米国実質金利上昇は、株高・ドル高要因だ
~利下げ期待はtoo much~
【ストラテジーブレティン(363号)】
高実質金利時代に戻る
米国経済の物差し、金利水準が大きく変転し、市場参加者を惑わし続けている。これまでの経済常識に反して、1年半で5.25%と言う極端な利上げも、過去50年で最大・最長期にわたる逆イールド(長短金利逆転)も、景気後退を引き起こしていない。
加えてこの間インフレが大きく鎮静化してきた。その結果実質金利は著しく高くなっている。この高実質金利を放置すれば深刻な景気減速、あるいは金融危機を引き起こしかねない。大幅な利下げは必至でありそれは円高をもたらすので、日本株式にはより深刻な打撃を与える、との懸念が、日本株売りを正当化している。
大幅利下げを先取りする市場金利
そうした見込みの下で、米国の市場金利は利下げを先取りして大きく低下している。9月13日現在、FF金利12か月先物は2.92%、2年債利回りは3.57%、10年国債利回り3.66%となっている。一年間で、今の5.5%から3%へと250bpもの利下げが織り込まれているのである。このような急激な利下げはITバブル崩壊時(2000年12月の6.5%から2001年12月の1.75%へ)、リーマンショック時(2007年8月の5.25%から2008年12月の0.25%へ)と言う金融危機に準ずるものである。この急激な利下げに見合う経済的現実とは、深刻な景気後退としか考えられないが、依然としてエコノミストの間では米国経済ソフトランディング派が大勢である。とすれば、市場参加者の経済見通しと金利見通しとの間に大きな乖離が存在しているということになる。エコノミストが景気見通しを過度に楽観視しているのだろうか、または市場が過度に利下げ見通しを高めているのだろうか。