株式会社キャンバス(4575 Mothers)
夏場には 朗報の可能性も

2022/02/08

フォローアップレポート
フェアリサーチ株式会社
鈴木 壯

改めて CBP501 の優位性を確認
すい臓がんを対象とした薬剤の開発では、2次治療以降の適応を目指して開発が行われてきたものの多くが途中で失敗している。このことから、キャンバスにも、本当に成功の可能性があるのか?と不安を感じる投資家も存在する。すい臓がんでの開発が困難な理由として、以下の3点が考えられる。①薬剤が届きにくい(血管が少なく線維の壁に囲まれている)、②免疫細胞が極端に少なく免疫抑制細胞が多い。したがって、免疫チェックポイント阻害剤単独では効かない。③免疫系抗がん剤はがんが小さくないと効かない。①をクリアするために様々な低分子薬候補が試されてきたが、がん細胞だけに作用するものは少なく(副作用懸念)、また免疫細胞への悪影響を引き起こすものもみられる。②をクリアするためにIL-10阻害剤など様々な免疫着火作用が期待できる薬剤と免疫チェックポイント阻害剤の併用も試されてきたが、一定の免疫反応が発生した後、同程度の力で免疫反応の低下が発生し、なかなか成功しない。一方、CBP501とシスプラチンは低分子で薬剤としては比較的目標に到達しやすい。また、CBP501+シスプラチンは、抗がん剤の免疫細胞への悪影響を最小化するように最適化されている。その上CBP501は免疫抑制的マクロファージの活性阻害をする。がん細胞を免疫原性細胞死に誘導し、がんを小さくしたうえで、オプジーボ®のような免疫チェックポイント阻害剤が奏効する環境が持続することがマウスの実験で検証されている。つまり、①~③を克服しているCBP501は、すい臓がんを対象とした薬剤の開発において優位性を有していると考えられる。

大胆な潜在株式数削減と開発継続を両立
キャンバスは株価低迷の一因に潜在株数の増加があるものと考え、大胆な資本政策を実行した。2021年12月に行使されずに残存している第15回新株予約権の消却を実行した。さらに2022年1月に、第4回転換社債の部分消却を行った。転換社債は転換されるまで負債であり財務健全性を損なうものである点に加え、新株予約権は株価が将来において当初行使価額を上回った場合にトータルの資金調達額が当初予定を上回るアップサイドの可能性があるので、消却対象として第17回新株予約権ではなく、転換社債の消却を選択したのは、賢い選択と言えよう。消却は、現有の現預金で賄われたため、今後の資金計画が変更になったが、第17回新株予約権の行使が現在の株価付近で行使されれば、現在進行中のCBP501のPh2ステージ1の完遂までの開発資金と運転資金をカバーし、さらに3億円ほど次相の準備などに用意できる見込みである。

夏場には、治験の感触も含め朗報の可能性も
Ph2 ステージ1の最初の患者登録( FPI )は 2021 年 12 月であった。米国 FDA に治
験開始許諾が 4 月だったので、多少時間がかかっている。これは、同時に多施設を
立ち上げたことと、また新型コロナ感染症対策で在宅勤務が増加したことにより、
CMO と CRO の間の調整に時間がかかったことが背景にあると考えられる。 2021 年 12
月までに治験施設は 15 施設 OPEN しており、あと 5 施設追加される予定である。
2022 年 1 月末の組入患者数は 4 例であるが、今後順調に組入が進行すれば、予定
通り 2022 年内にステージ1は完了する見込み である。 今回の Primary Endpoint
は「 3 か月無増悪生存の比率」 であるため、 7 9 月期には、半分以上の患者の観察
期間が終了しており、中間段階での感触がつかめるものとみられる。 2021 年 11 月
に公表された新規免疫着火剤 CBT005 も CBP501 に対する注目を喚起し、提携活動も
活発化しつつあるようだ。

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