オンコリスバイオファーマ株式会社(4588 Growth)
極めて臨床的に意義のあるトップラインデータ

2023/10/18

フォローアップ・ レポート
フェアリサーチ株式会社
鈴木 壯

局所完全奏効率は41.7%に達する
オンコリスバイオファーマの主力開発品(OBP-301)は、テロメライシンという遺伝子を改変した腫瘍溶解ウイルスである。オンコリスバイオファーマ独力での製品化に向けて、国内においては食道がんに絞って、臨床開発を推進しており、2024年承認申請まであと一歩のところまで来ている。2023年10月16日、国内ピボタル試験のトップラインデータが公表された。テロメライシンと放射線の併用療法による局所完全奏効率は41.7%(ステージⅡ・Ⅲ対象)であり、放射線療法の国内レジストリーデータを基に設定された有効性閾値30.2%を10ポイント以上の差をつけて上回った。予後に関するデータも、データカットオフ時点で1年生存率は71.4%と、放射線療法の国内レジストリーデータによる57.4%を上回る結果となっている。一方、安全性に問題のある事例は発生していない。このようにテロメライシンと放射線の併用療法の治験結果は、極めて臨床的に意義のあるものと考えられ、2024年下期のテロメライシン新薬申請に向けて、大きく前進した。商業規模でのGMP製造に関しては、現在は細かな改善点の最終確認を行っているところである。この確認作業が完了後(11月)、各工程に関する文書化に加え、プロセスバリデーションのための製造を行い、2024年2月に品質試験の結果を取得する予定である。2024年半ばから、1回目の正式な商用製造を行い、2024年後半に先駆け審査制度指定の下での新薬申請を行う予定である。また、国内販売パートナーの選定は複数社を候補として継続中で、2023年内決定の予定は不変である。

海外大手製薬会社との共同開発計画もそう遠くない将来に正式発足
2023年9月25日、オンコリスバイオファーマは、胃/胃食道接合部がんの2次治療を対象とした免疫チェックポイント阻害剤とテロメライシン®(OBP-301)の併用療法の開発について、コーネル大学と新たな医師主導治験契約(Ph2)に関し基本合意に達したことを公表した。この契約は、コーネル大学が免疫チェックポイント阻害剤を保有する大手製薬会社と契約することが前提となっているもので、現在、契約作業中である。早晩3者による共同開発体制を構築される見込みである。現在、2次治療の分野で、免疫チェックポイント阻害剤を用いた確立した治療法は存在しない。化学療法による治療を中心とした分野に、免疫チェックポイント阻害剤と腫瘍溶解ウイルスの併用療法が顕著な治療効果改善をもたらすことが期待される。なお、免疫チェックポイント阻害剤は、それを保有する大手製薬会社からの無償提供で、さらに開発費用も負担し合うことで、両社で臨床試験を支えていく体制を構築していくとのことである。

脳神経変性疾患薬OBP-601への期待も上昇
OBP-601は、PSP(進行性核上性麻痺)、ALS(筋委縮性側索硬化症)/FTD(前頭側頭型認知症)及びAGS(アイカルディ・ゴーティエ症候群)といった脳神経変性疾患対象に導出先のトランスポゾン社でPh2aが遂行されている。既にオンコリスではPSPに関する24週の中間解析データを入手済みである。年内には、ALS/FTDの中間解析データも取得できる予定である。ただし、OBP-601はもともと抗HIV剤として開発されていた化合物なので、他の抗HIV剤を保有する製薬会社の参入を懸念して、データが公表されない公算が高い。しかし、簡単に公表されないということは、それだけ効果が期待できることの裏返しと考えられよう。PSPのみならず、ALS/FTDやAGSにも効果があるという結果が出た場合、トランスポゾン社が大手製薬会社のM&Aの対象となることも考えられる。

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