12月7日妥当レンジ 21,100円~22,900円
企業業績見通し(コンセンサス)は一段と悪化

【「IFIS/TIWコンセンサス225」によるマーケットの妥当レンジの推計】

 

<再び緊張感が高まるマーケット展開>
■米中首脳会談(1日)で米国の関税引上げに対して90日の猶予が与えられたこと、パウエル議長講演(11/28)及びFOMC議事録(11/29)で19年の利上げについて慎重な姿勢が示されたことで、一旦は市場心理は回復した。しかし、中国の構造改革を巡る米中協議において、強硬派の米通商代表部(USTR)ライトハイザー代表が責任者を務めることが報じられたこと(3日)、米債券市場で5年物国債の利回りが2年債を下回る逆イールドが発生したこと(3日)を発端に再び市場には警戒感が強まった。さらに、5日にはカナダ司法省が中国通信機器最大手であるファーウェイの創業者の娘である孟晩舟CFOを1日に逮捕したことが公表され、緊張が高まっている。
■英国はEU離脱案に対する議会採決を11日に予定していたが、否決が確実視されることから延期した。一方、EU司法裁判所は10日に英国のEU離脱撤回は他の加盟国の賛成が無くても可能であるとの判断を示した。現状の離脱案には強行離脱派とEU残留派の両方が反対しており、修正案を取りまとめるのは難しい状況にあり、再度の国民投票の可能性が強まっているように見受けられる。
■8日に発表された11月の中国貿易統計では、輸出が前年同期比+5.4%(10月は同+15.5%)、輸入が+3.0%(同+20.8%)と大きく減速し、中国のみならず世界景気の後退を覗わせる内容であった。
■今週は、13日にECB理事会が予定されているほか、米・11月消費者物価(12日)、中国・11月鉱工業生産・小売売上高・固定資産投資(14日)、ユーロ圏・12月PMI(製造業・サービス業・総合、14日)、米・11月小売売上高(14日)などの発表が注目される。

 

<「IFIS/TIWコンセンサス225」は7週連続でマイナス>
■「IFIS/TIWコンセンサス225」は、7週連続で全期間で前週比マイナス。「コンセンサスDI」(前週比プラス企業とマイナス企業の比率)も、今期・来期ベースで40%を下回った。中国経済の減速が明確化しつつある中、欧州も停滞感が強まっている。来期業績見通しの引下げも続いており、底打ちはまだ早い。
◇日経平均妥当水準(レンジ)

21,100円~22,900 (前回21,500円~23,200円)

*「IFIS/TIWコンセンサス225」(12月7日)来期予想ベースEPSをもとに算出

◇IFIS/TIWコンセンサス225(12月7日)

今期予想EPS 1373.78 (前週 1377.16円)
来期予想EPS 1444.42 (前週 1449.69円)
再来期予想EPS 1566.41 (前週 1571.46円)
今期予想PER 15.78 (前週 16.23倍)
来期予想PER 15.01 (前週 15.42倍)
再来期予想PER 13.84 (前週 14.22倍)
来期予想PBR 1.07 (前週 1.10倍)
来期予想ROE 7.13% 前週 7.12%)
来期予想
インプライド・リスク・プレミアム
6.92% (前週 6.83%)

12月7日経平均終値より、PER、PBR、ROE等を算出

 



 




図1
コンセンサス予想
EPSはまだ悪化する可能性が強いだけに、妥当レンジももう一段は下がりそう。





図2
来期予想ベースのプラス企業比率は、 
44.142.649.646.638.4
再来期予想ベースのプラス企業比率は、43.938.048.150.3%→40.3
全体的に急激に悪化。これから発表される経済指標には要注意でしょう!

[注:4~5月は例年、対象決算期変更の影響があるのでイレギュラーな値になることに留意]
 

 

 

出所:IFISコンセンサスを基にTIW作成
いずれも2014年1月から表示

 

「IFIS/TIWコンセンサス225」について
IFIS/TIWコンセンサス225」は、株式会社アイフィスジャパンが集計しているアナリストコンセンサス・データ等を原データとして、2009年4月より株式会社ティー・アイ・ダヴリュが東証株価指数(日経225)に対応するように構成銘柄のEPSを算出・集計したものである。今期予想EPS、来期予想EPSの変化を追うことによって、マーケット全体の業績見通しを確認する。
理論上では株価は、自己資本配当率(ROEと配当性向の積)、EPS成長率、無リスク証券の利回り(国債利回り)、リスクプレミアムの4要素で決定される。株価をこれら構成要素に分解することによって、株価変動の要因について考察するとともにファンダメンタルからの妥当な株価(マーケット)水準を思量する。なお、リスクプレミアムを正確に計測することは、一定期間を経た後でないと困難なことであることから、当レポートではインプライド・リスクプレミアム(株価と他の構成要素からの逆算値)を使用している。
4つの構成要素の内、株価の短期的な変動に最も影響を与えるのがリスクプレミアムである。リスクプレミアムは、無リスク証券の金利に対して投資家が要求する上乗せ金利と定義されるが、投資家心理(マーケットセンチメント)、他の投資対象(金融商品)との利回り格差の変動などによって変化する。長期的な見通しの変化が無い中では、インプライド・リスクプレミアムは一定のレンジ内で推移する傾向にある。日経平均株価の妥当水準を算出には、インプライド・リスクプレミアムの一定レンジからの逆算によって行っている。
〔今期予想ベースEPS、来期ベースEPSにおける“今期”、“来期”の取扱い〕
会計上の業績計測期間ではなく、本決算発表を基準とする。例えば、2011年4月30日現在では、2011年3月期は決算発表前であれば今期、決算発表が行われていれば前期、となる。
〔予想EPS増減社数〕
今期ベースならびに来期ベースを示している。週間(週末値)のデータを基に、前週末に比べてEPSが増加・変化無し・減少した企業の数。
〔予想PBR(今期末)〕
前期末BPS(1株純資産)に今期予想EPSを加えて、予想DPS(1株配当)を控除した値(=予想BPS)で株価を除した数値。中間配当は考慮していない。
〔予想ROE(来期ベース)〕
前述の予想BPSで来期予想EPSを除した値。
〔リスクプレミアム〕
特に断りの無い限りインプライド・リスクプレミアムを表す。計算式は、{ 1-予想配当性向×(1-予想B/Pレシオ)}×予想ROE-無リスク証券利回り

 

株式会社ティー・アイ・ダヴリュ
独立系証券リサーチ会社TIWのアナリスト陣が、株式市場における時事・トピックスや業界動向など、取材に基づいたファンダメンタル調査・分析を提供するともに、幅広い視野で捉えた新鮮な情報をお届けします。