(4391:東証マザーズ) ロジザード 追い風を受けつつ堅実に成長

2019/03/14

logizard

今回のポイント
・「物流・在庫」にフォーカスしたクラウドサービスを展開している。2001年に日本で初めて倉庫管理システム(WMS)のクラウドサービスを開始し、以来、ターゲットとするEC企業や3PL(後述)企業の業務効率化・IT化を支援してきた。既存顧客の売上に新規顧客の売上が積み上がるストック型の収益モデルを確立すると共に、明確なターゲット設定と「短納期×低価格×高サービス」による差別化でEC市場や宅配便の伸びを上回る成長を実現している。・19/6期上期は前年同期比14.1%の増収、同82.0%の営業増益(18/6期は四半期連結財務諸表を作成していないため、前年同期の数値は参考数値)。契約の積み上げ効果とレンタル機器の需要増でクラウドサービスの売上が同17.6%増と伸びる中、開発・導入サービスの売上が収益性の改善を伴って同9.8%増加した。通期予想は前期比3.1%の減収、同13.2%の営業増益。「下期は製品開発に注力する方針である」として、期初予想を保守的に据え置いた。

・物流への負荷が大きいEコマースの拡大と人手不足の深刻化を背景とする物流業界の活発な省人化・省力化投資を追い風に業績拡大が続いており、リピート通販・レンタル・シェアリングの拡大やリアルとバーチャルの販売融合(オムニチャネル対応)等で新たなニーズも生まれている。このため、今期は大型案件の受注を抑制して、先行投資としての製品開発に力を入れている。大型案件を取り込む事で目先の成長速度を加速させる事は可能だが、同社は先行投資を優先し堅実な成長を目指す考え。また、「物流に関わる人たちが楽しく働けて良い仕事ができ、困る事を少なくしていく事、そして、物流業界の社会的地位向上にも貢献していきたい」(金澤社長)としている。同社の今後に展開に注目したい。

会社概要
倉庫や配送センターで商品の保管・入出荷業務を支援する在庫管理システム及び店舗商品の在庫管理システムをクラウドサービスで提供しており、入出荷や在庫管理の作業効率を上げるハンディターミナルやバーコード関連機器のレンタル及び販売も行っている。グループは、同社の他、中国現地法人の100%子会社龍騎士供応鏈科技(上海)有限公司。【社是】
01 知恵と知識を共有する世界に開かれた情報システムを作ろう。
02 先進の物流システムと安心サービスで安全な物流環境を作ろう。
03 次世代のソフトウェア開発に創造と革新の精神で取り組もう。

【沿革】
2001年7月、アパレル企業の「在庫適正化」支援を目的とする有限会社ロジザードとして設立され、倉庫在庫管理クラウドサービス「ロジザードPlus」の販売を開始。翌2002年9月には店舗在庫管理クラウドサービス「RB-Manager」の販売も開始した。2004年2月に株式会社へ組織変更し、商号を株式会社ロジザード販売へ変更。2005年8月には、在庫管理システムの開発を担っていたロジザード株式会社(旧創歩人コミュニケーションズ株式会社)を吸収合併し、商号をロジザード株式会社へ変更した。インターネットの普及に伴うEC通販からの需要拡大に対応するべく、2006年から2009年にかけて、秋田開発センター(2006年7月)、大阪営業所(2008年1月)、横手開発センター(2009年8月)を開設し開発・販売体制を強化。2009年9月にクラウド店舗在庫管理システム「POSぴたRBM」(旧店舗在庫管理システム「RB-Manager」の携帯電話対応版)の販売を開始しモバイルに対応。2012年9月に「ロジザードPlus」の新バージョン「ロジザードZERO」の販売を開始し、2016年3月には、中国での「ロジザードZERO」の販売を目的として龍騎士供応鏈科技(上海)有限公司を設立。2018年7月に東証マザーズに株式を上場した。

【事業内容】
事業は、在庫管理システム事業の単一セグメントだが、在庫管理システムの提供やシステムで利用するハンディターミナル(端末機器)のレンタル・サポートに伴う月額利用料を受け取るクラウドサービス、カスタマイズやクラウドサービスの導入支援の開発・導入サービス、及びクラウドサービス関連の機器やサプライ品の販売を行う機器販売サービスの3区分で収益を開示している。
9割以上がECによる出荷で、クライアントは、アパレル、被服雑貨、化粧品・美容の構成比が大きいが、食品系や医薬品系を除いた通販取扱商材の構成比に等しい。

クラウドサービス
在庫管理・店舗在庫管理等のシステムやAPI連携オプション(他社製品との連携機能オプション)の利用料、及び在庫管理システムで利用するハンディターミナルレンタル料(バッテリー無償交換、故障時は代替機即日交換)が売上として計上されている。

①倉庫在庫管理システム「ロジザード ZERO」
入荷から出荷まで、倉庫内の一連の作業を支援する機能と、作業と同時に更新される在庫情報を管理する機能を備えている。入庫から、出荷、返品、更には庫内での棚移動を含め、全ての在庫の動きをバーコードとそれを読み取るハンディターミナルにより物理的に管理する事で、「入出荷処理」、「棚卸」、「ロケーション管理」等を行う事ができ、「正確な在庫管理」、「誤出荷の防止」、及び「倉庫内業務の効率化(標準化)」を実現する。基本構成での提供はもちろん、顧客の利用条件や利用形態に合わせたカスタマイズにも対応する事で幅広いニーズを取り込んでいる。

同社の在庫管理システムには、2001年に提供を開始した「ロジザード PLUS」と2012年に提供を開始した後継バージョン「ロジザード ZERO」があるが、現在、「ロジザード PLUS」は継続利用のみで新規の販売は行っていない。「ロジザード PLUS」がアパレル業界(アパレルメーカー・通販及び3PL)向けに開発されたのに対して、「ロザード ZERO」はEC通販を手掛ける幅広い企業(メーカーや流通業者、及び3PL)を対象にしている。アパレル商材の倉庫・在庫管理をメインターゲットとして提供を可視した「ロジザード PLUS」は、食品や機械・部材等の在庫管理には不向きであり、顧客の要望に応えきれなかった。このため、「ロジザード ZERO」には、業種・業態にとらわれず、あらゆる在庫の管理が行えるように、賞味期限、ロット管理、シリアル(製品、商材の番号)管理等の機能が追加された事に加え、海外での利用を想定して、日・英・中(簡体字・繁体字)・タイの5言語対応とした(現在、中国、台湾、タイ、ベトナムで利用されている)。加えて、「ロジザード ZERO」では、複数の企業の在庫管理業務を受託する3PL企業向けに、複数の企業及び複数の拠点を同一システムで管理するための機能も実装している。

※ ロケーション管理とは、倉庫等の保管場所を一定のルールで区画し採番されたロケーション毎に在庫を管理する手法。入出庫作業ではロケーション毎にリアルタイムに在庫を更新し、在庫推移や移動の履歴を管理する事で高精度の在庫管理が可能になる。
※ 3PL(third party logistics)企業とは、荷主企業に代わって最も効率的な物流戦略の企画立案や物流システムの構築の提案を行い、かつ、それを包括的に受託し実行する企業。

②店舗在庫管理システム「POSぴたRBM」
「POSぴたRBM」は店舗における在庫管理に主眼を置き、複数の店舗に点在する在庫や売上データの本部での一括管理を可能にするシステム。従来のPOSシステムは高価な専用POSレジ端末と本部管理システムをつないでネットワークを構築する必要があり、一定の初期費用が発生するため、店舗数の少ない小売業(数店舗~数十店舗)では導入のハードルが高かった。これに対して、「POSぴたRBM」は、専用機器ではなく、スマートフォン経由で利用するクラウドサービスのため導入が容易で低コスト。商品の入荷時や顧客の購入時にバーコードを読み取る事で、正確でタイムリーな売上・在庫情報を一元管理できる。更に、「ロジザード ZERO」及び「POSぴたRBM」の在庫情報を連携させる事で、物理的に別々の場所にある店舗と倉庫の在庫情報を一元管理できる。
自社の持つ顧客情報や在庫情報を一元管理し、あらゆるチャネルを連携させながら商品を販売する「オムニチャネルリテイリング」が注目を集めているが、同社サービスを連携させた在庫情報の一元管理は、オムニチャネル戦略をとる顧客のニーズにも対応している。

※ オムニチャネルリテイリングとは、実店舗やオンラインストア等、あらゆる販売チャネルや流通チャネルを統合する事、及びそうした販売統合チャネルの構築によって、どのような販売チャネルからも同じように商品を購入できる環境を実現する事。

上記に加え、現在、オムニチャネル支援システム「ロジザード OCE」の開発を進めている。「ロジザード OCE」は、同社の「ロジザード ZERO」や「POSぴたRBM」を連動させる事で共有された在庫情報を活用し、「商品を欲しいお客様」に「希望に沿った方法」で商品を届けるための最適解を導出するための在庫マッチングエンジン(購入者が望む受取方法に対して最適な場所別在庫情報に基づく在庫の確保及び出荷作業指示情報を提供する)。他社製の在庫関連サービスや、管理システム、倉庫在庫管理システム、POSシステム、基幹システム等と接続する事が可能なため、同社の在庫管理サービスを導入していない顧客でも導入が可能。

開発・導入サービス
クラウドサービスの顧客に対して、ニーズに合わせた画面、帳票、インターフェイス等の機能カスタマイズのための開発サービス及びクラウドサービスの利用開始時の各種設定作業や作業者への教育サービスを提供している。

2019年6月期上期決算
前年同期比14.1%の増収、同82.0%の営業増益
売上高は前年同期比14.1%増の7億57百万円。契約の積み上げ効果とレンタル機器(ハンディターミナル)の需要増でクラウドサービスの売上が4億95百万円と同17.6%増と伸びる中、前期末仕掛分による押し上げと既存取引先からの追加開発(カスタマイズ)案件の増加で開発・導入サービスの売上も2億15百万円と同9.8%増加した。
営業利益は同82.0%増の1億32百万円。開発導入効率の良い通常案件に付随するカスタマイズの増加で開発・導入サービスを中心に売上総利益率が48.8%と5.8ポイント改善。増収効果と相まって、株式上場に伴う管理体制強化(人件費の増加)等による販管費の増加を吸収した。

期初予想との比較では、開発・導入サービス(通期予想に対する進捗率77.4%)における想定を上回る既存取引先からの追加開発案件の受注、及びクラウドサービス(同51.1%)における想定以上の取扱個数の伸びとハンディターミナルの需要等が売上・利益の両面で上振れ要因となった。

サービス別粗利率
クラウドサービスは業績連動賞与(労務費)の増加で第2四半期の粗利率が一時的に悪化したが(賞与全体を売上に応じて案分配賦するため、クラウドサービスの負担が大きくなる)、基本的な基調は第1四半期と同様に改善傾向が続いた。一方、開発・導入サービスは、開発導入効率(採算)の良い通常案件に付随するカスタマイズが中心となり、粗利率が大きく改善した(前期は大型案件のカスタマイズ対応で粗利率が低下した)。

上期末の総資産は前期末との比較で4億73百万円増の11億74百万円。マザーズ上場に伴い4億34百万円を調達した事で現預金と純資産が増加した。この他では、主力製品である「ロジザードZERO」のバージョンアップによりソフトウェア仮勘定を計上した事で無形固定資産が増加する一方、未払賞与の支払い等で流動負債が減少した。自己資本比率82.4%(前期末64.1%)。

2019年6月期業績予想
通期予想に変更はなく、前期比3.1%の減収、同13.2%の営業増益
上期の業績が期初予想を上回り、また、下期に特段の不安はないが、現時点では、精度の高い着地点の予想が難しいため、一先ず期初予想を据え置いた。前期は大型のカスタマイズ案件にリソースを割いたが、既に説明した通り、19/6期は製品開発のリソースを確保しつつ、通常案件に対応していく方針。小型のカスタマイズ案件の受注残が多く、大型案件を手掛けた前期と比べて予想が難しいようだ。
通期では、ストック型ビジネスであるクラウドサービスの売上が9億69百万円と同10.8%増加する。一方、開発・導入サービスは大型案件の受注を抑制して製品開発(先行投資)に力を入れるため同25.7%の減収を見込むが、上振れの余地が出てきた。利益面では、売上総利益率が改善する中、上場関連費用の剥落等で販管費の減少が見込まれる。

(2)19/6期施策の進捗状況
19/6期は、API連携、「ロジザードZERO」機能追加、及びAI物流ロボット連携に取り組んでおり、いずれも一定の成果をあげた。

API連携
倉庫内の在庫を管理する「ロジザードZERO」と、パートナー企業が提供する他の物流業務システムやデバイスとの自動連係を可能にするAPIを開発した。具体的には、EC支援システム、基幹業務システム、輸配送システム、貿易システム、POSシステム等のシステム、認識技術や物流機器等のデバイスである。「ロジザードZERO」のユーザーに対して、データ連携が可能な他社の物流関連システムやデバイスを利用できるオプションを提供できるようになる。また、API連携している他社のシステム等を利用しているユーザーは、オプションで「ロジザードZERO」を利用できるようになる。自前で各システム・機器をつなぐ事も可能だが、API接続する事で短期間かつ低コストで機能拡充を図る事ができる。

「ロジザードZERO」機能追加
ECで新しいサービスが追加されると、新たな物流ニーズが生まれる。この上期はリピート通販への対応機能を開発し「ロジザードZERO」に追加した。近年では、健康食品や化粧品の定期購入に代表されるリピート通販、レンタル、シェアリング等が拡大しつつあり、こうしたサービスへの対応を進めていく考え。
また、アジアへの展開を進める日本企業向けに「ロジザードZERO」の対応言語を増やしており、この上期には5言語目となるタイ語対応を開始した(これまでタイでは英語で対応していた)。日系企業のタイでの物流現場において、日本語を解さない現地採用の作業従事者が無線ハンディターミナルを含むシステム利用をタイ語で行う事が可能になった。

AI物流ロボット連携
同社システムのユーザーであり、フルフィルメント事業を展開する(株)アッカ・インターナショナル(東京都港区)の現場で、(株)ギークプラス(千葉県印西市)が提供する AI 物流ロボット「EVE」と同社システムとの連携サービスを開始した。人の7倍の量をさばく事ができ、稼働時間を2/3以下に減らす事ができたと言う。今後、API連携により、「ロジザードZERO」の他のユーザーがオプションとして利用できるようにする。

社長インタビュー -金澤社長に聞く-

EC通販が成長を続ける中、深刻な人手不足に悩む物流業界では省力化・省人化投資を活発化させている。倉庫や店舗での入出荷作業や棚卸作業の支援サービスを提供する同社はまさに旬な企業であり、株式市場の期待も大きい。しかし、2018年7月の東証マザーズ上場から7ヶ月が経過したに過ぎず、同社について詳しく知りたい投資家の方は多いだろう。繊維製品の問屋街も近い日本橋人形町(東京都中央区)の本社にお邪魔して、金澤社長にお話を伺った。

金澤社長は1967年7月14日生まれ。大学卒業後の1990年4月に地元の茨城県に本社を置くファッション専門店 株式会社福田屋洋品店(現株式会社アダストリア:証券コード2685)に入社。在庫管理業務を通して培った知識と経験(在庫を適正化・現金化し、キャッシュ・フローの改善につなげる)を活かすべく独立。アパレル向け在庫管理のコンサルティングを経て、2001年7月に有限会社ロジザードを設立し、同社代表取締役社長に就任した。
【クラウドによる物流改善のパイオニア インターネット通販の倉庫管理システムと言えば「ロジザード」】
「ロジザード」という社名の由来は、“Logistic(物流)+Wizard(ウィザード)”。物流システムの「高額で難しいシステム」というイメージを払しょくし、中小企業でも「簡単に使える」という事を広げたい、「物流」を「魔法」のように革新的に効率化して、業界や社会に貢献したいという思いが込められているとうかがっています。ただ、Logistic(物流)は身近なようで、身近でないころがありますね。金澤社長: 物流は二つの大きい機能で占められています。一つは、モノを運ぶという機能です。佐川急便さんやヤマト運輸さん等が担っている分野です。もう一つは、「貯蔵」という機能です。「貯蔵」されている場所が倉庫です。これを実際のサプライチェーンの流れの中で言えば、工場で商品が生まれて、「貯蔵」されて、行き先が決まって運ばれて。例えば、コンテナ船で運ばれて港に着いて、トラックに乗せられて中間倉庫に運ばれ「貯蔵」される。中間倉庫に着くと、需要に応じて、お店だったり、通販であれば、お客様のところに届けられたり、という一連の流れがあります。

この流れを物流と言います。運んでいるところは皆さんも、目にする事が多いと思いますが、我々の業務は貯蔵する倉庫の中や店舗の中で行っていますから、皆さんには、いわゆるブラックボックスです。倉庫の中では、保管、取り出し、出荷、という業務が行われているのですが、実は、メーカーの社員の方でも9割がた倉庫の中を見た事がなくて、「実際に中で何が行われているかわからない」というくらい、わかり難い業務の範疇に入っています。投資家の皆様からも、「そこの業務がピンと来ない」というご指摘をいただく事が多く、説明に腐心しているところです。

昨今、モノを貯蔵するとか、モノが流れていくというところに、多分に情報がかかわる時代になってきていますから、倉庫という建屋の中もスマート化が進んでいます。我々は、「ウエアハウス・マネジメント」と呼ばれる倉庫管理をITで支援するためのアプリケーション(WMS)を、クラウドで、いわゆるサブスクリプション方式と言われる課金モデルで提供しています。

倉庫中での、「モノの流れに伴う情報の活用」や「スマート化」を支援している訳ですから時流に乗っていますね。ただ、開示されている財務諸表を見ると、業績の急拡大は14/6期以降のように感じます。会社設立が2001年7月ですから、成長軌道に乗るまでは苦労も多かったのでしょうか。

金澤社長: 2003年から2007年頃まででしょうか、我々の屋台骨を支えてくれたのは、楽天市場のショップさんでした。マーケットとして、我々との相性が非常に良かったと言えます。

インターネットは1993年~95年に通信のインフラとして利用されるようになりましたが、それによってインターネットを利用する様々なビジネスが生まれ、Eコマースも生まれました。しかし、インターネットが利用され始める前の物流サービスというと、店舗で売るためのビジネスモデルがほとんどでした。このため、この頃の「ウエアハウス・マネジメント」を提供する会社は、量販店向けディストリビューションシステム、或いは専門店向けディストリビューションシステム、といった、リアルな販売チャネルを切り口にノウハウを提供するビジネスが基本でした。

当初の我々のサービスは、倉庫内での作業を支援するアパレル業界向けのサービスであり、店舗ディストリビューションや卸売を基本にしていました。基本的にはアパレル業は伝統的な産業です。我々が提供するクラウドモデルは、サーバーの初期投資が要らなくて、月額制で使えて、システム管理者も要らない訳ですから合理的なのですが、その当時は、インターネットに対する信頼が全くありませんでした。アパレル業界の方に私どもの仕組みをご提案すると、「合理的でいいね」と言う事になるのですが、稟議が上に上がっていくと、「もし、それが止まったら、どうする」という事になってしまいます。部長や取締役レベルに上がると、ですね。「3日止まったら、うちこけちゃうぞ」、「こんな仕組み、まかりならん」となる訳です。そうなると、何も言えなくなってしまいますから、契約に至らない訳です。こんなことが長く続きました。

ところが、全く違う観点で見てくれたのがEコマースの業界です。楽天市場のショップさんは、販売のためのシステムを楽天市場から借りてビジネスをしていますから、最初からシステムはクラウド任せ、という事です。ですから、物流のために倉庫システムの必要に迫られても、「なんで倉庫システムを買わなくてはいけないの?」という考えが圧倒的で、我々のように「クラウドで貸しますよ」と言えば大歓迎でした。しかも、Eコマースが急激に伸びていて、スクラッチ開発の様に「半年から1年かけての導入では話にならない」という状況でしたから。我々はクラウドで提供しますから、原理的には、「明日からでも使えますよ」と言うスピード感がありました。実際にはデータを取りそろえる必要がありますから、ある程度の日数、1ヶ月程度が必要になりますが、最短で1週間あれば稼働できるケースもあります。ですから、他社さんと比べたら、「とんでもないスピード」とご評価をいただきました。このスピード感がマッチして、ご導入頂いたのですが、実際、入れてみると、短い導入期間で「本当に動いちゃったよ」という事になり、当時の楽天市場のショップさんは皆さん仲間のようなところがありましたから、口コミで広がっていき、急速にアカウントが増加に向かい始め、やっと息がつけるような経営状態になりました。

多くの実績を作る事ができましたから、「ロジザードであれば、間違いなく動く」、という評判を頂けるようになりました。2014年頃になると、他のEコマースで商売をされているショップさんからも、インターネット通販の倉庫管理システムと言えば「ロジザード」というご評価を頂けるようになりました。

なるほど。事業開始当時のアパレル業界の反応もわかるような気がしますが、ECモールで商売されている方にはインターネットやASP・クラウドに抵抗感はありませんよね。しかも、すぐに使えて、トラブルなく動く訳ですから。

金澤社長: 2013年から2014年にかけて、二つの大きな出来事がありました。一つは「AWS」といって、「Amazon Web service」というサービスが始まり、サーバーインフラ自体がクラウド化しました。それまでは、自社でサーバーを買ってデータセンターで運用していたのですが、AWSによって、「全てのシステムをインターネットの雲の中で処理できる」という環境がやってきました。大手だろうが、なんだろうが、クラウドだ、という事になり、当初のインターネットやASP・クラウドに対するネガティブなイメージが世の中から一掃されてしまいました。今では、「物流改善と言えば、クラウド」という事になってますから、そのパイオニアである私どもに多くの相談が寄せられるようになりました。

もう一つは、Eコマースのお客様(出店者)の変化です。それまでは実店舗等を持っていないEコマースだけのお客様でしたが、実店舗で販売していた方がEコマースに参入されるようになりました。皆さんが「Eコマースだ!」という事になり、我々の目の前にある市場が大きくなってくれました。これで、更に成長角度が変わってきたという背景があり、今日現在、2019年に入ってもこの勢いが続いています。大手の会社さんでも、倉庫の中を見せていただくと、未だにアナログチックな会社さんは多いですよ。コストダウンと付加価値の提案ができる会社さんの多さに驚いている状態です。

インターネット通販が普及しているだけに、倉庫内業務やフローの合理化は進んでいるようなイメージがありますが、物流改革には、それまでの既成概念を取り払わなければならないようなところがあるのでしょうね。未だに、これまでのやり方を大きく変える事ができない会社は少なくないのかも知れません。

金澤社長: 既に普及が進んでいるのではないか、といったお考えは投資家の皆さんがお持ちかと思いますが、「まだまだ、あるな」というのが実感です。色々なところでタームポイントがやってきています。当社はそこのところに適宜適切に業務フローを提供し、バージョンアップを行っています。

例えば、今一番ホットな話題と言える「サブスクリプションモデル」です。服に限らず、様々なモノが「購入しないで、利用して下さい」といったビジネスモデルになってきています。そういう時代になってくると、物流のフローが変わります。「定期で発送し、定期で回収する」というビジネスモデルですから。今までのEコマースは売ったら終わりで、後はせいぜい返品への対応くらい、といったフローでしたが、「定期で発送し、定期で回収する」という物流フローを作る必要がでてきましたから、Eコマースの中だけをとってもトレンドが変わってきています。販促そのもののお手伝いはできませんが、トレンドの変化に先んじて機能を組み込む事でバックエンドの部分をお手伝いできる余地はまだまだあります。物流フローの変化でサービスの対象となるお客様が広がっている事は実感するところです。サブスクリプションモデルというのは非常に面白くて、今までは消費するという商材の扱いがほとんどだったのですが、今は利用が前提という事になってきて、マテリアルがどんどん広がっています。

言われてみると、確かにそうですね。借りて気に入ったら購入する、といったサービスを目にする機会が増えています。物流も進化し続けなければならないのですね。事業拡大の背景が良くわかりました。ところで、御社のWebサイトにある「StockTaik」によりますと、Eコマースのショップを開拓するに当たって、「既存の他社製品やサービスにないECのフローを持っていた事が強みになった」とのご説明がありましたが、なぜ他社製品にはなかったのでしょうか。

金澤社長: 2003~04年頃だったでしょうか、Eコマースが急拡大したのは。楽天市場の出店数も急拡大して、各ショップさんのEC物流のニーズも顕在化してきました。ところが、既存の物流業者さんは、例えば、イオンやセブンアンドアイ等へ出すフロー(サービス)はいくつも持っていますが、物流は作業員の作業と一体になっているシステムですから、「EC物流のような細かい物流など面倒だから、やってられない」みたいな話でした。3PL企業さんも、同様です。急拡大してきたと言っても、Eコマースの市場が小さかった事もありますが、そもそも個人に届ける物流作業と店舗に出す物流作業とは全然違います。内容が全く異なります。先ほどお話しましたように、私どもはインターネットの黎明期にEコマースの需要を見出して個人に届けるフローを持っていましたし、早くから投資を続けて数を扱ってきましたから、既存の物流業者さんに対して大きなアドバンテージがありました。

物流は作業の塊ですから、このコストを下げるためにITで支援するのですが、B to Bは精度的に言えば、必ずしも高い精度を必要としません。売り場に送る訳ですから、100個の注文を受けたのに納品が99個であったとしても、受け入れてもらえて、売れればいいのです。しかし、個人のお客様にお届けする通販の場合、一点でも足りなかったり、違うものが入っていたりしたら、大変な事になります。それで全ての物流が台無し、という事になってしまいます。個人のお客様に送る場合、「間違いなく届く」という事が付加価値になります。そういった意味で、当社は、“コストダウンだけでなく、「間違いなく届く」という付加価値を提供してきた”、と言う事ができます。実は、ここが当社のアピールポイントなのです。当社は物流の付加価値を高いレベルで提供する事を目指してきましたし、今も目指しています。個人向けの物流は、正確に、間違いなく、かつ、きちんと出荷する、というところが、「Value」になります。

【特徴・強み 「安定的な収益モデル」、「明確なターゲットの設定」、「短納期×低価格×高サービス」】
なるほど。それでは、これまでのお話も踏まえて、改めて御社の特徴や強みをお聞きしたいと思います。「安定的な収益モデル」、「明確なターゲットの設定」、「短納期×低価格×高サービス」、の3点を挙げていらっしゃいますね。先ず、「安定的な収益モデル」からお聞きします。順調にアカウント数が増えていますが、客単価と言いますか、アカウント毎の単価については、どのように考えればいいのでしょうか。

金澤社長: 単価の幅は結構大きいですね。私どももサブスクリプションモデルを提供していますから、基本的には、お客様の数を増やす事と単価を上げる事の二つをどのようにやっていくかです。利用料については、従量制と定額制があります。従量制につきましては出荷数量が増えれば単価が上がりますから、お客様のビジネスが大きくなると単価も上がります。バーコードを読むためのハンディターミナルのレンタルというカテゴリーもあり、大きい現場でハンディターミナルが100台規模になりますと、クラウドと合わせて月額100万円規模のお客様という事になります。小規模なお客様で、日に数件の販売で、ハンディスターミナルも必要ないという事であれば、単価が1万円規模になる事もあります。ですから単価の幅は大きいですね。

そうなると、客単価の平均の動きをみる事はあまり意味がないのでしょうか。

金澤社長: 私どもは、事業規模によって、EC企業や3PL企業を、「A」、「B」、「C」の3つの層に分けています。クラウドサービスで100万円規模のお客様は「A」の層になりますが企業数はわずかです。「A」、「B」、「C」の平均で単価は、月額6~7万円になると思います。ボリュームゾーンの「B」の単価と等しくなります。「C」のお客様は、日に、数件~10件程度になります。「A」、「B」、「C」のバランスが、我々の望む方向に行っている時、きれいなピラミッドになります。単価が高いお客様は解約になると影響が大きくなりますし、あまり物流がない会社さんでは私どもが管理させていただくニーズがない、という事になりますから、重視するのは「B」のお客様。1日で500件~1,000件のオーダーをこなすお客様を中心に、2,000~3,000件のお客様で安定的に収益をあげていく事を考えています。トップ「A」を狙いたい同業者が多いのですが、解約された時の影響が大きいですから。当社は中堅・中小企業やこれから伸びていくと思われるスタートアップ等の会社様とお付き合いをさせていただいていく中で、安定的に収益をあげるビジネスモデルができています。

ただ、単価について言えば、人手不足でハンディターミナルの需要が増えていますから、少しずつですが、全体的に上がる流れになっています。1年くらいの期間で考えると、ですね。また、後でお話ししますが、成長戦略として色々なオプションの提供も考えていますから、その中で単価が上がっていくと考えています。

金澤社長: 同業の大手さんは「B」の層には積極的ではありませんから、今のところ、そういう意味で脅威になっていません。「B」を深堀している会社は当社くらいではないでしょうか。大手さんは、「A」の層の案件が中心です。ただ、今だから、こう言えますが、当社も、2014年以前は月額利用料の積み上がりが少なかったので、開発の比重が多く、開発案件を受注してキャッシュを回していました。売上の7割程度を月額利用料でカバーできるようになってきましたから、大きなカスタマイズ案件はあえて取らないで、3年後、5年後の成長のための製品・サービス開発にリソースを割けるようになってきました。同業者さんも月額利用のビジネスを強化されていますが、多くの場合、3割が月額利用料、7割が開発、といった程度にとどまっているようです。

「安定的な収益モデル」が御社の強みの一つですが、開発面でも、強みになっているのですね。

金澤社長: 開発面では、在庫情報の量的優位性も強みとして挙げる事ができます。成長戦略とも関係してきますが、在庫情報の活用が差別化のキーになります。おそらく、当社が日本で一番在庫情報を持っている会社です。優秀なベンチャー企業さんが出てきたとしても、このデータ量は一朝一夕では確保できません。我々は長い時間をかけて、多くのユーザー様を取り込み、サービスを提供してきましたから。前期は6,100万件のオーダー数をこなしています。国内宅配取扱個数の1~1.5%に相当しますから、100人の方が注文を出すと、そのうちの1~2人の方は当社のサービスを経由している事になります。パッケージでのシステム提供ですと、クライアント毎のデータ管理にとどまってしまいますが、当社はクラウドで提供していますから、お客様全体、サービス全体のデータが管理できます。この情報を活用して、物流の無駄をなくしていく事が可能であろうと考えています。

御社のサービスを導入するにあたって、どの程度の初期投資が必要になるのでしょうか。

金澤社長: データの整備等、お手伝いせていただく事が必要であれば、オプションとして導入費用を頂きます。お客様のすべてがITに詳しいわけではありませんから、ある程度のアシストをさせていただいております。平均すると、70万円程度ではないでしょうか。

アカウント数は概ね年間100件程度のペースで増加していますね。このペースでの増加が今後も続く見込みですか。

金澤社長: そうですね。100件から、これを少し上回る程度で事業計画を立てています。純増ベースです。解約が全くない訳ではありません。ただ、システムが動き始めると、ビジネスをしている限り、物流が止まる事はありませんから、解約率は低くなります。お客様がいなくなるパターンは二つです。一つは、事業が立ちいかなくなるケースで、これは如何ともし難いところです。もう一つは、当社のお客様はEC企業様と3PL企業様ですが、3PL企業様の場合、お客様が他の3PL企業に委託先を替えてしまうと倉庫が空いてしまいますから解約という事になります。頻繁というほどではありませんが、割と起きています。それを吸収して増えていると言う事です。ただ、お客様にしてみれば、それが当社の良いところですね。使った分だけ払えばいい、という事ですから。ビジネスリスクが少ないという点でご評価いただいています。

なるほど。特徴・強みの二つ目に「明確なターゲットの設定」を挙げていますが、既にお話しいただいた、アウトソーシングしたいEC通販企業と、それを受託したい3PL企業という事ですね。

金澤社長: かつ、「B」層のお客様です。正直な話、「A」層のお客様ですと、独自のやり方をする企業様が多く、そのお客様へのカスタマイズ対応だけで1年が終わってしまうような当社の業容ですから、申し訳ないのですが、大きい開発を要するお客様については、お断りしているというのが実状です。当社は、お客様に安定して継続してご利用いただく事に主眼を置いていますから、大切な事は、お客様の数の増加と継続利用いただけるバリューを提供し続ける事であり、当社のビジネスの基本であると考えています。ですから、新たなサービスの開発にリソースを割いていく方針の下で事業を進めています。

ユーザーの開拓に向け、直接販売と代理店販売を行っていますが、概ねどのような比率でしょうか。大規模な営業部隊を持っている訳ではありませんよね。

金澤社長: 直販が圧倒的に多く、85%以上です。単純な代理店さんと言うよりも、当社はドメインがはっきりしていますから、補完性のある会社様にパートナーになっていただいている、というパターンが一番多いですね。例えば、Eコマースでは注文を管理する仕組みが必要になります。注文を管理する仕組みを提供する会社様が物流を通じて当社とつながる。ラベルのサトー様は送り状やバーコードラベルを発行するプリンタを扱っていますから、アプリケーションは当社、プリンタはサトー様といった形でパートナーを組ませていただいています。こうしたパートナーから入ってくる情報を一次情報として受注するケースを直販として処理しています。この他にも、伝票を発行する、値札を発行する等、物流に必要なユーティリティ的なものがありますから、それらを通して、連携させていただいています。こうした補完関係にある会社様を増やしていこう、という事が成長戦略の一つになっていますから、今、色々な会社様とお話をさせていただいています。製品のオプションとして提携する事でパートナーになっていただく取り組みを進めています。

また、倉庫会社さんや3PL企業さんも、新たなお客様ができると、当社を紹介してくれます。倉庫会社さんや3PL企業さんが、お客様を取るために当社を紹介してくれる訳です。「B」、「C」層のお客様ですと、倉庫会社さん主導で話を進めていただけます。こうしたケースでは、マーケティングコストが全くかかりませんから倉庫会社さんとはWinWinの関係です。

イメージしていた直販とは全く違っていました。直販と言うと、マンパワーを考えてしまいがちです。荷主さんにしてみれば、倉庫を借りる際に倉庫システムの紹介をしてもらえると助かりますね。それでは三つ目の「短納期×低価格×高サービス」についてお聞きします。他社の納期と比べると、どれくらい早いのでしょうか。

金澤社長: 倉庫システムですと、スクラッチ開発で最低6カ月ですね。長いプロジェクトだと、18カ月くらいはかかります。パッケージや他社のクラウドと比べても、当社は圧倒的に早いと思います。納期の短さは自負しているところです。定量的な情報はないのですが、当社にご用命して頂く理由を、お客様に伺ってみると、「どこよりも早かった」という声が多いですから。当社のお客様でもある倉庫会社さんは、受注に際して稼働日をコミットする必要があり、納期遅延が許されません。約束した日に出荷を開始できなければ、予定した売上が立ちませんから。ですから余裕をもって多めに時間を確保するのですが、当社はご要望に応じて、1週間とか、1カ月とかで稼働させるメソッドを持っています。「ロジザードメソッド」です。パッケージはスクラッチに比べると短期間で稼働させる事ができますが、完成させないと稼働できません。「ロジザードメソッド」はクラウドの強みを活かして、「とりあえず出荷だけはこの日までに終わらせましょう」と、一番必要なところを先ず稼働させ、その後のフローは出荷の工程が終わった後に加える。運用しながら完成させる「ロジザードメソッド」が競争優位性のキーポイントです。データのやり取りをするために基幹システムと接続する必要がありますが、接続のためのモジュールが充実していますから、複雑なシステムとでも短期間で接続できます。早く導入できると言う事は、工数が少なくて済むとという事ですから低価格になります。当社にしてみれば、早くサブスクリプションの売上が立つという事になります。

なるほど。「高サービス」についてはいかがでしょうか。

金澤社長: 通常、「短納期」、「低価格」とくると、最後に「高機能」が来る事が多く、色々な機能を付けるため、低価格を謳いながら、必ずしも低価格でなくなってしまいます。当社は、他社にない、運用サポートの専門部隊を持っている事が特徴であり、違いです。操作のサポートではなく、運用のサポートです。業務のサポートと言った方がいいかも知れません。「必ずその日の出荷を完了する」という事にコミットしています。そこが一番価値を感じていただけるところだと思います。インターネットを使っていると様々な障害が起こります。昨年の暮れに、携帯の通信会社さんでも障害が発生しましたが、当社は、どんな事があっても、お客様のシステムだけは止まらないようにしています。ネットが止まったのであれば、納品書をプリントアウトしてバイク便で届ける。とにかく業務を止めません。

サポートが手厚い分、固定費は重くなります。ロイヤリティと言ったら失礼かもしれませんが、お客様には高いロイヤリティを持っていただけますから、長く使っていただけます。「安いから始めたけど、使えない」では契約の積み上がりによる安定的成長を実現できません。もちろん、お客様の数に比例してサポートの人員が増える訳ではありませんし、一日中、ひっきりなしに電話が鳴っている様な事もありませんからスケールメリットは出せます。
目指すサービスレベルは消防署レベルです。「火が消えるまでが仕事だ」、社員に浸透している当社のポリシーです。サポート部隊で間に合わなければ、全社をあげて対応するのが当社の文化です。届かなかった時の不利益は非常に大きいですから、販売している人の仕組みだろうが、当社の仕組みだろうが、現場の作業だろうが、誰がしくじっても、ご購入されたお客さんのところに商品が届かなければ、皆が“unhappy”になってしまいます。「とにかく、届けるためには何とかしましょう」というスタンスです。その結果、「多少安いのがあっても、ロジザードの安心感に勝るものないよね」とご評価をいただけていると思います。

「お客様の物流を止めない」、「システムを超えたサービスを提供」とは、そういう事なのですね。しかも、365日対応。3つの特徴・強み、よくわかりました。

金澤社長: 「365日対応」はどこでもやっている、というイメージがあるかもしれませんが、意外とやっていないんです。

【成長戦略 「製品連携」と「オムニチャネル対応」】
それでは、成長戦略についてお聞きします。成長戦略として、「製品連携」と「オムニチャネル対応」に取り組んでいくお考えですが、先ず「製品連携」について、ご説明いただけますでしょうか。

金澤社長: 「倉庫の中の業務効率改善」と「在庫データの活用」が成長戦略の柱になります。「倉庫の中の業務効率改善」のために「製品連携」が必要になります。どこも人手不足ですが、特に、建築、医療・介護、物流は、人がいない3大業種と言われるくらい、人がいません。しかも、2017年以降、配送料金が値上げされていますから、物流業界は大変な状況ですが、逆に我々にとってはビジネスチャンスです。自動化・省力化に向けた新しいバリューの提供が期待されていると考えています。

自動化・省力化には、操作の自動化とモノを運ぶという作業を機械に代替させる等の庫内作業の自動化があります。操作の自動化は、昨今ではRPAと呼ばれている分野です。人がモニター画面の前で操作していたものをAIによる代替等で自動化される事が最終形ではないか、と考えています。先ほどお話した、注文を管理する仕組みを提供する会社様との連携の様に、物流を通してつながる他社サービスとの連携を含めて、研究を続けています。

作業の自動化は機械に代替させますが、当社はアプリケーションの開発は行いますがロボット等を製造するメーカーではありませんから、この分野ではロボットメーカー等との連携が必要になります。ソフトであれ、ハードであれ、製品連携により沢山のモノとつながる環境をつくり、お客様が自らの物流に合わせて必要なサービスを選ぶ事ができるようにラインナップを整備していきます。製品連携により、当社のサービスのオプションとして選ぶ事ができる環境をつくります。

決算説明会でも、ご説明頂いた「API連携」ですね。ハードとの連携では、AI物流ロボットとの連携で成果をあげているようですね。その他の取り組みも含めて、ハードとの連携でお話いただけることがあれば、お願いします。

金澤社長: 例えば、RFID(Radio Frequency Identification:無線による自動認識技術)です。現在、ハンディターミナルのレンタルを行っていますが、今後、RFIDの利用が増えていくと考えています。ハンディターミナルは一つ一つバーコードを読み取る必要がありますが、RFIDは一括で読み取ることができるので、作業時間が1/10、場合によっては1/100になりますから、10人、100人必要だった作業が1人でできるような省力化効果が期待できる訳です。ただ、当社はRFIDのメーカーではありませんから、お客様とRFIDメーカー様のつなぎ役となり、当社のサービスのオプションとして、クラウドサービスとしてご利用いただく事を目指しています。

AGV(Automatic Guided Vehicle)メーカーとの連携も進めています。AGVとは、搬送ロボットです。搬送ロボットがピッキングを行い、この作業データが当社のアプリケーションと連動します。ただ、ロボットが主体的に動いてピッキングを行うのではなく、当社のアプリケーションの指示でロボットがピッキングを行うという事がポイントです。搬送ロボットは指示情報を基に動きますから、当社のアプリケーションの様に指示するシステムがないと動けません。AGVメーカーとの製品連携により、当社のお客様は投資をする事なく、在庫システムと連動する搬送ロボットをご利用できるようになりますし、当社はピッキングの自動化・省力化と言う新たなニーズを取り込み、成長につなげる事ができます。

今、自動化ブームが再来しています。1985年から90年頃に一度そのブームが来ているのですが、その当時の自動化の主役は、「アンカーもの」と呼ばれる設備でした。倉庫内に棚を建築施工して、棚から必要な商品を流す仕組みです。ところが、今回のブームの主役はロボットです。ロボット技術と言うよりも、センシング技術の向上やAIが背景にあるのですが、ロボットが移動してピッキングを行います。

当社のパートナーであるギークプラス(株式会社ギークプラス、千葉県印西市、代表取締役社長 佐藤智裕)さんのAGVは、ロボットが棚自体を移動(運ぶ)させますから、棚を据え付ける(建築施工の)必要がありません。建築施工する必要がありませんから、初期投資を抑える事ができますし、棚の追加や削減、他の倉庫への移動も簡単にできます。棚とロボットをトラックに積んで運ぶ事ができますから。建築施工するタイプは高度な能力設計が必要で、ピークに合わせて設計・施行されます。移転する場合も大変ですが、ロボットタイプは、多過ぎたら抜けばいいですし、足りなければ足せばいい訳です。ロボットの時代が遠からずやってくる、と考え、海外技術も含めてロボットの情報を収集しています。


「第4回 ロジザード物流セミナー2019 冬」の開催
テーマは、【人手不足解消】。物流ロボット・AGVがどこまで有効な解決策となるのかについて、ロジザードならではの視点で迫る。今回のセミナーでは、物流ロボット「EVE」の開発元である(株)ギークプラスの佐藤社長(画像:左)、既にロボット導入後1年を経て大きな実績を上げている物流会社(株)アッカ・インターナショナル社の加藤社長(同:右)も登壇する。

東京 2019年2月21日(木) 14:00~17:00(受付:13:30)   御茶ノ水ソラシティホール 2F
大阪 2019年3月6日(水) 14:00~17:00(受付:13:30)    梅田スカイビルタワーウエスト36F スペースL

なるほど。RFIDを導入するメリットというのは、読み取り作業が不要になる、という事ですか。搬送ロボットについては、御社のアプリケーションが搬送ロボットを動かす司令塔になる訳ですね。「多過ぎたら抜けばいいし、足りなければ足せばいい」というご説明も興味深いです。もう一つの柱である「在庫データの活用」については、いかがでしょうか。

金澤社長: 「在庫データの活用」では、オムニチャネル対応を進めています。Eコマースで買い物をした時、最後に必要になるのは、「受け取り」です。商品をご購入された方が、どう受け取りたいか、です。これからのEコマースは、受け取りたい時に、受け取りたいところで、受け取りたい形で受け取る、という仕組みが必要になります。そうなると、どこに在庫があって、どの方法で届けるか、という事が問題になりますから、ほとんど物流の問題です。例えば、「ECもやっているけれども、全国に100店舗を持っています」という会社があった場合、倉庫から送るよりも、この店から送った方が、コストが安いとか、早く対応できるとか、という事が起こります。基本的にそういった処理がされるようになってきていますし、Eコマースでご購入された方が「帰る途中にある店舗で受け取りたい」と言えば、受け取りを希望する店舗に配送するようになっていくと思います。こうした処理は物流が制御しなければなりません。このためには、場所別の在庫情報を把握し、場所別に指示情報を出す必要がありますから、在庫情報と物流の指示情報のモジュール化を進めています。お客様が必要に応じて、倉庫管理システムにモジュールを組み込めるようになります。

具体的に、どんな事ができるか、と言いますと、スマートフォンを使って今いる日本橋人形町(同社の本社所在地)で商品検索をかけたとします。アプリケーションが日本橋高島屋に商品在庫がある事を確認した上で、同店で受け取れるように対応する事も、仕事が忙しくて取りに行けないのであれば、倉庫からご自宅にお届けするように対応する事もできるようになります。受け取り方法がどんなに多様化しても、サービスを対応させていきます。お客様の希望に物流を対応させるためには、どこに何が、何個あるか、と言う情報が必要になりますから、ニーズに対応できるように先を見て鋭意開発を進めています。

オムニチャネル支援システム「ロジザードOCE」の機能強化という事ですね。今期は大型案件の受注を抑制して、先行投資としての製品開発に開発リソースを割くお考えでしたね。

金澤社長: そうですね。倉庫管理システム「ロジザードZERO」と「ロジザードOCE」を連携させて、お客様にバリューを提供していく事になります。「ロジザードOCE」に限らず、業務の効率化と販売の拡大という2大テーマの下で、「ロジザードZERO」に対応する多くのオプションを作っていく事が成長戦略です。細かい事を含めると、我々が考えているロードマップには、もっと多くの取り組みが上がっているのですが。

【投資家へのメッセージ 人口減や少子高齢化といった社会の構造変化に伴う課題解決に取り組む】
目の前にある業務に対応するべく、全力投球していますが、膨大なデータを活かして、新たなニーズに先んじて対応するための先行投資にも怠りがない、と言う事ですね。そろそろ頂いたお時間がまいりました。最後に、株主還元についての考え方も含めて、投資家の皆様へのメッセージを頂ければと思います。

金澤社長: 成長戦略について説明させていただきましたが、当面はIT投資を中心に事業成長のための施策に資金を使わせていただきたいと考えています。また、当社の事業はスタートする時に商品と情報を紐づけて、サービスを開始します。お客様の増加が続く中では、サービス立ち上げのための資金も必要です。スタートすると止められないだけに、途中で離脱するお客様が少なく、安定成長が可能です。おかげさまで業績は順調ですが、手堅い成長モデルを考えています。

人がいなくなってしまう社会ですから、何とかしなければならない。ロボット導入等のご提案はお客様を増やすための方法論の一つではありますが、ベースにあるのは、5年後、10年後に、「こんな事ができるのはロジザードのおかげだ」と言ってもらえるような会社になりたい、という思いです。この思いを遂げる事で当社の企業価値も上がり、株主の皆様に恩返しができると考えています。

物流は、工業品の生産と違い、人の気遣いに依存している部分が多い事業であり、業界です。「商品が確実に届く」という事が何よりも優先されますが、人がいない中でも商品が確実に届く社会を維持していくために、やらなければならない事が数多くあり、それが当社の課題です。こうした点にご理解を頂き、引き続きご支援を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。

当面は、ITを中心にした先行投資を優先するお考えですね。成長戦略として掲げている「製品連携」と「オムニチャネル対応」の進展は、物流の現場で働く皆さんの負担軽減と「商品が確実に届く」社会への貢献につながりますから、御社の業績拡大要因になるだけでなく、物流を通しての社会貢献という側面も持つ訳ですね。人口減や少子高齢化といった社会の構造変化に伴う課題解決の一助にもなるという事ですね。御社の今後の展開に期待したいと思います。本日は長時間にわたり、丁寧なご説明を頂き有難うございました。金澤社長とロジザード株式会社の益々のご活躍とご発展をお祈り申し上げます。

今後の注目点
「物流は様々な産業で不可欠とされるだけに、IT活用による物流業務の効率化は社会全体への貢献につながる」というのが、金澤社長の考え。ただ、「残念ながら物流業界の人気は低い」と言う。このため、同社は、事業の拡大だけでなく、物流に関わる人たちが楽しく働けて良い仕事ができ、困る事を少なくしていく事、そして、物流業界の社会的地位向上に貢献する事を目指している。「物流に関わる人がHappyになるシステムを、低コストで広くたくさんの人に使っていただければ、お互いにいいでしょう」、と。業績の拡大を通して、物流業界、そして社会全体へ貢献していく考えだ。
一方、足元に目をやると、物流への負荷が大きいEコマースの拡大と人手不足の深刻化を背景とする物流業界の活発な省人化・省力化投資を追い風に業績拡大が続いている。また、リピート通販・レンタル・シェアリングの拡大やリアルとバーチャルの販売融合(オムニチャネル対応)等で新たなニーズも生まれている。このため、今期は大型案件の受注を抑制して、先行投資としての製品開発に力を入れている。大型案件を取り込む事で目先の成長速度を加速させる事は可能だが、同社は先行投資を優先して堅実な成長を目指す考え。物流業務の効率化を通しての社会貢献と新たなニーズを取り込みながらの堅実な成長。この両面から、同社の今後に展開に注目していきたい。尚、会社側が業績予想を据え置いたのは、現時点は通期の正確な着地点を予想する事が難しいため。下期に特段の不安はなく、同社のビジネスがストック型のビジネスである事や上期のモーメンタム等を考えると、通期の着地は、売上高が15~16億円、営業利益が2.5~3億円といったところではないだろうか。通期業績は上振れによる大幅な増収増益が見込まれる。

<参考:コーポレート・ガバナンスについて>
◎コーポレート・ガバナンス報告書   更新日:2018年7月4日
基本的な考え方

当社グループは、お客様に安心・安全の物流環境を作りという企業理念のもと、株主、取引先、社員等のすべてのストックホルダーから信頼される企業グループであり続けるために、コーポレート・ガバナンスの充実を経営上の重要課題の一つと認識しており、そのためには経営の透明性の向上と経営監視機能の強化が不可欠であると認識しています。
今後も会社の成長に応じて、コーポレート・ガバナンスの体制を随時見直し、最適な経営管理体制の構築に努めてまいります。

<実施しない原則とその理由>
基本原則のすべてを実施してまいります。

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