7月27日妥当レンジ 23,200円~25,100円
ここからは中国の経済指標に御用心

【「IFIS/TIWコンセンサス225」によるマーケットの妥当レンジの推計】

 

<日銀の金融政策の調整は織り込みへ>

■10年物国債利回りが一時的に0.110%と一年半ぶりの高水準をつけたものの、日銀の指値オペ(指定した価格で無制限に購入するという市場操作)等の実施により落ち着きを見せている。本日(31日)の金融政策決定会合において、政策の微修正(0%付近の幅を広げる)が行われたとしても急進的なものではないと考えられる。TIWでは長期金利0.1%の上昇に対する日経平均株価への影響は約400円と試算しており、既に市場での織り込みがほぼ終わっていると考える。
■25日のトランプ大統領とユンケル欧州委員会委員長との会談において、EU側が米国産の液化天然ガスや大豆の輸入拡大を示すと同時に、自動車を除く工業製品において関税撤廃を目指すことで協議入りすることで折り合った。自動車に関してもEU側は関税撤廃に向けた協議対象に含まれるとの認識を示しており、貿易摩擦の緩和に繋がる動きとして評価できる。
■ただし、対中国においては、知的財産侵害という複雑な問題を抱えており、解決の糸口が見えない状態にある。31日に国家統計局が発表した中国製造業PMI(7月)は、前月より0.3ポイント低下し、51.2と5ヵ月振りの低水準であった。非製造業PMIは1.0ポイント悪化の54.0と11ヵ月ぶりの低水準。まだ、貿易摩擦の影響は限定的と考えられるが、今後の中国の経済指標には注意が必要である。8月(7月分)の公表予定は、財新・マークイット製造業PMI(1日)、鉱工業生産・小売売上高(14日)、貿易統計(中旬)、など。

<「コンセンサスDI」は全期間で50%を上回る>

■「IFIS/TIWコンセンサス225」は、前週比で再来期ベースがマイナスであった。先週に決算発表が行われたファナック(6954)、日立建機(6305)、東京エレクトロン(8035)、信越化学工業(4063)などのコンセンサス予想の低下が影響した。「コンセンサスDI」(前週比プラス企業とマイナス企業の比率)については、全期間で50%を上回った。
■日銀の政策調整が織り込まれることによって、目先はやや持ち直すと見られるが、猛暑や大雨の影響、中国統計の顕在化などによって上値の重い商状はまだ続くと考える。

 

 

◇日経平均妥当水準(レンジ)

23,200円~25,100 (前回23,400円~25,300円)

*「IFIS/TIWコンセンサス225」(7月27日)来期予想ベースEPSをもとに算出

◇IFIS/TIWコンセンサス225(7月27日)

今期予想EPS 1382.38 (前週 1376.35円)
来期予想EPS 1584.14 (前週 1584.13円)
再来期予想EPS 1627.97 (前週 1632.04円)
今期予想PER 16.43 (前週 16.49倍)
来期予想PER 14.34 (前週 14.33倍)
再来期予想PER 13.95 (前週 13.91倍)
来期予想PBR 1.18 (前週 1.17倍)
来期予想ROE 8.22% 前週 8.17%)
来期予想
インプライド・リスク・プレミアム
7.75% (前週 7.78%)

7月27日経平均終値より、PER、PBR、ROE等を算出

 

図1来期・再来期のコンセンサス予想は頭打ち??

 


図2来期予想ベースのプラス企業比率は、 52.0%→42.143.047.956.0%。
再来期予想ベースのプラス企業比率は、53.4%→47.350.9%→44.458.8%。
1Q決算スタートはボチボチであるが・・・・。

[注:4~5月は例年、対象決算期変更の影響があるのでイレギュラーな値になることに留意]

 

出所:IFISコンセンサスを基にTIW作成
いずれも2014年1月から表示

 

「IFIS/TIWコンセンサス225」について
IFIS/TIWコンセンサス225」は、株式会社アイフィスジャパンが集計しているアナリストコンセンサス・データ等を原データとして、2009年4月より株式会社ティー・アイ・ダヴリュが東証株価指数(日経225)に対応するように構成銘柄のEPSを算出・集計したものである。今期予想EPS、来期予想EPSの変化を追うことによって、マーケット全体の業績見通しを確認する。
理論上では株価は、自己資本配当率(ROEと配当性向の積)、EPS成長率、無リスク証券の利回り(国債利回り)、リスクプレミアムの4要素で決定される。株価をこれら構成要素に分解することによって、株価変動の要因について考察するとともにファンダメンタルからの妥当な株価(マーケット)水準を思量する。なお、リスクプレミアムを正確に計測することは、一定期間を経た後でないと困難なことであることから、当レポートではインプライド・リスクプレミアム(株価と他の構成要素からの逆算値)を使用している。
4つの構成要素の内、株価の短期的な変動に最も影響を与えるのがリスクプレミアムである。リスクプレミアムは、無リスク証券の金利に対して投資家が要求する上乗せ金利と定義されるが、投資家心理(マーケットセンチメント)、他の投資対象(金融商品)との利回り格差の変動などによって変化する。長期的な見通しの変化が無い中では、インプライド・リスクプレミアムは一定のレンジ内で推移する傾向にある。日経平均株価の妥当水準を算出には、インプライド・リスクプレミアムの一定レンジからの逆算によって行っている。
〔今期予想ベースEPS、来期ベースEPSにおける“今期”、“来期”の取扱い〕
会計上の業績計測期間ではなく、本決算発表を基準とする。例えば、2011年4月30日現在では、2011年3月期は決算発表前であれば今期、決算発表が行われていれば前期、となる。
〔予想EPS増減社数〕
今期ベースならびに来期ベースを示している。週間(週末値)のデータを基に、前週末に比べてEPSが増加・変化無し・減少した企業の数。
〔予想PBR(今期末)〕
前期末BPS(1株純資産)に今期予想EPSを加えて、予想DPS(1株配当)を控除した値(=予想BPS)で株価を除した数値。中間配当は考慮していない。
〔予想ROE(来期ベース)〕
前述の予想BPSで来期予想EPSを除した値。
〔リスクプレミアム〕
特に断りの無い限りインプライド・リスクプレミアムを表す。計算式は、{ 1-予想配当性向×(1-予想B/Pレシオ)}×予想ROE-無リスク証券利回り

 

株式会社ティー・アイ・ダヴリュ
独立系証券リサーチ会社TIWのアナリスト陣が、株式市場における時事・トピックスや業界動向など、取材に基づいたファンダメンタル調査・分析を提供するともに、幅広い視野で捉えた新鮮な情報をお届けします。