40億円のSLL を実施した。

実施日

サステナビリティ・

コーディネーター

契約期間

借入金額

KPI

SPT

2022年11月30日

三井住友銀行

5年

10億円

①GHG排出量の削減(Scope1+Scope2)

②店舗が使用する電力についての再生可能エネルギーの導入

①2025 年度の店舗当たりの GHG 排出原単位を 2021 年度比 22%削減

②2025 年度末までに全店舗の購買電力を再生可能エネルギーに切り替える

2023年1月30日

みずほ銀行

10年

20億円

CDP気候変動スコア

融資期間中に「A-」以上の取得

2023年2月28日

福岡銀行

5年

10億円

①GHG 排出量(Scope1+Scope2)の削減

②店舗が使用する電力についての再生可能エネルギーの導入

①2026 年 6 月期末までに店舗当たりの GHG 総排出量を 2021 年度比 27.5%削減

②2025 年 6 月期末までに全店舗の購買電力を再生可能エネルギーに切り替える

 

SLL実施により、サステナブルファイナンスの比率は58.6%となった。
今後のM&Aに伴う運転資金増加に備え、2023年6月末59.3%となっている長期有利子負債の比率も高める考えだ。

 

【2-4 中長期株主還元戦略】

上場来連続で増配を行ってきた同社は、新たに以下のような方針を打ち出した。

 

中長期的にROE15%以上を目標とする(23年6月期14.0%)。
「適正資本の維持」及び「株主還元の更なる拡充」を同時に実現していくために、2026年度までに、配当性向を30%まで段階的に引き上げる。
2027年度以降は、引き続き配当性向30%を配当方針としながら、配当の下限はDOE4.5%を目安に、安定的かつ継続的な利益還元の維持・向上に努める。

 

2023年6月期の配当は予想通り41.17円/株を維持し、配当性向は22.5%まで引き上げ、3期連続で利益成長を上回る配当成長を達成した。
今期2024年6月期は配当性向を更に25.0%まで引き上げ、配当予想を43.51円/株としている。

 

株主資本コストを大きく上回るROEを実現し、配当性向を段階的に引き上げ、今後4年間は利益成長を上回る配当成長を目指しており、極めて積極的な利益成長方針と株主還元姿勢を打ち出している。

 

(ROE分析)

 

16/6期

17/6期

18/6期

19/6期

20/6期

21/6期

22/6期

23/6期

ROE (%)

16.8

19.4

18.2

14.3

13.9

22.5

19.0

14.0

 売上高当期純利益率(%)

2.34

3.16

3.16

2.44

2.29

3.76

3.91

2.95

 総資産回転率(回)

2.84

2.73

2.49

2.30

2.24

2.43

2.23

2.09

 レバレッジ(倍)

2.54

2.25

2.31

2.54

2.71

2.46

2.18

2.28

 

 

ここ2年のROEは低下しているが、日本企業が一般的に目標にすべきといわれている8%を上回っている。

 

3.成長戦略

同社の成長を支えていくのが「マルチブランド戦略」、「ドミナント戦略」、「M&A戦略」の3戦略である。

(同社資料より)

 

【3-1】

マルチブランド戦略:

収益の拡大と販売サイクルの平準化

特定のブランドに依存することなく複数のブランドを取り扱うことにより、ブランド間の新型モデル投入時期の差異による販売サイクルへの影響の平準化を図っている。
現在11ブランドを扱っているが、M&A戦略も合わせてブランド数の拡大も目指している。

(同社資料より)

 

【3-2】

ドミナント戦略:同一商圏の

シェア向上と利益の最大化

人口100万人規模の都市とその周辺都市を特定地域と位置付けて集中的な出店を進め、同一商圏にて集客を図ることによる市場シェアの向上、店舗間の効率的な人員配置による生産性の向上、利益の最大化を図っている。
現在は輸入車(乗用車)の新車登録台数及び保有台数で国内上位の東京、神奈川、福岡が中心だが、M&A戦略によるエリアの拡大も目指している。

 

【3-3 M&A戦略:スピードアップ】

「新たなエリアへの進出」「新たなブランドの獲得(マルチブランド戦略)」「既存ブランドのシェア拡大」をスピーディーに遂行するための重要な施策がM&Aである。
M&Aによりまとまった店舗、商圏、新ブランドを獲得したのち、周辺に新店を出店して商圏を補完し更なる業容の拡大を進めている。
Mercedes-Benz、VW、Audiなど同社がターゲットとしているブランドは10以上あり、M&Aを通じた新ブランド獲得による成長余地は大きい。
案件の発掘は、同社から先方への直接アプローチ、先方から同社への直接の連絡のほか、インポーターからの紹介、金融機関やM&A仲介会社からの紹介など。
社内で今後の成長性やシナジーを中心に検討したのち、同社の投資回収基準に沿った案件のみデューデリジェンスを実施し、交渉を進めていく。

 

2007年10月のウイルプラスホールディングス設立以降、現在まで9件のM&Aを実施してきた。新規出店や移転・改装等の店舗投資のほか、ノウハウの移植などによって、すべての案件で黒字化を実現しており、同社のPMI能力の高さが注目される。

 

4.2023年6月期決算概要

【4-1業績概要】

 

22/6期

構成比

23/6期

構成比

前期比

予想比

売上高

39,696

100.0%

44,115

100.0%

+11.1%

-0.6%

売上総利益

8,441

21.3%

8,622

19.5%

+2.1%

販管費

6,075

15.3%

6,754

15.3%

+11.2%

営業利益

2,366

6.0%

1,867

4.2%

-21.1%

-30.5%

経常利益

2,377

6.0%

1,943

4.4%

-18.2%

-27.6%

当期純利益

1,550

3.9%

1,302

3.0%

-16.0%

-25.6%

*単位:百万円。予想比は22年8月公表の業績予想に対する比率。

 

増収減益
売上高は前期比11.1%増の441億15百万円。
新車販売、中古車販売、ストック型ビジネスとも増収。

 

営業利益は同21.1%減の18億67百万円。
増収ではあったが、新車販売においては販売台数を係数とする販売奨励金の低下、車輌仕入れ原価の上昇で粗利益率が悪化した。中古車販売も期末在庫評価損により、粗利益率が悪化。
また、新車販売単価上昇による社有車1台当たり減価償却費の増加、社有車台数増加による減価償却費の増加、販促費・採用費・水道光熱費の増加や従業員に対するインフレ特別手当の支給に加え、環境課題対応コストや人的資本経営関連コストなど中長期戦略関連費用も増加した。

 

第4四半期(4-6月)の売上高は四半期ベースの過去最高を更新した。

 

*市場環境
輸入車は、国産乗用車に遅れて回復を見せたが回復ペースは遅い。同社においては、輸入車全体よりさらに遅れての回復となり、第4四半期(4-6月)からようやく本格回復の兆しを見せている。
ブランド別には、特にステランティスブランドの回復が鈍い一方で、ジャガーやランドローバーは好調だった。

 

【4-2  商品品目別動向】

 

22/6期

構成比

23/6期

構成比

前期比

新車

19,576

49.3%

22,475

50.9%

+14.8%

中古車

11,009

27.7%

12,343

28.0%

+12.1%

業販

3,605

9.1%

3,367

7.6%

-6.6%

車輌小計

34,190

86.1%

38,186

86.6%

+11.7%

車輌整備

5,058

12.7%

5,434

12.3%

+7.4%

その他

446

1.1%

495

1.1%

+10.8%

合計

39,696

100.0%

44,115

100.0%

+11.1%

*単位:百万円。

 

*新車販売
商品入荷の不安定さが残り、その影響を受けたブランドがあったものの、2022年8月に新規出店した「ジープ大田」、事業譲受により2023年4月より営業活動を開始した「MINI久留米」が売上高に寄与したほか、高額車輌を中心とした新車販売が底堅く推移した。

 

*中古車
上半期は取り扱いブランドで新車供給不足のブランドを中心に、新車販売時の下取りを強化する等の施策により商品確保に努めた結果、増収となった。

 

*ストック型ビジネス
車輌整備は、新車販売台数が伸び悩む中でも、店舗数の増加に加え継続取引の顧客が着実に増加し、増収。
保険代理店事業は、従来から新規契約の獲得を進めていたが、加えて顧客との繋がりをさらに強化し、契約継続を図った結果、新車販売台数が伸び悩む中でも増収となった。

【4-3】

財務状態とキャッシュ・フロー

◎主要BS

 

22年6月末

23年6月末

増減

 

22年6月末

23年6月末

増減

流動資産

11,374

15,620

+4,245

流動負債

8,254

9,533

+1,278

現預金

5,538

4,290

-1,247

仕入債務

1,793

3,829

+2,036

たな卸資産

4,882

9,551

+4,669

短期借入金

3,549

2,615

-934

固定資産

7,255

8,024

+768

固定負債

1,545

4,364

+2,819

有形固定資産

6,274

7,038

+764

長期借入金

1,066

3,818

+2,751

建物及び構築物

3,664

3,757

+93

負債合計

9,800

13,898

+4,098

無形固定資産

174

97

-76

純資産

8,829

9,746

+916

投資その他の資産

806

887

+80

利益剰余金

7,566

8,435

+868

資産合計

18,630

23,644

+5,014

負債純資産合計

18,630

23,644

+5,014

*単位:百万円。

 

新車供給の正常化が進んだことで、商品在庫が前期末の約2倍に積み上がった一方、現預金が減少し、資産合計は前期末比50億円増加し236億円。商品仕入れの増加による仕入債務の増加、サステナビリティ・リンク・ローン等の実施による長期借入金の増加などで負債合計は同40億円増加の138億円。
利益剰余金の増加などで純資産は同9億円増加し97億円。
自己資本比率は前期末から6.2ポイント低下し41.2%となった。

 

◎CF

 

22/6期

23/6期

増減

営業CF

1,910

-2,185

-4,096

投資CF

-217

-492

-274

フリーCF

1,692

-2,678

-4,370

財務CF

469

1,430

+960

現金・現金同等物

5,538

4,290

-1,247

*単位:百万円。

 

税金等調整前四半期純利益の減少等で営業CF、フリーCFはマイナスに転じた。
キャッシュポジションは低下した。

 

【4-4 トピックス】

(1)スタンダード市場の選択を決定
2022年4月の東証の市場再編時に同社は「プライム市場」を選択し、上場維持基準の充足を目指したが、2023年6月末時点において、上場維持基準のうち、流通株式時価総額が未充足である。

 

こうした状況下、中長期的な目線で「同社成長の要であるM&A」や「人的資本経営」などに経営資源を集中することが、「持続的な成長」と「企業価値向上」に資すると判断したうえで、自社の経営方針及び足元の経営環境を踏まえて検討した結果、中長期的な企業価値の向上に向けた取組みに経営資源を集中することと、株主が継続して同社株式を保有・売却できる環境を確保することが重要と判断し、スタンダード市場を選択することとした。

 

23年10月20日よりスタンダード市場へ移行し、引き続き「持続的な成長」と「企業価値向上」を目指す。

 

(2)新子会社設立と子会社の社名変更
23年1月に設立した新子会社「ウイルプラスエンハンス株式会社」に、23年7月1日付で中核ブランドであるジャガー及びランドローバーを移管した。新体制によりさらなる業容拡大を図る。

 

23年7月、チェッカーモータースを「ウイルプラスチェッカーモータース」に、帝欧オートを「ウイルプラス帝欧オート」に社名変更した。
グループ会社5社すべてに「ウイルプラス」を冠するとともに社名ロゴも統一し、ウイルプラスブランドの一層の浸透を図る。

 

(3)新ブランド「BYD」の取り扱い開始
23年5月、中国の世界有数のEVメーカーBYDの日本法人であるBYD Auto Japan株式会社とディーラー契約を締結した。
ウイルプラスエンハンス株式会社として、2023年7月1日付で「BYD AUTO福岡西」を新規オープン。福岡市内で新ブランド「BYD」の取り扱いを開始した。

 

(4)人財戦略における取組み
◎株式付与ESOP信託及び税制適格ストックオプションの導入
23年8月、従業員へのインセンティブの一環として、従業員へ自社株式を給付するESOPを導入すると発表した。
従業員の帰属意識の醸成と経営参画への意識付けや、中長期的な業績向上及び株価上昇に対する意識を高め、中長期的な企業価値向上を図る。

 

また、従業員の企業価値最大化に対する決意及び士気を高めるため、税制適格ストックオプションを発行するために、新株予約権を発行した。自社経営への参加の意識づけの他、従業員定着率の向上や、採用力の強化を図る。
なお、22年12月に開示した「信託型ストックオプション」については、23年6月に取得償却し、税制適格ストックオプションへ移行した。

 

5.2024年6月期業績予想

【5-1業績予想】

 

23/6期

構成比

24/6期(予)

構成比

前期比

売上高

44,115

100.0%

48,821

100.0%

+10.7%

営業利益

1,867

4.2%

2,312

4.7%

+23.8%

経常利益

1,943

4.4%

2,303

4.7%

+18.5%

当期純利益

1,302

3.0%

1,692

3.5%

+29.9%

*単位:百万円。予想は会社側予想。

 

2桁の増収増益、売上高は過去最高更新へ
売上高は前期比10.7%増の488億21百万円、営業利益は同23.8%増の23億12百万円の予想。売上高は前期に続き過去最高を更新する見込み。

 

既存ブランドについては、顧客からの安定した需要が続いていることから、受注活動は堅調に推移すると見込んでいる。
新車販売については、販売価格の上昇が営業活動に影響を及ぼすことが見込まれるが、前期末までの受注に対する納車も着実に進むことから新車売上高は増収を見込んでいる。
中古車販売は、前期中の中古車市場の変動も今期は正常化すると想定しており、前期並みの売上高を予想している。
今期は新車の納車が多くなると見込んでいることから、新車販売時の下取りを引き続き強化し、より効率的な経営に繋げていく。
ストック型ビジネスである車輌整備・保険代理店事業は、各顧客との繋がりをさらに強化し、より盤石な収益基盤構築を目指す。
販管費については、業容の拡大に伴い人件費、販売関連費用、店舗維持関連費用等が増加すると見込んでいる。また、各社員がその能力を充分に発揮できるよう待遇面での改善やDXの推進による単純作業の軽減、リスキングのための研修受講等の人的資本への投資を続けていく予定である。

 

配当は前期比2.34円/株増加の43.51円/株を予定している。予想配当性向は25.0%。

 

【5-2】

M&A戦略を取り巻く環境変化

~コロナ禍の収束とM&Aの加速

新型コロナウイルス感染症拡大が収束するのと軌を一にして、同社のM&A戦略に追い風が吹き始めたと同社では考えている。

 

(1)2020~2022年:M&A(事業売却)が発生しづらい事業環境
新型コロナウイルス感染症の発生及び拡大に伴い、安全な移動手段として、また海外旅行の代替として2020年から2021年にかけて自動車需要が急速に拡大した。
2022年に入ると、世界的な半導体不足や資材価格の上昇により新車の供給不足が顕在化し価格も高騰、新車不足は中古自動車需要を押し上げ、中古車価格も大きく上昇した

 

こうした事業環境において自動車ディーラーの販売及び受注は好調となった。販売在庫は減少し、運転資金も縮小、受注残が急増するなど、決して営業力や資本力が強固でないディーラーであっても支障なく経営することが可能な環境であった。
一方でこうした状況は、事業売却を検討するディーラーが減少したことを意味し、同社のM&A戦略にとっては向かい風であったが、同社は業界平均を上回る成長及び営業利益率を実現し、次のフェーズにおけるM&A実行に向けて経営資源を集中していった。

 

(2)2023年:新車供給の回復に伴いM&A加速化へ
2023年に入り、環境変化が生じている。
コロナ禍収束の中、特殊要因で急増した自動車需要は縮小に向かい、2022年に大きく上昇した新車価格は高止まり状態に入る一方、半導体不足の解消とともに新車の供給が回復し、中古車価格は下落を見せている。
新車価格の高止まりは、社有車投資及び減価償却費の増加によるコスト増、販売在庫及び運転資金の増加による資金繰りの悪化を引き起こし、中小自動車ディーラーの経営を圧迫し始めた。

 

こうしたコロナ禍収束に伴う経営環境の変化に加え、それ以前から強まっていたガバナンス強化の必要性や環境課題対応に向けたコスト増などで、自動車ディーラーの収益性は悪化傾向にある。
今後は経営基盤の脆弱な中小ディーラーを中心とした案件の増加が見込まれ、この3年間止まっていた同社M&A戦略は大きく加速するものと同社では考えている。

 

6.今後の注目点

23年6月期第4四半期売上高が四半期ベースの過去最高を記録したように、前第4四半期より新車販売は、台数回復と単価アップにより、本格回復に向かっているようで、今期は通期でも過去最高売上高を更新する見込みである。
一方、増収に伴い利益も2桁の増加を予想するものの、戦略的投資を中心としたコスト増加を計画しており、営業利益は過去最高には及ばないようだ。新規ブランドであるBYDがどの程度寄与してくるかも含め、売上高の更なる積み上げに伴い、利益をどれだけ拡大できるかを注目していきたい。

 

一方で同社では、新型コロナウイルス感染症拡大が収束するのと軌を一にして特殊要因で急増した自動車需要は縮小に向かい、ガバナンス強化や環境課題対応のコスト増もあり、今後は経営基盤の脆弱な中小ディーラーを中心とした案件の増加を見込んでいる。この3年間止まっていたM&A戦略は大きく加速するものと同社ではみており、その進捗にも期待したい。

 

<参考:コーポレート・ガバナンスについて>

◎組織形態、取締役、監査役の構成

組織形態 監査等委員会設置会社
取締役 10名、うち社外取締役4名(うち独立役員4名)
監査等委員 5名、うち社外取締役4名(うち独立役員4名)

 

◎コーポレート・ガバナンス報告書
最終更新日:2022年9月29日

 

<基本的な考え方>

 

当社におけるコーポレート・ガバナンスの基本的な考え方は、企業価値の最大化を図るにあたり、社会のめまぐるしい変化に対応し、効率的かつ、法令等を遵守する健全な経営体制を構築することであります。そのために、各ステークホルダーと関係強化及び経営統治機能の更なる充実を図ることにより、透明性のある経営を確保するとともに、適正かつ迅速なディスクロージャーに努めてまいります。

 

<コーポレート・ガバナンス・コードの各原則を実施しない理由>
■補充原則3-1③・補充原則4-2②【サステナビリティを巡る課題】
当社は、企業活動を通じて持続可能な社会の実現・企業価値向上に向けて、当社グループ全体のサステナビリティへの取組と主体的なリスクマネジメント基盤を強化するとともに、成長戦略推進による業容拡大や自動車産業を取り巻くEV化等の技術革新への対応、DX化の推進を重点的に図るため、サステナビリティ基本方針を制定し、サステナビリティ委員会並びにリスクマネジメント委員会を設置しております。これらの委員会を中心とした具体的な取組み事項につきましては、決算説明資料等で開示しております。
(https://contents.xj-storage.jp/xcontents/AS01236/078770bd/
f7ea/4bc2/872b/e27b99a6bb7b/140120220824523428.pdf)
また、気候変動問題への取組につきましてはCDPを通じて開示しております。
中長期的企業価値の向上にむけた人的資本や知的財産についての投資につきましては、経営執行会等にて審議中であり、今後取締役会にて基本的方針を策定するとともに、開示してまいります。

 

■補充原則2-4①【中核人材の登用等における多様性の確保】
<多様性の確保についての考え方>
当社では、社員一人ひとりが能力を最大限に発揮し、長く働き続けられる環境の提供を目指しており、人材の登用等においては性別・国際性・中途採用か否かに関わらず能力・実績により登用することを基本方針としております。
<多様性の確保の自主的かつ測定可能な目標>
中核人材の多様性の確保についての測定可能な目標は設定しておりませんが、中期的な企業価値の向上に向けた人材戦略とともに目標設定についても検討してまいります。
<多様性の確保の状況>
女性従業員の割合・・2022年6月期 18.2%
専門職の外国人の雇用・・2022年6月期 雇用率 0.8%
中途入社者の管理職割合・・2022年6月末現在 93.2%

 

<コーポレート・ガバナンス・コードの各原則に基づく開示(抜粋)>
■原則1-4 【政策保有株式】
(1)政策保有株式に関する方針
当社は政策保有株式を保有しておりません。取引先との資本提携、協業のために関係維持・強化が必要であり、中長期的な観点からビジネス上のメリットがリスクや資本コストに見合っていると判断した場合以外は、政策保有株式は保有しない方針であります。
(2)政策保有株式にかかる検証の内容及び政策保有株式にかかる議決権行使の基準
政策保有株式を保有することが適切であると判断した場合には、継続保有の合理性の検証方法並びに当該政策保有株式の議決権行使の具体的な基準を策定いたします。

 

■原則5-1【株主との建設的な対話を促進するための体制整備・取組みに関する方針】
当社は、株主や機関投資家との積極的かつ建設的な対話(面談)を通じ、経営方針や成長戦略を明確に説明し、理解を深めていただくことが、当社の中長期的な企業価値の向上に資すると考えております。
株主や機関投資家との対話は、経営戦略本部IR室を窓口とし、代表取締役、IR担当者が合理的な範囲で訪問、来社、電話等により行っております。個別面談以外にも、多くの投資家と直接対話できる機会を設けるべく、代表者自らが説明を行う投資家、アナリスト向け決算説明会や個人投資家向け説明会を開催し、当社、投資家双方の理解促進の場として活用しております。さらに、説明会の模様を動画配信若しくは資料をホームページに掲載するなどし、広く情報発信を行っております。
対話に際しては、未公表の重要情報につきまして漏洩等が発生しないよう、十分に留意のうえ、臨んでおります。

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