GCC経営™分析レポート:株式会社キューブシステム(東証プライム 証券コード:2335)
GCC経営™分析によると最大約2.8倍の時価総額アップサイドの可能性
ベーシック ・ レポート
ジェイ・フェニックス・リサーチ(株)
宮下修 宮下明久 小松麟
IT市場の構造変化がもたらす成⾧機会→需要はいくらでもある
株式会社キューブシステム(以下、CS)は、株式会社野村総合研究所(以下、NRI)や富士通株式会社(以下「富士通」)の有力事業パートナーとして、協業を通じて培った高度な技術力と、多数の業種にわたって顧客基盤を持つIT企業である。特筆すべきは、この協業を通じて培われた業界知見、ノウハウが、ITシステム市場の構造変化、すなわち、IT部門の本社の戦略中枢化の動きにビルトインした形で新たなビジネス機会を創出している点である。具体的には、NRIと手掛けた金融システムの開発実績や、富士通との流通システム開発の経験が評価され、大手企業からITシステム構築の打診が増加している。ITシステムが本社戦略の中心となり投資需要が急増する中、大手IT企業だけではシステム構築の規模やリスクに対応しきれない状況が背景にある。中西社⾧は、この構造変化の機会を積極的に活用し、第二の創業期と位置付けて変革を進め、中期経営計画の遂行を通じて、成⾧を加速させる方針を打ち出している。これまでもCSにおいては、大手Sierとの取引で培ったシステムエンジニアリングのノウハウが、イオングループとの取引につながり、みずほフィナンシャルグループとの取引拡大も、大手Sierとの協業が大きなプラス材料になっているが、このような動きが今後一層拡大していく。大手IT企業との関係でノウハウの高度化と安定的なキャッシュ創出力を維持・強化し、市場の需要に応えつつ直接取引や、自社製品などの事業領域を拡大していく。
二つのハイブリッド供給戦略で需要をつかみ持続的成⾧を実現へ
CSの供給戦略で注目されるのは、「①ハイブリッド開発戦略(ベトナムの開発拠点活用)」と「②ハイブリッド人材戦略(技術力&業界知見)」の二つである。①では、日本とベトナムの両拠点を活用し、ホーチミンに100名超のエンジニアを擁して高度な開発能力と競争力のあるコスト構造を実現。同拠点はAI・クラウド技術の研究開発も担い、大手Sierとの連携強化、エンドユーザーとの直接取引による提案型ビジネス、自社製品の開発を展開している。②では、顧客の業務や事業に精通した組織や極めて高い技術力を持つ組織体制を編成した。その上で各組織の所属人員には、所属組織の強みのみならず専門領域を広げた「ハイブリッド型人材」の育成に注力。若手向けの実践的研修やベトナム子会社との連携を通じて、より高度なスキル獲得を支援。高い報酬と動機付けにより、離職率(現在10%)の改善を進め、一人当たり売上高の向上と持続可能な成⾧に支えられたESG経営を目指している。いくらでもある需要に対して、CSはこの二つのハイブリッド供給戦略で対応し、成⾧を確実に加速していく方針である。
成⾧価値が株価に織り込まれれば短期的に大幅なアップサイドもありうる
以上説明してきた戦略により、CSの成⾧は、⾧期的に加速する前提に基づいて推計した結果、2035年3月期まで、10年のCAGR10.3%が期待される。ROICは2024年3月期の会社計画ベースで23.6%から、2034年3月期には38.8%へと上昇すると予想した。WACCは8.8%で一定で推移するという前提にした。この前提によって株価推計した結果、10年分の成⾧価値を織り込めば株主価値は416.3億円、株価は10/25終値の約2.8倍(2.753倍を四捨五入した値)の2,643円となる。成⾧機会はほぼ株価に織り込まれていないと判断されるため、この成⾧価値が株価に反映されれば短期的に大幅なアップサイドが期待される。そのような認識を投資家に与えるようなIR活動に期待したい。
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