(7776:JASDAQ) セルシード 初の黒字化達成 引き続き開発を進める
今回のポイント |
・18/12期は売上高10億26百万円(前期は85百万円)、営業利益1億40百万円(同 営業損失9億56百万円)。細胞シート再生医療事業において、台湾事業の提携先から開発進捗に応じた技術移転料等9億60百万円を受領。開発投資を吸収して、創業以来、初の黒字化を達成した。これにより取引所の定める上場廃止基準の内、利益計上基準について回避出来たことになり、また業績基準についても当面回避出来たことになる。・19/12期1Qに食道再生上皮シートの治験を終了したが、認証機関であるPMDAより「安全性は確認できたものの、有効性については十分なデータであるとは言い切れず、製造販売承認申請については追加の臨床試験を実施し、有効性を確認するデータの提出が必要である」との回答を受けた。同社は、19/12期中に追加治験の治験届を提出し、21/12期の追加治験終了、22/12期の製造販売承認申請を目指している。このため、当面は先行投資が続く組み込み。
・食道再生上皮シートの治験の結果は残念だったが、橋本社長からは、「治験を実施する事によって初めて得られた知見も多くありました。今回の治験を実施した結果、改めてこの製品は患者の皆さまにお届けすべきものであると再認識もいたしました。こうした想い、経験を次の治験計画に生かしていきたいと考えています。当社は一日も早くこの治療法を患者さんに提供できるようPMDAと協議を重ね、引き続き開発を続けてまいります。」とのメッセージを頂いた。今後の展開に期待したい。 |
会社概要 |
東京女子医科大学の岡野光夫教授が開発した日本発・世界初の「細胞シート工学」を基盤技術とし、この技術に基づいて作製した「細胞シート(シート状の培養細胞)」を用いた再生医療等製品の開発を行う細胞シート再生医療事業と細胞シートの基盤ツール(培養器材)である温度応答性細胞培養器材等の開発・製造・販売及び再生医療の研究開発・事業化を支援する再生医療受託サービスを提供する「再生医療支援事業」を二本柱とする。細胞シート再生医療事業
大学との共同研究(臨床研究)によりシーズを発掘し事業化する。現在のパイプラインは、「細胞シート工学」を基盤技術とする「食道再生上皮シート」と膝軟骨の「軟骨再生シート」の2本。「食道再生上皮シート」は国内で19/12期第1四半期に治験が終了したが、追加治験が必要なため、22/12期の製造販売承認申請を目指して19/12期中に追加治験の治験届を提出する。また、海外では、17/12期4月に台湾の三顧股有限公司(以下、MetaTech社)と事業提携契約を締結し、同社が2018年12月末に治験届を提出した。 一方、「軟骨再生シート」は、東海大学医学部付属病院が申請していた先進医療が2019年1月に承認され、大学病院で治療の開始に向けた準備が進められている。また、MetaTech社への導出も実行されMetaTech社が台湾での事業化に向けた準備を進めている。もっとも、「細胞シート工学」を用いた再生医療製品は、食道や膝軟骨にとどまらない。角膜、歯、耳、肺、心臓、肝臓、及びすい臓の治療でも臨床研究が進められており、既に臨床データも有する。第3の開発品目や地域についての検討、選定も進められており研究実施機関との契約等、準備が整い次第開発に着手する。 再生医療支援事業 再生医療受託サービスでは、細胞シート製品の製法開発・受託製造、施設管理・申請支援、細胞培養技術者教育等のサービスを提供している。 細胞シート製品の製法開発・受託製造 施設管理・申請支援 細胞培養技術者教育 細胞培養センター |
2018年12月期決算 |
会計方針の変更
従来、再生医療研究開発に係る補助金を営業外収益の「補助金収入」に含めていたが、費用負担の実態を明確にし、損益区分をより適正に表す事を目的に、18/12期より販管費の「研究開発費」から控除する方法に変更した。18/12期との比較を可能にするため、17/12期の販管費及び営業損失を遡及した。 売上高10億26百万円(前期は85百万円)、営業利益1億40百万円(同 営業損失9億56百万円) |
中期経営計画(19/12期~21/12期) |
【基本方針】
・食道再生上皮シートの製造販売承認申請 ・軟骨再生シートの治験開始に向けた開発加速 ・次期品目の開発着手 ・組織体制・インフラの構築 ・再生医療支援製品の新製品開発及び収益機会獲得 ・世界展開に向けた事業提携推進食道再生上皮シートについては、早期の製造販売承認申請を目指し、軟骨再生シートについては、自己軟骨再生シートの治験準備を進めると共に同種(他家)軟骨再生シートの開発を加速する。また、食道再生上皮シート及び軟骨再生シートに続く次期品目の開発に着手すると共に、組織体制・インフラの構築にも取り組む。再生医療支援事業では再生医療支援製品の新製品開発を推進すると共に受託事業で更なる収益機会の獲得を目指す。日本発の細胞シート工学の世界展開のために海外企業との事業提携も積極的に進めていく。 【中期経営計画の達成に向けた取り組み】 「食道再生上皮シート」による治療は、食道がん再生治療法(食道創傷治癒・狭窄予防)として東京女子医大先端研が開発した治療法である。患者の口腔粘膜から採取した細胞を温度応答性培養器材で約2週間かけて培養し、細胞シートを作成する。細胞シートの培養に合わせて、食道がん切除内視鏡手術を行い、食道潰瘍面に移植する。 国内では、16/12期第2四半期(4月)の治験届を経て、同第3四半期(8月)に国立がん研究センター(中央病院、東病院の2施設)及び東京女子医大において治験を開始した。18/12期第2四半期に症例登録を終了し、19/12期第1四半期に治験を終了した。 治験結果の概要 有効性についての十分なデータが得られず追加の治験実施へ 10症例登録し、うち2症例がドロップしたため、最終的に8症例となったが、有効性を確認できたのは1症例にとどまった。治験の選択基準、言い換えると、切除する範囲の基準を、切除周在率75%以上、切除長軸径80mm未満、として治験を実施したが、8症例のうち、この範囲に収まったのは2症例にとどまり、6症例の長軸径が80mm以上と当初設定した選択基準値を実際の手術の際には超える大きさとなった。この辺りが再生医療製品の治験の難しさであると言う。切除範囲が大きくなると、狭窄の発生確率が高くなる。ちなみに、臨床研究と治験合計の選択基準内の有効率は57.1%(14症例中8症例で有効性が確認できた)。 治験開始に向け、軟骨再生シートの開発を加速 同種細胞シート移植の開発 再生医療受託サービス 次期開発品目の検討 世界展開に向けた事業提携推進 再生医療支援事業において、2018年11月に第1号案件を受注した再生医療受託サービスの堅調な推移が見込まれるものの、全社ベースでは、19/12期、20/12期と先行投資が続く見込み。21/12期は、細胞シート再生医療事業において、新たな提携による収益を見込でいる。 (株)セルシード主催イベントフォーラムの開催 |
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<参考:コーポレート・ガバナンスについて> |
基本的な考え方 当社は、技術革新と創造性を発揮し、質の高い優れた製品とサービスの提供を通じ人々の健康と福祉に貢献していくことを使命とし、全ての企業活動において品質を高めるべく企業統治の整備を進めています。 今後につきましては、ディスクロージャーの透明性を高めるため一層説明責任を充実するとともに、さらなる経営のチェック機能強化を図ってまいります。 <実施しない主な原則とその理由> |