株価の上値を抑える「悪い」金利上昇
今週の株式市場ですが、日米ともに雲行きが怪しくなってきた印象になっています。
実際に、チャートを確認すると、日経平均は200日移動平均線の攻防から下放れしつつあり、22日(木)は37,000円台割れで取引をスタートさせています。先週は38,000円台を回復する場面があったことを踏まえると、株価水準を一段階引き下げた格好です。また、米国株市場でも主要株価3指数(NYダウ・S&P500・ナスダック総合)が、上値が重たいながらも高値圏を維持していたのですが、21日(水)の取引で軟調に転じています。
こうした株価の値動きの背景にあるのは、債券市場の動きによる金利上昇です。きっかけとなったのは、低調だった超長期債の入札になります。
まず、国内ですが、20日(火)に行われた20年国債の入札で、平均落札価格(99.29円)が事前予想(99.90円)を大きく下回ったほか、応札倍率も2.5倍と2012年以来の低水準となりました。
米国株市場でも、21日(水)に20年国債の入札が行われ、最高落札利回りが5.047%と、前回から上昇したほか、応札倍率は過去平均(2.46倍)をやや下回り、こちらも低調となりました。同日の昼過ぎにこの結果が公表されると、NYダウとS&P500が下げ幅を拡大し、ナスダックもマイナスに転じるなど、相場のムードを一変させる格好となりました。
一般的に、株式市場にとって金利の上昇は重石となりますが、米国では先週末16日(金)に米格付け会社のムーディーズが発表した米国の信用格付けの引き下げも大きく影響したものと思われます。引き下げ自体は、事前に想定されていたこともあり、発表後の米国株市場の足取りは比較的しっかりしていたのですが、米財政に対する注目度を高めたことに変わりはなく、今回の超長期国債への入札結果に対して敏感に反応したと思われます。
また、米国ではトランプ政権の目玉政策でもある減税法案が米議会の下院で審議中です。このまま法案が下院や上院で採決され、成立すれば財政への負担が高まるほか、トランプ政権の関税政策の影響による景気後退やインフレへ懸念もまだ払拭しきれておらず、足元の金利上昇は、景気拡大に伴う「良い」金利上昇ではなく、財政やインフレを警戒した悪い金利上昇であると言えます。
もちろん、米国が基軸通貨であるドルを発行しているほか、米債券市場の規模が他国の債券市場と比べて巨大であることを踏まえると、「米国債を売っても、売却資金を運用するところ」が限定的になってしまい、このまま一方通行で米国債が売られ、金利が上昇していく可能性は低そうですが、現在審議されている減税法案の内容は、まもなく期限を迎える現行の減税策の延長がメインであるため、減税による景気刺激効果はあまり高くなく、財政負担を増やすだけとなる可能性もあります。
先週までの株式市場は、不安を抱えながらも楽観的な見方が優勢でしたが、足元では悲観的な見方がやや優勢に傾いた印象です。そのため、先行きの不透明感が強く、中期的なシナリオが描きにくい中では、楽観派と悲観派の綱引きがまだしばらく繰り返されることになりそうです。

銘柄の選択、売買価格等の投資の最終決定は、お客様ご自身の判断でなさるようにお願いいたします。
本資料の情報は、弊社が信頼できると判断した情報源から入手したものですが、その情報源の確実性を保証したものではありません。本資料の記載内容に関するご質問・ご照会等には一切お答え致しかねますので予めご了承お願い致します。また、本資料の記載内容は、予告なしに変更することがあります。
商号等:楽天証券株式会社/金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第195号、商品先物取引業者
加入協会:
日本証券業協会
一般社団法人金融先物取引業協会
日本商品先物取引協会
一般社団法人第二種金融商品取引業協会
一般社団法人日本投資顧問業協会