GCC経営™分析レポート:アディッシュ株式会社(東証GRT 証券コード:7093)
ゲーム向け下げ止まり・SaaS向けサービスの高成長でついに3期ぶりに黒字達成へ

2025/05/08

長期展望+四半期レビュー
ジェイ・フェニックス・リサーチ(株)
宮下修

1.長期展望 社会課題×CS特化で挑む2030年営業利益5億円計画

アディッシュ株式会社は、「つながりを常によろこびに」というミッションのもと、安心・安全なデジタル社会の実現を支えるカスタマーリレーション事業を展開する東証グロース上場企業である。同社は近年、ゲーム向けカスタマーサポート依存からサブスクリプション型のSaaSカスタマーサクセス(CS)へと事業構造を大きく転換している。中⾧期経営ビジョンを解説した動画※1での江戸社⾧の発言によれば、「2021年まで売上高の一部を稼いでいたゲームアプリサポートは2022年以降に3億円以上減少」した一方で、「カスタマーサクセス領域では9億円以上の売上増」を達成した。この事業転換期に経営陣は「守り」ではなく「攻め」を選択し、CS人材の採用・教育、BPaaS基盤構築などの人的資本に積極投資したが、収益力低下対策進捗の遅れにより2023~2024年は二期連続の赤字を計上することとなった。「事業計画及び成⾧可能性に関する事項2025年3月」※2によれば、BPaaS ( Business Process as a Service ) はBPO ( Business Process Outsourcing ) とSaaS ( Software as a Service)を組み合わせたモデルで、2024年に開始した戦略的な取り組みである。SaaS企業と提携し、導入企業がSaaSを有効活用できるよう初期設定や運用代行などを提供するもので、クラウドサーカス、ユニリタ、パートナープロップといった企業と提携している。これはDX 推進に必要なSaaS活用人材の不足という社会課題を解決しながら、顧客層を拡大する戦略である。同資料によれば、2024年12月期の業績は売上高35.9億円、経常利益△1.2億円となったが、2025年12月期は売上高37億円、経常利益0.6億円と黒字転換を予測している。動画で江戸社⾧は「売上はもちろん伸ばしていきますが、利益のほうもしっかり黒字転換して」と明言しており、同資料では「ゲーム系のカスタマーサポートもようやく下げ止まりが見られている」と収益構造の改善を示唆している。「事業計画及び成⾧可能性に関する事項2025年3月」によれば、カスタマーサクセス市場はSaaS市場2兆円に対して約800億円規模と見込まれており、アディッシュはコンサルティングから実運用、BPOまでのサービスラインナップと先進的なスタートアップ支援実績を強みに、2030年に売上高70億円・営業利益5億円という中期計画の達成を目指している。

2.四半期展望 今期黒字化の可能性は高い

当社は独自取材に基づき、アディッシュ(7093)の2025年度四半期業績を予想した。同社が公表した通期目標(売上高3,700百万円、営業利益50百万円)を前提に、四半期推移を分析すると特筆すべき構造転換が起きると予想。四半期売上高は各925百万円と安定的に推移すると予想。売上総利益率は29.0%から29.4%へと緩やかな上昇を見込む。注目すべきは先行投資期間終了による販管費の大幅な効率化だ。上半期(Q1:280百万円、Q2:270百万円)から下半期(Q3・Q4:各240百万円)にかけて顕著に改善し、販管費率も30.3%→25.9%へと縮小すると予想した。江戸社⾧による、上期は先行投資がつづくが下期から黒字転換するという強い確信度合いを反映した予想である。この結果、営業利益は上半期の赤字(Q1:- 12百万円、Q2:-1百万円)から下半期には黒字(Q3:+31百万円、Q4:+32百万円)へと転換するだろう。我々の分析では、この構造転換は① BPaaS基盤構築・CS強化投資が下半期から回収フェーズに入ること②2024年6月開始のBPaaS 事業拡大によるストック収益の積み上げ③ゲームカスタマーサポートの下げ止まりによる売上ベースの安定化、という三要因によるものだ。2025年度はアディッシュにとって投資回収への転換点となり、中⾧期ビジョン達成へ向けた基盤固めの年になると当社では予想している。

3.株価動向 底入れから反発相場への可能性と資金調達の動向

アディッシュ株式会社は上場直後の1,800円台から株価が下落し、現在500円前後で推移している。昨年12月に実施された今回の第三者割当による最大約2億52万円の資金調達は成⾧戦略加速への重要なステップだ。普通株式約1,003万円、転換社債型新株予約権付社債1億円、新株予約権約9,049万円から構成されるこの調達は、人材投資と開発資金に充てられる。現在の株価は行使価額558円を下回るが、黒字化と投資により企業価値向上の好循環が生まれれば、株価が558円を超え新株予約権の行使が進み、投資が促進され戦略の実行が進むことで、1-2年以内に、2028年12期以降の成⾧性を反映した、1,000円台の回復も期待できる。この資金調達が企業価値向上と成⾧投資の好循環を形成する転換点となるだろう。当社としては、8月ごろに発表されるとみられる中間決算において、通期黒転の見通しが明確化して、一気に株価が上昇する可能性があると見込んでいる。上記予想は保守的な見積であるため、2025年通期の黒字、引いてはその後の成⾧性が見込まれることで買い戻し需要が一段と拡大し、ショート筋にとって想定以上の損失拡大につながる恐れがある。従って、目先の株価上昇をショートで取りに行く戦略はリスクが大きいと考えられる。

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