11月2日妥当レンジ 22,000円~23,800円
錯綜する米中貿易問題、企業業績の減速感が顕在化
【「IFIS/TIWコンセンサス225」によるマーケットの妥当レンジの推計】
<米中間選挙を睨んで膠着感の強い展開>
■米中貿易摩擦に関して、10月29日にブルームバーグが「トランプ政権は、11月末の米中首脳会談で交渉が進展しない場合には、中国からの輸入品全てを12月初めまでに課税対象に広げる」と報道し、緊迫感が強まった。しかし、同日のFOXニュースのインタビューにトランプ氏は、中国との貿易に関して「素晴らしい取引が出来ると思う」と語り、一転して摩擦緩和への期待が広がった。1日にトランプ氏は習近平主席と電話会談し、記者団に「中国と合意できると思う。多くの進展がある」と語った。2日にブルームバーグは、トランプ氏が中国との合意案の作成を指示したと報じた。しかし、米国家経済会議(NEC)のクドロー委員長は2日に、「中国との合意は近くない」と慎重な見通しを示し、(合意案の作成に関して)「そうした動きはない」と否定した。こうした混乱は6日の米中間選挙を視野に置いたトランプ氏のリップサービスに起因すると考えられ、楽観視はむしろ禁物だろう。
■先週の日本株は、米中貿易摩擦の緩和期待と、TPP11の発効決定(31日)、イラン制裁に関する8カ国・地域に対する適用除外などを受けて大幅に上昇した。中国製造業PMI(31日・国家統計局、1日・財新)が予想の範囲に留まったのも奏功したと思われる。しかし、10月の米雇用統計(2日)の平均賃金上昇を受けた米10年国債利回りの上昇と米アップルのiPhone端末の減速感を受け、昨日(5日)は再び厳しい下落となった。
<「コンセンサスDI」 は来期が40%割れへ>
■「IFIS/TIWコンセンサス225」は、全期間で前週比マイナス。「コンセンサスDI」(前週比プラス企業とマイナス企業の比率)も、全期間で50%割れだった。来期ベースでは34週ぶりに40%を下回った。日経新聞(5日)において、2日までに決算発表を終えた3月期企業641社の7-9月期の純利益が前年同期比+0.5%に留まったことが報じられ、企業業績への懸念が強まりつつある。引続き下押し圧力の強い展開を予想。今週は、米中間選挙(6日)、米FOMC(7-8日)、中国貿易統計(8日)に注目。特に10月の中国貿易統計では(9/24・第3弾の)制裁発動を控えた駆け込み輸出の反動が予想され、警戒が必要である。
◇日経平均妥当水準(レンジ)
22,000円~23,800円 | (前回21,800円~23,600円) |
*「IFIS/TIWコンセンサス225」(11月2日)来期予想ベースEPSをもとに算出
◇IFIS/TIWコンセンサス225(11月2日)
今期予想EPS | 1401.73円 | (前週 1407.56円) |
来期予想EPS | 1571.89円 | (前週 1581.26円) |
再来期予想EPS | 1619.91円 | (前週 1626.04円) |
今期予想PER | 15.87倍 | (前週 15.05倍) |
来期予想PER | 14.15倍 | (前週 13.40倍) |
再来期予想PER | 13.73倍 | (前週 13.03倍) |
来期予想PBR | 1.11倍 | (前週 1.08倍) |
来期予想ROE | 7.81% | (前週 8.09%) |
来期予想 インプライド・リスク・プレミアム |
7.46% | (前週 7.79%) |
11月2日 日経平均終値より、PER、PBR、ROE等を算出
先週は、米中貿易摩擦の緩和観測等から予想以上のリバウンドが生じたが、米長期金利上昇、緩和観測の否定等から再び下押し圧力の強い地合いに。
来期予想ベースのプラス企業比率は、 42.4%→42.0%→53.9%→49.5%→38.3%。
再来期予想ベースのプラス企業比率は、49.4%→54.9%→52.3%→45.2%→42.4%。
全期間で50%割れ続く、再来期は34週ぶりに40%を下回る。
[注:4~5月は例年、対象決算期変更の影響があるのでイレギュラーな値になることに留意]
出所:IFISコンセンサスを基にTIW作成
いずれも2014年1月から表示
「IFIS/TIWコンセンサス225」について IFIS/TIWコンセンサス225」は、株式会社アイフィスジャパンが集計しているアナリストコンセンサス・データ等を原データとして、2009年4月より株式会社ティー・アイ・ダヴリュが東証株価指数(日経225)に対応するように構成銘柄のEPSを算出・集計したものである。今期予想EPS、来期予想EPSの変化を追うことによって、マーケット全体の業績見通しを確認する。 理論上では株価は、自己資本配当率(ROEと配当性向の積)、EPS成長率、無リスク証券の利回り(国債利回り)、リスクプレミアムの4要素で決定される。株価をこれら構成要素に分解することによって、株価変動の要因について考察するとともにファンダメンタルからの妥当な株価(マーケット)水準を思量する。なお、リスクプレミアムを正確に計測することは、一定期間を経た後でないと困難なことであることから、当レポートではインプライド・リスクプレミアム(株価と他の構成要素からの逆算値)を使用している。 4つの構成要素の内、株価の短期的な変動に最も影響を与えるのがリスクプレミアムである。リスクプレミアムは、無リスク証券の金利に対して投資家が要求する上乗せ金利と定義されるが、投資家心理(マーケットセンチメント)、他の投資対象(金融商品)との利回り格差の変動などによって変化する。長期的な見通しの変化が無い中では、インプライド・リスクプレミアムは一定のレンジ内で推移する傾向にある。日経平均株価の妥当水準を算出には、インプライド・リスクプレミアムの一定レンジからの逆算によって行っている。 〔今期予想ベースEPS、来期ベースEPSにおける“今期”、“来期”の取扱い〕 会計上の業績計測期間ではなく、本決算発表を基準とする。例えば、2011年4月30日現在では、2011年3月期は決算発表前であれば今期、決算発表が行われていれば前期、となる。 〔予想EPS増減社数〕 今期ベースならびに来期ベースを示している。週間(週末値)のデータを基に、前週末に比べてEPSが増加・変化無し・減少した企業の数。 〔予想PBR(今期末)〕 前期末BPS(1株純資産)に今期予想EPSを加えて、予想DPS(1株配当)を控除した値(=予想BPS)で株価を除した数値。中間配当は考慮していない。 〔予想ROE(来期ベース)〕 前述の予想BPSで来期予想EPSを除した値。 〔リスクプレミアム〕 特に断りの無い限りインプライド・リスクプレミアムを表す。計算式は、{ 1-予想配当性向×(1-予想B/Pレシオ)}×予想ROE-無リスク証券利回り |