10月5日妥当レンジ 23,400円~25,200円
米長期金利上昇と原油高から新興国不安が台頭

【「IFIS/TIWコンセンサス225」によるマーケットの妥当レンジの推計】

 

<好調な米国経済指標が今後はリスク要因に>
■先週は、ISM非製造業景気指数(3日)が過去最高水準であったことや、米雇用統計(5日)における失業率低下等が米長期金利上昇を促し、原油価格上昇と相俟って、新興国への不安が台頭。日本株は2日に高値を付けた後に調整が続いている。株高のカタリストであった好調な米国経済が懸念材料へと転換したことは投資家がリスクオフに転じたことを象徴する。
■米中貿易戦争の影響があらためて認識されつつある。8月の米貿易統計(5日)においては中国向け輸出が前月比11.3%減少した。7日に中国人民銀行は、今年に入って3回目となる預金準備率の引下げを行った(景気下支えを狙ったものであるが金融緩和は人民元安を誘発する危惧もある)。9日にIMFは世界経済見通しの改定を行い、2018年の世界経済の成長率を3.9%→3.7%に引き下げた。さらに2019年以降は貿易戦争の激化によっては0.8ポイント下振れすると予想している。
■今週は、11日:米消費者物価(9月)、12日:中国貿易統計(9月)、加えて11-12日開催予定のG20財務相・中央銀行総裁会議、12-14日に予定されているIMF・世銀総会が注目される。
■14日の独バイエルン州の地方議会選挙では、与党であるCSUが議席を大きく減らすことが懸念されており、メルケル政権の基盤弱体化が懸念される。欧州も英国の「合意なき離脱」の可能性やイタリアの財政問題など、暴発するリスクを抱える。
■当面は、米長期金利、新興国通貨、原油価格など睨みながら神経質な展開が予想される。特に中国経済の失速がより明確になることで、楽観論は一段と後退することが予想されよう。

 

<「IFIS/TIWコンセンサス225」は3週連続で全期間マイナス>
■「IFIS/TIWコンセンサス225」は、3週連続で全期間でマイナス。10月1日の銘柄入替(採用:サイバーエージェント、除外:古河機械金属)のコンセンサス予想EPSへの影響は極僅かであるが、今期マイナス、来期・再来期プラスであった。「コンセンサスDI」(前週比プラス企業とマイナス企業の比率)も全期間で50%割れ。再来期は6週連続で50%を下回っている。今後、米中貿易戦争の影響が顕在化してくることを鑑みれば、プラス回帰は期待し難いと考える。

 

 

 

◇日経平均妥当水準(レンジ)

23,400円~25,200 (前回23,600円~25,600円)

*「IFIS/TIWコンセンサス225」(10月5日)来期予想ベースEPSをもとに算出

◇IFIS/TIWコンセンサス225(10月5日)

今期予想EPS 1398.53 (前週 1401.22円)
来期予想EPS 1579.20 (前週 1582.59円)
再来期予想EPS 1623.04 (前週 1625.39円)
今期予想PER 17.01 (前週 17.21倍)
来期予想PER 15.06 (前週 15.24倍)
再来期予想PER 14.65 (前週 14.84倍)
来期予想PBR 1.21 (前週 1.22倍)
来期予想ROE 8.02% 前週 7.99%)
来期予想
インプライド・リスク・プレミアム
7.46% (前週 7.44%)

10月5日経平均終値より、PER、PBR、ROE等を算出

 

 




図1
5
月の決算期変更時点でのレンジ算出方法の変更(来期ベース→再来期ベースから期待収益率を割引算出)を加えたものをチャート化した。割安感は依然として残るが、コンセンサス予想EPSは下向きになりつつある。



図2
来期予想ベースのプラス企業比率は、 47.644.047.750.0%→42.4
再来期予想ベースのプラス企業比率は、45.744.448.444.749.4

マーケットは19年以降の貿易戦争の影響を織り込み始めた?

 

[注:4~5月は例年、対象決算期変更の影響があるのでイレギュラーな値になることに留意]

 

出所:IFISコンセンサスを基にTIW作成
いずれも2014年1月から表示

 

「IFIS/TIWコンセンサス225」について
IFIS/TIWコンセンサス225」は、株式会社アイフィスジャパンが集計しているアナリストコンセンサス・データ等を原データとして、2009年4月より株式会社ティー・アイ・ダヴリュが東証株価指数(日経225)に対応するように構成銘柄のEPSを算出・集計したものである。今期予想EPS、来期予想EPSの変化を追うことによって、マーケット全体の業績見通しを確認する。
理論上では株価は、自己資本配当率(ROEと配当性向の積)、EPS成長率、無リスク証券の利回り(国債利回り)、リスクプレミアムの4要素で決定される。株価をこれら構成要素に分解することによって、株価変動の要因について考察するとともにファンダメンタルからの妥当な株価(マーケット)水準を思量する。なお、リスクプレミアムを正確に計測することは、一定期間を経た後でないと困難なことであることから、当レポートではインプライド・リスクプレミアム(株価と他の構成要素からの逆算値)を使用している。
4つの構成要素の内、株価の短期的な変動に最も影響を与えるのがリスクプレミアムである。リスクプレミアムは、無リスク証券の金利に対して投資家が要求する上乗せ金利と定義されるが、投資家心理(マーケットセンチメント)、他の投資対象(金融商品)との利回り格差の変動などによって変化する。長期的な見通しの変化が無い中では、インプライド・リスクプレミアムは一定のレンジ内で推移する傾向にある。日経平均株価の妥当水準を算出には、インプライド・リスクプレミアムの一定レンジからの逆算によって行っている。
〔今期予想ベースEPS、来期ベースEPSにおける“今期”、“来期”の取扱い〕
会計上の業績計測期間ではなく、本決算発表を基準とする。例えば、2011年4月30日現在では、2011年3月期は決算発表前であれば今期、決算発表が行われていれば前期、となる。
〔予想EPS増減社数〕
今期ベースならびに来期ベースを示している。週間(週末値)のデータを基に、前週末に比べてEPSが増加・変化無し・減少した企業の数。
〔予想PBR(今期末)〕
前期末BPS(1株純資産)に今期予想EPSを加えて、予想DPS(1株配当)を控除した値(=予想BPS)で株価を除した数値。中間配当は考慮していない。
〔予想ROE(来期ベース)〕
前述の予想BPSで来期予想EPSを除した値。
〔リスクプレミアム〕
特に断りの無い限りインプライド・リスクプレミアムを表す。計算式は、{ 1-予想配当性向×(1-予想B/Pレシオ)}×予想ROE-無リスク証券利回り

 

株式会社ティー・アイ・ダヴリュ
独立系証券リサーチ会社TIWのアナリスト陣が、株式市場における時事・トピックスや業界動向など、取材に基づいたファンダメンタル調査・分析を提供するともに、幅広い視野で捉えた新鮮な情報をお届けします。