相互関税によるインフレ圧力は、今度こそ「一過性」?

2025/04/04

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◆相互関税でインフレ再加速への警戒感が強まる

1月24日付の本コラム『FRB議長にほめられた記者質問』では、FRB(米連邦準備理事会)が関税によるインフレに関して、人々のインフレ“期待”を重視していることを紹介しました。今週、トランプ米大統領が大規模な「相互関税」を打ち出したことで、インフレの再加速に対する警戒感が強まっています。この状況にFRBがどう対応するかを考えるために、本稿では改めてインフレ期待の動向に注目してみたいと思います。

FRBはこれまでのところ、関税によるインフレは「一過性」(transitory)だと説明しています。1回限りの関税であれば、インフレ効果は時間が経てば自然に消えていくものであり、政策対応は必要ないという立場です。ベッセント財務長官も、3月6日の講演・記者会見で同様の見解を示しています。

※1月24日 投資INSIDE OUTはこちら

◆「一過性」を巡る過去の経緯

ところで、この「一過性」という言葉にFRBは苦い経験があります。米国では2022年に消費者物価が9%を超えるまでの高いインフレを経験しました。コロナ禍での供給制約とウクライナ戦争によるインフレ圧力をFRBが当初「一過性」と評価して、必要な政策対応が遅れたことが主因の1つだと指摘されています。

ベッセント財務長官も、3月6日に「つまずいた『一過性チーム』が再び盛り返し、関税の影響は一過性だと考えることを期待する」と述べました。やや回りくどい言い方ですが、FRBを前回のインフレ圧力を見誤った人たち(一過性チーム)だと揶揄しながら、「今度こそは一過性ですよ」と皮肉交じりに伝えたわけです。

◆市場のインフレ期待は2年物と10年物がかい離

FRBがこのような経緯を経てもなお、今回の関税インフレを「一過性」と説明しているのは、今回こそはその自信があるからなのかもしれません。実際、「相互関税」発表後の米国債券市場のインフレ期待は、そうした見方に整合的な値動きになっています。

下図は、物価連動国債市場の値動きから算出した2年間および10年間の予想インフレ率(ブレーク・イーブン・インフレ率、BEI)です。米政府が相互関税の導入に言及し始めた2月中旬ごろから徐々にかい離し始めました。そして今回の発表翌日の4月3日に、かい離が一段と進行しました。2年BEIが3.36%と2023年3月以来の高水準を更新した一方、10年BEIは2.28%と昨年12月以来の水準に低下しました。債券市場も、FRBやベッセント財務長官と同様に、関税によるインフレは「一過性」とみていることがうかがえます。

10年BEIの低下は景気の先行き不安まで織り込んだ動きにも見えます。FRBはこの先、大変難しいかじ取りを迫られることになりそうです。

(シニアストラテジスト 稲留 克俊)

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