反発相場の「強気の罠」に注意
「月またぎ」で5月相場入りとなる今週の株式市場ですが、米国株市場に目を向けると、足元で戻り基調が目立っています。30日(水)の取引終了時点でのNYダウが7日続伸となっているほか、直近の安値からの上昇幅を見ても、NYダウは約10%、S&P500は約14%、ナスダック総合指数は約17%と、順調の回復している印象です。
このまま株価の戻り基調が続きそうなムードではありますが、チャートの経験則では、「ブル・トラップ(強気の罠)」と呼ばれる局面の可能性もあり、足元の株価の回復に対して警戒感を持つべきかもしれません。ブル・トラップとは、株価が一時的に上昇し、下落トレンドが終了したかのように見えるものの、結局はその上昇が長続きせず、再び下降トレンドに転じてしまう状況を指します。特に、株価の反発が、50日や200といった移動平均線をはじめ、キリの良い株価水準といった節目で上値を押さえられ、「抵抗線」として機能してしまった場合には、その可能性が高まります。
現在、米主要株価3指数すべてで、短期の50日移動平均線が長期の200日移動平均線を下抜ける「デッド・クロス」と呼ばれるテクニカル指標が出現しています。過去のS&P500の事例を見ると、このデッド・クロス発生後に株価がスムーズに上昇基調に戻ったのは、コロナ・ショック後の2020年3月のみで、それ以外の局面では、株価が再び下落するブル・トラップとなり、デッド・クロスの反対の「ゴールデン・クロス」が出現するまで、株価の低迷が続きました。必ずしも過去のパターンが繰り返されるとは限りませんが、「今回もブル・トラップかもしれない」という意識を持っておく必要がありそうです。
こうした足元の株価反発の背景には、米トランプ政権の動向が大きく影響しています。トランプ大統領がパウエルFRB議長を名指しで批判し、解任にまで言及したことで、市場には中央銀行の独立性に対する不安が広がり、株安、債券安、通貨安の「トリプル安」を招きました。
しかしその後、トランプ大統領は解任の意図がないと発言を撤回し、さらに米中間の関税問題についても、ベッセント財務長官が「持続可能でない」と発言したことが報じられ、米中関係の改善期待が高まったことなども株価を押し上げる要因となりました。
また、今週でトランプ政権の発足から約100日が経過しましたが、これまでの政権運営は、必ずしも大統領の描いたシナリオ通りに進んでいるとは言えません。特に、関税政策においては、市場の反応や相手国の反発を受け、方針が頻繁に変更されるなど、試行錯誤の様子がうかがえます。
もっとも、「貿易などの通商関係を全体的に見直し、不公平や障壁を是正する」という関税政策の大義名分そのものは悪くはないものの、トランプ米大統領が経済成長よりも貿易赤字の解消にこだわっている面が強く、そのこだわりを強く持っている限り、結局は相手国との交渉が思うように進まない、もしくは、インフレ再燃や景気減速懸念もくすぶり続けることになります。
今後の米トランプ政権は、減税や規制緩和など、「マーケットフレンドリー」寄りの政策実施に向けた動きによって、相場が押し上げられる展開も考えられますが、中長期的な上昇トレンドを形成して行くには、小手先ではなく、貿易赤字解消の優先度を下げるなど、トランプ米大統領の軌道修正の「質」の変化がカギを握ることになりそうです。

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