株式会社メドレックス(4586 Mothers)
水面下ではブロックバスターを育成中

2022/03/23

ベーシック ・ レポート 改訂版
フェアリサーチ株式会社
鈴木 壯

ニッチな市場で独自の技術
メドレックス社は、既存の経口薬・注射薬の有効成分を経皮吸収型製剤として開発し、製薬会社へ導出(ライセンス供与)、マイルストーン収入や上市後のロイヤリティ収入等を獲得するビジネスモデルの会社である。
通常の新薬創薬ビジネスと比較して、既存の薬剤の有効成分をベースにしているため成功確率は高く、ニッチな分野であるため競合も限定され、しかも独自のILTS®技術やNCTS®技術等で差別化されている。また、マイクロニードルという「貼るワクチン」の技術も保有し、フィジビリティ・スタディを継続中である。

2021年は、開発の停滞が目立ったが…
2021年のメドレックスは、停滞の年であった。主に、次の3つの停滞があり、見込んでいたマイルストーン収入も発生しなかった。
① 同社初の上市品になると期待されているリドカイン・テープ剤(Lydolyte)について、予定されていた承認を獲得できず、追加試験と再申請が必要になってしまった。
② Cipla社に導出しているチザニジン・テープ剤(CPN-101(MRX-4TZT))のサブライセンス先選定作業が継続し、Ph2へのステップ・アップが遅れ、2022年に持ち越しとなった。
③ メマンチン貼付剤の臨床試験は、2021年にPh1開始の予定であったが、新型コロナ感染症下で、治験薬製造先の選定と技術移転などに手間取り、開始は2022年にずれ込んだ(2021年は治験申請)。
しかし、水面下では、大型開発候補品が着実に育ってきた年でもあった。

水面下では、大型開発候補品が育っている
メドレックスは、2021年8月にブロックバスター級の売上が見込まれるジクロフェナック・リドカイン・テープ剤(MRX-6LDT)の開発開始を公表した。2022年は、開発資金がLydolyteの追加試験のために転用されるため、MRX-6LDTの開発は非臨床試験に留まり、Ph1は2023年以降へずれ込む。しかし、先行品が市場を開拓し始める2026年頃にはPh2を完了し、導出する計画である。市場の拡大を背景に好条件での導出を期待したい。また、大きなポテンシャルのあるマイクロニードルも、2021年1月、治験工場で病原性のある細菌やウイルス、遺伝子組み換え生物等の取り扱いを可能にする「拡散防止等のバイオセーフティ対策」を中心としたUpgradeを完了し、国内外の製薬会社やワクチンベンチャー等とフィジビリティ・スタディを実施中である。メドレックスでは、2023年にはヒトでの試験で有効性を確認することで、メガファーマの関心が大きく高まることを期待している。今後、順調に開発が進展すれば2024年以降は、次々と上市品が出現する可能性がある。また、ジクロフェナック・リドカイン・テープ剤とマイクロニードルの開発の進展が織り込まれれば、会社の価値は大きく変化する。現状の時価総額は、最初に上市される予定のリドカイン・テープ剤(Lydolyte)の価値を織り込んでいるに過ぎないと考えられる。

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