9月7日妥当レンジ 22,500円~24,300円
米金利上昇と貿易戦争の影響じわり!

【「IFIS/TIWコンセンサス225」によるマーケットの妥当レンジの推計】

 

<米金利上昇・ドル高の悪影響が新興国に広がりつつある>
■ISM製造業景気指数(8月分・4日発表)、米雇用統計(同・7日発表)など市場予想を大きく上回り、次回のFOMC(25-26日)での追加利上げ観測が一段と強固になった。米長期金利の上昇による円安から日本株は一時的に買われる局面もあると考えられるが、米国への資金還流と新興国通貨・株価の下落懸念が広がることから、日本株も上値は重い状態が続く。
■8日発表の中国貿易統計(8月)において、対米輸出は前年同月比+13%と大きく伸びているが、制裁関税の第3弾(2000億ドル相当)を控えた駆け込み輸出の影響が強いと考えられる。米国からの輸入に関しては、同+2%と既に影響が表れている。第3弾の発動は6日までのパブリック・コメントが終了し、間近と考えられる。加えて、7日にトランプ大統領がさらに2,670億ドル相当の中国製品に対しても追加関税を課す用意があることを明らかにしている。
■中国貿易摩擦に関しては、米中間選挙に向けたトランプ氏の外交成果獲得との楽観論がこれまではあったが、これは通商問題ではなく、安全保障を含んだ覇権争い(=経済戦争)であるとの認識が定着しつつある。
■今週は、ECB理事会(13日)に加えて、14日に中国(鉱工業生産・小売売上高・固定資産投資)、米国(小売売上高・鉱工業生産)の経済指標発表が予定されている。

 

<「コンセンサスDI」は2週連続で全期間50%割れ!>
■「IFIS/TIWコンセンサス225」は、前週比で今期はプラスであったが、来期・再来期はマイナス。「コンセンサスDI」(前週比プラス企業とマイナス企業の比率)は、全期間で2週連続で50%を下回った。一時的な現象ではなく、トレンドのマイナス転換の可能性が強まりつつある。円安と割安感、消去法的選択肢を理由にした日本株投資という言説も一部見られるが、米中貿易戦争、新興国通貨・株価・経済への影響等を鑑みると、先週も明言したが、リスクオンを迎えることは無いと考える。日本も今月下旬に日米貿易協議(FFR)を控えており、米国(トランプ?)の要求によっては市場は大きく動揺する可能性もある。
 

 

 

◇日経平均妥当水準(レンジ)

22,500円~24,300 (前回22,900円~24,800円)

*「IFIS/TIWコンセンサス225」(9月7日)来期予想ベースEPSをもとに算出

◇IFIS/TIWコンセンサス225(9月7日)

今期予想EPS 1398.07 (前週 1397.43円)
来期予想EPS 1589.37 (前週 1592.18円)
再来期予想EPS 1634.53 (前週 1637.73円)
今期予想PER 15.96 (前週 16.36倍)
来期予想PER 14.04 (前週 14.36倍)
再来期予想PER 13.65 (前週 13.96倍)
来期予想PBR 1.12 (前週 1.15倍)
来期予想ROE 8.00% 前週 8.02%)
来期予想
インプライド・リスク・プレミアム
7.63% (前週 7.59%)

9月7日経平均終値より、PER、PBR、ROE等を算出

 

 


図1
配当利回りは、全体的にはヒルトリカルでは中位の水準にあるが、
JASDAQが依然として東証1部より低く、相対的に割高感が残る。




図2来期予想ベースのプラス企業比率は、 58.3%→55.2%→50.0%→48.347.6
再来期予想ベースのプラス企業比率は、55.3%→60.752.0%→49.345.7
2週連続で50%割れ、警戒モードを強めよ!

 

[注:4~5月は例年、対象決算期変更の影響があるのでイレギュラーな値になることに留意]

 

出所:IFISコンセンサスを基にTIW作成
いずれも2014年1月から表示

 

「IFIS/TIWコンセンサス225」について
IFIS/TIWコンセンサス225」は、株式会社アイフィスジャパンが集計しているアナリストコンセンサス・データ等を原データとして、2009年4月より株式会社ティー・アイ・ダヴリュが東証株価指数(日経225)に対応するように構成銘柄のEPSを算出・集計したものである。今期予想EPS、来期予想EPSの変化を追うことによって、マーケット全体の業績見通しを確認する。
理論上では株価は、自己資本配当率(ROEと配当性向の積)、EPS成長率、無リスク証券の利回り(国債利回り)、リスクプレミアムの4要素で決定される。株価をこれら構成要素に分解することによって、株価変動の要因について考察するとともにファンダメンタルからの妥当な株価(マーケット)水準を思量する。なお、リスクプレミアムを正確に計測することは、一定期間を経た後でないと困難なことであることから、当レポートではインプライド・リスクプレミアム(株価と他の構成要素からの逆算値)を使用している。
4つの構成要素の内、株価の短期的な変動に最も影響を与えるのがリスクプレミアムである。リスクプレミアムは、無リスク証券の金利に対して投資家が要求する上乗せ金利と定義されるが、投資家心理(マーケットセンチメント)、他の投資対象(金融商品)との利回り格差の変動などによって変化する。長期的な見通しの変化が無い中では、インプライド・リスクプレミアムは一定のレンジ内で推移する傾向にある。日経平均株価の妥当水準を算出には、インプライド・リスクプレミアムの一定レンジからの逆算によって行っている。
〔今期予想ベースEPS、来期ベースEPSにおける“今期”、“来期”の取扱い〕
会計上の業績計測期間ではなく、本決算発表を基準とする。例えば、2011年4月30日現在では、2011年3月期は決算発表前であれば今期、決算発表が行われていれば前期、となる。
〔予想EPS増減社数〕
今期ベースならびに来期ベースを示している。週間(週末値)のデータを基に、前週末に比べてEPSが増加・変化無し・減少した企業の数。
〔予想PBR(今期末)〕
前期末BPS(1株純資産)に今期予想EPSを加えて、予想DPS(1株配当)を控除した値(=予想BPS)で株価を除した数値。中間配当は考慮していない。
〔予想ROE(来期ベース)〕
前述の予想BPSで来期予想EPSを除した値。
〔リスクプレミアム〕
特に断りの無い限りインプライド・リスクプレミアムを表す。計算式は、{ 1-予想配当性向×(1-予想B/Pレシオ)}×予想ROE-無リスク証券利回り

 

株式会社ティー・アイ・ダヴリュ
独立系証券リサーチ会社TIWのアナリスト陣が、株式市場における時事・トピックスや業界動向など、取材に基づいたファンダメンタル調査・分析を提供するともに、幅広い視野で捉えた新鮮な情報をお届けします。