相場材料への見方の変化

2021/03/05

3月相場入りとなった今週の国内株市場ですが、日経平均は29,000円割れとなった先週の急落から反発しての推移が続いています。先月の日経平均が約30年ぶりに乗せた30,000円の大台は、目先の天井となるのか、それとも次の株高に向けた橋頭堡になるのか、その方向感が出てくるまでまだ時間が掛かるかもしれませんが、それまでは利益確定売りと、押し目買いでもみ合う展開が続きそうです。
また、月末に株価が下落し、「25日移動平均線割れとなって相場が崩れるかと思いきや、いざ月を跨いでみたら反発していく」という値動きのパターンは1月末にも見られました。いわゆる、一部の米個人投資家の投機的な動きによって発生した「ゲームストップの乱」の時です。
今回(2月末)の場合、株価急落のきっかけとなったのは米国の長期金利の上昇がきっかけです。上昇そのものというよりは、短期間のうちに急ピッチで上昇してきたペースに対して市場が警戒感を持ちはじめたと言った方が良いのかもしれません。
確かに、株式市場のリスク要因のひとつとして、米国の金利上昇が挙げられていましたが、ある程度までの金利上昇は、コロナ禍からの正常化に伴う景気回復の強さの表れの証左として許容範囲となり、「正常化と金融緩和の両立は可能」というのがこれまでの見方でした。
それが、米10年債の利回りの早い上昇ピッチをきっかけに、「思ったよりもFRBの引き締めが早くなるかもしれない」、「金利上昇の要因が期待インフレではなく、実施金利の上昇によるところが大きく、悪い金利上昇への警戒が強まったかもしれない」、「まもなく成立が見込まれる米追加経済対策の財源として、国債の増発が想定されるため、債券市場が不安定化しそう」といった思惑が一斉に絡んできたため、株式市場が消化不良を起こして、「とりあえず売っておこう」となった状況が2月末の株価急落につながったと思われます。
そのため、中期的な株高見通しシナリオに変化が生じたと判断するのはまだ早計と言える一方、債券市場の動きから金融緩和縮小への気配を感じただけで売られやすくなっている相場地合いになっていることには注意しておく必要があります。株価材料に対する反応が、これまでの「いいところ取り」から変化しつつあるかもしれないからです。
例えば、米バイデン政権は先週、中国依存からの脱却を視野に、半導体や電池、医薬品、レアアースの分野で供給網を100日内に見直す方針を打ち出しました。今週5日から中国で開催される全人代(全国人民代表大会)を控え、米国からの政治的な「ジャブ」と思われますが、米中関係の動向も相場の材料になることも考えられます。当初は、「バイデン新政権になれば米中関係は改善する」と見られていましたが、実際のところは対立が深まる要素の方が多くなっている印象です。
また、観客の有無で議論されている東京五輪についても、開催による経済効果よりも、開催実現のためにコロナ拡大を抑制することによる経済への悪影響の方が意識されれば、市場がネガティブに受け止めることも考えられます。
中期的な株高見通しが変っていない以上、株価が反発していく展開もありそうですが、下方向に動いた際に下げ幅が大きくなる場面も想定しておく必要がありそうです。

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