米国金融緩和策の「出口戦略」

2013/05/24

22日の米国株市場は慌しい値動きとなりました。材料になったのはFRBに金融緩和(資産購入額)の縮小に向けた思惑です。この日はバーナンキFRB議長の議会証言と、前回FOMCの議事録公表(4月30日~5月1日開催分)のイベントが相次ぎました。

直近の米国株(NYダウ)は過去最高値を更新する日が目立っていましたが、その背景には、「住宅市場を中心とするほどほどの米景気回復」と、「世界的な金融緩和祭りによる過剰流動性」、「リスクテイクムード」の併せ技によるものです。いわば、オイシイところだけをつまんできたとも言え、株価上昇のピッチの早さや実体経済とのギャップなどが意識されつつも、米国だけに限らず、「不安の崖を駆け登る」格好で各国の株式市場も上昇してきました。

そのため、株価上昇の柱のひとつである金融緩和策の出口をめぐる動向に注目が集まったわけですが、バーナンキFRB議長の議会証言に対する米株市場は、まずは買いで反応しました。「急ぎ足での金融引き締めは、折角の景気回復に悪影響がある」と発言し、緩和策継続との見方が広がったためです。NYダウはこの発言を受けて一時154ドル高まで上昇しました。

ただし、その後の質疑応答で、同氏が「継続的な労働市場の改善が見られれば、FRBは資産購入額を縮小させる」、「今後数回の会合のうちに縮小させることは可能」と説明したことや、公表されたFOMC議事録でも、一部のメンバーが6月にも資産買い入れの規模を縮小することに柔軟な姿勢を示していたことが明らかとなり、金融緩和策が早期に縮小される選択肢も捨て切れていないことで売りに転じ、NYダウは一時121ドル安まで下落する場面がありました。

NYダウの一日の値幅は276ドルと大きいものとなりましたが、米国金融緩和の出口戦略は「結局、どっちなの?」とイベント前と状況があまり変わっていないことになります。いずれにしても、FRBが出口戦略を考慮していることと、そのタイミングは雇用情勢など米国景気の状況次第であるため、引き続き冷静に見ていく必要があります。もともと、1月の給与減税の廃止(増税)や3月からの財政支出の強制削減などの影響もあって、4-6月期の米国景気の回復基調が一服するとの見方が多いため、今後発表される同時期の経済指標が思っていたよりも強ければ、再び出口戦略が意識される場面がありそうです。

そもそも、出口戦略に踏み出すこと自体は、米国景気の順調な回復と、異例の金融政策から脱却したという点からは評価すべきことなのですが、その異例の金融緩和期待を拠り所に株式市場が過去最高値を更新するほど上昇しているため、現段階では相場の波乱材料として意識されていることが、金融政策を正常に戻すことを難しくさせているほか、市場が一喜一憂する要因となっています。

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