7月6日妥当レンジ 22,800円~24,700円
戻り相場も深追いは禁物

【「IFIS/TIWコンセンサス225」によるマーケットの妥当レンジの推計】

 

<中国の経済指標を注視すべき>

■6日にトランプ政権は、中国による知的財産侵害への制裁として340億ドル相当の中国製品への追加関税を発動した。これに対抗して中国も同規模の報復関税を発動。まだ、時期は未定であるが、160億ドル相当の追加関税適用を米国は準備している。
■それにも関わらず、株式市場は6日から反発した。これは関税発動前に売込まれていたものの買戻しと、米国の経済指標が好調であったこと、日本株には割安感が強まっていたことなどが挙げられる。しかし、あくまでも戻り相場であり、日経平均株価は6月中旬の2万2千円台後半まで戻る可能性は低いと言える。
■英国のEU離脱を巡って、政権内の混乱が一気に噴出した。デービス離脱担当相(8日)に続いて、ジョンソン外務相(9日)も辞任した。メイ首相への辞任圧力が高まることでクリフ・エッジ(無秩序離脱)の可能性も現実味を帯びてきた。
■世界中に問題が山積しているが、今後焦点になるのは中国の経済動向であろう。13日に貿易統計(6月)、16日に鉱工業生産・小売売上高(6月)、4-6月GDPが発表される。特に注視されるのが追加関税が発動された7月分の統計である。7月末発表の製造業PMIや、鉱工業生産や貿易統計など各種統計が発表される8月中旬には市場は緊張感を帯びる可能性もあるだろう。

<全期間で「コンセンサスDI」は50%割れ>

■「IFIS/TIWコンセンサス225」は、再来期ベースは僅かにプラスであったが、今期・来期ベースはマイナスであった。コンセンサスDI(前週比プラス企業とマイナス企業の比率)は、サンプル数が少ないものの、12週ぶりに全期間で50%を下回った。
■間もなく、3月決算期企業の1Q決算発表が行われる。貿易摩擦の影響が不透明な中では、1Q決算が好調であっても上方修正を行う企業は限られるであろう。そうした心理的バイアスからアナリスト予想も上方シフトが見込み難いと考える。その結果、業績見通しへの懸念が台頭する可能性には注意したい。

 

 

◇日経平均妥当水準(レンジ)

22,800円~24,700 (前回23,100円~25,000円)

*「IFIS/TIWコンセンサス225」(7月6日)来期予想ベースEPSをもとに算出

◇IFIS/TIWコンセンサス225(7月6日)

今期予想EPS 1373.94 (前週 1374.56円)
来期予想EPS 1583.78 (前週 1584.90円)
再来期予想EPS 1631.54 (前週 1631.31円)
今期予想PER 15.86 (前週 16.23倍)
来期予想PER 13.76 (前週 14.07倍)
再来期予想PER 13.35 (前週 13.67倍)
来期予想PBR 1.13 (前週 1.15倍)
来期予想ROE 8.22% 前週 8.18%)
来期予想
インプライド・リスク・プレミアム
7.91% (前週 7.83%)

7月6日経平均終値より、PER、PBR、ROE等を算出





図1東証1部の配当利回りは、アベノミクス以来では平均的(中位)な水準に。配当利回りの下支えから、2万円割れの可能性は低いと考える。



図2
来期予想ベースのプラス企業比率は、 
56.8%→51.2%→60.652.0%→42.1
再来期予想ベースのプラス企業比率は、60.456.7%→59.8%→53.4%→47.3
サンプル数は少ないものの50%割れ。

[注:4~5月は例年、対象決算期変更の影響があるのでイレギュラーな値になることに留意]

 

出所:IFISコンセンサスを基にTIW作成
いずれも2014年1月から表示

 

「IFIS/TIWコンセンサス225」について
IFIS/TIWコンセンサス225」は、株式会社アイフィスジャパンが集計しているアナリストコンセンサス・データ等を原データとして、2009年4月より株式会社ティー・アイ・ダヴリュが東証株価指数(日経225)に対応するように構成銘柄のEPSを算出・集計したものである。今期予想EPS、来期予想EPSの変化を追うことによって、マーケット全体の業績見通しを確認する。
理論上では株価は、自己資本配当率(ROEと配当性向の積)、EPS成長率、無リスク証券の利回り(国債利回り)、リスクプレミアムの4要素で決定される。株価をこれら構成要素に分解することによって、株価変動の要因について考察するとともにファンダメンタルからの妥当な株価(マーケット)水準を思量する。なお、リスクプレミアムを正確に計測することは、一定期間を経た後でないと困難なことであることから、当レポートではインプライド・リスクプレミアム(株価と他の構成要素からの逆算値)を使用している。
4つの構成要素の内、株価の短期的な変動に最も影響を与えるのがリスクプレミアムである。リスクプレミアムは、無リスク証券の金利に対して投資家が要求する上乗せ金利と定義されるが、投資家心理(マーケットセンチメント)、他の投資対象(金融商品)との利回り格差の変動などによって変化する。長期的な見通しの変化が無い中では、インプライド・リスクプレミアムは一定のレンジ内で推移する傾向にある。日経平均株価の妥当水準を算出には、インプライド・リスクプレミアムの一定レンジからの逆算によって行っている。
〔今期予想ベースEPS、来期ベースEPSにおける“今期”、“来期”の取扱い〕
会計上の業績計測期間ではなく、本決算発表を基準とする。例えば、2011年4月30日現在では、2011年3月期は決算発表前であれば今期、決算発表が行われていれば前期、となる。
〔予想EPS増減社数〕
今期ベースならびに来期ベースを示している。週間(週末値)のデータを基に、前週末に比べてEPSが増加・変化無し・減少した企業の数。
〔予想PBR(今期末)〕
前期末BPS(1株純資産)に今期予想EPSを加えて、予想DPS(1株配当)を控除した値(=予想BPS)で株価を除した数値。中間配当は考慮していない。
〔予想ROE(来期ベース)〕
前述の予想BPSで来期予想EPSを除した値。
〔リスクプレミアム〕
特に断りの無い限りインプライド・リスクプレミアムを表す。計算式は、{ 1-予想配当性向×(1-予想B/Pレシオ)}×予想ROE-無リスク証券利回り

 

株式会社ティー・アイ・ダヴリュ
独立系証券リサーチ会社TIWのアナリスト陣が、株式市場における時事・トピックスや業界動向など、取材に基づいたファンダメンタル調査・分析を提供するともに、幅広い視野で捉えた新鮮な情報をお届けします。