ベース株式会社(4481) 過去損失計上なし、今後も成長見込み
中山 克成 代表取締役社長 |
ベース株式会社(4481) |
企業情報
市場 | 東証1部 |
業種 | 情報・通信 |
代表取締役社長 | 中山 克成 |
所在地 | 東京都千代田区外神田4-14-1 秋葉原UDX8階 |
決算月 | 12月 |
HP | https://www.basenet.co.jp/ |
財務情報
売上高 |
営業利益 |
当期純利益 |
総資産 |
純資産 |
ROA |
ROE |
12,400百万円 |
2,438百万円 |
1,743百万円 |
10,286百万円 |
6,901百万円 |
25.1% |
28.5% |
*2020年12月期実績。当期純利益は親会社株主に帰属する当期純利益。純資産は親会社の所有者に帰属する持分。ROAは総資産経常利益率。ROEは、自己資本当期純利益率。
目次
1.会社概要
2.トップインタビュー
3.課題・マテリアリティと取り組み
4.財務・非財務データ
<参考>
(1)ESG Bridge Reportについて
(2)「ROESGモデル」について
1.会社概要
「お客様に対して常に新しい価値を提供し続ける」ことを使命とし、同社及び子会社2社により主にシステムの受託開発を行っている。流行の移り変わりに左右されないベース(基礎)の部分である「モノづくり」と「運用保守」にフォーカスしている。
日本人と中国人の従業員数を一般職‧管理職共に50:50とする「日中人材バランス50:50」モデルが生み出すシナジー効果、技術力、高品質、人材採用力・動員力などが競争優位性である。
【1-1. 沿革】
中国・上海生まれで、エンジニアとして勤務していた中山 克成氏(現 同社代表取締役社長)は、学生時代から中国の外の世界に大いに興味を持ち、自身の知識を大いに広げ、将来は自ら起業したいとの想いを胸に1987年、30歳の時に来日。日本のシステム開発企業に就職した。
言葉の壁や日中間の習慣の違いなどに苦労しながらもエンジニアとしての知識・経験を着実に積み重ね、来日から10年後の1997年、厳しい経済環境ではあったが、日本でもPCが急速に普及し、大きな波に乗るチャンスと見て、計画通り、起業。4名でベース株式会社を設立した。
前職時から富士通株式会社の案件を担当していた中山氏は、その能力について富士通の担当者から高い評価を得ていたため、当社設立時の1997年から前社経由で富士通との取引を開始した。その後も信頼と実績を積み重ねて2000年には直接取引するまでに至った。富士通は開発力、機動力など同社の競争優位性を評価し、2003年にはコアパートナーに認定するほか、一段と関係を深めるべく出資も行った。
富士通との関係強化により業界における同社の評価は一段と向上し、その後、みずほ証券株式会社(2002年)、株式会社野村総合研究所(2013年)、株式会社エヌ・ティ・ティ・データ(2017年)など、日本を代表する有力企業との直接取引が始まる。
「日中人材バランス50:50」をベースにした「モノづくりにこだわる開発力」を武器に着実に業容は拡大し、創業20年目にあたる2017年からは更に成長スピードが加速。2019年12月に創業時から目標としていた株式上場を果たし(東証2部)、1年後の2020年12月には東証1部にステップアップした。
なお、1997年の創業以来、一度も損失を計上したことが無い。
【1-2. 企業理念】
以下のミッション、経営理念を掲げている。
*ミッション
「お客様に対して常に新しい価値を提供し続ける」
*経営理念
相互尊重 | 関わる全ての人と互いに尊重しあうことが、私たちの原点です |
誠心誠意 | どのような仕事でも誠心誠意対応することが、私たちの精神です |
ベストを尽くす | いかなる場面でもベストを尽くすことが、私たちの約束です |
【1-3. 事業内容】
(1)サービスライン
報告セグメントはソフトウェア受託開発事業の単一事業。
事業のサービスラインは「システム開発」「ERPソリューション」「その他ソリューション」の3つで、「システム開発事業」は「システム開発」「保守運用」「社員支援」で構成されている。
①システム開発事業
◎システム開発
主に金融・流通・製造分野におけるオープン系システム開発(技術的な仕様が公開されているOS、サーバーやソフトウェアを組み合わせて構築されたシステム開発)を行っている。
主として証券、銀行、クレジットカード会社など金融系のシステム開発に実績がある。
要件定義、基本設計、詳細設計、プログラム設計、プログラミング、各種テスト、移行・リリース作業、サービス開始後の運用保守をトータルでサービスを提供している。
「プロジェクト管理の徹底」「品質管理の専門部署による第三者チェック」「PDCAサイクルの徹底」といった組織的な品質強化を図り、顧客に安心を提供している。
また、日本人技術者と中国人技術者が協働する態勢を整えている。
総じて、日本人技術者は仕様理解力や、管理と品質に対する意識の高さを持ち、中国人技術者は高い技術力と積極的な技術習得意欲を持つなど、日本人技術者と中国人技術者には、それぞれの長所があると同社では考えている。
国民性やそれぞれの国の文化に由来する両者の長所を十分に活かし、短所はお互いが補うことで、より高いレベルのサービス提供を目指している。
◎運用保守
顧客の新規システム又は既存システムの運用保守を行っている。
主に顧客の情報システム部門やヘルプデスク部門に常駐して行うなど、顧客の安心感を最優先に考えたサービスを提供している。顧客の業務知識習得など教育を充実させ、技術以外のスキルの向上にも力を入れているほか、開発に参加した技術者をメンバーとして配置することで、顧客の要望にタイムリーに応えられる体制を構築している。これによって、顧客の体制変更や新商品の追加、業務フローの変更等に合わせ、システム対応、機能拡張及び利便性・操作性の向上等、当該システム及び周辺システムで生じるさまざまなシステム開発を継続的に行い、顧客にとって安心かつスピーディーな対応を実現している。
また、システム維持管理では、自社開発の工数管理システム「b.mat」(案件ごとに実工数を集計し、稼働状況を可視化するシステム)を活用し、各チームの作業量を把握の上、余剰リソースを他チームに配分するなどリソースの有効活用及びコストダウンへと繋げている。これにより、顧客における時期や部署ごとに作業量のバラツキを減少させ、リソースの効率的な活用を図っている。
◎社員支援
システム開発に付随し、顧客先への人員派遣を行っている。
同業務では、顧客と同一目線に立ち、システムの企画段階や、エンドユーザとの要件調整、プロジェクトマネジメント、課題改善活動などに携わっている。
ベースが担当するシステム開発や運用保守の案件では、顧客側に立つ同社の派遣社員と同社のシステム開発メンバーが連携することで、要件やシステムに関する理解を深めることができ、より安全かつ効率的な開発作業が可能である。
②ERPソリューション
SAP SEの製品を中心に、ERP、CRM、BASISの3領域でサービス提供を行っている。
これまでのERP関連サービスでの経験・ノウハウを活かし、新規導入案件やアップグレード、マイグレーション案件において、導入コンサルティングから開発・運用保守まで幅広く対応している。
③その他ソリューション
これまでの開発案件で培った経験をもとに、同社独自のソリューションを構築し、顧客への提案を行っている。
具体的には、NISA口座開設サービスやマイナンバーサービスのソリューションを提案し、複数社の顧客へ導入した。また、OCR機能を利用したカード番号(免許証、マイナンバーカード、クレジットカード等)認識サービスを顧客の口座開設へ応用する等、顧客の業務内容を踏まえ、最新技術を業務効率化や作業品質向上に繋げる提案活動を、随時行っている。
ソリューションの導入に付随し、業務のアウトソーシングサービス(BPOサービス)も提供している。一般的なBPOサービスは事務作業等の代行であるのに対し、同社のBPOサービスは、事務作業等にITを組み合わせたものであり、これまでの開発経験を活かしたサービスである。
(2)主要顧客
沿革で触れたように、1997年の創業3年後の2000年に富士通株式会社と直接取引を開始して以来、同社と強固な関係を構築しているほか、2002年にはみずほ証券との直接取引をスタートさせている。
2020年12月期の主要上位4顧客向け売上高構成比は6割を超す。顧客の選択と集中は、【1-4.特長・強み】で後述するように同社に様々なメリットをもたらしている。
顧客名 |
売上高 |
構成比 |
富士通株式会社 |
2,290 |
18.5% |
みずほ証券株式会社 |
2,232 |
18.0% |
株式会社野村総合研究所 |
1,865 |
15.0% |
日本証券テクノロジー株式会社 |
1,511 |
12.2% |
合計 |
7,899 |
63.7% |
20/12期売上高 |
12,400 |
100.0% |
【1-4.特長・強み】
同社の特長・強み、競争優位性とその源泉は、以下のような点にある。
(1)「日中人材バランス50:50」
同社では日本人と中国人の従業員数を一般職‧管理職共に50:50としている。
このビジネスモデルが以下のような特長・強みを生み出しており、まさに競争優位性の源泉となっている。
①日本人と中国人の互いの長所を活かしたシナジー効果
日本人の長所は、品質へのこだわり、高いチーム調和能力、日本式マナーの理解等。一方、中国人の長所は、新技術への好奇心、スピーディーな仕事、高い成長意欲等である。
両者が補完、刺激しあうことで、高い付加価値を創造している。
②技術力と高品質
中山社長はじめ創業者が中国出身のITエンジニアであることから、中国のエンジニアや有名大学と強いパイプがあり、高度な技術力を有する優秀な人材を獲得することができ、上記シナジー効果を通じ、日本人エンジニアもレベルアップする。
また、大手クライアントの案件を手掛けることで顧客を通じて先端的なグローバルソリューションをキャッチアップし、早期の人材育成で、一流ソリューションを提供することができる。加えて、常時100種類以上のカリキュラムを用意しており、社員のスキルアップをサポートしている。こうした先端技術の取り込みは、新たな受注獲得にもつながっている。
また、高い技術力を用いた開発においても、日本人の品質へのこだわりを活かしたプロジェクトマネジメントにより、高品質を実現している。
③人材調達力・機動力
日中両ルートによる新卒‧中途採用を行っている。従業員数は372人(2016年12月末、非連結)から855人(2020年12月末、連結)へ4年で大きく増加した。今後は毎年100人以上の純増体制を継続する予定で、早期の正社員数1,000人体制構築を目指している。加えて、同社の場合、日本にある中国系協力会社を通じた人材調達も可能であり、同社の人材調達力は通常の2倍。
こうして採用したエンジニアを案件ごと機動的に動員できる点も大きな強みである。
(同社資料より)
(2)圧倒的なエンジニア比率
全社員に占めるエンジニア比率は95%。間接部門・間接コストを最小限に抑えながら、稼働人員を最大化することで、高い収益性を実現している。
部長・執行役員まで案件に参画しており、大多数の社員がプロフィット・センターである。また、全社的な要員調整による非稼働要員の削減を図っているほか、管理部門・営業部門のコストを最小化している。
(3)超大手SIer等を主要顧客とする選択と集中
主要顧客は富士通を始めとした大手企業に絞り込んでいる。以下の理由により、効率的に十分な受注を確保することができる。
* | 顧客を絞り込むことで、限られた人数でも部長クラスの常駐が可能である。 |
* | 顧客自体の受注規模が大きく、受注分野も広いため、顧客内での案件開拓余地が大きい。そのため、案件と案件の間のアイドルタイムも極めて短く、高利益率に寄与している。 |
* | 既に実績のある組織をコピーし、既存顧客内での横展開を図り新規受注を拡大していく。既に受注を行っている部門における未受注案件に加え、まだ取引を行っていない部門の開拓を図り、顧客1社当たりの売上を拡大する。顧客1社当たりの受注拡大余地は十二分に大きい。 |
(4)徹底した現場主義
徹底した現場主義により機動的な受注を実現している。
通常、案件の受注可否を決定するには本社におけるシステム部門・営業部門・管理部門の全部門の決裁が終了後、正式に受注決定を顧客に伝えることとなる。
これに対し同社では、顧客先に常駐した現場の状況を熟知したチームのヘッドである部長が決裁権を有しているため、迅速な決定が可能である。
この迅速な意思決定によって機会損失を防止しているほか、現場担当者が受注するためトラブル案件を抑制することができる。また、顧客に安心感を与え、効果的な営業の実現にも繋がっている。
(5)高い利益率
創業以来、高生産性を重視している同社は、上記のような、間接部門・間接コストの最小化、顧客の選択と集中、徹底した現場主義といった施策により高い利益率を実現。新技術の習得や社員教育を始めとした成長投資の源泉ともなっている。
【1-5. 価値創造のフロー】
ベースは「日中人材バランス 50:50」を源泉とした競争優位性を基に、「モノづくり」にこだわったNew Typeの受託開発事業を展開。人的資本の強化、真のダイバーシティの実現、持続的な成長を目指している。
2.トップインタビュー
●社会的責任、社会的存在意義について
Q.近年、社会全体が持続可能な成長を目指す中で、その重要なプレーヤーの一員である企業の理念、ミッション、社会的存在意義が重視されています。
先ずは社長がお考えになる御社の社会的な責任や存在意義についてお聞かせください。
今やITは世の中のあらゆる局面において不可欠な技術となりましたが、一口に「IT」といっても、コンサルティング、クラウドサービス、パッケージソフトなど非常にたくさんの切り口や分野があります。
そうした中、私たちは創業以来「モノづくり」にこだわってきました。そして、これからも「モノづくり」の世界でのレベルアップを追求していこうと考えています。
その時代時代の流れの中で様々なキーワードやブームが注目されますが、この業界では「モノづくり」は誰かがやらなければならない。お客さんのニーズも決してなくなることはない。つまりITにおける不可欠な「基礎」が「モノづくり」であり、当社の社名「ベース」もまさにここから名付けたものです。 |
ここでいう「モノづくり」とは、いわゆる「受託開発」のことですが、世の中では「受託開発=下請け、地味、収益性が低い」といったイメージを持つ方が多いようですが、決してそんなことはありません。
当社の主要なお客様の1社が富士通ですが、当社創業時から、単なる発注者・下請けという関係ではなく、富士通の実現したい「モノづくり」に一緒に取り組み、その結果や実績を高くご評価いただいています。
また、私は創業時から生産性の向上を追求し、そのための仕組みを構築しています。その結果、受託開発ではあっても非常に高い利益率を実現しています。
そうした結果、当社はお客様に高い満足度を、また当社の重要な資産である従業員に対しても働き甲斐のある環境を提供することができています。
「モノづくり」を通じてミッションである「お客様に対して常に新しい価値を提供し続ける」を追求することが、まさに当社の存在意義であり、今後も「モノづくり」に誇りをもって取り組むことで、社会に貢献をしていきたいと考えています。
Q. 経営理念である「相互尊重」「誠心誠意」「ベストを尽くす」についてもお聞かせください。
当社は「日中人材バランス50:50」、つまり日本人と中国人がほぼ半々、どちらがメジャーでもマイナーでもないところが特徴であり、競争優位性の源泉です。
この体制をうまく機能させるのに必要なのはまず「相互尊重」です。お互いが尊重しあうことで一緒に成長していく。それが、会社の成長にも繋がっていきます。
ITは高い技術力が武器となりますが、我々の仕事は結局のところはサービス業です。お客様の要望に対し、「承知しました。作りましょう」という話になりますから、そこには「誠心誠意」という気持ちが欠かせません。
また、この仕事は要求される水準が高く、プレッシャーもあります。それに対してもひるむことなく「ベストを尽くし」て、お客様に満足してもらわなければなりません。
この3項目を単なる壁に掲げたスローガンに留めることなく、社員教育、様々な会議、私の社内向けメッセージ等、あらゆる機会を利用して、繰り返し、繰り返し伝えることで、社員の行動原則として日々の業務においてしっかりと浸透させることができています。
●ビジネスモデル・特徴・強み・競争優位性
Q.御社の特徴や強み、競争優位性はどんな点でしょうか。
やはりなんといっても、「日中人材バランス50:50」のビジネスモデルです。
このモデルが様々な当社の競争優位性を生み出しています。
まず一つ目が、日本人と中国人のそれぞれの特性の違いから生まれるシナジー効果です。
日本人は品質に対するこだわりが強い。丁寧に物を作る、お客様に提供するのだからテストも最低ここまではやらなくてはだめだといったことを、教えなくても身に付けている。チームワークも優れているし、サービス精神、市場に対する理解なども日本人ならではの素晴らしさがあります。
一方中国人は、新しいものを取り込むことに貪欲です。指示しなくてもネットでどんどん調べて勉強したり、取り込む。成長意欲が大変高い。もちろん日本人も成長意欲が無いわけではないのですが、あまり表に出さない傾向がある。思っていても自分一人だけでは表に出しにくいようです。
でも一緒に仕事している中国人が挑戦しているのを見れば、じゃあ自分もチャレンジしてみようという気持ちになる。
反対に日本人の考え方や行動から中国人が学ぶこともある。
こうして両者が刺激しあうことで「1+1」が2ではなくプラスアルファを生み出している。これが当社の成長スピードや高利益率に繋がっていると考えています。
また、我々は、お客様の要望にお応えするのはもちろんですが、言われたことだけやるのではなく、ミッションの「お客様に対して常に新しい価値を提供し続ける」にあるように、常にプラスアルファを提供していくことを目指す、いわば新しいタイプの受託開発企業を目指していますから、このシナジー効果は大きな意味を持っています。
次に「技術力」と「高品質」。
当社では中国の一流大学から優秀な学生を毎年採用することができています。また日本人の優秀な学生も、そうした中国人から刺激を受けて新しい技術を競って習得しています。
昔と違い、現在は毎年のように新しい技術が生まれたり、バージョンアップされたりしているのですが、当社ではこれを高いレベルでしっかりとキャッチアップできています。これはエンジニアの地頭の良さもあるのですが、海外のソフトウェアメーカーの講習プログラムに積極的に参加し、勉強する機会を提供しています。これらの講座は決して安くない受講料が必要なのですが、当社は利益率の高さから投資を行う余力が十分にあります。
技術力向上のために環境を整えてあげることで、エンジニアが高い技術を身に付け、いい仕事が獲得できる。するとその実績が全社に共有され、さらに良い案件が受注できる。こうした好循環が更に技術力を向上させています。
加えて、主に中国人主導で取り込んだ高い技術力を用いた開発のクオリティについても、より品質を重視する日本人のプロジェクト管理によって「高品質」を実現しています。
更に「機動力」も、「日中人材バランス50:50」が生み出している当社の大きな強みです。
近年の「モノづくり」は「垂直立ち上げ」、つまり段階的に立ち上げるのではなく、スタートから一気に完成形まで作り上げるニーズが極めて強くなっています。そのために「機動力」の有無は、重要な差別化要因となっています。
例えば、20人が必要となった時、100人の会社では難しくても、800人の当社であれば十分対応可能です。
日本企業が直面している「2025年の崖」問題の一つの背景がIT人材不足ですが、中国系協力会社からの人材調達も可能な当社は、「日中人材バランス50:50」モデルにより通常の2倍の採用力を有しており、人材不足という課題を乗り越え十分な機動力を発揮することができるのです。
「日中人材バランス50:50」は創業時からの仕組みです。
今後の日本ではエンジニアが不足することもあり、これからもっと多くの中国人に日本に来てもらおうと思っていますが、彼らに自分の能力を全開にして仕事をしてもらう。日本人社員にも同じくパワー全開で仕事してもらう。
そのためには50:50が必須です。どちらがマジョリティでも、どちらがマイノリティでもない。日本人が日本企業でずっと働いていると理解できないと思いますが、マイノリティは非常に強いストレスを余儀なくされます。
そうしたストレスと無関係に、全社員のパワーを引き出せる環境づくりという意味でも、「日中人材バランス50:50」は重要な仕組みです。
●主要マテリアリティにおける取り組み
Q.今回御社では初めて9のマテリアリティを選定しました。(「3.課題・マテリアリティと取り組み」参照)
このうち、御社の持続的成長にとって特に重要なマテリアリティについて社長のお考えを伺いたいと思います。
まず最初は、「人的資本」についてです。
改めて、「人的資本強化」が御社企業価値向上にいかに重要か、またそのためにどのような取り組みを進めているかをお聞かせください。
改めて言うまでもなく、製造業ではない当社にとって最大の資本は「人」です。
ではこの「人」という資本の価値をいかにして高めていくかですが、私は「潜在能力を顕在化させる」こと、つまり社員自身に自分の能力を気付かせることが最も重要だと考えています。
簡単に言えば、「同い年の同じ年次のあいつがここまでやっているのなら、俺もやってみよう」と思わせる、そうした刺激を常に受ける環境造りということです。
先程申し上げた日本人と中国人のシナジー効果も潜在能力の顕在化に大いに役立っています。特に日本人の若手社員は1回目覚めたら、こちらの想像以上に成長していくケースが多い。
当社には年功序列はありませんので、できる人はどんどん上に引っ張っていきます。そうした中で、会社として各社員に自身の能力を気付かせる、そのための刺激を与える環境造りに注力しています。
もう少し具体的に言えば、任せてみるということです。
例えば若手社員にプロジェクトを任せる。当然周りがフォローしますが、とことんチャレンジさせる。当社にはチャレンジを評価する仕組みができていますから、100の能力が必要な仕事に対し、現在の能力が80くらいの社員にチャレンジさせるわけです。そうすると人間は非常に早く成長できる。こうした成功体験を積み重ねることが社員自身の成長及び会社の成長スピードアップに繋がると考えています。
人的資本強化のための二つ目は、「技術力と管理能力の向上」です。
技術力に関しては、教育プログラムをきちんと組んでレベルを確実に引き上げています。
また、技術力に加えて、プロジェクトの管理や組織の管理能力向上も重要です。こちらに関しては教育プログラムというよりも、実践に勝るものはないので、部長職の前段階として部長補佐で部長の仕事を体験させています。これが着実に効果を表わしていますので、新たに役員補佐という仕組みも導入しました。
これらの制度は、先程申し上げた、「自身の能力の気づき」「潜在能力の顕在化」にも繋がっています。
これらの仕組みを通じて成長し貢献してくれた社員に対しては金銭的にもしっかりと評価しますし、年1回のベース ALL☆STARという表彰も行っています。奥さん、お子さん、お母さんなどご家族も招待するベース ALL☆STARアワードは、社員にとっても晴れがましい舞台となっています。
様々な機会を通じて、一緒に会社を織り上げていく仲間として、社員各自が自分の能力を十二分に発揮して欲しいと常に願っています。
Q:ここ数年で人的資本強化が顕著に表れているのはどんな点でしょうか?
若手人材の成長によって権限移譲が急速に進んでいます。
1つは役員の年齢が一気に若返っています。
これには2016年から始めた社内公募による執行役員選出が大きく寄与しています。
役員になりたいという社員から、私たち経営陣が選ぶのではなく、幹部社員が投票して選出するという取組みです。実績に加えて、経営理念や当社の企業文化にマッチしているかなども重要な評価基準となっています。
また、現場における権限移譲も徹底的に進めています。
基本的な行動はマニュアル化してあるので、それに沿って自分の力を十分に発揮しながらも、活動する領域を自分で広げていくという仕組みです。こちらも2016年に着手した後、当社の成長スピードは一気に加速しています。
若い人達が責任をもって当社を牽引する体制が構築されつつあり、大変頼もしい限りです。
Q.続いて、環境課題についてはどう認識されていますか?
気候変動を始めとした環境問題解決の重要性、そのための企業の責任は強く意識しています。
当社のようなシステム開発企業にできることは限られているとは思いますが、まず全社員の意識向上が経営者の責務であると考え、エコバッグの配布を行いました。これは全社員に留まらず、協力会社の社員も対象にしたもので、当社の意識、考えを共有していただけたのではないかと思っています。
また、先般は東北地方での植樹に幹部社員が参加するなど、様々な機会をとらえて意識の向上・醸成に努めていきたいと考えています。
Q:コーポレートガバナンスについてのお考え、取り組みをお聞かせください。
プライム市場上場会社は独立社外取締役を3分の1以上というコーポレートガバナンスにおける要求を念頭に置きつつも、形式のみを整えても意味がありませんので、実効性を重視したガバナンス体制を目指しています。
ダイバーシティに関して言えば、事業経験者のみではなく、アカデミアなど研究に携わっている方、女性、外国人など、当社の企業価値向上に寄与する様々なケースを検討していく考えです。
●今後の成長戦略について
Q.次に、今後の成長に向けた方向性についてお聞かせください?
最初にお話ししたように、ITサービスの基礎、社名のとおり、「ベース」になることを目指し、全てのITサービスの根幹となる「モノづくり」にこだわり続けます。
そのために、「業界の最先端を行く技術力」「お客様の要望に素早く応えられる機動力・動員力」「安心を実感して頂ける品質・サービスレベル」の3つの武器を更に磨き上げ、「顧客から信頼させる企業」「業界最大の日中混成技術者集団」を目指します。
「モノづくり」、「運用保守」をメインとすることは、強靭なレジリエンスを有した、環境の変化・不況にも負けない安定した企業にも繋がると考えています。
対象はITを利用している全てのお客様です。経営資源を集中的に「ベース」の領域である「モノづくり」に投下し、この領域での競争力を極限まで高めていけば当社の芝生を無限に広げていける空間があると考えています。
今はまだ一部分しかない「ベースの芝生」を徐々に拡大し、見渡す限り一面が「ベースの芝生」で埋め尽くされるような、高い成長力、高付加価値を生みだせる力、高い安定性を持った企業を目指しており、当社ではこれを「芝生戦略」と呼んでいます。
加えて、新規顧客開拓に関しては、これまで同様選択と集中を基本に、第4の柱であるNTTデータに次ぐ、第5、第6の柱を確立すべく活動中です。
●その他のリスク、課題
Q.目指すべき将来像を実現するうえで現状では不足しているリソース、課題も当然おありだと思います。どんな点を課題と認識し、どのようにして克服していきますか。加えてESGについてもこれから必要な取り組みはどんな点でしょうか?
現場のエンジニアをもっと増員していきたいと思っています。
当社は全社員のうち9割以上が現場のエンジニアです。まず現場で当社の文化に馴染んでもらった後、実績に応じて幹部社員に抜擢していくという仕組みですから、毎年30%成長を持続させるには、その母集団を拡大していくことが欠かせません。
それによって生産性も当然向上していきますから、現在の800名からまずは1,000名、さらにその上のレベルまで増員していきたいと考えています。
日本、中国双方で積極的な採用活動を進めていきます。
加えて新卒・中途採用によるこうした増員に伴い、人的クオリティの維持・向上、ベースの企業文化継承、幹部社員増強などを目指した社員教育にも今まで以上に力を入れていかなければならないと考えています。
ESGについては、「基本方針」を策定したほか、総合企画部を所管部門とする推進体制を整備しました。今後は全社員の意識醸成に加え、特に「E」に関しては、CO2排出量を始めとしたデータの整備、TCFDに基づいた開示体制の整備が必要と考えており、議論・検討を進めています。
●ステークホルダーへのメッセージ
Q.様々なお考えをお聞かせいただきありがとうございました。最後にステークホルダーへのメッセージをお願いいたします。
当社は「モノづくり」にこだわり、お客様に常に新しい価値をご提供することを通じて社会に貢献してきました。
「受託開発」という言葉からは、下請け、低収益といったイメージを持つ方も多いかもしれませんが、当社はモノづくりに無くてはならない会社として評価され、成長を続け、高い利益率を実現しています。
そしてこれからも、当社の強みである技術力、機動力を磨き続け、高品質・高生産性・新技術を全て兼ね備え、「モノづくりを依頼するならベース」と言われるくらいの「高度な技術者集団」「いままでにないNew Typeの受託開発企業」を目指すことを通じて、高収益・高成長と社会への価値提供を実現して参ります。
一方で、ESGに関する具体的な取り組みやデータの開示に関しては、決して十分とは考えておらず、社内体制の整備を中心に、重要な課題として取り組んでまいります。
ステークホルダーの皆様におかれましては引き続き温かいご支援を賜りますよう、何卒よろしくお願い申し上げます。
3.課題・マテリアリティと取り組み
ベース株式会社が現状認識している課題・マテリアリティは以下のとおりである。
マテリアリティの選定に際しては、社外へのヒアリングも行っている。
課題 |
マテリアリティ |
環境 | 環境課題解決に向けた意識の向上 |
社会資本 | 顧客のプライバシーおよびデータ保護 |
人的資本 | 従業員の働き甲斐醸成、教育・育成制度 |
従業員の健康と安全 | |
従業員の雇用契約・多様性・参画 | |
ビジネスモデル&イノベーション | 競争力強化に向けた取り組み・イノベーション |
サプライチェーンマネジメント | |
リスク管理・ガバナンス | コーポレートガバナンス体制の拡充 |
システミックリスクの管理 |
*SASB Materiality Mapなどを参考に作成。
【ESG課題に対する基本方針・推進体制】
同社ではESG課題に関する「基本方針」「推進体制」を以下のように定めている。
<基本方針>
当社は企業指針の一つに「ITを生業とする企業活動を通じて、社会が抱える様々な問題解決に貢献」することを掲げている通り、現在世界規模で深刻化している環境問題や経済・社会問題等の解決に貢献するべく、ESGの課題に対して真摯に取り組んでいく。
また、ESGの課題に取り組むにあたり、対応方針や実施状況等に関して積極的な情報開示を行うことにより、企業の持続可能性(サステナビリティ)や中長期的な企業価値の向上を実現する。
<推進体制>
総合企画部を所管部門とする。
役割は以下の通りである。
・方針、目標設定等の検討、立案
・リスク分析および対策の策定(他部門への協力依頼、作業支援を含む)
・対策の進捗状況確認
【3‐1 「環境」課題におけるマテリアリティ】
(1)環境課題解決に向けた意識の向上
環境課題については、以下のような認識を有している。
◎認識
持続可能な社会を目指すうえで、地球環境保全に向けた気候変動問題の解決は国際的な重要課題である。
「世界の平均気温上昇を産業革命以前に比べて2℃より十分低く保ち、1.5℃に抑える」「世界の温室効果ガス(GHG)排出量をピークアウトさせ、21世紀後半には、温室効果ガス排出量と吸収量のバランスをとる」の2つを世界共通の長期目標とした2015年のパリ協定を批准した日本政府も「2030年 GHG排出量 2013年比46%削減」「2050年 カーボンニュートラル実現」を宣言した。
脱炭素社会への移行は、「ITを生業とする企業活動を通じて、社会が抱える様々な問題解決に貢献」することを企業指針の一つとしている当社にとっても責任をもって取り組むべき重要な課題である。
◎対応
また、2021年9月1日に同社は東京証券取引所の新市場区分への移行について、「プライム市場」を選択市場とする市場選択申請書を東証に提出した。
2021年6月に改定されたコーポレート・ガバナンスコードにおいてプライム市場の上場企業はTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)又はそれと同等の国際的枠組みに基づく気候変動開示の質と量の充実が求められており、同社も準備に着手している。
(2)二酸化炭素排出量
今回初めて本社オフィスの電気使用量から二酸化炭素排出量を算定した。
今後も継続して把握しつつ、削減に向けた取り組みを検討していく。
2019年 |
2020年 |
|
電気使用量(A) |
130,478kWh |
118,933kWh |
排出係数(B) |
0.000462 |
0.000445 |
CO2排出量(A×B=C) |
60.28t-CO2 |
52.93t-CO2 |
売上高(D) |
97億円 |
124億円 |
従業員数(E) |
621名 |
717名 |
原単位CO2排出量:売上高 (C÷D) |
0.62t/億円 |
0.43t/億円 |
原単位CO2排出量:従業員数 (C÷E) |
0.10t/人 |
0.07t/人 |
(3)各種施策
①紙媒体のリサイクル
機密書類等を抹消処理するにあたり、リサイクル処理を実施している。
株式会社日本パープルの提供する機密抹消サービス「保護(まもる)くん」を利用し2020年7月以降の二酸化炭素排出抑制量は550.4000Kgに相当する。
*廃棄物の焼却処理に伴う二酸化炭素排出量から(株)日本パープルの事業活動に伴う二酸化炭素排出量を控除して算出
(同社提供)
②ペーパーレス化の推進
主にバックオフィス部門にて紙資料の棚卸を実施し、不要なもの、データ化ができるものを識別。可能な限りペーパーレス化を図っている。テレワークの推進にも寄与している。
③テナントとしてのビル管理会社とのエンゲージメント
同社では、テナントとして入居するオフィスの電力利用状況についても電力使用量及び温室効果ガス排出に関する意識を有することが重要であると考え、テナント契約相手の秋葉原UDXについて、温室効果ガス排出量の削減目標および施策などをヒアリングし、以下のような回答を得ている。
削減目標など | 期間:2020年度から2024年度まで
平均削減義務率:13%(目標) |
施策 | [ビル全体(主に共用部において)の取り組み]
*空調設定温度を省エネモード(室内推奨温度目標/夏季:28℃・冬季:20℃) *通期でエレベータの夜間・休日の運転台数調整 *通期でエスカレータの運転台数・運転時間調整 *トイレの温水洗浄の温度調整(夏季) *便座ヒーターOFF・洗面台手洗い給湯器の電源OFF(夏季) *通期で共用部の照明間引き・共用部の部分的なLED化 [入居者(専用室内において)の取り組み] *照明の間引き・昼休み時間の照明消灯 *ブラインドの有効活用 *各個人で使用するIT機器の省エネモード設定
今後、共用部及び専用部のLED化を進めることで、さらなる削減に努める。 |
再生エネルギーの使用 | 再生可能エネルギーは、現在、利用していない。 |
(2021年7月19日現在)
④その他
全社員にとどまらず、協力会社社員にもエコバッグを配布し、意識醸成に努めている。
オフィスにおける適切な室温管理も周知徹底している。
【3‐2 「社会資本」課題におけるマテリアリティ】
(1)顧客のプライバシーおよびデータ保護
◎個人情報保護
個人情報保護の重要性を早くから認識しており、個人情報保護法が2005年4月に施行されるより以前の2004年9月にプライバシーマーク資格を取得した。
また、プライバシーマーク資格取得に伴い整備した個人情報保護管理体制を中心に、個人情報保護法に準拠した社内規定の整備、運用を行っている。
◎データ保護
情報セキュリティ関連法令に準拠した社内規定を整備・運用し、顧客の大切な情報についての情報セキュリティ事故を起こさない万全の対策を講じている。
主要顧客のセキュリティルールに関する理解度を深めるため、年2回テストを実施している。
開発は主として顧客のセキュアな環境で業務を行っており、顧客の案件を同社オフィスで行う場合は、顧客のセキュリティ要件を満たすセキュアな環境を構築した上で業務を行っている。
また、コロナ禍により2020年から在宅勤務による形態も定着しているが、作業端末や通信経路等についてセキュアな環境とセキュリティルールを整備した上で業務を行っている。
【3‐3 「人的資本」課題におけるマテリアリティ】
同社では、ベースグループが継続的成長を目指していく上で必要不可欠なグループ全体の求心力となる経営理念、および、その理念に基づき実際に行動に移すための行動規範等を「BASE WAY」と称して全社員への周知を図っている。
これにより、同社の価値観や行動様式が共有され、将来に亘って同社の文化や企業マインドがしっかりと受け継がれていくことを期待している。
(1)従業員の意識・働き甲斐醸成、教育・育成制度
①ブランドマネージャーの任命
一流企業を目指すためには企業ブランドの構築が不可欠と考える同社では、社員のブランド意識醸成に向け、「会社が社員を大事にする」ことをより具体的に行動に移すため、新たにブランドマネージャーを任命した。ブランドマネージャーは仕事の指揮命令系統とは別の会社とのパイプ役。各社員に対し情報の連携、伝達を行うほか、仕事関係及び個人的な相談にも乗る。社員にとって会社がより身近な存在になることが、最終的に自社のブランド確立に繋がると考えている。
②教育・育成制度
IT技術中心に常時100種類以上のカリキュラムを用意しており、社員のスキルアップをサポートしている。また、主要顧客の1社がみずほ証券株式会社であること、金融分野は市場規模が大きく今後も成長性が見込まれることから社員がIT関係だけでなく、証券外務員試験など金融関係の資格を取得することを奨励している。
中国人社員に対しては、専任の日本語講師を社員採用しており、来日直後の中国新卒社員から部長クラスの社員まで個人のレベルにあわせてきめ細かく対応している。
(2)従業員の健康と安全
①ストレスチェックの実施ストレスチェック制度の2015年12月施行に合わせて社内でのストレスチェックを開始した。厚生労働省の制度に則り、社員の希望に応じて産業医面接を行い、適切な措置を行っている。
②36協定遵守の徹底システム開発業務は、製造工程のピーク時や検収前、本番稼働前等に稼働が増える傾向があるが、同社の場合は、案件責任者による要員の作業時間管理を徹底しており、36協定に定める時間の範囲内で業務を行っている。
③労働基準法など基法等の就労関連法令に準拠した社内規定の整備、運用「社員を大事に」というスローガンを掲げ、就労関連法令に準拠した社内規定の整備、運用を行っている。
④コロナ専用の相談窓口設置コロナ禍による在宅勤務で、社員間のコミュニケーション不足が懸念される中、同社では、コロナ専用の相談窓口を設置し、罹患した場合だけでなく、日常の健康面や不安に感じる事等、公私に関わらず相談を受け付けている。
(3)従業員の雇用契約・多様性・参画
①再雇用制度定年を60歳と規定しているが、その後本人が希望し、かつ、健康状態等業務を継続できると判断された場合は65歳まで嘱託社員として雇用を継続できる制度を導入している(契約は1年単位)。
②男性社員の育休推進男女平等に育休の取得を推進している。男性も女性と同様に子が1歳になるまで取得する社員も多い。2020年は3名の男性社員が取得した。
③ダイバーシティの推進日本人、中国人で全体の95%以上を占めているが、韓国人(2.7%)、インド人(0.2%)、アメリカ人(0.1%)などIT技術者として有能な人材を国籍にとらわれず、積極的に採用している。
④障碍者雇用の推進障碍者雇用促進法に従い、法定雇用率2.3%を意識して積極的に雇用を促進している。
【3‐4 「ビジネスモデル&イノベーション」課題におけるマテリアリティ】
(1)競争力強化に向けた取り組み・イノベーション
2022年に創業25年を迎える同社は次世代への移行を着実に進めるための計画策定に着手している。
その中心は社員育成である
これまでも社員教育には力を入れてきたが、現場に任せていた部分も大きかったため、全社的・体系的な計画とする。
技術力に関しては、「期限・資格取得人数」といった明確な目標を掲げることで、技術レベルを目に見える形にする。主にDX関連の重要技術を対象とする。
マネジメント能力についても社内教育の環境を整備する。
これまでは貸会議室などを利用していたが、フロアを増床し、70名ほどが収容できる常設の教室を設けた。マネジメント、経営理念の浸透など、幹部教育に注力する。
毎年30%前後の成長を目指す同社においては、幹部層の輩出が不可欠であり、幹部育成についても目標値を設定して実効性を確保する。
(2)サプライチェーンの管理
協力企業の選定に際しては、各システム部門が個別に協力企業に発注すると、会社としての単価統制や優先案件への調達等が困難になるため、調達担当者を配置し、手続きや情報を一元的に管理することで、問題を解消している。
また、機密保持、セキュリティルールの遵守、セキュリティ監査実施、反社会的勢力排除のため、外部委託管理規程を制定し、選定基準、選定プロセス等を定めることによりコンプライアンスや情報セキュリティ等の法令遵守に努めている。
【3‐5 「リスク管理・ガバナンス」課題におけるマテリアリティ】
(1)コーポレートガバナンス
<基本的な考え方>
コーポレートガバナンスに関する基本的な考え方は以下の通り。
「当社は、法令遵守の下、経営の公平性・透明性を確保した上で、環境の変化に迅速かつ柔軟な対応ができる体制を整備し、意思決定及び事業遂行を実施してまいります。また、内部統制の強化及び適時・適切な情報開示体制を確立することにより持続的発展を実現させるとともに、株主をはじめとする顧客・従業員・地域社会等からの信任を得ることが重要であると考えます」
<企業統治の体制の概要及び当該体制を採用する理由>
監査等委員会設置会社制度を採用している。
監査等委員の過半数を社外取締役で構成されている監査等委員会において、業務執行の適法性、妥当性の監査・監督を担うことにより透明性の高い経営を実現するとともに、監査等委員である取締役が取締役会の業務執行決定権限を有することによって、経営の適切な意思決定及び執行の迅速化を図ることができると認識している。
以下の各委員会や会議を設置している。
委員会 |
概要 |
取締役・取締役会 | 社外取締役4名(うち、独立役員4名)を含む取締役11名で構成され、毎月1回開催しており、法的決議事項、経営方針及び会社の重要事項等についての意思決定を行うとともに、監査等委員会において取締役(監査等委員である取締役を除く)の業務執行の監視・監督を行っている。
また、迅速かつ適切な対応を図るべく、必要に応じて臨時取締役会を開催し、機動的な意思決定を行っている。 |
監査等委員・監査等委員会 | 社外取締役2名(うち、独立役員2名)を含む3名の監査等委員で構成されている。毎事業年度の初めに作成される監査計画書に基づき会計監査及び業務監査を実施している。 |
報酬委員会
|
取締役会の諮問機関として社外取締役2名(うち、独立役員2名)を含む3名で構成されている。
取締役報酬の水準及び構成の妥当性、並びに決定プロセスの透明性・客観性を担保することにより監督機能の強化を図り、コーポレート・ガバナンス体制をより一層充実させている。取締役会の諮問に基づき、取締役の報酬に関する事項の審議・答申を行っている。 |
経営会議 | 常勤取締役、執行役員が出席し毎月1回開催しており、経営に関わる事項の中でより議論が必要だと思われる事項について評議を行っている。これにより、より質の高い合意形成が得られ、実効性のある決定が可能となっている。 |
予実会議 | 毎月1回開催しており、社長については四半期ごとに出席し、社長を除く常勤取締役、執行役員、各部門長は毎回出席し、部門ごと及び主要顧客ごとに前月の実績とその結果分析及び改善策と今後の見通しに関する報告を行っている。
これにより、問題点の未然防止や早期解決が図られており、予算統制が可能となっている。 |
また、経営の意思決定の迅速化、意思決定機能と執行機能の分離及び執行責任の明確化を目的として、執行役員制度を導入している。
これにより、取締役会の業務執行に対する監督強化、及び、意思決定の迅速化による経営の健全性、透明性、公正性の確保に努めている。
執行役員は取締役会で選任された8名で構成され、任期は1年。
◎コーポレートガバナンス報告書
更新日:2021年3月31日
<実施しない主な原則とその理由>
4つの補充原則についてエクスプレインしている。
原則 |
開示内容 |
【補充原則3-1-②】 | 当社の株主における海外投資家の構成比率は相対的に低い状況であり、各種情報開示において、資料の英訳等を行っておりません。
今後は、海外投資家の株主構成比率の推移を見ながら実施すべきかどうか必要性を検討してまいります。 |
【補充原則4-11-③】 | 取締役会全体の実効性の分析・評価に関しましては、方法およびその結果の概要の開示について今後の検討課題と認識しております。 |
<コーポレートガバナンス・コードの各原則に基づいて開示している主な原則>
原則 |
開示内容 |
【原則1-4】 | 当社は、政策保有株式は保有しておりません。
今後も保有しない方針ではありますが、保有する際は、相手先企業との中長期的な取引関係の維持・強化を通じて、当社の中長期的な企業価値向上に資するか、保有合理性を取締役会において検討し、事業年度毎に政策保有株式の合理性を確認してまいります。政策保有株式に係る議決権行使につきましては、保有先企業の中長期的な企業価値の向上や株主利益の向上に資するものか否か、また、当社への影響等を踏まえ、総合的に議案ごとの賛否を判断いたします。 |
【原則3-1】 | (ⅰ)会社の目指すところ(経営理念等)は当社のホームページ
(https://www.basenet.co.jp/company/)に記載しております。経営戦略、経営計画は有価証券報告書に記載しております。 (ⅱ)コーポレート・ガバナンスに関する基本的な考え方と基本方針はコーポレート・ガバナンス報告書及び有価証券報告書等で開示しております。 (ⅲ)取締役の報酬については、株主総会にて決定された報酬総額を限度とし、「役員報酬に関する内規」を踏まえて取締役(監査等委員である取締役を除く。)は取締役会、監査等委員である取締役は監査等委員会においてそれぞれ決定しております。取締役の報酬等に関する評価・決定プロセスを透明化・客観化することで監督機能の強化をはかり、コーポレート・ガバナンス体制をより一層充実させるため、任意の諮問機関として報酬委員会を設置しておりますので、当委員会の答申を尊重し、最終的な決定を行います。 (ⅳ)取締役候補者の指名は、監査等委員を除く取締役について、当社の事業全般に関して提言できる能力、経験及び知見や社内取締役に関しては担当業務の遂行能力等を総合的に勘案して、取締役会で推薦をし、株主総会の決議により決定いたします。監査等委員である取締役の選任については、専門分野の経験及び知見に加え、独立した立場で経営の監視・監督が行える能力を重視し、取締役会の推薦をもとに、監査等委員会の同意を得て、株主総会の決議により決定いたします。 また、当社の取締役の解任については、当該取締役が当社の「役員規程」に違反した場合、あるいは取締役として不正・不当な行為があると認められた場合において、代表取締役または取締役が提案し、監査等委員以外の取締役の解任は、取締役会で決議した上で株主総会議案(普通決議)として、監査等委員の解任は、監査等委員会で決議した上で株主総会議案(特別決議)として、それぞれ提出いたします。 (ⅴ)取締役の選任理由については、株主総会の参考書類に記載しております。株主総会招集通知は当社ホームページ(https://www.basenet.co.jp/ir/index.html)で開示しております。 |
【補充原則4-11-①】 | 当社は、取締役会については業務執行の監督と重要な経営判断を行うために多様な経験や考え方を持った取締役で構成されるとともに、迅速な意思決定等のため、機動性を確保することが必要と考えております。
業務執行を行う取締役に関しては、当該業務に精通しており、豊富な経験を有する者で構成し、ソフトウェア受託開発業務の経験がある者と管理部門での経験が豊富な者でバランスよく構成いたします。 また、取締役会の監視・監督機能の強化、経営の透明性の向上、企業価値向上に資する助言、一般株主の視点を取り入れるために、社外取締役を選任いたします。社外取締役は取締役会の3分1以上を目安とし、かつ、その社外取締役のうち過半数を独立社外役員で構成いたします。知識・経験・能力をバランスよく備えるために、会計、法律等の専門家およびソフトウェア受託開発以外の他業界における経営経験やマネジメント経験の豊富な者を含めた構成を意識いたします。 加えて、当社は外国人社員が多いという特色もあり、ダイバーシティな会社運営には外国人や女性の価値観・発想も重要と考え、取締役の構成メンバーは外国人・外国出身者や女性を含めることも重視いたします。 なお、選任に関する方針・手続は【原則3-1】に記載のとおりです。 |
【原則5-1】 | 当社は、株主との信頼関係を築くため、また企業価値の向上のために株主との対話を重視しております。
当社の株主との建設的な対話に関する方針は以下のとおりです。 (1)株主との対話全般に目配りを行う経営陣または取締役の指定 代表取締役社長、常務取締役管理本部長および取締役総合企画部長 (2)対話を補助する社内のIR担当、経営企画、総務、財務、経理、法務部門等の有機的な連携のための方策 IR室がIR担当機能を有しております。IR担当部門は、開示資料の適切な作成ならびに株主や投資家との建設的な対話の実現のため、財務、経理、法務のみならず、事業を推進する部門とも連携し、業務を行っています。 (3)個別面談以外の対話の手段(例えば、投資家説明会やIR活動)の充実に関する取組み 株主・投資家向けには、決算説明会において、決算および事業の詳細について説明を行います。また、内容は当社ホームページにも掲載し、広く株主・投資家へ伝えてまいる予定です。 (4)対話において把握された株主の意見・懸念の経営陣幹部や取締役会に対する適切かつ効果的なフィードバックのための方策 株主や投資家との対話において把握した株主・投資家の意見・提案等については、必要に応じてレポートにまとめ、取締役、経営陣幹部および社内関係部門にフィードバックする等行ってまいります。 (5)対話に際してのインサイダー情報の管理に関する方策 インサイダー情報の取扱いについては、「インサイダー取引防止規程」に基づき、未公表の重要事実の管理を徹底し、適切に対応しています。決算情報に関しては、情報漏えいを防ぎ、公平性を確保するために、沈黙期間を設け、この期間中の決算にかかわる問い合わせへの回答やコメントを控えています。 |
(2)システミックリスクの管理
経営理念、企業指針、行動規範並びにコンプライアンス規程等の諸規定を定めて社員への周知徹底を図っており、コンプライアンス体制や内部統制システムの整備、維持、向上に努めている。
組織 |
概要 |
コンプライアンス委員会 | 常務取締役管理本部長が委員長を務め、法令に則した社内規定の整備や定期的なコンプライアンス教育の実施・遵守を図っている。 |
情報セキュリティ委員会 | 取締役総合企画部長が委員長を務め、オフィスや社内システム等に関する脆弱性について毎年確認を実施しており、適宜対策の見直し・強化を行っている。また、全社員及び協力
企業の要員に対して情報セキュリティ教育及び試験を定期的に実施しており、情報セキュリティルールの理解と意識の向上に努めている。 |
アシュアランス室 | 客観的な立場で見積り提出前の見積り審査、進行中案件に関するプロジェクト点検を実施し、案件のリスク低減に努めている。 |
4.財務:非財務データ
(1)財務データ
◎BS/PL
2017/12期 |
2018/12期 |
2019/12期 |
2020/12期 |
|
売上高 |
5,888 |
7,500 |
9,714 |
12,400 |
経常利益 |
812 |
1,087 |
1,654 |
2,423 |
当期純利益 |
542 |
702 |
1,139 |
1,743 |
EPS(円) |
71.46 |
88.88 |
143.26 |
195.74 |
ROE(%) |
21.8% |
24.2% |
26.3% |
28.5% |
資産合計 |
7,381 |
7,220 |
9,054 |
10,286 |
純資産合計 |
2,797 |
3,270 |
5,656 |
6,901 |
自己資本比率(%) |
36.2% |
43.5% |
60.9% |
65.4% |
*単位:百万円。当期純利益は親会社株主に帰属する当期純利益。
◎CF
2017/12期 |
2018/12期 |
2019/12期 |
2020/12期 |
|
営業CF |
313 |
1,345 |
1,214 |
2,557 |
投資CF |
-133 |
37 |
4 |
-12 |
フリーCF |
180 |
1,382 |
1,218 |
2,545 |
財務CF |
102 |
-1,530 |
260 |
-1,235 |
現金・現金同等物 |
4,553 |
4,396 |
5,870 |
7,182 |
*単位:百万円
(2)非財務データ
①社会資本関連
2017/12期 |
2018/12期 |
2019/12期 |
2020/12期 |
|
株主数 |
– |
– |
770 |
2,217 |
②人的資本関連
2017/12期 |
2018/12期 |
2019/12期 |
2020/12期 |
|
従業員数(単体) |
396 |
500 |
621 |
717 |
<参考>
ESG Bridge Reportの発行に際しては、柳 良平氏(京都大学経済学博士、エーザイ株式会社専務執行役CFO、早稲田大学大学院会計研究科客員教授)に多大なご協力を頂いた。
この「参考」のパートでは、ESG Bridge Report発行の趣旨についても述べさせていただくとともに、同氏の提唱する「ROESGモデル」の概要を同氏の著作「CFOポリシー」から引用する形で紹介する。
(1)ESG Bridge Reportについて
ESG投資がメインストリーム化する中で、投資家からは日本企業に対し積極的なESG情報開示が求められ、これに呼応する形で統合報告書作成企業数は増加傾向にあります。
ただ、統合報告書の作成にあたっては経営トップの理解・関与が不可欠であることに加え、人的リソースおよび予算負担から多くの企業が踏み出すことができていないのが現状です。
また、統合報告書の作成にあたっては各種データの整理、マテリアリティの特定、指標や目標値の設定など多くのステップが必要ですが、現状の準備不足のために二の足を踏んでいるケースも多いようです。
しかし、柳氏が「CFOポリシー」で、「日本企業が潜在的なESGの価値を顕在化すれば、少なくとも英国並みのPBR2倍の国になれるのではないだろうか」「ROESGの実現により日本企業の企業価値は倍増でき、それは投資や雇用、年金リターンの改善を経由して国富の最大化に資する蓋然性が高い」と述べているように、日本企業のESG情報提供は、日本全体にとっても有意で積極的に推進すべき事項であると株式会社インベストメントブリッジは考えています。
そこで、一気には統合報告書作成には踏み出せないものの、ESG情報開示の必要性を強く認識している企業向けに、現時点で保有するデータやリソースをベースに、投資家が必要とするESG情報開示に少しでも近づけるべく、弊社がご協力して作成しているのが「ESG Bridge Report」です。
日本企業のESG情報開示を積極的に後押ししている日本取引所グループが発行している「ESG情報開示実践ハンドブック」のP6には「ここで紹介している要素が全て完璧にできていないと情報開示ができないということでもない。自社の状況を踏まえてできるところから着手し、ESG情報の開示を始めることで、投資家との対話が始まり、そこから更なる取り組みを進めていく際に、本ハンドブックが手がかりになることを期待している」とありますが、「ESG Bridge Report」は、まさに「できるところから着手し、ESG情報の開示を始める」ためのツールであると考えています。
柳氏によれば「ROESG」の本格的な展開のためには、ESGと企業価値の正の相関を示唆する実証研究の積み上げ、企業の社会的貢献が長期的な経済価値に貢献する具体的事例の開示などが必要とあり、実際のハードルは高いのですが、各企業のESGへの取り組みがいかにして企業価値向上に繋がっているかをわかりやすくお伝えしたいと考えています。
お読みいただいた多くの投資家からのフィードバックを基に、よりクオリティの高いレポートへと改善してまいりますので、是非忌憚のないご意見を賜りたいと存じます。
株式会社インベストメントブリッジ
代表取締役会長 保阪 薫
k-hosaka@cyber-ir.co.jp
(2)「ROESGモデル」について
(拡大する非財務資本の価値、ESG投資の急増、ESGと企業価値をつなぐ概念フレーム策定)
近年、多数の実証研究において企業価値評価における非財務情報の重要性拡大が証明されており、今や、企業価値の約8割は見えない価値(無形資産)、非財務資本の価値と推察される。
加えて、非財務情報と企業価値の関係を調べた多数の実証研究の結果から、ESGと企業価値は正の相関を持つ蓋然性があると考えられる。
一方、グローバルにESG投資のメインストリーム化が進む中、潜在的なESGの価値にもかかわらず多くのケースでPBRが1倍割れもしくは低位に留まる日本企業は、PBR上昇のために「ROESGモデル」により、非財務資本を将来の財務資本へと転換すること、つまりESGと企業価値をつなぐ概念フレームを策定して開示する必要がある。
(「ROESGモデル」の概要)
株主価値のうち、「PBR1倍相当の部分」にあたる株主資本簿価は現在の財務資本・財務価値により構成される。
一方、株主価値のうち「PBR1倍超の部分」にあたる市場付加価値は、(将来の財務資本ともいえる)非財務資本により構成されると同時に、残余利益モデルにおいてはエクイティス・プレッド(ROE-株主資本コスト)の金額流列の現在価値の総和でもある。
このことから柳氏は、非財務戦略の結論として「非財務資本とエクイティ・スプレッドの同期化モデル」=「ROESGモデル」を、ESGと企業価値を同期化する概念フレームワークとして提案している。
「ROESGモデル」においては、「市場価値(MVA)」を通じて残余利益の現在価値の総和としてのエクイティ・スプレッドと非財務資本が相互補完的である、つまり、エクイティ・スプレッドによる価値創造はESGを始めとする非財務資本の価値と市場付加価値創造を経由し、遅延して長期的には整合性を持つ。
そのため、ESG経営は資本効率を求める長期投資家とは市場付加価値を経由して同期化でき、協働が可能であろう。
これを傍証するように、柳氏が実施した投資家サーベイにおいては、世界の投資家の大多数が「ESGとROEの価値関連性を説明してほしい」と要望していると同時に、「ESGの価値の100%あるいは相当部分をPBRに織り込む」と回答しており、「ROESGモデル」は間接的にも長期投資家の大半から支持されていると解釈できよう。
(同氏の「ROESGモデル」の詳細については、柳良平著「CFOポリシー」中央経済社(2020)
をご参照されたい。