シンバイオ製薬株式会社(4582 Growth)
真のグローバル・スペシャリティ・ファーマを目指して

2023/07/14

フォローアップ・レポート
フェアリサーチ株式会社
鈴木 壯

2023年は大転換の年
2023年は、シンバイオにとって大きな転換期の年となっている。長年にわたってドル箱に育ててきたトレアキシン®市場が、ジェネリックによる浸食が2023年から本格化し始めてきた。一方、シンバイオが今後のグローバル展開の柱と位置づけているブリシンドフォビル(BCV)について、2023年5月、最初の適応症(造血幹細胞移植後の播種性アデノウイルス感染症)にて、ヒトPOCが確立された。それに続く適応症(腎移植後のBKウイルス感染症、造血幹細胞移植後あるいは臓器移植後の抵抗性・難治性CMV感染症)でも自社開発推進にむけた橋頭堡が出来つつある。また、2023年になって、シンバイオは、米国国立衛生研究所(NIH)に属する2つの研究機関、米国国立神経疾患・脳卒中研究所(NINDS)及び米国国立アレルギー・感染症研究所(NIAID)と共同研究開発契約(CRADA)を締結した。世界最大の生命科学・医学研究所であるNIH傘下の研究所とCRADAを締結したということは、米国の国家予算、そしてNINDSとNIAIDが保有する施設、知財、人材を用いて研究が推進されるということを意味する。CRADAは、パラダイム・シフトとなるような案件にしか締結されないため、この2つのCRADA締結は画期的なことである。また、研究成果を使用できるライセンスはシンバイオが独占できる。

造血幹細胞移植後・臓器移植後感染症のBCV市場規模は450億円
2028年に上市が予想される造血幹細胞移植後の播種性アデノウイルス感染症を対象としたBCVの市場は、60億円と試算されるが、それに続いて開発が進行している腎移植後のBKウイルス感染症対象の市場は240億円、また、造血幹細胞移植後あるいは臓器移植後のCMV感染症のうち抵抗性・難治性CMV感染症を対象としたBCV市場は150億円程度と推定され、合計すると450億円市場が期待できる。この市場だけでもBCVのパイプライン価値は419~604億円と試算される。さらに、次のターゲットとしている、ウイルス感染を要因とするがん領域(NK/T細胞リンパ腫や膠芽腫GBM等)やウイルス感染暴露による脳神経変性疾患領域(多発性硬化症やアルツハイマー型認知症)の市場は非常に大きいことは言うまでもない。

2030年には、真のグローバル・スペシャリティ・ファーマへ
シンバイオは、当面、自社で、造血幹細胞移植後、あるいは臓器移植後の感染症を対象としたBCVの開発とグローバル市場の開拓に集中する一方、トレアキシンの市場は縮小する。ただし、脳神経変性疾患領域での研究成果が積みあがれば、2024年あるいは2025年頃にはグローバル・パートナリング契約が期待できる。そして、2030年以降、ウイルス感染を要因とするがん領域や、ウイルス感染暴露による脳神経変性疾患領域での開発にも本格的に参入する計画である。これらすべてを同時進行させることは容易ではないが、成功すれば、非常に大きな市場が待っていることは間違いない。シンバイオの旺盛な開発意欲を支える投資家の支援が欠かせない。

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