(7776)株式会社セルシード 新株予約権の行使で財務基盤はより安定
橋本 せつ子 社長 |
株式会社セルシード(7776) |
|
企業情報
市場 |
JASDAQ |
業種 |
精密機器(製造業) |
代表者 |
橋本 せつ子 |
所在地 |
東京都江東区青海二丁目5番10号 テレコムセンタービル |
決算月 |
12月 |
HP |
株式情報
株価 |
発行済株式数(自己株式を控除) |
時価総額 |
ROE(実) |
売買単位 |
|
536円 |
11,891,665株 |
6,374百万円 |
9.8% |
100株 |
|
DPS(予) |
配当利回り(予) |
EPS(予) |
PER(予) |
BPS(実) |
PBR(実) |
– |
– |
– |
– |
87.77円 |
6.1倍 |
*株価は11/22終値。発行済株式数は直近四半期末の発行済株式数から自己株式を控除。ROEは前期末実績、BPSは直近決算短信より。
連結業績推移
決算期 |
売上高 |
営業利益 |
経常利益 |
親会社株主帰属利益 |
EPS |
DPS |
2015年12月(実) |
193 |
-568 |
-531 |
-535 |
– |
– |
2016年12月(実) |
100 |
-1,413 |
-1,415 |
-1,414 |
– |
– |
2017年12月(実) |
85 |
-956 |
-964 |
-966 |
– |
– |
2018年12月(実) |
1,026 |
140 |
140 |
129 |
11.35 |
– |
2019年12月(予) |
300 |
-1,100 |
-1,100 |
-1,100 |
– |
– |
*予想は会社予想。単位は百万円、円。
株式会社セルシードの2019年12月期第3四半期決算の概要と今後の見通しについて、ブリッジレポートにてご報告致します。
目次
今回のポイント
1.会社概要
2.2019年12月期第3四半期決算概要と通期予想
3.中期経営計画(19/12期~21/12期)
4.今後の注目点
<参考:コーポレート・ガバナンスについて>
今回のポイント
- 19/12期3Q(累計)は売上高2億10百万円(前年同期比61.2%減)、営業損失5億54百万円(前年同期は94百万円の損失)。細胞シート再生医療事業の台湾での独占的事業提携の一環として、メタテック社への一部データの提供完了に伴う売上や東京女子医科大学から受注した再生医療受託サービスの売上を計上した。ただ、メタテック社への売上の減少で連結売上高が減少。減収に伴い売上総利益が減少する中、研究開発費を中心に販管費が増加した。
- 通期予想に変更はなく、売上高3億円(前期比70.8%減)、営業損失11億円(前期は1億40百万円の営業利益)。再生医療支援事業、細胞シート再生医療事業共に1億50百万円の売上を計上する予定(前期は細胞シート再生医療事業において、台湾での独占的事業提携契約に基づく収入9億60百万円を売上計上した)。
- 再生医療製品の開発・上市に向けた先行投資が続いているが、3Q(7-9月)においては、合弁会社の設立、資金調達、展示会への出展等、中期経営計画(19/12期~21/12期)に基づく取り組みが進んだ。事業等のリスクとして継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような事象又は状況が存在するが、新株予約権の行使による資金調達の実施等で事業の遂行に十分な手元資金を有しており、財務基盤は安定している。細胞シート再生医療第1号製品の早期事業化の実現と提携先の開拓による更なる収益機会を獲得していく事で上記状況の解消を図っていく考えだ。
1.会社概要
失われた臓器や損傷あるいは機能が低下した臓器を再生して治療する新たな医療である再生医療。東京女子医科大学の岡野光夫名誉教授・特任教授が開発した日本発・世界初の「細胞シート工学」を基盤技術とし、この技術に基づいて作製した「細胞シート(シート状の培養細胞)」を用いた再生医療等製品の開発を行う「細胞シート再生医療事業」と細胞シートの基盤ツール(培養器材)である温度応答性細胞培養器材等の開発・製造・販売及び再生医療の研究開発・事業化を支援する再生医療受託サービスを提供する「再生医療支援事業」を二本柱とする。
【Mission:価値ある、革新的な再生医療をリードし、世界の医療に貢献します。】
大学の研究成果をシーズとして、同社が治験を行い再生医療製品として製品化する事で世界の医療への貢献を目指している。
(同社資料より)
1-1.事業内容
細胞シート再生医療事業
大学との共同研究(臨床研究)によりシーズを発掘し事業化する。現在のパイプラインは、「細胞シート工学」を基盤技術とする「食道再生上皮シート」と膝軟骨の「軟骨再生シート」の2本。「食道再生上皮シート」は国内で19/12期第1四半期に治験が終了したが、追加治験が必要なため、22/12期の製造販売承認申請を目指して19/12期中に追加治験の治験届を提出する。また、海外では、17/12期4月に台湾の三顧股有限公司(以下、MetaTech社)と事業提携契約を締結し、同社が2018年12月末に治験届を提出した。
一方、「軟骨再生シート」は、東海大学医学部付属病院が申請していた先進医療が2019年1月に承認され、大学病院で治療の開始に向けた準備が進められている。また、MetaTech社への導出も実行されMetaTech社が台湾での事業化に向けた準備を進めている。もっとも、「細胞シート工学」を用いた再生医療製品は、様々な分野で臨床研究が進められている。第3の開発品目や地域についての検討、選定も進められており研究実施機関との契約等、準備が整い次第開発に着手する。
再生医療支援事業
温度応答性細胞培養器材等の開発・製造・販売、及び細胞シート製品の製法開発・受託製造、施設管理・申請支援、細胞培養技術者教育等の再生医療受託サービスを手掛けている。
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UpCell® 細胞シート回収用温度応答性細胞培養器材
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RepCell ™ 細胞回収用温度応答性細胞培養器材 |
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HydroCell ™ 超低付着性細胞培養器材 |
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|
(画像はいずれも同社資料より)
細胞シート製品の製法開発・受託製造
製薬会社・研究機関からの委託を受けて、主に細胞シートの受託開発・製造を行う。日本再生医療学会認定の臨床培養士が所属しており、培養の経験豊富なスタッフによる高品質な細胞シートを用いた再生医療等製品の製法開発・製造を特定細胞加工物の製造許可を受けた細胞培養加工施設で行う。尚、軟骨再生シートは東海大学が申請していた先進医療Bが2019年1月に承認された。この先進医療に使用される細胞シートは同社が細胞培養センターで培養(受託加工)する事が決まっている。
1-2.細胞培養センター
延床面積約763 ㎡で、自動モニタリングシステムによって、清浄度、室圧、温湿度、機器(培養器や保冷庫等)が自動管理され、監視カメラシステムも完備。また、羽田空港まで車で約20分と至近で空輸にも対応しやすい。2017年3月には「再生医療等の安全性の確保等に関する法律第35 条第1項の規定に基づく「特定細胞加工物製造許可」(許認可権者:厚生労働省)を取得しており、特定細胞加工物の受託製造も可能。
(同社資料より)
2.2019年12月期第3四半期決算概要と通期予想
2-1.第3四半期(累計)連結決算
|
18/12期3Q(累計) |
構成比 |
19/12期3Q(累計) |
構成比 |
前年同期比 |
売上高 |
543 |
100.0% |
210 |
100.0% |
-61.2% |
売上総利益 |
525 |
96.7% |
171 |
81.4% |
-67.3% |
販管費 |
620 |
– |
726 |
– |
+17.1% |
営業利益 |
-94 |
– |
-554 |
– |
– |
経常利益 |
-94 |
– |
-558 |
– |
– |
親会社株主帰属利益 |
-96 |
– |
-557 |
– |
– |
*単位:百万円
売上高2億10百万円(前年同期比61.2%減)、営業損失5億54百万円(前年同期は94百万円の損失)
売上高は前年同期比61.2%減の2億10百万円。再生医療支援事業の売上が前年同期の43百万円から75百万円に増加したものの、細胞シート再生医療事業の売上が台湾メタテック社向けの減少で1億35百万円と同73.0%減少した。
再生医療支援事業では、自社細胞培養センターを活かして再生医療を支援する「再生医療受託サービス」において東京女子医科大学より受注した再生医療受託サービスの第1号案件の1症例目の売上を第1四半期に、第2四半期に2、3症例目分の売上を計上した。
一方、細胞シート再生医療事業では、台湾のメタテック社との間で締結した細胞シート再生医療事業に関する台湾での独占的事業提携の一環としてのメタテック社への一部データの提供完了に伴う売上を計上した。
営業損益は5億54百万円の損失。売上の減少に伴い売上総利益が減少する中、研究開発費(再生医療研究開発に係る補助金控除後)の増加等で販管費が増加した。研究開発費は同27.0%(80百万円)増の3億79百万円。
セグメント別売上高・利益
|
18/12期3Q(累計) |
構成比 |
19/12期3Q(累計) |
構成比 |
前年同期比 |
再生医療支援事業 |
43 |
8.0% |
75 |
35.9% |
+73.9% |
細胞シート再生医療事業 |
500 |
92.0% |
135 |
64.1% |
-73.0% |
連結売上高 |
543 |
100.0% |
210 |
100.0% |
-61.2% |
再生医療支援事業 |
-57 |
– |
-40 |
– |
– |
細胞シート再生医療事業 |
182 |
= |
-274 |
– |
– |
調整額 |
-219 |
– |
-240 |
– |
– |
連結営業利益 |
-94 |
– |
-554 |
– |
– |
*単位:百万円
財政状態
|
18年12月 |
19年9月 |
|
18年12月 |
19年9月 |
現預金 |
1,057 |
1,103 |
短期借入金 |
– |
150 |
流動資産 |
1,505 |
1,223 |
前受金 |
64 |
30 |
固定資産 |
81 |
89 |
負債 |
174 |
246 |
資産合計 |
1,586 |
1,313 |
純資産 |
1,411 |
1,067 |
*単位:百万円
上記には反映されていないが、2019年9月2日に発行した第18回新株予約権が2019年10月1日から第3四半期決算発表前日の2019年11月13日までの間に4,442個行使され(行使価格:1株当たり433~473円、交付株式数:444,200株)、199,015千円を調達した。
第18回新株予約権の新株予約権総数は28,000個、発行価額2,884,000円。潜在株式数2,800,000株、差引手取概算額1,567,101,000円。割当先及び割当方法はバークレイズ・バンク・ピーエルシーに対する第三者割当の方法による。
2-2.トピックス
合弁会社の設立
2019年9月に、同社と、メタテック社、Chen, Tsung-Chi氏(台湾 貝德比修投資有限公司 董事長)、及びDr.TU氏(台湾 財団法人義大病院 院長)の4者の出資により、合弁会社を設立した(事業開始は2020年4月)。合弁会社は、まずDr.TU氏の専門分野における知見・経験を最大限活用して、日本及び台湾における細胞シート再生医療の研究開発及び事業化を進めていく。
名称 | 日生細胞生技股份有限公司(英語名:Up Cell Biomedical Co.) |
所在地 | 台北市 |
代表者 | メタテック社董事長胡立三 |
事業内容 | 台湾・日本の大学等のシーズをベースとした細胞シート再生医療事業の研究開発及び事業化 |
資本金 | 130,000,000台湾ドル(設立時) |
決算期 | 12月期 |
出資比率 | 当社:25.38%、メタテック社:25.38%、Chen, Tsung-Chi:26.15%、Dr.TU:23.07% |
移植用「軟骨再生シート」の米国基本特許に関する許可通知書の発行
東海大学(医学部外科学系整形外科学)の佐藤正人教授と共同で出願した移植用「軟骨再生シート」の特許が米国で登録された。この特許は移植用「軟骨再生シート」の基本特許であり、佐藤正人教授と同社の共同研究の成果の一つである。国内及び欧州で登録済みの特許(日本特許番号:第4921353号)に対応するもので、米国でも特許登録された事で、現在開発中の軟骨再生シートを世界の主要な医薬品市場である日米欧において知的財産面で保護される事となった。
軟骨再生シートは細胞シート工学技術を応用しているため、温度操作のみで回収する事ができ、細胞表面の接着タンパク質等を保持し、容易に移植部分に接着する。移植された軟骨再生シートは軟骨再生に必要なタンパク質の分泌や損傷部分の保護を行い、本来の軟骨組織への再生に貢献すると考えられている。
また、自己細胞由来軟骨再生シートはより多くの変形性膝関節症患者を対象とする事を目的に、東海大学が申請していた先進医療Bとしての治療が2019年1月に承認された。先進医療を開始した際、同社は細胞シートの受託製造を有償で実施する予定。また、先進医療の実施により企業治験に資するデータを収集する事ができるため、将来的な保険導入のための評価の一助ともなる。
2-3.通期連結業績予想
|
18/12期実績 |
構成比 |
19/12期予想 |
構成比 |
前期比 |
売上高 |
1,026 |
100.0% |
300 |
100.0% |
-70.8% |
営業利益 |
140 |
13.6% |
-1,100 |
– |
– |
経常利益 |
140 |
13.6% |
-1,100 |
– |
– |
親会社株主帰属利益 |
129 |
12.6% |
-1,100 |
– |
– |
*単位:百万円
通期予想に変更はなく、売上高3億円、営業損失11億円
再生医療支援事業、細胞シート再生医療事業共に1億50百万円の売上を計上する予定(前期は細胞シート再生医療事業において、台湾での独占的事業提携契約に基づく収入9億60百万円を売上計上した。売上の減少と研究開発費の増加で営業損失が11億円に増加するとみている。
3.中期経営計画(19/12期~21/12期)
3-1.基本方針
・食道再生上皮シートの製造販売承認申請(2022年)
・同種軟骨再生シートの2021年治験開始に向けた開発加速
・次期品目の開発着手(歯根膜細胞シートの開発:東京医科歯科大学と協議開始)
・組織体制・インフラの構築
・再生医療支援製品の新製品開発及び受託製造を推進して更なる収益機会獲得
・世界展開に向けた事業提携推進(メタテック社と合弁会社設立:MOU締結)
3-2.中期経営計画の達成に向けた取り組み
食道再生上皮シートについては、早期の製造販売承認申請を目指し、軟骨再生シートについては、自己軟骨再生シートの先進医療B開始後の受託製造準備を進めると共に同種(他家)軟骨再生シートの開発を加速する。食道再生上皮シート及び軟骨再生シートに続く品目として歯根膜細胞シートを考えており、東京医科歯科大学と協議を開始した。また、組織体制・インフラの構築にも取り組んでいく。再生医療支援事業では再生医療支援製品の新製品開発の推進及び売り上げ拡大に取り組むと共に受託事業で更なる収益機会の獲得を目指す。認知度向上に向け、(株)セルシード主催の第1回細胞シート工学イノベーションフォーラムを7月に開催した。160名弱のアカデミア、企業からの参加があった。
日本発の細胞シート工学の世界展開のために海外企業との事業提携も積極的に進めていく考えで、この一環として台湾メタテック社と合弁会社を設立するための覚書を交わした。
食道再生上皮シート
日本では、年間約22,000人が食道がんと診断され(日本では食道がんの90%が扁平上皮がん)、年間約11,500人が食道がんで死亡している。男性の発症率・死亡率は女性の5倍で、5年後の生存率は男性36%、女性44%、と男女共に低い。治療法として、2008年に保険収載された内視鏡切除手術(ESD)が増加しているが、ESDは手術後の食道狭窄の副作用がある。食道再生上皮シートの導入により、食道狭窄の生じる頻度を抑制してQOLの向上を目的としている。
「食道再生上皮シート」による治療方法
「食道再生上皮シート」を、食道がん再生治療の問題を解決するために(食道創傷治癒・狭窄予防)として東京女子医科大学が開発した治療法である。患者の口腔粘膜から採取した細胞を温度応答性培養器材で約2週間かけて培養し、細胞シートを作成する。細胞シートの培養に合わせて、食道がん切除内視鏡手術を行い、食道潰瘍面に移植する。
(同社資料より)
承認取得に向けた国内外での取り組み
2008年から2014年にかけて大学で臨床研究が行われ、東京女子医科大学10症例、東京女子医科大学・長崎大学10症例(長距離輸送検証:長崎大学で採取した細胞を東京女子医科大学で培養し、長崎大学で移植手術)、カロリンスカ大学病院(スウェーデン)10症例、の計30症例が既にあり、同社は、東京女子医科大学と開発基本合意契約を締結して同大学の研究成果を実業化に向けて引き継いだ。
国内では、18/12期第2四半期に症例登録を終了し、19/12期第1四半期に治験を終了した。治験において、副作用の発生はなく、安全性についての問題は認められなかったが、主要評価項目である「ESD(内視鏡的粘膜切除術)後8週目の狭窄予防効果」の有効率(非狭窄率)が12.5%にとどまり、閾値奏効率(ESD後の無処置患者に対する非狭窄率)に対して統計的な優位性が証明されなかった。このため、追加治験が必要となり、今期中の治験届の提出を予定している。21/12期に追加治験が終了する予定で、22/12期には製造販売承認を申請したい考え。
海外では、17/12期第1四半期(4月)にメタテック社と事業提携契約を締結し、同社が2018年12月末に治験届を提出した。また、欧州では、16/12期に欧州医薬品庁(EMA)と承認取得に向けた話し合いを実施した。
軟骨再生シート(適応症:変形性膝関節症)
変形性膝関節症とは、緩徐に進行する難治性の関節軟骨変性。国内における患者数(40歳以上)は2,530万人、そのうち有症病者は800万人と推定されている(東京大学医学部附属病院22世紀医療センター調査)。また、高齢化により患者数の増加が予測され、国民健康寿命・介護費・医療費の観点から喫緊に対処すべき疾患であると言う。
尚、平成25年厚生労働省国民生活基礎調査によると、要支援・要介護になった原因の25%を運動器の障害が占めた。
「軟骨再生シート」による治療方法
(同社資料より)
「軟骨再生シート」は、東海大学整形外科 佐藤正人教授との共同研究であり、スポーツによる損傷や加齢を原因とする軟骨欠損や変形性関節症を適応症とする。現状では根治する方法がないが、佐藤教授との共同研究は軟骨表面の根本的な再生を目的としている。膝の軟骨は、硝子(しょうし)軟骨と言い、耳や鼻等の軟骨とは異なり、クッション性と対摩耗性に優れた硬い軟骨で再生が難しい。しかし、共同研究を進めている「軟骨再生シート」は、硝子軟骨として膝の軟骨を再生できる事が臨床研究で確認されている。
変形性膝関節症の治療には人工関節による治療もあるが、人工関節は15~20年程度の耐用年数があり根本的な治療とは言えない。また、他社の膝関節再生医療との比較では、細胞シートを使う同社の治療法は欠損した軟骨部分への定着力に優れるため、確実に軟骨を再生できる。
自己細胞シートによる治療
佐藤正人教授は、2010年に自己軟骨シートの臨床研究を開始し8症例を完了した。2019年1月には厚生労働省「第71回先進医療会議」において、東海大学医学部付属病院が申請していた「自己細胞シートによる軟骨再生治療」が先進医療Bとして承認された。
同社は、独立行政法人「日本医療研究開発機構(AMED)」の事業を通して、変形性膝関節症治療のための、軟骨細胞シートの有効性因子の探索や同種軟骨再生シートの治療に向けた研究を佐藤正人教授と共同で行ってきた。先進医療として承認された自己細胞シートによる軟骨再生治療の実施に際して、同社は軟骨再生シートを受託製造する。
尚、先進医療Bとは、高度の医療技術を用いた治療法や医療技術を対象とするもので、販売承認取得前だが、有効性や安全性について一定の基準を満たしたもの。販売承認取得前のため治療費は全額自己負担となるが、自由診療と異なり、保険診療と併用する事が可能(自由診療は、原則、保険診療と併用する事ができない)。
同種軟骨シートによる治療
同種軟骨シートによる治療ついては、佐藤正人教授が2017年2月に臨床研究(同種軟骨細胞シートの移植手術)を開始し、1症例目を実施した。2020年3月までの3年間で10症例を予定しており、2021年に企業治験を実施する予定である。また、臨床研究と並行して、セルバンクの構築及び細胞シート製造の自動化にも着手する予定。
尚、同種軟骨シートは、多指症患者から軟骨組織を採取し、2~3週間かけて培養した細胞シートを移植する(先天的に手の指が6本ある乳児から切除された指の軟骨細胞を、同意を得て利用)。また、同種軟骨シートによる治療は、AMED「再生医療の産業化に向けた評価化基盤技術開発事業(再生医療シーズ開発加速支援)」に採択されている(事業期間:2018年10月~2021年3月)。
再生医療受託サービス
再生医療受託サービスでは、細胞シート製品の製法開発・受託製造、施設管理・申請支援、細胞培養技術者教育等のサービスを提供している。
細胞シート製品の製法開発・受託製造では、日本再生医療学会認定の臨床培養士等、培養の知識・経験豊富なスタッフが多数所属し、特定細胞加工物製造の許可を受けた施設(施設番号:FA3160008)において、同社製品であるUpCell®を用いて細胞シートを作製する。AMEDに採択された東京女子医科大学先端生命医学研究所(研究開発担当者 岩田隆紀氏)の再生医療実用化研究事業「同種歯根膜由来間葉系幹細胞シートによる歯周組織の再建」における同種歯根膜由来間葉系幹細胞シートの製造関連業務を2018年11月に受注し、19/12期第2四半期累計期間に売上計上した。施設管理・申請支援では、特定細胞加工物の製造の申請資料の作成や申請・届出や文書作成コンサルティング、施設設備・管理体制の維持、管理支援等のサービスを提供しており、細胞培養技術者教育では、細胞シート培養トレーニングや細胞シート剥離トレーニング等のサービスを提供している。
第3品目の開発案件
2019年8月、東京医科歯科大学と「同種歯根膜由来間葉系幹細胞シート(歯根膜細胞シート)の臨床開発の詳細検討に向けた協議の開始を決定した。歯周組織を再建する再生医療製品の開発である。現在、東京医科歯科大学において、岩田隆紀主任教授により医師主導治験が実施されており、既存治療では治す事ができない重度の歯周炎患者を対象に歯根膜細胞シートを移植し、その安全性と有効性の評価を行っている。同社は、医師主導治験において歯根膜細胞シートの製造を受託している。
(株)セルシード主催イベントフォーラムの開催
2019年7月19日に第1回細胞シート工学イノベーションフォーラムを、東京都立産業技術研究センターにて開催した(一般聴講者135名、ポスター発表者23名)。講演は、岡野光夫 東京女子医科大学名誉教授・ユタ大学細胞シート工学センターディレクター、佐藤正人 東海大学医学部外科学系整形外科学 教授、岩田隆紀 東京医科歯科大学 大学院歯学総合研究科 歯周病学分野 主任教授、汐田剛史 鳥取大学大学院医学系研究科 遺伝子医療学部門 教授、関根秀一 東京女子医科大学 先端生命医科学研究所 講師。
「細胞シート」又は「温度応答性細胞培養器材」を用いた研究をポスター演題とし、最優秀ポスター賞を、信州大学 医学部 今村哲也氏が受賞し、優秀ポスター賞を、東海大学医学部外科学系整形外科学 高橋匠氏と、東京女子医科大学先端生命医科学研究所 菊池鉄太郎氏が受賞した。
世界展開に向けた事業提携推進
事業提携・ライセンシングに向け、国内外での展示会に積極的に参加している。
DUPHAT(2月、ドバイ) |
Bio International(6月、フィラデルフィア) |
Bio Asia(3月、東京) |
Bio Asia(7月、台湾) |
Bio Europe Spring(3月、ウィーン) |
Bio Japan(10月、横浜) |
China BIO(5月、上海) |
Healthcare EXPO(12月、台湾) |
3-3.数値目標
|
19/12期 予想 |
20/12期 目標 |
21/12期 目標 |
再生医療支援事業 |
150 |
225 |
300 |
細胞シート再生医療事業 |
150 |
125 |
1,700 |
連結売上高 |
300 |
350 |
2,000 |
連結営業利益 |
-1,100 |
-1,300 |
300 |
連結親会社株主帰属利益 |
-1,100 |
-1,300 |
225 |
再生医療支援事業において、2018年11月に第1号案件を受注した再生医療受託サービスの堅調な推移が見込まれるものの、全社ベースでは、19/12期、20/12期と先行投資が続く見込み。21/12期は、細胞シート再生医療事業において、新たな提携による収益を見込んでいる。
4.今後の注目点
第3四半期(7-9月)も再生医療製品の開発・上市に向けた先行投資が続いたが、合弁会社の設立、資金調達、展示会への出展等、中期経営計画(19/12期~21/12期)に基づく取り組みも進んだ。細胞シート再生医療事業の重要課題である細胞シート再生医療第1号製品の事業化の道程を示すまでには至っていなたため、財務諸表に継続企業の前提に関する注記が付されているが、新株予約権の行使による資金調達の実施等で事業の遂行に十分な手元資金を有しており、財務基盤は安定している。食道再生上皮シートと軟骨再生シートの開発推進による細胞シート再生医療第1号製品の早期事業化の実現と事業提携先の開拓を通じた更なる収益機会を獲得していく事で上記状況の解消を図っていく考えだ。
<参考:コーポレート・ガバナンスについて>
◎組織形態及び取締役、監査役の構成
組織形態 |
監査役会設置会社 |
取締役 |
4名、うち社外2名 |
監査役 |
3名、うち社外2名 |
◎コーポレート・ガバナンス報告書(更新日:2019年04月04日)
基本的な考え方
当社は、技術革新と創造性を発揮し、質の高い優れた製品とサービスの提供を通じ、人々の健康と福祉に貢献していくことを使命とし、全ての企業活動において品質を高めるべく企業統治の整備を進めています。
今後につきましては、ディスクロージャーの透明性を高めるため一層説明責任を充実するとともに、さらなる経営のチェック機能強化を図ってまいります。
<コーポレートガバナンス・コードの各原則を実施しない理由>
当社は、JASDAQ上場企業としてコーポレートガバナンス・コードの基本原則をすべて実施しております。