GCC経営™分析レポート:株式会社ハピネス・アンド・ディ(東証スタンダード 証券コード:3174)
金融・流通データ分析のプロの新社⾧が描くブランドコングロマリット戦略日本版のルイ・ヴィトン(LVMH)へと進化

2025/11/07

ベーシックレポート
ジェイ・フェニックス・リサーチ(株)
宮下修

V字回復のカギ、ブランドコングロマリットとは

株式会社ハピネス・アンド・ディ(以下、ハピネス・アンド・ディ)は、人生の節目を彩る「アニバーサリーギフトショップ」として全国に店舗展開する小売企業である。2025年8月期は売上高86億円・営業損失4.4億円と厳しい業績が続き、継続企業の前提に関する重要事象等の記載が存在するものの、抜本的な構造改革により収益構造は着実に改善している。2025年6月には富士銀行・みずほ証券を経て、AI・データ活用と在庫管理で知られるトライアルカンパニー出身の前原聡氏が社⾧に就任し、金融と小売オペレーションの両面の専門知識を活かした経営体制へと転換した。同社が目指すのは、後継者不在の日本の各種ブランドをM&Aしながら成⾧する「ブランドコングロマリット戦略」である。これは、ルイ・ヴィトンを擁するLVMHが欧州で確立した手法を日本版として応用し、複数のブランドをグループ傘下に収め、製造から販売まで一貫して手掛けることで高収益を実現する事業モデルだ。改革の成果は既に表れ始めている。中間期の粗利率は40%(前年同期37%)に改善し、AI技術を活用した接客改革では対象商品の売上が前期比160%に急伸した。投資銀行ストームハーバー証券との提携により、3年間で2~4件のM&A実施体制も整えている。ただし、 2026年黒字化未達の場合は資金調達が困難となり戦略全体が頓挫するリスクがある。JPR予想では、2026年8月期の黒字化達成を前提に、2035年8月期には売上高222億円・営業利益率9.5%・ROIC10.1%の達成を試算しているが、金相場変動やM&A統合失敗といった複数のリスクが実現可能性に影響を与える。後継者不在の日本ブランドを救済しながら成⾧するブランドコングロマリット戦略の実現可能性を本レポートにおいて評価を試みる。

黒字化を起点とした日本版LVMHに向けたM&A実行の好循環シナリオ

JPRは、ハピネス・アンド・ディが短期的な好循環サイクルに入る可能性を予想する。2025年8月期は売上88.41億円・営業損失4.04億円だったが、構造改革の成果は確実に現れている。粗利率は38.2%から40.6%へ上昇し、会社の公表計画(2026年8月期)ではさらなる改善が期待される。店舗を71から57へ集約したことで固定費約4億円を削減し、損益分岐点となる月次売上は9.5億円から7.5億円へ約2割低下した。宝飾は前期比+4.0%と好調で粗利率55.3%を確保し、33店舗導入済みのヴィンテージ販売事業は2025年11月のClarisse社提携により2027年には年商8-10億円規模への拡大を見込む。2026年8月期の黒字転換(営業利益+0.3億円計画)が達成されれば、継続企業の疑義が後退し、投資家をひきつけ、株価の上昇が期待される。株価上昇により新株予約権の行使が進めば数億円規模の資金調達が実現し、ストームハーバー証券との協力体制のもと2026年後半から2027年にかけて日本版LVMH構想の実現が進みだそう。M&A成功により更なる株価上昇と追加資金調達余地が生まれ、次のM&A案件へと繋がる好循環が形成される。ただし、このシナリオは2026年黒字化達成が大前提である。

3年後に株価3.5倍:構造改革完遂で2,500円到達の可能

2028年8月時点の企業価値を織り込んだ理論的時価総額は65億円を予測。2023年10月に第11回・第12回新株予約権を発行し、M&A等の事業拡大に充当する計画である。希薄化後の発行済株式数を考慮したターゲット株価は約2,500円となる。10年で見ればJPR予想では6,000円程度になると予想。2026年8月期の黒字化達成を前提に、宝飾品への商品シフトによる粗利率改善(2025年中間期40.0%)、AI接客システム導入による売上拡大(研修対象商材で前期比160%)、不採算店舗閉鎖による固定費削減が順調に進展した場合、2028年8月期に売上高114億円・営業利益率5.0%・ROIC5.3%の達成を試算している。なお、試算に用いた4%台の資本コストの前提は「日本初のブランド・コングロマリット」確立時の⾧期均衡値であり、現状の財務リスクを考慮すれば実態は15%以上と見るべきで、この乖離は極めて大きい。短期投資家にとっては極めてリスクが高いことは留意すべきである。

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