メキシコの金融政策~中銀の政策スタンス、市場の展望

2018/11/19 <>
  1. 政策金利は0.25%引き上げられ8%でした。インフレは安定方向も、政治リスク増大が影響しました。
  2. 次期大統領の政策に対する懸念で通貨、株価、債券でトリプル安になっており、当面は利上げ含みです。
  3. カントリーリスクが意識され、市場は総じて割安ながら、目先は神経質な展開を余儀なくされそうです

利上げに追い込まれる

メキシコ銀行(以下、中銀)は15日、定例理事会を開き、政策金利の翌日物金利を0.25%引き上げ8%としました。インフレ率は安定方向にあり、景気は緩やかな回復方向にある中で利上げを実施した背景には政治リスクの増大が挙げられます。

7月の大統領・総選挙で新興左派政党(国民再生運動)率いるロペスオブラドール氏が次期大統領に選出され、一時は市場は落ち着きを取り戻しました。しかし、10月29日、首都メキシコシティでの新空港建設を無駄使いとして中止を発表し、同氏の政策運営に対する不安感が急速に膨らみ、通貨、株価、債券でトリプル安となりました。通貨ペソの急落はインフレ圧力の増大にもつながるため、中銀は、景気への影響よりも通貨防衛のための利上げに踏み切らざるを得なかったと見られます。

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当面は波乱の拡大に警戒

10月26日から11月15日にかけてペソの対円相場は-2.8%、代表的株価指数であるボルサ指数は-9.5%、10年国債利回りは8.3%から9.0%へ上昇しました。トリプル安です。最近は原油価格急落も市場心理を冷やしていると見られます。

メキシコ経済は、利上げがインフレ安定に寄与しています。10月のCPIは前年同月比+4.9%と、中心の目標(+3±1%)を上回っているものの、中銀は19年にかけて目標圏内に入ってくると予想しています。また、景気は緩やかに回復しており、IMF(国際通貨基金)は+2%台の成長が続くと予想しています。米国の利上げも先が見え始め、中銀は国内のインフレ抑制優先のスタンスを採りながらも、様子見姿勢に転じようとしてきたところです。しかし、ペソの動き次第では追加利上げ含みです。

一部で警戒されていた次期大統領の大衆迎合的な政策変更が現実味を帯び、市場は総じて割安感はあるものの、カントリーリスク拡大が意識され、目先は神経質な展開を余儀なくされそうです。

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