8月31日妥当レンジ 22,900円~24,800円
中国への2000億ドル相当に対する制裁関税が迫る!
【「IFIS/TIWコンセンサス225」によるマーケットの妥当レンジの推計】
<財新・マークイット製造業PMIは14ヵ月ぶりの低水準>
■先週は、米墨(メキシコ)が8月27日に、NAFTAに関する2国間協定の合意に達したことによって、貿易摩擦に対するリスクの低減から市場はポジティブに反応した。結果的には31日までに合意を見ることはなかったものの、カナダとの交渉も進展するとの見方が広がっている。また、29日には4-6月期の米GDPが速報値から上方修正されたこともプラス評価された。
■一方で、トルコ、アルゼンチンなど新興国の強インフレと通貨下落、中国の経済減速が懸念材料となっている。3日発表の財新・マークイット製造業PMI(8月)は、50.6と前月(50.8)から低下し、14ヵ月ぶりの低水準となった。新規輸出受注が軟調な状態にあり、製造業での雇用調整が際立ってきたようだ。米トランプ政権は、制裁関税の第三弾として2,000億ドル相当の中国製品に対して25%の関税を適用させる方針である。パブリックコメント期間が6日に終了する予定であるが、終了後早々にも発動されるとの見方もある。第三弾が発動されれば、中国の輸出全体の1割超に追加関税が課せられることとなり、その影響は多方面に及ぶことが想像される。
■今週は、ISM製造業PMI(4日)、米貿易収支(5日)、ISM非製造業PMI・ADP雇用統計(6日)、米雇用統計(7日)と米国主要統計の発表が続く。堅調な経済環境が確認されること自体はポジティブであるが、新興国への影響も他方では注視すべきと考える。8日発表の中国貿易統計(8月)も要注目。
<「コンセンサスDI」は50%割れ、トレンド転換の可能性も>
■「IFIS/TIWコンセンサス225」は、前週比で来期はプラスであったが、今期・再来期はマイナス。来期もソフトバンク(9984)の影響を除外すれば実質マイナスであった。「コンセンサスDI」(前週比プラス企業とマイナス企業の比率)は、全期間で6週間ぶりに50%を下回った。日本株は割安な水準にあるものの、トレンド転換が起こりつつあるとするならば、楽観視は出来ない。50%割れが一時的現象かトレンド転換かは引き続き注視したい。日経平均株価は23,000円を突破すれば上伸するとの見方もあるが、米中貿易戦争に落とし所が見えてこない限り、リスクオンを迎えることは無いと考える。
◇日経平均妥当水準(レンジ)
22,900円~24,800円 | (前回22,900円~24,800円) |
*「IFIS/TIWコンセンサス225」(8月31日)来期予想ベースEPSをもとに算出
◇IFIS/TIWコンセンサス225(8月31日)
今期予想EPS | 1397.43円 | (前週 1398.22円) |
来期予想EPS | 1592.18円 | (前週 1586.33円) |
再来期予想EPS | 1637.73円 | (前週 1640.51円) |
今期予想PER | 16.36倍 | (前週 16.16倍) |
来期予想PER | 14.36倍 | (前週 14.25倍) |
再来期予想PER | 13.96倍 | (前週 13.78倍) |
来期予想PBR | 1.15倍 | (前週 1.14倍) |
来期予想ROE | 8.02% | (前週 8.01%) |
来期予想 インプライド・リスク・プレミアム |
7.59% | (前週 7.62%) |
8月31日 日経平均終値より、PER、PBR、ROE等を算出
予想PER(12ヵ月フォワード)で見る限りは、日経平均株価の割安感は強い。 ただし、あくまでも現在の予想EPS水準が保たれるという前提。
来期予想ベースのプラス企業比率は、 50.0%→58.3%→55.2%→50.0%→48.3%。
再来期予想ベースのプラス企業比率は、52.0%→55.3%→60.7%→52.0%→49.3%。
6週間ぶりに50%割れ、一時的なものか、それともピークか!!
[注:4~5月は例年、対象決算期変更の影響があるのでイレギュラーな値になることに留意]
出所:IFISコンセンサスを基にTIW作成
いずれも2014年1月から表示
「IFIS/TIWコンセンサス225」について IFIS/TIWコンセンサス225」は、株式会社アイフィスジャパンが集計しているアナリストコンセンサス・データ等を原データとして、2009年4月より株式会社ティー・アイ・ダヴリュが東証株価指数(日経225)に対応するように構成銘柄のEPSを算出・集計したものである。今期予想EPS、来期予想EPSの変化を追うことによって、マーケット全体の業績見通しを確認する。 理論上では株価は、自己資本配当率(ROEと配当性向の積)、EPS成長率、無リスク証券の利回り(国債利回り)、リスクプレミアムの4要素で決定される。株価をこれら構成要素に分解することによって、株価変動の要因について考察するとともにファンダメンタルからの妥当な株価(マーケット)水準を思量する。なお、リスクプレミアムを正確に計測することは、一定期間を経た後でないと困難なことであることから、当レポートではインプライド・リスクプレミアム(株価と他の構成要素からの逆算値)を使用している。 4つの構成要素の内、株価の短期的な変動に最も影響を与えるのがリスクプレミアムである。リスクプレミアムは、無リスク証券の金利に対して投資家が要求する上乗せ金利と定義されるが、投資家心理(マーケットセンチメント)、他の投資対象(金融商品)との利回り格差の変動などによって変化する。長期的な見通しの変化が無い中では、インプライド・リスクプレミアムは一定のレンジ内で推移する傾向にある。日経平均株価の妥当水準を算出には、インプライド・リスクプレミアムの一定レンジからの逆算によって行っている。 〔今期予想ベースEPS、来期ベースEPSにおける“今期”、“来期”の取扱い〕 会計上の業績計測期間ではなく、本決算発表を基準とする。例えば、2011年4月30日現在では、2011年3月期は決算発表前であれば今期、決算発表が行われていれば前期、となる。 〔予想EPS増減社数〕 今期ベースならびに来期ベースを示している。週間(週末値)のデータを基に、前週末に比べてEPSが増加・変化無し・減少した企業の数。 〔予想PBR(今期末)〕 前期末BPS(1株純資産)に今期予想EPSを加えて、予想DPS(1株配当)を控除した値(=予想BPS)で株価を除した数値。中間配当は考慮していない。 〔予想ROE(来期ベース)〕 前述の予想BPSで来期予想EPSを除した値。 〔リスクプレミアム〕 特に断りの無い限りインプライド・リスクプレミアムを表す。計算式は、{ 1-予想配当性向×(1-予想B/Pレシオ)}×予想ROE-無リスク証券利回り |