5月19日妥当レンジ 20,250円~21,900円
トランプ期待の剥落を織り込み、市場は安定に向かう

【「IFIS/TIWコンセンサス225」によるマーケットの妥当レンジの推計】

 

<トランプ期待は既に剥落、市場は好調な経済に注目する>

■トランプ大統領によるコミーFBI長官の解任、ロシアへの情報機密伝達に対する疑惑から先週の市場は反落した。ただし、米国市場の下落と円高のインパクトを考慮すれば下落幅は比較的小さいと感じられた。
■17日に米司法省はモラー元FBI長官を特別検察官に任命、19日に上院情報特別委員会はコミー前FBI長官の公聴会での証言を求めることを決定した。大統領弾劾の可能性も浮上している状況では、市場は冷静を保っているように見受けられる。既に議会共和党からのトランプ擁護は無くなり、就任5ヵ月足らずで大統領は機能不全に陥っている。市場のトランプ大統領への期待は既に剥落しており、大統領の言動も影響力を失いつつあると考える。本日(23日)に予算教書(詳細)が発表される予定であるが、期待はずれであっても影響は限定的と考える(仮に期待以上でもポジティブな反応は見込めない)。
■今後は、米国経済の拡大とFRBの利上げに市場の注目は次第に回帰するものと思われる。
■国内経済は、2017年1-3月期の実質GDP一次速報(18日発表)は、前期比年率+2.2%と市場予想(+1.8%)を上回った。輸出の好調な伸びと個人消費の持ち直し、在庫調整の一巡が寄与した。4月の貿易統計(22日発表)は、貿易黒字は原油価格の上昇と国内需要の持ち直しによる輸入増から大幅に減少したが、輸出数量は3ヵ月連続で前年比プラス。国内経済の回復感が強まっている。
■今週は、25~28日のOPEC総会、26日の全国消費者物価指数の発表に注目。来週は日米をはじめ主要経済指標の発表が続く。

 

<日本株の割安感は顕著、積極的なスタンスで>

■5月19日時点のIFIS/TIWコンセンサス225(日経225のコンセンサスEPS)は、全期間で前週比プラス。 「225コンセンサスDI」(前週比プラスとなった銘柄数の比率)も、前週の水準から低下したものの全期間プラス。決算発表一巡後も安定的に推移するようであれば強気を維持すべきと考えます。

 

 

◇日経平均妥当水準(レンジ)

20,250円~21,900 (前回20,550円~22,200円)

*「IFIS/TIWコンセンサス225」(5月19日)来期予想ベースEPSをもとに算出

◇IFIS/TIWコンセンサス225(5月19日)

今期予想EPS 1140.78 (前週 1133.24円)
来期予想EPS 1255.15 (前週 1251.19円)
再来期予想EPS 1373.85 (前週 1360.58円)
今期予想PER 17.17 (前週 17.55倍)
来期予想PER 15.61 (前週 15.89倍)
再来期予想PER 14.26 (前週 14.61倍)
来期予想PBR 1.19 (前週 1.22倍)
来期予想ROE 7.63% 前週 7.67%)
来期予想
インプライド・リスク・プレミアム
7.23% (前週 7.22%)

*5月19日経平均終値より、PER、PBR、ROE等を算出



図1
依然として妥当レンジ下限を下回る状態。トランプリスク(ロシアゲート)に対しても比較的底堅く推移。日米の経済指標によっては大幅高も!

 


図2
来期予想ベースのプラス企業比率は、 57.1%→64.5%→56.2%→73.5%→56.0%。
再来期予想ベースのプラス企業比率は、55.3%→61.9%→52.3%→64.6%→56.8%。

決算発表一巡によってプラス比率は鈍化したが、50%超をキープできれば問題ない。

[注:4~5月は例年、対象決算期変更の影響があるのでイレギュラーな値になることに留意]

 

 

 

 出所:IFISコンセンサスを基にTIW作成
いずれも2012年1月から表示

「IFIS/TIWコンセンサス225」について
IFIS/TIWコンセンサス225」は、株式会社アイフィスジャパンが集計しているアナリストコンセンサス・データ等を原データとして、2009年4月より株式会社ティー・アイ・ダヴリュが東証株価指数(日経225)に対応するように構成銘柄のEPSを算出・集計したものである。今期予想EPS、来期予想EPSの変化を追うことによって、マーケット全体の業績見通しを確認する。
理論上では株価は、自己資本配当率(ROEと配当性向の積)、EPS成長率、無リスク証券の利回り(国債利回り)、リスクプレミアムの4要素で決定される。株価をこれら構成要素に分解することによって、株価変動の要因について考察するとともにファンダメンタルからの妥当な株価(マーケット)水準を思量する。なお、リスクプレミアムを正確に計測することは、一定期間を経た後でないと困難なことであることから、当レポートではインプライド・リスクプレミアム(株価と他の構成要素からの逆算値)を使用している。
4つの構成要素の内、株価の短期的な変動に最も影響を与えるのがリスクプレミアムである。リスクプレミアムは、無リスク証券の金利に対して投資家が要求する上乗せ金利と定義されるが、投資家心理(マーケットセンチメント)、他の投資対象(金融商品)との利回り格差の変動などによって変化する。長期的な見通しの変化が無い中では、インプライド・リスクプレミアムは一定のレンジ内で推移する傾向にある。日経平均株価の妥当水準を算出には、インプライド・リスクプレミアムの一定レンジからの逆算によって行っている。
〔今期予想ベースEPS、来期ベースEPSにおける“今期”、“来期”の取扱い〕
会計上の業績計測期間ではなく、本決算発表を基準とする。例えば、2011年4月30日現在では、2011年3月期は決算発表前であれば今期、決算発表が行われていれば前期、となる。
〔予想EPS増減社数〕
今期ベースならびに来期ベースを示している。週間(週末値)のデータを基に、前週末に比べてEPSが増加・変化無し・減少した企業の数。
〔予想PBR(今期末)〕
前期末BPS(1株純資産)に今期予想EPSを加えて、予想DPS(1株配当)を控除した値(=予想BPS)で株価を除した数値。中間配当は考慮していない。
〔予想ROE(来期ベース)〕
前述の予想BPSで来期予想EPSを除した値。
〔リスクプレミアム〕
特に断りの無い限りインプライド・リスクプレミアムを表す。計算式は、{ 1-予想配当性向×(1-予想B/Pレシオ)}×予想ROE-無リスク証券利回り

 

株式会社ティー・アイ・ダヴリュ
独立系証券リサーチ会社TIWのアナリスト陣が、株式市場における時事・トピックスや業界動向など、取材に基づいたファンダメンタル調査・分析を提供するともに、幅広い視野で捉えた新鮮な情報をお届けします。