株式市場のムードと先高観のアンバランス
今週の国内株市場ですが、日経平均の動きを見ると、これまでのところ38,000円台を維持する展開が続いています。上値が重たい印象ではあるものの、日足チャートを見ると、日経平均が前回38,000円台を超えた5月29日は1日、さらにその前の5月13日は2日間しか38,000円台を維持できなかったこと、そして、5月からの下値が切り上げていることなどを踏まえると、着実に値固めをしている状況とも言え、上方向への意識は保っていると思われます。
となると、「今後も株価が戻り基調を辿れるか?」が焦点になりますが、実はあまり期待しないぐらいのスタンスが良いかもしれません。
その理由のひとつが、「取引時間中の値動き」です。ここ最近の日中の値動きを確認してみると、取引がスタートする9時から10時の1時間のあいだに、当日の高値と安値をつけることが多く、残りの時間帯はもみ合う展開という日が増えています。前晩の米国市場の動きに反応して取引がスタートするも、その後は方向感が出ていないことを意味しています。
そして、もうひとつの理由が「米国株上昇のムードと先高観のアンバランス」です。確かに、足元の米国主要株価指数(NYダウ・S&P500・ナスダック総合)の動きを見ると、ジリジリと上昇基調が続き、現在は3指数が揃って、昨年末比でプラスとなったほか、S&P500とナスダック総合については高値圏に足を踏み入れています。
こうした堅調な米国株の背景には、市場ムードの改善があり、米中関係の改善期待や、米国の利下げ観測を強める「ほどほどの」経済指標、そしてAI向け需要が続いていることを背景とした半導体関連をはじめとするテック株への買いが戻ってきていることなどが挙げられます。
その一方で、こうしたムード改善の割に、上値の伸びがイマイチの印象もあります。確かに、直近の高値を前に利益確定売りなどが出て、足踏みしているだけという見方もできますが、「では、先高観が強まっているか」というと、正直微妙です。
例えば、米中関係については、今週のあたまに米中の閣僚級の協議が英ロンドンで行われ、輸出規制緩和に向けた「枠組み」を設けることで合意し、市場に一定の安心感をもたらしましたが、株価をさらに押し上げる材料にはなっていません。
というのも、「今後どうなるのか?」がよく分からないほか、結局は、5月の10日~11日に行われた前回の閣僚級協議で合意された、関税以外の制限措置の取り止めが守られていないこと(米国の中国に対する半導体規制や、中国の米国に対するレアアース輸出規制)について、「あらためて合意を守りましょう」的なことが確認されただけで、米中当局からは前向きなコメントが発信されてはいますが、実は両国関係が改善するような具体的な進展は今のところありません。
また、今週11日(水)には、米5月消費者物価指数(CPI)が発表され、目立ったインフレの進行が見られなかったことも相場を支える材料と受け止められましたが、現時点で「トランプ関税の影響は限定的」と判断するのは早計で、むしろ影響が出てくるのはこれからです。
しかも米国株は、PER面でみた割高感や、米10年債利回りの方が株式の益回りよりも優位となっていることなども考慮すると、積極的に高値を更新して行くのは難しく、それに伴い、日本株もここから先はもみ合いや失速していく展開になる可能性の方が高そうです。

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